ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(以外、CITES)」は希少な野生の動植物の国際的な取引を禁止しています。サボテンや多肉植物の多くはCITESの附属書に記載された希少な植物です。我々のような趣味家にも無関係ではなく、知らずに違法取引による植物を入手してしまう可能性もありますが、それでも知らないでは済まされないことだと私は思います。ですから、私自身の勉強を兼ねて、CITESや植物の違法取引について、今日から何本かの論文を参照に見ていきましょう。
CITESは重要ですが、条約が存在するだけでは意味がなく、有効的に運用されて初めて意味を持ちます。本日は、サボテンや多肉植物に関するCITESの取り組みについて書かれた、Maurizio Sajevaらの2007年の論文、『The Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES) and its Role in Conservation of Cacti and Other Succulent Plants』をご紹介します。少し古い論文ですが、基礎的なことから丁寧に解説されています。

CITESの誕生と目的
生息地の破壊は生物多様性の減少の主な原因ですが、2番目は野生動植物の取引が原因です。野生生物の取引の規制は、1963年のICUN(国際自然保護連合)に承認された決議草案により生まれました。CITESのテキストは、1973年に約80か国により承認され、1975年の7月に発効しました。CITESはUNEP(国連環境計画)を通じて国連の傘下にあります。現在(2007年)、170か国以上がCITESの加盟国になっています。
CITESは生息地での生存に対する深刻な脅威となる、あるいは将来に取引される可能性のある種の取引を管理・規制することを目的としています。


CITESの骨格
CITESは国際条約であり、締結国は管理当局と科学当局を任命する必要があります。管理当局は政府の部門であり、条約の規定を実行しCITESの許可を発行する責任があります。CITESの事務局はスイスのジュネーブに本拠があり、条約の実施を支援します。
科学当局はCITES許可する申請について管理当局に科学的な助言をします。また、植物の輸出、または輸入が野生の生物に有害であるかを管理当局に助言します。CITES締結国会議(CoP)の会合は、2〜3年ごとに開催され、締結国が附属書を修正し、政策の問題について議論します。採決は投票により行われ、各国政府に1票の投票権があります。非政府組織もCoPに参加出来ますが、投票権はありません。

附属書
CITESは脅威のレベルに応じ、3種類の附属書を発行しています。CITES附属書には、約5000種類の動物と25000種類以上の植物が含まれています。
附属書Iは、絶滅の危機に瀕しており、その取引が絶滅につながる種です。野生個体の取引は禁止されていますが、人工繁殖個体は適切な承認を条件に許可されています。
附属書IIは、取引が制御されず継続した場合、絶滅する可能性がある種です。附属書IIには、絶滅の危機に瀕していないかも知れないが、判別が困難な種も含まれています。ほとんどの野生植物は附属書IIに含まれ、その取引には許可が必要です。
附属書IIIは、各国により保護され、CITESの締結国から協力を求められている種です。

CITESの及ぶ範囲
CITESは植物そのものだけではなく、植物の一部や、植物から作られた製品の取引も管理の対象です。また、植物標本などの科学資料も含まれます。
各国は自国の貿易に関する年次報告書を作成しなくてはなりません。問題が発生した場合、CITES常任委員会が制裁を行う可能性があり、多くの場合は是正措置が行なわれるまで貿易禁止の対象となります。

サボテンと多肉植物
昔からサボテンや多肉植物は栽培されてきましたが、第二次世界大戦後は福祉と輸送の改善のため、その栽培と取引は急増しました。
野生植物に対する高い需要は、野生の個体群に非常に高い圧力をもたらし、一部の分類群は1970年代の終わりまでに絶滅しました。

サボテン科 Cactaceae
サボテンはアメリカ大陸に固有で、リプサリスなどの着生種の一部はマダガスカルやスリランカに自生します。サボテン科は祖先型のペレスキアから、アリオカルプス、メロカクタスまで非常に幅広い形態を持ちます。直径はブロスフェルディアの数センチメートルから、エキノカクタスの1メートル以上まで、高さはカーネギアの数メートルまで様々です。
CITESが発効された時、サボテン科はすべて附属書IIに記載され、一部は附属書Iに記載されました。附属書Iには約90種が含まれます。


②ユーフォルビア属 Euphorbia

ユーフォルビア属には2000種類以上が含まれ、世界中に分布しています。一年草から木本、多肉植物まで様々な形態を持ちます。最も有名なユーフォルビアは、ポインセチア(Euphorbia pulcherrima)です。
ほとんどの多肉質のユーフォルビアは緑色の茎を持ち、高さは数センチメートルから高さ4メートルを超えるものまで様々です。通常、葉は短命で、トゲを持つものもあります。多肉質なユーフォルビアは、アメリカ大陸でサボテンが担う役割をアフリカで果たしています。多肉質なユーフォルビア約700種は附属書IIに記載され、10種類のマダガスカルの矮性種が附属書Iに記載されています。

③アロエ属  Aloe

アロエ属には500種以上が含まれ、アフリカ南部とアフリカ東部、マダガスカルに集中しています。
22種類のアロエが附属書Iに記載され、Aloe vera以外のアロエは附属書IIに記載されています。Aloe veraはCITESの対象とならない唯一のアロエで、医薬品や化粧品産業に供給するために世界中で栽培されています。1994年のCoPでAloe veraは野生個体が存在しないとされ、CITESから除外されました。

④パキポディウム属 Pachypodium

パキポディウム属は附属書IIに記載され、3種類は附属書Iに記載されています。附属書Iに記載された種はマダガスカル原産で、その希少性と貿易需要のため1990年代にリストアップされました。

⑤ディディエレア科 Didiereaceae

ディディエレア科はAlluaudia、Alluaudiopsis、Decarya、Didiereaからなる多肉植物です。マダガスカル南部と南西部の乾燥したトゲのある森林の重要な構成員です。ディディエレア科植物は伐採により生息地は脅かされています。園芸取引の需要は1980年代にピークを迎え、その後は一般化しました。ディディエレア科のすべては附属書IIに記載されています。

⑥フォウクエリア属 Fouquieria

フォウクエリア属には11種類が含まれ、メキシコと米国南西部に限定的に分布します。
附属書IにはF. fasciculataとF. purpusiiが記載され、F. columnarisなど3種類は附属書IIに記載されています。

⑦アナカンプセロスとアボニア
     Anacampseros & Avonia
アナカンプセロスとアボニア(かつてはアナカンプセロスに含まれていた)には20種類以上が含まれ、その大部分はアフリカ原産です。すべての種は附属書IIに記載されています。
アフリカ原産種は園芸的に価値が高く、コレクターは脅威です。しかし、現在のCITESの貿易データでは、取引はほとんどされていないことになっていますが、違法取引の報告はあります。

⑧Welwitschia mirabilis

ウェルウィッチアは霧などの湿気で生存する最大1500年に及ぶ長寿命の固有種です。以前は附属書Iに記載されていましたが、生息数はそれほど珍しくはなく、十分に保護されていることから、附属書IIに下げられました。種子を除いて野生個体が取引される可能性は低いと考えられます。アンゴラとナミビアの原産です。

⑨アガヴェ Agave

リュウゼツラン属には200種類以上が含まれますが、CITESで規制されているのは2種類だけです。附属書IにはA. parvifloraが、附属書IIにはA. victoria-reginaeが記載されています。これらの種類が国際取引される可能性はあまりありません。

⑩パイナップル科 Bromeliaceae
いわゆるアナナスとかブロメリアの仲間ですが、これらを多肉植物と考える人もいます。熱帯アメリカに300種類以上あり、着生植物でエアプラントと呼ばれています。原産地では電線などにも着生し一般的です。これらのうち、7種類は附属書IIに記載されています。グアテマラは主要な生産・輸出国です。アナナスの貿易は持続可能と考えられて来ましたが、Tillandsia xerographicaの栽培品とされるものが、CITESの人工繁殖の定義に当てはまるのか疑問視されています。

人工繁殖の免除
CITESの利点の1つは、多くの植物の人工繁殖を促進することです。人工繁殖は野生個体への圧を取り除き、野生植物を採取する必要をなくし、安価で高品質で病気のない植物を提供出来ます。このことから、締結国はCITESの管理からいくつかの種類を免除しました。サボテンの栽培品種を始め、ユーフォルビアの3種、蘭の栽培品種が含まれます。
CITESの人工繁殖の定義は、管理された環境下での栽培品を指します。野生個体を採取してきて栽培したものは当てはまりません。栽培品はCITESの許可により確立したものでなくてはなりません。違法採取された野生個体から種子をとり、その種子を実生してできた個体は人工繁殖したものとは見なされません。人工繁殖をするためには野生個体を採取する必要が生じますが、これもCITESの許可により実施されるべきです。


以上が論文の簡単な要約です。
しかし、読んでいて思うのは、内容があまりに理想主義過ぎるということです。そうであるべきであるというのは分かりますが、実際にそうであるかはまた別の問題です。CITESは万能ではありません。明日はそんなCITESの現実的な話についてご紹介したいと思います。残念ながら多肉植物ではありませんが、貴重な植物の宝庫であるマダガスカルも関係する樹木の輸出に関する話題です。CITESのこれからを占う重要な論文です。ぜひ、御一読のほどをお願いいただけますと嬉しく思います。


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最近、サボテンの受粉についての論文をいくつかご紹介してきました。花は受粉のための器官なのですから、花の受粉は植物にとっても重要です。しかし、受粉し種子が出来ても、そのままでは意味がありません。種子は適切に散布される必要があります。種子の散布は、甘い果実を動物に食べてもらい、種子が糞と共にあちこちに散布されるという方法が一般的です。では、サボテンの種子の散布はどうなっているのでしょうか?
本日はチリの固有種であるEulychnia acidaの種子散布について調査したRocio A. Caresらの2018年の論文、『Frugivory and seed dispersal in the endemic cactus Eulychnia acida: extending the anachronism hypothesis to the Chilean Mediterranean ecosystem』をご紹介します。その前に、論文中に出て来る「時代錯誤仮説」について説明しましょう。その植物の適正な種子散布者が存在しないことがあり、それは種子散布者がすでに絶滅し存在しないからだと考えられます。Janzen & Martin(1982)は、新たに導入された外来の大型草食動物が、絶滅した本来の種子散布者の代わりをするのではないかという説を唱えました。これを時代錯誤仮説と呼びます。
有名な例では南米原産のホウガンノキがあります。ホウガンノキの巨大で著しく硬い果実を割ることが出来る動物は存在しません。かつて存在したゾウなどの巨大動物により種子が散布されていた可能性があります。
著者らはEulychnia acidaの種子散布について、時代錯誤仮説が当てはまるのではないかと考えたようです。時代錯誤仮説は熱帯地方を想定していますが、チリの地中海性気候の生態系にも適応出来るでしょうか?

種子の発芽には果肉の除去が必要です。これは果肉に含まれるアブシジン酸が種子の発芽を抑制するからです。ですから、動物に果実が食べられて、種子が散布される必要があります。そのため、本来の種子散布者が絶滅した場合、種子が出来ても発芽せず、いずれ絶滅する可能性があります。

Eulychnia acidaは、チリの北向きの斜面に生える円柱状のサボテンです。果実は黄緑色で直径5〜6cmになり、小さな鱗片で覆われています。果実は白く甘酸っぱく、平均して1930±95.7個の小さな黒い種子を含みます。果実は熟すと枝から落ちますが、地面に落ちた果実を食べる動物は確認されていません。しかし、保護されていない地域では、外来種のヤギがE. acidaの果実を食べたことが観察されました。ヤギはE. acidaの失われた種子散布者の代わりとなるのでしょうか?

