ギムノカリキウム・エリナケウムはアルゼンチン原産のサボテンの一種です。erinaceumはラテン語でハリネズミの意味です。刺座から出るトゲがギムノカリキウム属の中では多いため、ギムノカリキウムらしくないと言われたりします。ギムノカリキウムの中でも地味で、目立たない種類かも知れません。

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Gymnocalycium erinaceum WR726B

2011年にAmerican Journal of Botanyに掲載されたMOLECULAR PHYLOGENY OF GYMNOCALYCIUM (CACTACEAE) : ASSESSMENT OF ALTERNATIVE INFRAGENERIC SYSTEMS, A NEW SUBGENUS, AND TRENDS IN THE EVOLUTION OF GENUS という論文では、ギムノカリキウム属の遺伝子解析を行い、ギムノカリキウム属内の系統樹を作成しています。このことにより、進化の道筋がわかり、類縁関係がはっきりしました。
ギムノカリキウム属は7亜属に分類され、新天地G. saglionisが祖先的な位置にあるとされました。エリナケウムはギムノカリキウム属ギムノカリキウム亜属に分類されています。遺伝的に近縁な種類は、G.amerhauseri、白蓮G. reductum subsp. reductumがあります。

そう言えば購入時にラベルにG. erinaceumとしか記入されていないと思ったのですが、家に着いてラベルを引き抜いてみたところ、土に刺さって見えなかった部分にR726とありました。フィールドナンバーです。フィールドナンバーは、その植物が採取された時の情報がわかります。
実際にCactus and Succulent Field Number Query (http://www.cl-cactus.com/)というサイトでR726を検索してみました。何故かG. sutterianumがヒットしてしまいました。しかも、R726はWR726のことで、WRはWalter Rauschという採取者の名前の略でした。どうやら、726という地点で3種類のギムノカリキウムを採取したようで、WR726、WR726A、WR726Bが登録されています。
WR726      G. sutterianum
WR726A   G. quehlianum v. rolfianum
WR726B   G. erinaceum
つまり、私のエリナケウムはWR726Bのことでした。
採取情報として、Dean Funes, Cordoba, Arg.とあります。つまり、アルゼンチンのコルドバ州、デアン・フネス近辺でWalter Rauschが採取したということになります。
Walter Rauschはオーストリアの植物学者・探検家で、サボテンの研究者でロビビア属を専門としていたようです。学名でも、Lobivia rauschii、Sulcorebutia rauschii、Gymnocalycium rauschii、Notocactus rauschii、Parodia rauschii、Echinopsis rauschii、Lobivia walteri、Rebutia walteriと、Walter Rauschの名前がつけられています。

このように、一見して地味なサボテンでも、調べてみると沢山の情報が得られて中々面白く感じます。
皆様も背後に隠れて見えなかった情報を調べてみてはいかがでしょうか?


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