五重の塔はハウォルチオプシスに属する多肉植物です。しかし、調べると同じハウォルチオプシスの竜城と混同されているみたいです。学名も混乱している様子ですから、まとめてみました。
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五重の塔 Haworthiopsis tortuosa

和名の混乱
「五重の塔」は葉が縦に積み重なって行きますが、良く似た「竜城」と混同されることもあるようです。「竜城」は葉の生える向きが揃っていて、上から見ると三角形です。対して、「五重の塔」は葉が旋回して、ロゼットがズレながら縦に積み重なる様に伸びます。

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竜城 Haworthiopsis viscosa
※葉の向きが揃っていることに注意。


学名
ネットで検索すると、五重の塔はHaworthia tortuosaとされている様です。そこで、Haworthia tortuosaの来歴を調べてみました。
まず、1804年にAloe tortuosa Haw.と命名されたのが最初みたいです。Haw.は、イギリスの昆虫学者・植物学者・甲殻類学者であるAdrian Hardy Haworthです。Haworthia属という学名自体が、Haworthに対する献名みたいですね。
1812年にはHaworthia tortuosa (Haw.) Haw.と、Haworthによりアロエからハウォルチアに移されました。また、1891年にはCatevala tortuosa (Haw.) Kuntzeも提唱されました。
さらに、遺伝子解析により、2016年にはHaworthiopsis tortuosa (Haw.) Gildenh. & Klopperとされました。アロエ属→ハウォルチア属→ハウォルチオプシス属という移動は、硬葉系ハウォルチアの経歴の良くあるパターンです。

さて、ここからが問題です。
実は1896年にHaworthia tortuosa (Haw.) Bakerという命名があります。しかも、これはAloe tortuosa Haw.から来ている学名です。実はこちらは竜城の学名なのです。海外でも混同があったのかもしれません。しかし、この学名は認められませんでした。

竜城の正式な学名の系統は、学名の考案者であるスウェーデンのカール・フォン・リンネが18世紀に命名した、
Aloe viscosa L.から始まりました。やはり、硬葉系ハウォルチアの辿る道は同じで、1812年にHaworthia viscosa (L.) Haw.、そして最終的には2016年にはHaworthiopsis viscosa (L.) Gildenh. & Klopperとなりました。
硬葉系ハウォルチアにありがちなのですが、1811年にApicra viscosa (L.) Willd.、1891年にCatevala viscosa (L.) Kuntzeという命名もありました。1783年にはAloe triangularis Lam.という異名もありました。さらに、2013年にはなんと竜城をツリスタ属であるとする、Tulista viscosa (L.) G.D.Rowleyという学名もありますが、現在は認められていません。


ややこしいので、まとめます。
「五重の塔」は、Haworthiopsis tortuosa、「竜城」はHaworthiopsis viscosaとなりました。 

大混乱
日本のネットでは、五重の塔と竜城は混同されがちで、しかも学名も混同されてしまっています。五重の塔の説明にH. viscosaとあったり、五重の塔の説明に竜城の画像が貼られていたりと、大混乱の様相を呈しています。
私の解説が混乱を静める一助となれば良いのですが…


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