調査はチリ中北部の半乾燥地帯にあるLas Chinchillas国立保護区とその周辺で行われました。気候は半乾燥地中海型で、降雨は6〜8月に集中しています。エルニーニョの影響により、干ばつと多雨が繰り返されています。植生は、Flourensia thurifera、Bahia ambrosioides、Porlieria chilensisなどのトゲのある低木や、Trichocereus chiloensisやEulychnia acidaなどの円柱状のサボテン、Cumulopuntia sphaericaやEriosyce aurataなどの球状のサボテンで構成されていました。

野生下でE. acidaの果実を食べたのは、げっ歯類のデグー(Octodon degus)のみでした。
また、デグーとヤギ、グアナコ(草原性のアルパカやリャマの仲間)にE. acidaの果実を与え、糞の中の種子を取り出して発芽実験を行いました。
この摂食試験では、デグーは1つの果実を食べたものの、糞中の種子はわずか15個しかありませんでした。1つの果実の中には平均1930個の種子があることからしたら、デグーはE. acidaの種子散布者ではないことが分かります。種子はほとんどが消化されてしまったようです。
ヤギとグアナコは、糞中におそらくすべての種子が見つかりました。ヤギの糞中から取り出した種子は60%の高い発芽率を示しました。対照的にグアナコの糞から取り出した種子は13%しか発芽しませんでした。
ちなみに、保護区の内外でE. acidaの数を調査したところ、保護区内は2.15ヘクタールで30の若い個体と186の大人の個体があり、保護区外では2.11ヘクタールで104の若い個体と254の大人の個体がありました。つまり、保護区外の方が若い個体が多く、種子の散布が行われているのです。著者らは保護区外にはヤギがいるためである可能性があるとしています。
また、E. acidaの果実は2種類の鳥につつかれましたが、種子を散布するほど食べられてはいませんでした。サボテンも種類によってはその果実を鳥が好んで食べますが、E. acidaの果実は糖分がなく酸味があるため、一般的に鳥には好まれないことが考えられます。
著者らはヤギがE. acidaの種子散布者として有効であると考えます。一般的にヤギは過放牧により砂漠化を進行させますが、E. acidaの増加に寄与した可能性があるのです。

著者らはE. acidaの本来の種子散布者はグアナコである可能性があるとしています。南米では更新世に大型哺乳類のほとんどが絶滅しましたが、グアナコが唯一残った大型哺乳類です。しかし、グアナコは16世紀にスペイン人が到着してからは急激に減少し、牧畜により生息地を追い出され、現在ではアンデス山脈の標高の高い地域にのみ分布します。現在の保護区にはグアナコは存在しないため、過去数世紀はヤギがE. acidaの種子を散布していたと考えられます。しかも、グアナコと異なり、ヤギによる種子散布は発芽率を下げないため、非常に重要な役目を果たしたとしています。これらのことにより、時代錯誤仮説をチリの地中海気候の生態系にも適応出来ることを示唆します。

以上が論文の簡単な要約です。
もはやその種子を散布する本来の動物がいないEulychnia acidaですが、若い個体が沢山育っていることから、ヤギが種子を散布している可能性が大きいとしています。本来の種子散布者がいないのに、外来種が代わりを務めているのです。グアナコの減少はE. acidaの絶滅へのカウントダウンだったわけですから、絶滅の可能性を減じたとはいえ、多くの植物には有害なヤギが必要というのも皮肉な話です。
そう言えば、マダガスカル島固有種のUncarinaも、そのトゲだらけの果実は絶滅した巨鳥エピオルニスが想定されています。つまり、Uncarinaの種子散布者は存在しないのです。Uncarinaはトゲでエピオルニスの足に絡みついて、歩くごとに果実は踏みつけられて、種子が少しずつこぼれるとされています。現在、野生のUncarinaは生長した個体ばかりで実生が見られません。ただし、牧場の牛の通り道にはUncarinaの苗が沢山生えています。これは牛がエピオルニスの代わりに種子を散布しているようです。これも、時代錯誤仮説の実証例だったわけですね。
時代錯誤仮説を私は知りませんでしたが、調べたら意外とそのような植物はあるのでしょう。ただ、グアナコの人為的な減少は悲しいことです。調べられていないだけで、このような関係が破綻し絶滅へ向かう植物は沢山あるのかも知れません。調査される前に絶滅した植物もあるのでしょうから、科学的な調査と適切な保全が活発に行なわれることを願います。


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サボテンの受粉は、様々な動物により行われてます。夜間に白い花を咲かせる柱サボテンは、種類によりますがコウモリや蛾により受粉します。逆に日中に咲く赤系統の細長い花にはハチドリが訪れます。ところで、花の受粉と言えばミツバチですが、サボテンではどうなのでしょうか? 近年では今までほどミツバチは重要ではない可能性が指摘されています。しかし私自身、サボテンとミツバチの関係についてよく知らないことに気が付きました。何か良い論文はないか調べたところ、M. E. Mcintoshの2005年の論文、『Pollination of two species of Ferocactus: interaction between cactus-specialist bees and their host plants』が見つかりました。内容は、2種類のFerocactusの花を訪れるミツバチを調査したものです。この論文で調査されたFerocactus cylindraceusとFerocactus wislizeniの2種類はミツバチにより受粉することが前提として、研究がスタートしています。では、何を調べたのかと言えば、スペシャリストとジェネラリストについてです。花粉媒介者は、ある植物の花に特化したスペシャリストと、様々な植物の花を訪れるジェネラリストに分けられます。スペシャリストが来るからと言っても、必ずしもスペシャリストが受粉に適しているとは限りません。その植物と1対1の関係を結んでいるのならばまだしも、タイヨウチョウのように花の蜜に特化したスペシャリストだと、植物の種類によっては単なる蜜泥棒となります。

さて、著者らはFerocactus cylindraceusとFerocactus wislizeniの花を観察し、花への訪問者とその花の結実と種子を確認しました。アリゾナ州のツーソンの北西の尾根でF. cylindraceusを、ツーソンの南40kmのサンタリタ実験場でF. wislizeniを観察しました。F. cylindraceusは4月下旬から9月に開花し、F. wislizeniは7月中旬から10月に開花しました。どちらも自家不和合性で、自身の花粉での受粉は約2%に過ぎません。
結果として、2種類のFerocactusはサボテン専門のミツバチである「サボテンミツバチ」の訪問を受けていることが明らかとなりました。特に、F. cylindraceusは、ほぼDiadasia rinconisというサボテンミツバチしか訪問せず、その他の少数の訪問者もSvastra duplocinctaやAshmeadiella opuntiaeという、異なる種類のサボテンミツバチでした。
対するF. wislizeniは、上記の3種類のサボテンミツバチにより65〜80%受粉しました。3種類のミツバチの割合は毎年変動がありました。
また、外来種のセイヨウミツバチやハエ、蝶の訪問では受粉しませんでした。
ここで、花粉媒介者の質を見てみます。
F. wislizeniには3種類のサボテンミツバチが訪問しますが、花への訪問による結実には違いがありました。D. rinconisの訪問は約33%に過ぎないにも関わらず、種子生産の79%を占めていました。

以上が論文の簡単な要約です。
2種類のフェロカクタスは、サボテンに特化したスペシャリストにより受粉することが明らかとなりました。しかも、Diadasia rinconisという特定種に依存しています。しかし、スペシャリストとの関係は大変興味深いものです。スペシャリストが受粉に有利であるならば、サボテンも受粉率が上がり増えやすくなります。サボテンの個体数が増えれば、サボテンミツバチにも有利な環境となります。このような緩い共生関係は、気付かないだけで自然界では幾重にも張り巡らされているのでしょう。
そう言えば、セイヨウミツバチが受粉に関与しないとされています。近年、セイヨウミツバチの受粉について過大評価であったとされていますが、ここでも確認出来ます。そもそも、種類によるとは思いますが、野生のサボテンにはあまりセイヨウミツバチは訪れないという観察は昔からされています。ただし、著者らは、サボテンミツバチの毛深さが花粉媒介者として重要かも知れないと言います。ですから、アリゾナ州のツーソンではサボテンミツバチによるというだけで、マルハナバチなどが生息している地域では異なるかも知れません。まあ、マルハナバチがサボテンの花を積極的に訪れるならばの話ですが。


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アロエは高さ5mを越える巨大なものから、株全体が数センチメートルしかない小型なものまで、そのサイズは様々です。しかし、その種類は大型種は少なく小型種は多くあり多様化していることがうかがえます。では、小型であることが進化を促進したのでしょうか? 本日はそんなアロエのサイズと多様性について調査したFlorian C. Boucherらの2020年の論文、『Diversification rate vs. diversification density: Decoupled consequence of plant height for diversification of Alooideae in time and space』をご紹介します。

多様化率と多様化密度
生物多様性はその空間分布では非常に不均一です。生物の種類はホットスポットと呼ばれる非常に生物の多様性が高い地域に集中し、それ以外では比較的少ないと言われます。このホットスポットの起源に関する進化的説明は、伝統的に種の多様化の時間的要素を強調してきました。つまり、多様化とは単位時間あたりの種分化率の上昇や、絶滅率の低下により表されて来ました。しかし、南アフリカのケープ地域の一部では、種が長期間に渡り蓄積し、多様化は適度な速さであるにも関わらず、種は非常に豊富です。ホットスポットの特徴は多様化率の上昇だけではなく、特定地域の種の蓄積と増加に関連するかも知れません。ですから、この論文では時間による多様化と空間による多様化の類似点と違いを探ります。一般的に単位時間あたりの多様化を多様化率と呼びますが、新たに単位面積あたりの多様化を多様化密度と呼ぶことにします。
近年、サイズ、特に植物の背の高さが多様化に与える影響が議論されており、一般的に小型の植物は種分化率が高く絶滅率も低いとされています。これらは単位時間あたりの種分化として議論されますが、単位面積あたりの種分化にもよく当てはまります。小型の植物は分散距離が短いため、大型の植物より狭い面積で地理的隔離が起きやすく、より高い種分化密度となる可能性があります。


アロエ類とは?
論文ではアロエ類を用いて、植物のサイズと多様化密度について研究しました。ここでいうアロエ類とは、Aloe属とそこから分離したAloidendron属、Aloiampelos属、Aristaloe属、Gonialoe属、Kumara属、さらにHaworthia属とそこから分離したHaworthiopsis属、Tulista属、加えてGasteria属とAstroloba属が含まれます。
著者らはアロエ類のうち204種の遺伝子を解析し、系統関係を類推しました。遺伝子を調べた種のサイズを調べ、そのサイズにより単位面積あたりの種が蓄積する傾向があるかどうか、つまりは草丈が多様化密度と相関するかをテストしました。
アロエ類の草丈は小型のものが多く、より小型の種へ進化する傾向があります。計算上のアロエ類の最適な草丈は8cmでした。なぜ、小型化するのか、その理由の推測は困難です。一般的に植物の背の高さは、太陽光をめぐる植物同士の競争に関連します。しかし、乾燥地においては太陽光をめぐる競争は最小限か、まったくない可能性があります。さらに、背の高い植物、特に樹木は、干ばつのストレスを受けやすいとされます。小型種はくぼみなどに生えることにより、ストレスを緩和出来るかも知れません。多くのアロエ類は植物同士の競争や草食動物から、あるいは火災から逃れるために、岩の割れ目などでも育ちます。
結論としては、アロエ類の小型種が優勢な傾向は、小型化する系統の多様化が加速されたのではなく、より小型化する方向へ進化する傾向の結果であるということです。


