最近、ギムノカリキウムのうち、平べったく育つ瑞昌玉、竜頭、武勲丸、バッテリーといったあたりについて、情報をまとめて来ました。

G. quehlianumについて
G. ochoterenaeについて

今回は怪竜丸についてです。怪竜丸は昔から国内でも流通しているギムノカリキウムの一種です。ただし、その出自などは謎に包まれています。


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怪竜丸

快竜丸?怪竜丸?
ネットでは怪竜丸あるいは快竜丸の名前で売られていますが、混同されているパターンと、区別されているパターンがあります。
ここでは、まず「優型ギムノを守る会」という、1961~1978年にかけて存在した会の会誌を参照にしてみます。
「快」竜丸は戦前からG. bodenbenderianumの学名で栽培されてきましたが、肌も明るい色でトゲは立ち上がり、鳳頭に近い雰囲気があります。鉄冠という呼び方もあります。
「怪」竜丸は戦後にG. bodenbenderianumの学名で輸入されてきた個体に付けられた名前です。肌は暗くトゲは張り付くように付きます。会誌では快竜丸Bタイプ=怪竜丸ということです。
私の所有個体は「怪」竜丸の方ですね。


園芸名と学名の関係
輸入されてきた時は、G. bodenbenderianumでしたが、本やサイトにより異なる学名がついている事があります。
ギムノフォトプロムナードの記事によると、G. bodenbenderianumは守殿玉に当てられ、怪竜丸にはG. basiatrumが当てられています。欧州の種子販売リストでは、G. bodenbenderianumとG. basiatrumが業者により混在しているみたいです。

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守殿玉

しかし一番の問題は、怪竜丸が分類学上の種を示してはいないということです。輸入されたある特徴を持ったタイプに怪竜丸の名前がついただけで、ある種類全体についた名前ではないからです。
原種や亜種、変種にそれぞれ園芸名がつけられることは良くあることです。しかし、怪竜丸がG. basiatrumの1タイプであるとして、G. basiatrumという種全体を怪竜丸と呼ぶことは出来ないからです。なぜなら、G. basiatrumとして採取された個体が、全て怪竜丸の特徴を持っているわけではないからです。
あくまで、怪竜丸はG. basiatrumの1タイプについた名前でしかないということです。
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学名
怪竜丸の学名は2014年に命名されたG. basiatrum F.Berger, Amerh. & Sedlmeierで、守殿玉の学名は1929年に命名されたGymnocalycium bodenbenderianum (Hosseus ex A.Berger) A.Bergerです。
G. bodenbenderianumは異名が多く私が確認しただけで実に24もありました。有名どころのみを列挙してみます。

1959年 G. triacanthum Backeb
1962年 G. occultum Frick ex 
Schütz
    →1996年 G. stellatum subsp. occultum
                         Frick ex H.Till & W.Till

    →2008年 G. occultum
                   (Frick ex H.Till & W.Till) H.Till

1966年 G. kozelskyanum Schütz
    →1991年 G. riojense subsp. kozelskyanum
                         
Schütz ex H.Till & W.Till
1966年 G. moserianum Schütz
    →2008年 G. intertextum f. moserianum
                                                  J.G.Lamb.

1966年 G. asterium var. paucispinum Backeb.
    →1975年 G. stellatum var. paucispinum
                                 (Backeb.) R.Strong
    →1991年 G. riojense subsp. paucispinum
                           Backeb. ex 
H.Till & W.Till
    →2008年 G. paucispinum
                   (
Backeb. ex H.Till & W.Till) H.Till
1982年 G. piltziorum Schütz
    →1991年 G. riojense subsp. piltziorum 
                                  Schütz ex H.Till & W.Till
1991年 G. riojense Frick ex H.Till & W.Till

最後に
ここのところ、G. quehlianum、G. ochoterenae、G.bodenbenderianum、G. basiatrumといった、分類学的にも混乱している割りと似た連中についてまとめて来ました。あとは、G. ragoneseiくらいでしょうか。とりあえずは、この一連のシリーズも終了です。もし、新たに異なるタイプを入手しましたら、改めて記事にはするかもしれません。

そういえば、最近ではサボテンは多肉植物に押されぎみで、イベントではその主役の座を明け渡したように思われます。
しかし、サボテンは代表的な多肉植物で本来は多肉植物の1つなのに、「サボテン・多肉植物」という風にある種の特別扱いをされてきたわけで、さしずめサボテンは多肉植物の王様です。それは、サボテンは種類が多く、他の多肉植物と比べて日本に入ってきた時期が早かったため、広く普及したことなどがあげられます。
しかし、近年の多肉植物ブームでサボテンは大分影が薄くなったのは様々なサボテン以外の多肉植物も次々と日本に入ってきたことが理由でしょう。
とは言うものの、若い人も含めて明らかに多肉植物ファンは増えていますから、関連してサボテンに興味を持つ人もいるはずです。なんだかんだ言って、実の所ではサボテン人口も増えている様な気もします。
まあ、私は流行りどころに疎く、流行りに上手く乗れないので、不人気種ばかり追いかける羽目に陥り勝ちですけどね。



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