多様化率は上昇しない
草丈が多様化率に与える影響を2種類の検定により解析しましたが、アロエ類は草丈の低下とともに多様化率を高めるということの証拠を示しませんでした。この結果からは、草丈以外の要因も関係する可能性を排除出来ません。著者らは、調査した204種類が不十分である可能性も指摘しています。
アロエ類の多様化の歴史は2つの代表例があります。1つは、小型種を多く含むHaworthia属におこり、草丈の低下が多様化の加速に関連していました。しかし、最も劇的な多様化率の上昇は、Aloe属のどちらかといえば草丈の高いグループでおきました。その理由は明らかではありませんが、Aloe属はアロエ類の中で唯一アフリカ南部以外に分散し、マダガスカルやアラビア半島にまで分布します。広範囲の分散が草丈の低下よりも重要な要素として多様化率を刺激したと考えられます。


多様化密度は上昇する
アロエ類の草丈は多様化率に影響しませんが、多様化密度はアロエ類の草丈と関連することが分かりました。多様化密度の上昇は、地域全体の遺伝子流動が容易に阻害されるため、生息地の局所的な適応がおこります。小型であることで、生息数が多く密度が高くなり、種分化しやすくなります。
南アフリカは地球上で最も植物が多様化した地域の1つで、フィンボス、草原、砂漠、森林を含みます。ケープのフィンボスはホットスポットであると認識されています。また、カルー植物相(冬季降雨砂漠植物相)は、フィンボスほどの種類はありませんが、単位面積あたりの種とその固有性が異常に高くなっています。そして、カルー植物相には多くの小型多肉植物が生息しています。このカルー植物相の単位面積あたりの多様性は、まさにアロエ類の草丈と多様化密度の関係を物語ります。
著者らはアロエ類だけではなく、他の植物でも調査が必要であるとしています。例えば、Cotyledon、Crassula、Pelargonium、ハマミズナ科(メセン類)なども、多様化密度の研究に適しています。

以上が論文の簡単な要約です。
記事を書いている私自身、妙に分かりにくい論文だとは思いました。多様化率というのは単位時間あたりの多様化と言いますが、よく分かりませんね。アロエ類の遺伝子を解析すると、その変異の度合いから分岐年代が分かります。つまり、調査した204種類のアロエ類が、いつの時代にどの種が種分化したかが計算可能なのです。ですから、今回の論文ではアロエ類の多様化は、短い時間に急激に進化した訳ではないということです。むしろ、アロエ類は種が長く保存され、小型種は絶滅率が低下しているというのです。
まあ、なんのこっちや分からんという方も多いかも知れませんが、申し訳ないのでが私自身これ以上は上手く説明出来ません。ひたすらにややこしい論文を直接読んでいただくしかありませんね。


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ここのところ、異常な暑さが続いており、多肉植物も試練の時を迎えています。我が家は簡素な遮光しかしていませんから、多肉植物はやや日照過剰気味かも知れません。そんな猛暑の中の多肉植物の様子を見てみましょう。

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Pachypodium densiflorum
デンシフロルムは丈夫で花はよく咲きますが、花は割と地味なほうです。デンシフロルムは地域によりかなりの個体差があり、花のサイズや色に変異があります。遺伝的には複数種を含んでいる可能性もあるようです。


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Gonialoe sladeniana
この暑いさなかに開花しました。スラデニアナの花は淡い色合いです。濃いオレンジ色の花が咲くヴァリエガタとは印象が大きく異なります。このほとんど開かない花に来る花粉媒介者は何でしょうか? 花色からするとタイヨウチョウではないような気もしますが、どうでしょうか?


230715094258258
Gasteria glauca
最近、来たばかりのグラウカです。ホームセンターで痩せていましたが、植え替えてから水やりしたら少しふっくらしました。


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Euphorbia sp. nova somalia hordio
謎の未記載種ですが、非常に美しい新しい枝が出て来ました。


230715094314185
Stephania pierrei
今年は初めて開花もしましたが、暑い中でも中々元気です。あまり強光にも乾燥に強い感じはしませんが。


230715094334568
Aloe bowiea
ボウィエアも今年2本目の花茎を伸ばし始めました。強光には弱いものの暑さは平気みたいですね。


230715094429842
Zamia integrifolia
今年は新しい葉が2枚出ました。小さな苗ですが徐々に充実してきています。

230718174836569
Cycas nongnoochiae
珍しく実生しました。根が出てから3ヶ月近く経ちますが、ようやく葉が展開しました。今年はこの1枚だけでしょうね。しかし、しなやかで美しい葉です。


230718170930537
Euphorbia gorgonis
ゴルゴニスは強光のストレスで真っ赤ですが、花芽が出て来ました。ゴルゴニスは強光下で育てて枝を短くするのが好みです。


230718170432901
Agave multifilifera
少しフィラメントが出てようやく特徴が出て来ました。室内から出した時にひどく日焼けしましたが、すぐに回復しました。アガヴェは詳しくありませんが、水やりは多めの方が調子が良さそうです。


230718170453993
Euphorbia sapinii
サピニィイはようやく葉が出て来ました。去年は葉が3枚でしたが、今年は何枚出るでしょうか?


230718170522063
Euphorbia groenewaldii × Euphorbia venefica
この暑いさなかに開花中です。


230718170504007
Euphorbia opuntioides
成長点が潰れてしまい、生長が2年ほど止まっていましたが、ようやく動き始めました。opuntioides=「ウチワサボテンのような」ですから、本来は平たい形に育ちますが、まだ特徴が出ていません。


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Euphorbia globosa
グロボサですが、一年中花が咲いています。
230718170641921~2
よく見ると、花茎の先にできた子株から花が咲いています。面白いですね。

230718170544311
Euphorbia iharanae
イハラナエは非常に調子がよく、美しい葉が沢山出ています。よく似たE. neohumbertiiは強光に弱いので対照的です。


230718170410857
Euphorbia saundersii
いわゆる白馬城ですが、パキポディウムの中では葉の動きが良いほうです。


230718170718943
Pachypodium brevicaule
今年はパキポディウム苗の動きが悪く心配ですが、ブレヴィカウレは元気です。

230718170722004
Euphorbia windsorii
ウィンドゥソリイはまだ去年の葉か残っていましたが、ようやく新しい葉が出て来ました。一安心。


という訳で、この猛暑の中でも多肉植物は割と元気です。しかし、暑さより陽光の強さがよろしくないみたいで、やや色合いが怪しいものもあります。最近はわが街は37度だとか38度とだとか、中々の灼熱ぶりです。これからまだ暑くなるのでしょうから、今年は40度を超えかねません。遮光ネットが必要ですかね…


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Aloe feroxは高さ5mに達する巨大アロエです。開花時には複数本の花茎を伸ばし、大量の花をつけます。一般的に巨大アロエの花の受粉は日和見鳥により行なわれるとされています。日和見鳥とは普段は花の蜜を専門としていない鳥のことで、花の開花時期だけ蜜を吸いに来ます。アフリカにはタイヨウチョウという花の蜜を専門とする鳥がいますが、タイヨウチョウは巨大アロエを訪れても花粉や柱頭に触れないで上手く蜜だけを掠め盗ります。ですから、タイヨウチョウは巨大アロエの受粉には関与していないのです。むしろ、普段は花の蜜を吸わない鳥は、採蜜行動が洗練されていないので花粉だらけになり花粉を運びますから、日和見鳥は巨大アロエの受粉には重要です。
しかし、一般的に花の受粉にはミツバチが重要な働きをしているとされます。それはミツバチ自体の数が多く、そのため花を訪れる数が非常に多いからです。巨大アロエにもミツバチは非常に頻繁に訪れます。巨大アロエの受粉にミツバチはどの程度貢献しているのでしょうか? 本日はそんな巨大アロエの1種であるAloe feroxの受粉にミツバチが寄与するかを調査したCarolina Dillerらの2022年の論文、『Why honeybees are poor pollinators of a mass - flowering Plant: Experimental support for the low pollen quality hypothesis』をご紹介します。

著者らはミツバチの花粉媒介者としての能力を測るために、まずミツバチが運搬する花粉の量を測定しました。その結果、花粉の運搬量はミツバチより日和見鳥のほうが多く、一度に大量の花粉を運びます。しかし、ミツバチは非常に頻繁に花を訪れるため、運ばれる花粉の総量はそれほど劣ってはいませんでした。この事実からすると、ミツバチはA. feroxの重要な花粉媒介者に思えます。しかし、一般的に巨大アロエの受粉にはミツバチの寄与は小さいとされています。それはなぜでしょうか?
A. feroxは自家不和合性で自分の花粉では受粉せず、他個体の花粉により受粉するとされます。著者らはこれはミツバチが同じ花を訪れるため自家不和合性により受粉しないのではないかという仮説を立てました。この仮説を検証するためには、柱頭についた花粉を見分ける必要があります。ただし、花の柱頭についた花粉が自家か他家かを直接見分ける手段はありません。基本的に種子が出来たかを見て間接的に判断されます。直接らは、ミツバチが訪れた花が受粉したかに加え、花を訪れたミツバチを捕獲し、花粉がついていない花に人工的に受粉させました。この時、半分は自家受粉させ、残りの半分は他家受粉させました。

結果は、ミツバチが訪れた花の受粉率は非常に低いものでした。そして、自家不和合性の試験でも、やはりA. feroxは自家受粉しないことが明らかとなりました。

著者らは、受粉に寄与しないミツバチが花に頻繁に訪れることにより、植物は蜜や花粉を盗まれて受粉を阻害されている可能性を指摘します。
ミツバチは様々な栽培果物の受粉に利用されて来ましたが、近年ではミツバチの花粉媒介の効率に疑問を生じさせています。ミツバチは同じリンゴの木を訪れることが多いという報告が50年以上前の1966年(Free)になされていましたが、まったく重要視されてきませんでした。しかし、近年では農業においても自然環境においても、ミツバチは以前に考えれてきた程には重要ではないことを示す証拠が増えて来ています。
セイヨウミツバチ(Apis mellifera)の本来の分布はヨーロッパ、アフリカ、中東ですが、養蜂のために世界中で飼育されています。ミツバチが蜜泥棒であるならば、本来は分布しない地域で飼育されるセイヨウミツバチが、自然環境中の植物の受粉に悪影響を及ぼす可能性が懸念されます。

以上が論文の簡単な要約です。
驚くべきことに、巨大アロエはミツバチが受粉にあまり寄与しないというものでした。さらに、果樹でもミツバチの受粉に疑問符がついていることが分かります。しかし、これらの結果は、1個体の植物が沢山の花を咲かせる場合の話だと私は受け取りました。というのも、ミツバチは花の場所を覚えていて採蜜した場所に再び帰ってきますが、これは必ず採蜜出来る可能性が高いからです。新たな花を探すより、沢山の花が咲いている場所に行けば、花を探すための時間と労力を省略出来ますから、最適化された行動と言えます。では、野原に一面に生える草の花ならば、どうでしょうか? この場合もミツバチは同じ場所を訪れるはずですが、草花は1個体で大量の花を果樹ほどはつけませんから、ミツバチは同じ花ばかり訪れることはないはずです。ミツバチは周囲の花を順繰りに訪れるでしょうから、受粉への寄与は非常に高そうです。
ただし、この場合においても、野生のミツバチではない養蜂によるセイヨウミツバチは環境に悪影響があるかも知れません。私が思うに養蜂されるミツバチが沢山いる場合、花粉や蜜を競合する野生のミツバチなどの他の昆虫に対する悪影響は考えなければならないでしょう。当たり前のように利用されているセイヨウミツバチの利用も、その効果や環境への影響について、改めて調査し考え直す必要があるのかも知れません。


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菊水(Strombocactus disciformis)は生長が遅く、どちらかといえば地味な渋いサボテンです。希少なサボテンですが、最近ではそれなりに実生苗が流通しそれほど珍しくないように思えます。しかし、国際的にはどうやら違法取引が蔓延しているようです。サボテンは違法採取や違法取引は非常に蔓延していると言われますが、摘発されたというニュース以外ではその実態に触れることは中々ありません。サボテンの違法取引は現在どうなっているのでしょうか? 今回は菊水を例にサボテンの違法取引の一端について調査したVania R. Olmis-Lau & Maria C. Mandujanoの2016年論文、『An open door for illegal trade: online sales of Strombocactus disciformis (Cactaceae)』をご紹介します。

菊水
菊水 Strombocactus disciformis

Strombocactus disciformisはIUCN(国際自然保護連合)により脆弱種として指定されているメキシコの固有種で、CITESの附属書Iに指定され国際取引が禁止されています。その自生地はわずか10箇所であり、過剰な違法採取により個体数が減少しています。メキシコのレッドリストにも絶滅危惧種とされ、種子の採取であっても許可が必要で、野生植物の商業取引は許可されていません。

近年の植物の取引はオンラインが主体となっており、簡単に世界中の植物を購入出来ます。インターネットの普及により行なわれる商取引は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引において重大な懸念事項となっています。
サボテンはCITESにより、Pereskia、Pereskiopsis、Quiabentia以外のサボテンは、附属書Iあるいは附属書IIに記載されており、国際取引には許可が必要です。附属書Iに記載されたサボテンは国際取引は禁止されており、人工繁殖した個体は取引可能です。しかし、その場合でも附属書II相当の扱いとなり、輸出許可が必要です。人工的に生産された雑種は証明書があれば取引でき、その雑種の種子や花なども取引可能です。しかし、附属書Iの種類の種子の取引にはCITESの許可が必要です。これは、メキシコから輸出されるすべてのサボテンの種子にも当てはまります。


著者らはスペイン語、英語、フランス語、ドイツ語でウェブサイト上のStrombocactusの販売について調査しました。結果としてストロンボカクタスの個体あるいは種子のいずれかを販売している32のオンラインストアを見つけました。そのうち、CITES認定苗床から入手し必要書類を提供すると述べているのは、Duben Kaktus、Seeds Cactus、B & T World Seeds、Kakteen-Haage、Uhlig-Kakteen、Mesa Gardenの6つだけでした。
5つのストアはCITESの文書は輸出に必要だが責任は負わないとしており、4つのストアはEU外に輸出しないのでCITESは免除されていると述べ、12のストアは植物あるいは種子による繁殖であると主張しています。
eBay、Amazon、Mercadolibreなどの大手オンラインストアやオークションサイトでは、24個体が見つかりましたが、eBayではCITES認定の植物を販売しているのはDuben Kaktusだけでした。
一部のオンラインストアではCITES文書が提供されており、その割合はドイツで17%、チェコ共和国では25%、フランスでは33%、イタリアでは50%でした。
種子はオンライン取引が盛んで、大抵は100粒未満ですが、一部のストアでは500〜1000粒の種子を販売していました。また、一部の民間ウェブサイトでは電子メールのやり取りにより、野生植物の種子の採取が公然と行なわれていました。

ほとんどのオンラインストアは、CITES文書なしで植物の国際取引を行っており、違法取引の可能性があります。eBayでは植物や種子の取引の禁止および制限品目のリストに基づき販売品目を報告するオプションがありますが、これは病害虫や雑草の蔓延を防ぐことを目的としています。この国際取引の方針は売り手が国際貿易法を認識することを期待し、法律が尊重されない場合は販売品目が削除される可能性があると警告してます。しかし、このような決まりはあるものの、現実には運用されていません。
これらのオンラインストアのほとんどは、CITESの附属書Iに記載されている他のサボテン(50種類近い)も販売されています。

以上が論文の簡単な要約です。
サボテンの売買も昔のようなカタログ販売ではなく、現在はウェブサイト上でのオンライン取引が主流です。しかし、そのインターネットの自由さが逆に違法取引の温床になっている様子が分かります。昨今のネット犯罪の蔓延とその摘発や監視の難しさは、様々なニュースで皆様もご存知のことと思います。中々こういったネット上の違法行為は決まりがあったとしても、運用する上では現実的には有効な規制は難しいでしょう。もし、このような状態が続くならば、今後国際的な大型オンラインストアでのサボテンの販売自体が禁止される可能性も出て来るでしょう。もし、そうなったとしても、電子メールなどによる個人取引に移行するだけかも知れません。しかし、いわゆる地下に潜った状態となり、一般的な多くの目に触れなくなるため、違法取引業者の旨味は減じるでしょう。
国際的な監視は重要ですが、監視を重くするということはその分だけ人と金がかかる訳ですから、簡単には解決しない問題です。著者らもこの問題は私たちが自問しなければならないと言うように、規制だけでは解決困難です。これは違法採取者や違法取引業者、オンラインストアだけの問題だけではなく、サボテン愛好家のモラルが問われているのだと私は感じましたが、皆様はどう思われたでしょうか?



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Euphorbia resiniferaはサボテンに似た多肉質なユーフォルビアで、多肉質なユーフォルビアでは珍しくアフリカ北西部に分布します。日本では「白角キリン」という名前もあります。このE. resiniferaはその樹液を薬としていたと言われています。かつて北アフリカに存在したNumidiaの王の従医であるEuphorbusがE. resiniferaを薬として使用したことから、Euphorbiaという名前がついたらしいのです。
さて、このE. resiniferaはその分布により表現型(姿形)に違い(=多形)があると言われています。本日はそのE. resiniferaの多形について調査したHassane Abd-dadaらの2023年の論文、『Phenotypeic diversity of population of an endemic Moroccan plant (Euphorbia resinifera O.Berg)』をご紹介します。

E. resiniferaはモロッコ原産のユーフォルビアで、高さ1mほどに育ち、枝が密につき直径0.5〜2mのマット状の茂みを作ります。そのため、土壌侵食を防ぐ働きがあるようです。また、小さな黄色い花はミツバチを引き寄せます。E. resiniferaの蜜は付加価値が高く、養蜂業が営まれ年間300トンの蜂蜜を生産しています。
しかし、近年では開発の影響によりE. resiniferaの数が減少しています。E. resiniferaはモロッコ固有種ですから、保護のために対策を講じる必要がありますが、まずはその多様性についての調査が不可欠です。著者らはE. resiniferaの表現型について調査しました。

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Euphorbia resinifera

2019年にモロッコに分布する12箇所のE. resiniferaが調査されました。様々な17部位の表現型が測定されました。例えば、トゲの長さは1.95mm〜3.88mm、ブッシュの直径は83〜196.6cm、果実は0.05〜0.17gなど、表現型に差がありました。
表現型に基づく分析により、E. resiniferaは3つのグループに分けられることが分かりました。ただし、特徴が近いものが分布が近いとは限りませんでした。調査地はいくつか山脈がありますが、山ごとに表現型が似ているということもなく、その違いは標高、降水量、気温に関係性がありませんでした。

以上が論文の簡単な要約です。
調査の結果は思わぬもので、これといった傾向がありませんでした。例えば日本は南北に長いため、同じ種類でも分布の最北端と最南端では、かなり表現型が異なることがあります。しかし、この場合はその中間はグラデーションのように特徴が移り変わります。また、気温や降水量により、表現型が局地的に変わることも観察されています。
しかし、不思議なことに、E.resiniferaでは様相が異なります。山頂から麓まで生えていない限り、基本的に好ましいある一定の範囲の標高に生えるため、山同士で植物は行き来が出来ません。つまり、
山は自然の障壁で、山ごとに特徴が異なったりもしますが、それもありません。大変不思議です。
ただ、もとより多様性が高く、様々なタイプが生えてくるだけかも知れません。つまり、様々な環境に適応するために、最初から多様になっているとしたらどうでしょうか? 例えば、乾いた環境でも様々なタイプの実生が生えますが、生き残るのは乾燥に強いものだけが生き残るという場合です。異なる環境では、その環境に最も適したものだけが生き残るのです。論文では環境と表現型の関係を否定していますが、表現型と環境適応は必ずしも関連があるとは限りません。最終的には遺伝子解析を行い、その結果と表現型と環境適応を照らし合わせて、総合的に理解する必要があるでしょう。


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Fouquieriaは米国とメキシコの乾燥地に生える砂漠植物です。Fouquieriaは一般的に水分を貯蔵する塊根や塊茎、多肉質な葉などを持ちません。一部の種類は塊茎を持ちますが、相当な大きさにならないと幹は太りませんし綺麗な壺型には育ちません。栽培されたFouquieriaは、枝を切り詰めて盆栽のように幹を太らせますが、これは自然な姿ではありません。水分を貯蔵する手段がないFouquieriaが乾燥地に生き残るための戦略は、乾季には葉を落として休眠し、雨が降れば急激に育つというものです。そのため、ほとんど生長が見られない年もあるようです。Fouquieriaは非常に長寿な植物と言われていますが、生長しない年があるのならば年輪が出来ておらず、Fouquieriaの正確な年齢が分からないかも知れません。という訳で、本日のお題はFouquieriaの幹の年輪は正確な年齢を表しているのか? という問題についてです。参考にするのは、Keith T. Killingbeckの2017年の論文、『Are growth rings accurate fingerprints of plant age in a stem-succulent, drought deciduous shurb growing in the Chihuahuan Desert?』です。

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Fouquieria splendens

米国とメキシコにあるチワワ砂漠とソノラ砂漠の象徴的な植物であるOcotillo(Fouquieria splendens)は2世紀以上の年齢に達する長寿命な低木と言われています。しかし、これまでに測定されたOcotilloは、最も古いものでも105歳にしかなりません。Ocotilloの年輪が正確な年齢を表しているのか分からないため、著者は調査を行いました。
温帯の植物は季節性の落葉をするため、1年に1つの年輪が出来ます。しかし、砂漠植物は雨が降らなければ生長せず、または雨が降れば1年に複数回生長することもあります。つまり、年輪が出来ない年、あるいは年輪が複数出来る年がある可能性もあります。
さて、調査はチワワ砂漠のNew Mexico州南部のJordana盆地Summerford山の麓で行われました。Ocotillo苗の枝の生長を記録し、年輪を数えました。

同い年のOcotilloでも生育が異なり、すべての枝の合計の長さは、最大の個体で1369cm、最小の個体で173cmでした。サイズは約8倍の差がありますが、年輪を数えるとまったく同じ本数でした。つまり、Ocotilloは生育の良し悪しでは年輪に違いはなく、1年に1本の年輪ができることが確認されました。これにより、Ocotilloの年齢を数えることが出来ます。

過去に計測された年輪は104歳でしたが、著者は107歳の年輪を計測しています。もっと古いであろう個体のサンプルもありましたが、残念ながら中央が抜けており年輪を正確に測定出来ませんでした。著者は非常に大量の枝を有する個体もいることから、より古い年齢のOcotilloが存在すると考えているそうです。

以上が論文の簡単な要約となります。
Ocotilloは温帯域の樹木と同様に、1年に1本の年輪を刻むことが分かりました。Fouquieriaは実際に育てていれば分かりますが、生長中であっても乾けば素早く葉を落とし休眠します。ですから、休眠中はまったく生長出来ません。また、葉を落として休眠してから雨が降れば、新しい葉が出て来て生長を開始します。おそらくは、野生でも葉を落としたり新しく葉を出したりを繰り返しているはずです。しかし、それでも年輪は増えたりはしないのです。通常は生長が止まったら新しい年輪が出来るような気がします。不思議ですね。さて、この研究により年輪が正確な年齢を表していることが明らかになりましたが、最も高齢なOcotilloは何歳かという謎はまだ未解明です。Ocotilloはいったい何歳まで生きるのでしょうか? 多肉植物はまだまだ謎だらけです。


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アポロカクタスは紐サボテンなどと呼ばれる細長く育つサボテンで、日本では金紐(Aporocactus flagelliformis)が有名です。どうも、メキシコの雲霧林に生える植物のようです。一般的にアポロカクタスは5種類、あるいは2種類あるとされています。いったいどちらの考え方が正しいのでしょうか? 詳しく研究した論文を見つけましたから、ご紹介します。それは、Isaura Rosas-Reinholdらの2021年の論文、『Systematic study and niche differentiation of the genus Aporocactus (Hylocereeae, Cactoideae, Cactaceae)』です。

アポロカクタスは雲霧林のマツ・コナラ林で、木に着生して垂れ下がって育ちます。アポロカクタス属はLemaireにより1860年に命名されました。1メートル以上のぶら下がる、円筒形の茎とピンク色の花を持つ種類のサボテンをグループ化しアポロカクタス属としました。LemaireはCactus属だった3種類をアポロカクタス属とし、A. flagelliformis、A. baumannii、A. colubrinusからなるものでした。また、Cactus leptophisをA. flagelliformisの異名としました。しかし、Lemaireは後にA. baumanniiとA. colubrinusをCleistocactus属に移しました。さらに、1868年にLemaireはCereus flagriformisをアポロカクタス属に移しました。
1920年にBritton & RoseはLemaire(1960, 1961年)により描かれたアポロカクタス属を認識し、アポロカクタスをA.fragelliformis、A. leptophis、A. flagriformis、A. martianus、A. conzattiiの5種類としました。同様にBravo-Hollis(1978年)もこの考え方を支持しました。
しかし、1986年に国際多肉植物研究機構(IOS)のHunt & Taylorは、アポロカクタス属は2種類からなると指摘しました。1989年にHuntは「北部の種は紫がかるピンク色の花を咲かせ、南部の種はほぼ規則的な緋色の花とやや硬い茎を持つ。前者がA. fragelliformis、後者がA. martianusに相当する。」と主張しました。他の3種類は異名とされました。
問題はこれらは形態学的な特徴に基づいていますが、実際の特徴は連続的であるため種の分離は困難ということです。

そこで著者はアポロカクタス属とされる5種類の遺伝子を複数個体で解析しました。すると、アポロカクタス属は2つのグループに分けられることが分かりました。
1つのグループは、A. martianusとA. conzattiiからなり、3個体のA. conzattiiはまとまりがありました。しかし、A. conzattiiはA. martianusの一部に見えます。A. martianusの産地により特殊化したタイプがA. conzattiiなのかも知れません。
もう1つは、残りのA. fragelliformis、A. flagriformis、A. leptophisからなります。ここでは、A. fragelliformis、A. flagriformis、A. leptophisは区別出来ません。2個体のA. leptophisはまとまりはなく、A. flagriformisもA. leptophisも、A. fragelliformisに完全に埋没しています。
要するに、アポロカクタス属はA. martianusとA. fragelliformisの2種類からなり、他の3種類は異名となりました。1989年のHuntの指摘は正しかったと言えます。

2種類の特徴を見てみると、A. fragelliformisの花は4〜7cmでピンク色からマゼンダ、A. martianusの花は7〜12cmで淡赤色から深赤色です。また、A. conzatiiとされてきた個体には固有の特徴はないということです。
また、A. fragelliformisはSierra Madre Oriental、Queretaro、Guanajuato、Hidalgo、Pueblo北部、Veracruz中央部に分布します。A. martianusはVeracruz中央部、Pueblo南部、Oaxaca州にかけて、主にSierra Madre del Surに分布します。アポロカクタスの2種類の分布限界は、Sierra Madre OrientalとSierra Madre d el SurがメキシコのTransvolcanic Belt (メキシコ横断火山帯)と交差するVeracruz州中央部に収束します。

論文ではアポロカクタス属の近縁種との関係性も調べています。なぜなら、アポロカクタス属がDisocactusに含まれるという考え方もあるためです。
遺伝子解析の結果では、アポロカクタス属は独立した分類群であり、Disocactusに含まれないことが明らかになりました。SelenicereusとWeberocereusが非常に近縁で、アポロカクタスはこの2属と共にまとまったグループを作ります(=Hylocereoid clade)。Hyrocereoid cladeの姉妹群が、Phyllocactoid cladeです。ここには、Disocactus、Epiphyllum、Pseudorhipsalisが含まれます。さらにその姉妹群がAcanthocereus cladeで名前の通りにAcanthocereusが含まれます。
アポロカクタスがDisocactusに含まれるという考え方は、花の特徴から来ています。曰く、ハチドリにより受粉するであろう形、明るさや昼行性であるという共通点がありますが、しかしこれらは各グループで複数回進化した特徴と考えられます。

以上が論文の簡単な要約となります。
5種類のアポロカクタスは2種類になりました。金紐は日本でも昔から知られている普及種ですが、思いの外、その分類は紛糾していたようです。しかし、金紐の花はよくよく見れば、細長い形と赤系統という特徴は鳥媒花の特徴をまずまず揃えています。サボテンの花には、アポロカクタスのようなタイプがそれなりにありますから、思ったよりサボテンの受粉に鳥が関わっているのかも知れませんね。


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最近はいよいよ暑くなり、多肉植物も日焼けを心配する季節になって来ました。こちらは体調が今ひとつで多肉植物もあまり手入れが出来ません。仕方がないので多肉植物の論文ばかり読んでいますが、やや侘しい気もします。そんな7月の我が家の多肉植物事情を久々にお披露目しましょう。

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怪竜丸
怪竜丸が開花中です。怪竜丸はGymnocalycium basiatrumらしいと言われているギムノカリキウムです。


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Pachypodium densiflorum
デンシフロルムが咲き終わりました。しかし、咲き終わった花茎の先に新しい花芽が出て来ました。まあ、こういうこともあります。また、別の枝からも新しい花茎が伸びています。いったいいつまで咲くのでしょうかね? 枝は40本以上あるため、まだまだ咲くかも知れません。


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Euphorbia handiensis
ユーフォルビアには珍しく雌雄同株みたいですね。どうやら受粉したみたいです。


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Euphorbia obesa
我が家の3代目オベサが開花の雰囲気です。初代は雌株、2代目は雄株でしたが、3代目はどっちでしょうか?


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Euphorbia crassicaulis
クラシカウリスはずっと咲いています。旧・E. francoisii系は良く開花しますね。


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Euphorbia crassicaulis
こちらもクラシカウリスですが、f. rubrifoliaと言われる葉がより赤いタイプ。良く日に当てたら葉の模様が出て来ました。初めて開花しましたが、花も赤いようです。


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Euphorbia begardii
ベカルディイはなんかずっと咲いています。葉はあまり出ませんが…。かつては、E. primulifoliaの変種でした。


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Euphorbia moratii
モラティイは非常に勢いがいいですね。花芽も沢山出ています。多肉植物というより草っぽいんですけどね。



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Euphorbia hofstatteri
ホフスタテリは葉が大分増えました。綺麗なトゲが出ています。



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Euphorbia ambovombensis
アンボボンベンシスは何故か花が咲きません。

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これだけ葉の枚数が増えたのに不思議です。


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Gonialoe sladeniana
花茎が非常に長く伸びました。

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発根したばかりで、よくもまあ花芽を伸ばしたなと驚きました。古い葉は環境に適応出来ていないようで、変色してしまいました。まあ、新しい葉は馴れてくれるでしょう。
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G. variegataとの違いがありそうで楽しみです。


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Zamia integrifolia
インテグリフォリアのフラッシュ。我が家のソテツ類では一番最後でした。一般的にはZ. floridanaの名前で流通しているソテツです。購入時は葉が1枚しかありませんでしたが、これで6枚目の葉です。


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Haworthia arachnoidea
アラクノイデアも開花中です。

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しかし、この時期のハウォルチアは中々辛そうですね。
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アラクノイデアの花はこんな感じ。少し膨らんだ形です。


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Haworthia maraisii var. notabilis JDV 87/197
ノタビリスも開花中。

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ノタビリスの花は少し角張りますね。


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Operculicarya borealis
今年は大変好調です。何を変えたと言えば鉢を変えました。

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オペルクリカリアは塊根が長く伸びるため、ロングポットに植えました。塊根が底につくととぐろを巻いてしまいますが、これなら大丈夫なはず。まあ、調子が良いのは単純に水切れをおこしにくいからかも知れません。


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Haworthiopsis nigra IB 12484
真ん中の赤黒い方がメインで、左上の方はオマケです。ニグラは地下茎が伸びた先に子株が出来たので、親から離しました。あと、Euphorbia resiniferaを購入した時に、謎の多肉植物の小さな実生が生えていたので端に一緒に植えましたが、特徴が出て来ました。どうやらカランコエだったみたいですね。種類はカランコエに詳しくないのでよく分かりません。


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夏の間は辛そうな面々。耐えてほしいところです。


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Cycas nongnoochiae
春先に播種しましたが、5月に根が出てからまったく動きがありませんでした。芽をやられたかと思いましたが、ようやく葉が出て来ました。そう言えば、根が底についたくらいで葉が出て来るという話を聞いたことがありますが、ちょうど鉢底から根がはみ出してきたタイミングでした。鉢がプレステラ90の深型だったせいで、根が底に到達するまで時間がかかったのかも知れませんね。


今月は22日〜23日に、千駄ヶ谷でBOANICAL BOANICAL、幕張メッセで幕張プラントワールドが開催されます。両方行く予定でしたが、体調不良もあり取りやめです。イベント好きとしては悔しい限りです。体調を万全にして次回に期待したいですね。


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アフリカの乾燥地には多肉植物となった沢山の種類のユーフォルビアが分布します。これらのユーフォルビアの外敵は、害虫以外では開発やら違法採取やらをやらかす人間くらいな気もします。しかし、以前に毒性が高いと言われる矢毒キリン(Euphorbia virosa)について調べていた時に、クロサイは矢毒キリンを食べるらしいと聞いて大変驚いたことを覚えています。最近、たまたまクロサイとユーフォルビアについて書かれた論文を見つけましたので、本日はご紹介したいと思います。それはLinda C. Heilmannらの2006年の論文、『Will tree euphorbias (Euphorbia tetragona and Euphorbia triangularis) survive under the impact of black rhinoceros (Bicornis diceros minor) browsing in the Great Fish River Reserve, South Africa?』です。

この研究は南アフリカのGreat Fish River保護区で、クロサイがユーフォルビアに与える影響を調査したものです。クロサイはCITESの附属書I類の絶滅危惧種です。調査されたEuphorbia tetragonaとEuphorbia triangularisも附属書II類で取り引きが規制されています。クロサイは非常に減少しましたが、保護のために1986年にこの保護区に約70頭のクロサイが再導入されましたが、最近は数が急速に増加しています。クロサイはユーフォルビアを食べますが、クロサイは植物を押し倒してしまうため、大きなユーフォルビアを枯死させてしまいます。クロサイの増加はユーフォルビアにどのような影響を与えたのでしょうか?

一般的に動物は採餌に用する消費エネルギーを最小にすると言われています。そのため、クロサイは押し倒しやすい小さなユーフォルビアを好む可能性があります。また、草食動物があまり訪れない「避難所」がある場合があります。実際に斜面のアカシアはキリンに採餌されずに生き残りやすいことが分かっています。
このような大型草食動物による食害は、すでに過去に沢山の報告があります。バオバブ(Adansonia digitata)はアフリカゾウにより食害され、タンザニアの国立公園では2.7%が枯死し、ジンバブエのザンベジ渓谷では4.9%が枯死しています。ケニアではクロサイがEuphorbia tirucalliを押し倒し、動物保護区ではそうとうな被害があったようです。

2ヶ月の調査で、高さ2m以上の2本のE. tetragonaと11本のE. triangularisが押し倒されました。これは、4日に1本、全体の6.7%に達する数字です。現在の死亡率から計算すると、E. tetragonaはあと8年、E. triangularisは1.5年で調査地から消滅する可能性があります。
もちろん、倒されたからと言ってそのすべてがクロサイによるものとは限らないでしょう。しかし、クロサイがいない地域も同期間観察しましたが、倒木は全体の1.2%に過ぎませんでした。
また、クロサイ以外の動物の食害も過去に報告されています。1つはヒヒ(Papio ursinus)で、若い芽を食べることがあるそうですが、これは大したダメージにはなりません。2つ目はヤマアラシ(Hystrix africaeaustralis)が樹皮を齧ることがあり、これは茎が腐敗する可能性があります。しかし、調査中にヤマアラシの食害跡は観察されませんでした。

ただ、Goddard(1968)やDudley(1997)によると、E. tirucalliやE. ingensは主に乾季に押し倒されると言います。つまり、水資源が枯渇する乾季にのみ、ユーフォルビアを水分を摂取するために食べているのかも知れません。ただし、年間を通して被害が続く訳ではなくても、現在の破壊りつからすると今年の残りの期間に被害がなかったとしても、いずれE. tetragonaとE. triangularisは消滅すると考えられます。

以上が論文の簡単な要約です。
クロサイが消費エネルギーを最小にするという話がありましたが、どうやら2mほどのユーフォルビアがターゲットのようです。それ以上のサイズだと押し倒すのが大変でしょうし、あまり小さいとクロサイの巨体からしたら食べ甲斐がないのでしょう。
しかし、なぜクロサイは猛毒のユーフォルビアを食べても平気なのかは分かりません。とても不思議です。
最後に。クロサイはもはや非常に稀になった希少種ですから、その保護は当たり前のことです。しかし、その保護活動が他の希少種にダメージを与えるという、大変残念な結果となりました。調査地は元々はクロサイが生息していたものの現在は絶滅し、再び導入された地域です。しかし、クロサイとユーフォルビアのバランスは取れていないようです。本来あるべきクロサイとユーフォルビアの関係とはどのようなものでしょうか。保護活動の難しさを実感します。


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花の誕生はいつまでさかのぼるのでしょうか? おそらく初めての花は、シダ植物から裸子植物が進化する段階において誕生した風媒花だったのでしょう。しかし、その裸子植物の花は針葉樹のように実に目立たないものだったはずです。しかし、現在の植物の大半は目立つ花を咲かせる虫媒花です。これらの花は被子植物に特有ですが、その起源は謎に包まれていました。かのダーウィンが「忌まわしき謎」と称したぐらいです。この「忌まわしき謎」に化石記録から挑んだ本があります。されは、髙橋正道による『花のルーツを探る -被子植物の化石-』(裳華房、2017年)です。

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被子植物はどのくらい前から花を咲かせているのでしょうか。遺伝的変異の蓄積を時間軸に当てはめて計算した分子時計というものがあります。参照とする植物により結果が変わりますが、予測される被子植物の誕生時期は石炭紀〜白亜紀とかなり広いものでした。しかし、被子植物の花には1億年以上の歴史があることは明らかです。
とりあえず、現在見つかっている確かな最古の被子植物は、イスラエルの1億3200万年前の地層から見つかった花粉の化石です。しかし、裸子植物やシダ植物の花粉が圧倒的で、被子植物の花粉はわずか0.2%以下しかありませんでした。とはいえ、白亜紀には被子植物が存在したということだけは確かでしょう。また、さらに古い被子植物の花粉や花などの化石が報告されていますが、保存状態が悪くはっきりと断定できないものばかりで、可能性はありますが確実とは言えませんでした。
これまで発見された化石は時代を遡るほど単純化するため、著者は1億3500万年前くらいに被子植物が誕生したのではないかと考えているようです。

著者の専門は花の化石ですが、ここで化石について基本的なことを解説しておきます。ド素人の私の解説で申し訳ないのですが、結構勘違いされる向きがあるようですから少しお付合い下さい。まあとにかく言いたいのは、遺骸は化石として必ずしも残る訳ではないということです。基本的に生き物は死ぬといずれ腐ってしまい、消えて無くなります。分解されにくい骨や貝殻も、少しずつカルシウムが溶け出してしまい、脆くなり粉になってしまいます。
縄文時代には縄文人の骨が見つかりますが、弥生時代には見つからなくなります。昔は弥生人に滅ぼされたようにも考えられたりしましたが、実際には異なりました。というのも、日本の土壌は酸性で骨は溶けてすぐになくなってしまいます。縄文時代には海面が上昇(縄文海進)したため巨大な干潟が出現し、縄文人は干潟で採った貝の殻や魚の骨を穴に捨てました。いわゆる貝塚ですが、このため縄文時代は貝塚付近は土壌がアルカリ性となり縄文人の骨は残ったのです。次に弥生時代には、縄文海進が終わり貝塚が作られなくなりました。そのため、縄文人の骨はほとんど見つからないのです。ちなみに、弥生人の骨は壺に入れられて埋葬されたため溶けずに見つかるのです。ただし、そのような骨は大陸に近い海岸沿いでしか見つからず、縄文人の代わりになったというにはささやかなものです。
という訳で、化石は特殊な条件があって初めて出来るものです。昔、人類の化石が少ししか見つからず、しかもそれぞれの年代が離れていたので、それを「ミッシング・リンク」と呼びました。ただ問題は「ミッシング・リンク」を過大視して、進化論を否定する人が沢山いたことです。それは、古代人骨が必ず化石になるという素朴な勘違いによるものでした。ある意味、見つからない方が自然です。むしろ、化石が見つかった場合は何か特別なことが起きたからなのです。

長くなりましたが、化石は奇跡の産物です。植物化石なら、落ち葉の化石がよく見つかります。しかし、これは柔らかい粘土などに押された跡が残ったものです。そのものではありません。植物化石で確実なのは炭化することです。日本では遺跡から炭化した米が見つかりますが、これは米を炊いた時に出来たお焦げです。炭化した植物は立体的な構造が綺麗に残ります。野生の植物なら、山火事による偶然を期待するしかありません。しかも、偶然化石となっても、地層の圧力や褶曲により破壊されてしまいます。著者もあちこち調査に赴くも上手く行かず中々苦労したみたいです。
採取した堆積岩を溶かし、ふるいにかけ、塩酸に浸けてからフッ化水素に浸けて石英などの鉱物を溶かします。これらの処理を何度か繰り返し、1つのサンプルで3〜4ヶ月あるいはそれ以上かかるそうです。ここからが一番大変で、残ったものを顕微鏡で観察していきます。実際には壊れて破片になったゴミばかりですが、稀に壊れていないものが見つかるのです。そのような苦労の末、著者は日本で初めて白亜紀の花の化石を発見しました。日本は火山活動が活発なので、このような化石が見つかるのは中々にして奇跡的なことです。さて、白亜紀の被子植物の花はミリ単位の超小型な花です。被子植物の誕生時はこのようなサイズだったようです。日本の白亜紀はまだ大陸の一部だったころで、熱帯性のバンレイシ科植物の花化石がみつかるなど、暖かい気候だったようです。

被子植物の花化石の傾向を見ると様々なことが分かります。例えば、原初の花はモクレン科の花が想定され、枝の頂点に1つ付くとされます。しかし、花化石からは、古いものでも複数の花が集合しているものが沢山あり、著者はそのような集合した花序が古い形質と考えているそうです。また、モクレン科説では、花の中央の雄しべと雌しべからなる部分(花床、花托)は螺旋状ですが、原始的な花は螺旋状の花床が軸状に長くなったものとされます。しかし、古い花化石は短い花床のものが多いようです。この他にも、原始的な花について、その傾向が様々な角度から述べられています。
花の進化を知る上で、本書は非常に参考になります。白亜紀の花の電子顕微鏡写真が沢山載せてあり、原始的な花の姿を見ることが出来ます。メジャーなレーベルではないため本書の存在を知らない方が多いとは思いますが、良い本ですから是非おすすめしたい一冊です。


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土曜日はヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会に行ってきましたが、帰りにコーナン港北インター店に寄ってきました。3月のBIG即売会の帰りにも寄りましたが、まだ多肉植物の季節ではないので、冬を越したものばかりで少し侘しい感じでした。しかし、流石に7月となれば色々と新しく多肉植物も入って来ているはずです。どんな多肉植物たちがあるでしょうか?

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港北インター店は、横浜市営バスに乗って折本町というバス停降りてすぐにあります。入口すぐ右に広いエケベリア・コーナーが出来ており、かなりの数が入荷していました。いやはや、エケベリアの勢いはまったく落ちませんね。とりあえずハウォルチアを探しましたが、どうやら新しいものはほとんど入っていないようです。ここで冬を越した、ヘタリかけばかりでした。残念。あと、アガヴェは割と入っているみたいです。今回はあまりめぼしいものはありませんでしたが、記念にサイズの割に安いプリムリフォリアを購入しました。あと、ほぼワンコインのガステリア苗も購入。

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プリムリフォリア
Euphorbia primulifoliaです。E. primulifolia var. begardiiは持っていますが、単なるプリムリフォリアは未入手でした。しかし、本当に桜草の葉に雰囲気が似ています。名前はプラムラ(桜草)+フォリア(葉)ですからね。しかし、正直なところ変種ベガルディイはプリムリフォリアにまったく似てないよなあと思っていましたが、最近プリムリフォリアの変種から独立しE. begardiiとなりました。遺伝的にも近縁ではないみたいです。というか、プリムリフォリア自体、産地毎に遺伝的にかなりの差があるようですね。


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グラウカ
Gasteria glaucaです。1998年に命名された割と新しいガステリア。まだ特徴が出ていませんね。G. glomerataや臥牛に近縁です。

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臥牛
手持ちのG. nitida var. armstrongiiはざらつかない特殊なタイプだけでしたから、普通の臥牛は初めてです。こんな可愛らしい苗なのに臥牛らしい雰囲気が出てるのが面白いところです。ところで、臥牛はG. nitidaの変種扱いですが、実は遺伝的解析結果ではG. nitidaとは近縁ではありません。G. armstrongiiとして独立させた方が望ましく思えます。

今回はこんなところです。久しぶりのイベントで、久しぶりの横浜遠征でしたから、結構楽しめました。いつもは朝イチで行きますが、今回は遅く行ったせいか電車が大変混んでしまい疲れました。帰宅後は体調不良もありダウンしてしまいました。無理は禁物です。


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久しぶりにヨネヤマプランテイションに行ってきました。7月8日9日の土日で多肉植物BIG即売会が開催されたからです。3月にも開催されて、その時は大変な盛況ぶりでした。
さて、最近は調子がいまいちで、さらに先日も職場でたちの悪い風邪をうつされてしまい、とにかく咳が止まらないので休みの日はなるべく外出しないようにしていました。前日まで行くか悩みましたが、まだ咳は出ますが大分落ち着いてきたので少し無理をして見てきました。


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今回はゆっくり行ったせいか、割と空いていました。前回は非常変わったものが色々あって驚きましたが、今回は割と普通でしたね。パキポディウム苗にアガヴェ、カクタス長田の多肉植物苗がメインなのはいつも通りでした。あと、サボテンがいつもより沢山あって、緋牡丹錦とスーパー兜?だったかがあり、個体差がかなりあり面白くてついつい買ってしまいそうになりました。あと、継ぎ木のAstrophytum caput-medusaeや柱サボテンなど種類もまあまあありましたね。あとは、小型のサンセベリアとアデニウムは、それぞれコーナーが出来ていました。私の好きなユーフォルビアは、かなり立派なE. tulearensisが沢山ありましたが、そのサイズだけあり中々のお値段でしたね。あと、E. pachypodioidesや花キリンくらいでしょうか。あと、外売り場の奥にある山野草コーナーに何故か立派なアガヴェが並んでましたね。
今回は私が興味のある多肉植物があまりないことや、持っているものばかりでしたから、やや期待はずれ感はありました。まあ、これはあくまで私の個人的な趣味の問題に過ぎないのですけどね。という訳で、今回はサボテンが沢山あったので、例によってギムノカリキウムを購入しました。まあ、なんか安かったので…


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天平丸 Gymnocalycium spegazzinii
難物ギムノカリキウムです。とにかく南米病が怖くて今まで手を出さないでいました。今回は安かったので試しに育ててみることにしました。しかし、南米病の原因は何なのか気になりますね。人によって意見が違う気もします。


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フリードリッヒ LB2178
流行りすぎてすっかり安くなったため購入しました。何故か交配種が出回ったこともあり、もはやその純血性に疑問があるLB2178です。あちこちで最近見るLB2178は模様の間隔などかなりの個体差があり、明らかに何か混じってますよね。このカクタス長田株はどうでしょうか?


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ゼオライト 3kg
毎回、ここに来る度に買っています。実は購入したサボテンたちより高かったりします。これは、来年の植え替え用です。実はこれを買いに行っている説も多少あったりします。


という訳で、久しぶりヨネヤマプランテイションに行ってきました。久しぶりにイベントに行きましたから、色々見るだけでも割と楽しめました。ヨネヤマプランテイションは横浜市営地下鉄ブルーラインの新羽駅の近くにあります。お暇があれば皆様もぜひご参加下さい。本日も即売会は開催中です。
毎度のことですが、この後に近くにあるコーナン港北インター店に寄り道して来ました。その様子は明日記事にします。



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以前からStenocereus erucaという面白いサボテンがいることは知っていました。E. erucaは地面を這って育ち、接地面から根が出て育ちます。やがて、根元から枯れていきますが、先端は生長し続けるので移動しながら育つのです。去年、神代植物公園の大温室にて始めてS. erucaを見ることが出来ました。やはり、とても不思議なサボテンです。にわかに興味が湧き、少し調べてみると以下のことが分かりました。曰く、メキシコのソノラ砂漠に固有な2種類の柱サボテン、Stenocereus erucaとStenocereus gammosusが分布し、2種類は密接な関係があると考えられているというのです。それは、Francisco Molina-Freaner & Richardo Clark-Tapiaの2005年の論文、『Clonal Diversity and Allelic Relationships between Two Closely Related Species of Columnar Cacti from the sonolan Desert: Stenocereus eruca and Stenocereus gammosus』です。早速、見ていきましょう。

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Stenocereus eruca(神代植物公園)

S. erucaはその分布がバハ・カリフォルニア半島のMagdalena平原の沿岸部の狭い範囲に限定されます。対照的にS. gammosusはバハ・カリフォルニア半島全体に広がり、カリフォルニア湾の多くの島にも分布します。
S. erucaは横に這い、不定根を出しながら育ちます。苗の定着の可能性は非常に低く、主に枝分かれによるクローンにより繁殖していると考えられています。S. gammosusは半直立性で高さ1〜1.5mで地際からアーチ型の枝を伸ばします。枝の根元から発根し、やがて枝が本体から剥離し独立します。やはり、S. gammosusも苗が見られず、クローンにより繁殖している可能性があります。
Gibson(1989)によるとS. erucaはS. gammosusから進化した可能性を指摘しました。2種類の組織を比較すると、構造的にS. erucaは自重を支えることが出来ないため、特徴的な育ち方になったようです。緩い砂漠に対応した育ち方と言えます。


著者は遺伝子の違いから、E. erucaとE. gammosusが割と新しく種分化したものと推測しました。また、E. erucaの個体毎の差が小さいことも分かりました。つまり、E. erucaはE. gammosusよりクローン増殖に依存しているということです。しかし、予想より遺伝的に多様性がありました。当初
はE. erucaとE. gammosusはクローン増殖に強く依存していると考えらましたが、どうやらちゃんと種子による繁殖も行われているようです。

さて、E. erucaは海岸沿いのMagdalena平原のみ自生しますが、平原は海からの強風により砂が堆積して出来た砂丘です。E. erucaが這って育つことは、強い風に対して有効です。また、E. erucaの先端が少し上を向く特徴は、砂への埋没を避ける意味があることが観察されています。

以上が論文の簡単な要約です。
少し古い論文ですが、やはり近年の遺伝子工学の急速な発達からすると、遺伝子解析も詳細は分からない大まかなものであったことがうかがえます。しかし、その分、非常に丁寧に調べられています。
それはともかく、E. erucaの特殊なクローン増殖は興味深いものですが、E. gammosusのクローン増殖から派生していることは明らかです。しかし、私もE. gammosusのクローン増殖については知りませんでした。E. gammosusのクローン増殖しやすい特徴が受け継がれ、砂丘への適応で非常に役に立っているということも初めて知りました。このように、知らないことばかりですが、探せばいくらでも論文は出て来ます。私個人が無知なだけかも知れませんが、今後も面白い論文をご紹介出来ればと考えております。


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Fouquieriaはメキシコの乾燥地に生える灌木です。日本でも一部の種類は実生苗がある程度は流通しています。私も何種類か育てていますが、意外にもFouquieriaは乾燥に敏感で葉がすぐに落ちてしまい困っていました。そんな中、Fouquieriaを種子から10年間栽培したEnrico Ceottoの2017年の『Cultivation of Ocotillo from Seeds to Flowers: A Ten Year Experience in Northern Italy』という論文を見つけました。夏は暑く冬は寒い北イタリアでの栽培記録です。同じく、夏は暑く冬は寒い日本のFouquieria栽培の参考になるかも知れません。

野生のOcotillo
Ocotillo(Fouquieria splendens)は、米国南西部とメキシコ北部に分布する干ばつ落葉性砂漠低木です。高さは6mまでで、赤色の花を咲かせハチドリやミツバチにより受粉します。西部の個体は花が長くハチドリが主要な花粉媒介者で、東部の個体は花が短くミツバチが主要な花粉媒介者であるとされています。
干ばつ落葉植物は乾燥するとすぐに葉を落として休眠します。葉を落とすことにより、蒸散による水分損失を最小限として、長期間の乾燥に耐えるのです。Ocotilloも葉のない状態で干ばつに耐え、雨が降ると急速に葉を出します。

ボローニャの環境
論文ではイタリア北部のボローニャで著者がOcotilloを栽培しました。ボローニャの気候はOcotilloの自生地とは異なります。ここでは、アリゾナ州のツーソンと比較します。ボローニャの年間降水量は平均671mmで、主に春と秋に降ります。7〜8月はツーソンと比較するとボローニャの方が降水量が少なく乾きます。しかし、相対湿度はボローニャが通年にわたり高くなっています。ボローニャの気温はツーソンより低くなりますが、6〜8月には非常に暑くなることが頻繁にあります。ボローニャの夏は34〜37℃に達し、相対湿度が高いこともあり実際の気温より暑く感じます。このように、まったく異なる環境でOcotilloを、種子から10年間にわたり育てた記録です。

実生
Ocotilloの種子は平らで奇妙なものです。著者はアリゾナ州のMohave郡Yuccaで、2008年7月に種子を採取し月末に播種しました。播種した20個の種子は1週間以内に発芽し、14本の幼苗を得ました。
干ばつに強い砂漠の植物であっても、種子の発芽と幼苗の生存には水分が必要です。著者は発芽にはJiffy Peat Pellet(水で膨らむピートで出来たポット)を使用しました。ピートは多孔質で空気を含み、水分を貯蔵します。発芽後は根が急速に育つため、植え替えが必要です。

水やり
Ocotilloのアキレス腱は根腐れ病に対する弱さで、常に湿った土壌では生きられません。著者の経験ではサボテンと比較しても根腐れを起こしやすく敏感です。著者は水はけを重視し、砂質土とピートの組み合わせをチョイスしました。
Brookbank(1992)は、Ocotilloの土壌は湿らせておく必要があるが、ずっと湿っていてはならないと言っています。標準的な方法は、乾いてから水やりをすることです。著者は以下の2つの規則を採用しました。曰く、①土壌の表面が濡れている時には水をやらない、②土の表面の1/4以下湿らせ残りを乾いたままにする、ということです。
さて、実生は多くの水分を必要としますが、砂漠では湿った環境が数週間続くため幼苗は急速に育ちます。しかし、タイミングよく雨が降らないとその後は生き残れません。
栽培
から1年でOcotilloの特性を備えた成体のミニチュアに育ちました。すでに干ばつに耐えることができます。生育期に過剰にならない水をやることで、急速に育ちます。Ocotilloは通常は肥沃度の低い土壌に生えるため、施肥はほとんど必要ありません。とはいえ、著者は窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、および微量元素が入った液肥を与え、その効果は確認したようです。
著者の4年目の栽培では8月に雨が降らなかったため、葉を落として干ばつに耐えていましたが、8月31日に雷雨がありました。その10日後には新しい葉が生え揃いました。

害虫
著者は最初は室内で幼苗を育てようとしましたが、葉が不自然な見た目になったので、完全な日照を必要としていることを示しています。また、温室栽培は便利ですが、防除が難しいコナジラミがつきやすく、屋外ではクモなどにより害虫により減少しました。また、いくつかの年にはアブラムシがつきました。Ocotilloの新しい葉や茎はアブラムシに敏感でした。アブラムシは取り除くのはなかなか困難で、殺虫剤が必要です。

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Fouquieria splendens
アブラムシがついて少し葉が縮れました。


冬期
秋と冬はOcotilloは休眠します。温暖な気候では、休眠は11月から4月まで続きます。休眠中は土壌は乾燥させておきます。著者はOcotilloを無加温の温室に置いて、雨から保護しました。冬の間は氷点下になりましたが、Ocotilloは耐えることができました。

挿し木
Ocotilloは茎を挿し木することにより増やすことが出来ます。挿し木苗は実生苗と比べて急速に育ちますが、著者の挿し木苗は側枝がいつまで経っても出てこないということです。
木質化した茎を挿し木に使用しますが、冬の終わりに茎を切断すると夏の間は休眠状態となり、気候が穏やかな9〜10月に新しい葉を出す傾向があります。そのため、著者は秋に茎を切断して乾いたピートに挿して室内に置いておき、春先に控え目に水やりを始めればやがて葉が出て来ます。

開花
2016年の5月、8歳のOcotilloは開花しました。花は豊富な蜜を出し、ミツバチが頻繁に訪れます。著者はミツバチによる受粉によりOcotilloの種子を手にすることが出来ました。

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今年はよく育ち、枝は去年までの高さと同じくらい伸びました。

以上が論文の簡単な要約です。
私もFouquieriaを苗ですが何種類か育てており、乾燥に敏感ですぐに葉を落としてしまうことが悩みでした。これは論文にあるように、干ばつに耐えるための戦略で、何もおかしなことではなかった訳です。しかし、ちょうど乾いたタイミングで水やりをするのは中々困難なので、私の育てているFouquieriaは葉が出たり落ちたりを繰り返しており中々育ちません。仕方がないので、今年は浅く腰水して育てていますが、今のところ根腐れの兆候はありません。むしろ、急激に枝が伸び始めて驚いているくらいです。危ない橋を渡っているのかも知れませんからおすすめは出来かねますが…。まあ、ある程度大きく育てば、もう少し耐えられるようになるでしょうか? いずれにせよ、私がFouquieriaの花を拝めるのは遠い未来のようですね。



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Euphorbia pulvinataは、日本では笹蟹丸の名前でお馴染みの多肉植物です。普及種ですから非常に安価で購入出来ます。育てやすく見た目も面白いので、ユーフォルビアの入門種と言えます。たまたまですが、そんなE. pulvinataを題材とした論文を見つけたので、ご紹介します。それは、Luambo Jeffrey Ramarumoらの2019年の論文、『Euphorbia pulvinata Marloth: A useful succulent plant species in Vhembe Biosphere Resesve. Limpopo Province, South Africa』 です。

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笹蟹丸 Euphorbia pulvinata

この研究は南アフリカのLimpopo州Vhembe生物圏保護区の、Nzhelele地域のVhulaudziと隣接する村で実施されました。調査エリア内の人口は30683人でした。調査はEuphorbia pulvinataの利用方法について、30歳以上の無作為に選ばれた120人で実施されました。その内訳は、伝統医9人、薬草師21人、ハンター11人、農民31人、その他一般人48人でした。アンケートした120人全員がE. pulvinataを利用していました。

アンケートの結果として、まずは住民のE. pulvinataの利用方法から見ていきます。参加者の35.8%がトリモチを作るため、25%は家畜の薬として、17.5%は昆虫のトラップ、9.2%は観賞用、6.7%は儀式や魔術目的、5.8%が接着剤としてE. pulvinataを利用しました。アンケートによるとたまたまではなく、積極的にE. pulvinataを利用しており、内容は創造的かつ動的なものでした。
次に利用部位を見てみると、乳液は59%で利用され重要でした。乳液はトリモチや接着剤として利用されます。他には、家畜の薬に根が利用されました。また、トゲや花はあまり利用されませんでした。

以上が論文の簡単な要約です。
内容的には民族学的な調査でした。しかし、このような自生地における利用方法は、希少植物の保護を考える上での基本的な情報として重要です。著者らもその点を言及しています。
多肉植物は様々な要因で数が減少しており、保護が必要なものが多くあります。しかし、保護区を設定して、取引を法律で規制してもあまり意味はありません。保護活動に従事する人材や、違法採取や違法取引の取り締まりも必要です。さらには、この論文のように地元で植物を利用している人たちとの折り合いも必要です。この場合は、単に禁止するのではなく、地元の人を保護活動に従事するための人材として採用したり、なるべく野生個体を使わなくて良いように栽培を支援する活動など考えられることは沢山あります。
E. pulvinataは園芸用途としては普及種ですから、違法採取は問題とはならないかも知れません。自生地に住む人たちの利用もそれほどの脅威ではないかも知れませんが、今後の人口増による開拓、家畜の踏みつけなどが起きるかも知れません。このような調査は今後も実施されるこが望まれます。


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花を訪れ花粉を運ぶ花粉媒介者には、1種類の植物の花に特化したものも少数ですがあります。本日は、そのような特殊な共生関係について調査したJ. Nathaniel Holland & Theodore H. Flemingの2002年の論文、『Co-pollinators and specialization in the pollinating seed-consumer mutualism between senita cacti and senita moths』をご紹介します。

特定の花粉媒介者に対して植物が特殊化することがありますが、特定の相手以外の受粉者が豊富な場合は、そのような方向へは進化しないかも知れません。
ソノラ砂漠に生えるsenita cactus(Lophocereus schottii)は、senita moths(Upiga virescens)という蛾により受粉すると言われています。しかし、senita mothsは夜間にsenita cactusを訪れますが、実は日中(早朝)のsenita cactusにはミツバチが訪れます。このミツバチの受粉に対する寄与次第では、senita mothsの評価も変わってきます。果たして、senita mothsはsenita cactusと特殊な関係を結んだ特別な花粉媒介者なのでしょうか? それとも、沢山いる花粉媒介者の1種類に過ぎないのでしょうか?

senita cactusの花は白っぽいピンク色で、自己不適合で雌雄同株です。日没後に開花し16時間以内に閉じます。開花時期は3月下旬から9月まで続くことがあります。1995年、1996年、1998年から2000年にかけて、メキシコのソノラ州のsenita cactusを観察しました。ハチが来れないように日中にネットをかけた場合と、蛾が来れないように夜間にネットをかけた場合の結実率を比較しました。

ミツバチは日の出後の数時間はsenita cactusの花から花粉を集めましたが、蜜の採取は観察されませんでした。ただし、どちらかといえば、ミツバチは大量の花粉と蜜を持つsaguaro (Carnegiea gigantea)やorgan pipe (Stenocereus thurberi)に惹きつけられるようです。また、気温が高いと花が萎れ、senita cactusは日の出前に花が閉じてしまうこともあり、必ずしもミツバチが花に訪れることができるとは限りませんでした。ミツバチがsenita cactusの花を訪問できるのは、一般に気温が低い4月から5月中旬です。それ以降の開花では、ミツバチはsenita cactusの花を訪れることは出来ません。


さて、では結果を見てみましょう。基本的に花からミツバチを除外しても、結実率は減少しませんでした。しかし、蛾を除外すると結実率は大幅に減少しました。
また、蛾により花粉が運ばれた花に人工的に花粉を追加しても、結実率は高くはなりませんでした。senita cactusは日没後に開花するため、基本的にすでに蛾の訪問を受けた花に、日の出後にミツバチが訪問します。花粉の追加により結実率が上がらない以上、ミツバチが後から訪問することによる追加の花粉には意味がないのかも知れません。
ただし、たまたまsenita mothsが少ない年には、ミツバチの除外により結実率が減少しました。ミツバチはsenita cactusのメインの花粉媒介者ではありませんが、本来の花粉媒介者が少ない場合に補完する存在なのかも知れません。

Lophocereusは2種類ありますが、遺伝子解析の結果からは3種類からなるPachycereusと近縁とされ、現在ではLophocereusはPachycereusに含まれています。Pachycereusはコウモリ媒花と考えられておりますが、例えばP. marginatusは大きく日中に咲く赤い花は大量の蜜を分泌し、ハチドリにより受粉するとされます。しかし、senita cactusは小型で夜に咲く白っぽいピンク色の花を咲かせ、蜜の量は非常に少ないのが特徴です。この蜜の少なさから、senita moths以外の蛾は基本的に訪れないようです。このように、Pachycereusの中で、LophocereusはP. marginatusと同様に特殊化したものと言えます。

以上が論文の簡単な要約となります。
基本的にはミツバチはsenita cactusの重要な花粉媒介者ではありませんでしたが、場合によっては受粉に寄与することもあります。しかし、これはsenita cactusがsenita mothsとの深い共生関係を結ぶための進化にどのような影響があるのでしょうか? 長い開花期間中でミツバチが受粉可能な時期はあまりに短く、補完的な意味しかないならば、共進化に揺り戻しを起こすほどではないような気もします。ただ、現状が安定しているならばこのままでしょうし、開花時間は明るさや温度など機械的に決まるようですから、開花時間によるミツバチの完全排除は起きないような気もします。花の形状がsenita mothsに特化する可能性もありますが、そもそもが蜜が少ないのでミツバチは花粉を集めていることから、採蜜出来なくなったとしても影響はなくミツバチは花粉を集めに来るでしょう。



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多肉植物は言うまでもなく乾燥地に適応した植物です。大抵は水分を貯蔵することが出来る塊根や塊茎、あるいはサボテンのように植物全体で水分を貯めるものもあります。また、夜間に二酸化炭素を吸収するC4植物やCAM植物も、乾燥に対抗する手段の1つでしょう。さて、そんな多肉植物は乾燥に適応したことにより、非常に多様化したのだと言われているようそうです。それは果たして本当なのかを論証したJamie Thompsonらの2023年の論文、『Did succulent diversify in response to aridity? Evolutionary analyses of major succulent lineages around the world』を見てみましょう。

多肉植物は様々な分類群からなり、一見似ていてもお互いに近縁という訳ではありません。乾燥に適応するために結果として似たような姿となっただけです。これを収斂進化と言います。また、多肉植物は同じ分類群の中で、繰り返し独立に進化してきました。
約29万種の被子植物のうち、約12500種、あるいは推定3〜5%が多肉植物とみなされています。多肉植物は83科690属に分布します。多肉植物の分類群のいくつかは、植物の中でも最も高い多様化率を示すものもあり、急激に多様化していると考えられています。代表的な多肉植物は、ハマミズナ科(Aizoaceae、メセン科、マツバギク科、ツルナ科)2200種類以上、リュウゼツラン科(Agavaceae)300種類以上、ツルボラン亜科(Alooideae、=アロエの仲間)700種類以上、ガガイモ科(Asclepiadoideae)2900種類以上、サボテン科(Cactaceae)1500種類以上、ベンケイソウ科(Crassulaceae)1500種類以上、トウダイグサ属(Euphorbia)2000種類以上が含まれ、非常に多様化していることが分かります。しかし、1属1種の単型科のHalophytaceaeや13種類からなるMoringaceaeなどのように、必ずしも多肉植物が多様化する訳ではありません。

環境の乾燥化により多様化したと考えられる多肉植物ですが、いつ乾燥化したのかを知るための古代の気候の信頼性の高い情報や、多肉植物の化石の欠如により、仮説を検証することは困難とされてきました。そこで、著者らは多肉植物の7つの分類群の進化をシミュレーションし、多肉植物化した時期を推定します。単系統のグループと、複数の多肉植物群を含むグループを比較し、多肉植物が多様化を促進するかを評価します。また、中新世に大気中の二酸化炭素が減少したという仮説がありますが、この仮説が多肉植物のCAM植物化と関係するかを評価しました。

二酸化炭素濃度と各多肉植物の分類群の系統発生をシミュレーションにより評価したところ、必ずしも二酸化炭素濃度が多肉植物の進化と関係しているとは限らないことが明らかとなりました。しかし、個別に見ていくと、ガガイモ科は二酸化炭素濃度の変化により種分化しており、トウダイグサ属は種分化と絶滅が両方起きるパターンを示しました。さて、地球上で二酸化炭素が減少したのは約1500万年前までと考えられていますが、この時代に多様化のブレイク・ポイントを持つのは、ガガイモ科とトウダイグサ属でした。ガガイモ科は1500万年前から急激に種分化し、ユーフォルビア属はやや減少しました。
最も初期の種分化の促進は、始新世(5600万年前〜3390万年前)でベンケイソウ科とユーフォルビア属で回復します。漸新世(3390万年前〜2300万年前)にはハマミズナ科、サボテン科、ユーフォルビア属が回復します。中新世(2300万年前〜530万年前)ではすべてのグループで回復します。鮮新世(530万年前〜260万年前)ではリュウゼツラン科以外が回復します。更新世(260万年前〜1万1700年前)では、ガガイモ科とサボテン科のみが回復しました。計算上では中新世に多肉植物のグループの3分の2が誕生しています。


シミュレーションによると、乾燥化により多肉植物の種分化は促進されていました。強い乾燥レベルではリュウゼツラン科、ツルボラン亜科、一部のトウダイグサ属が種分化し、弱い乾燥化レベルではガガイモ科、サボテン科、残りのトウダイグサ属が種分化しました。
サボテン科とツルボラン亜科では多肉植物のグループの方が圧倒的に豊富でした。トウダイグサ属以外は、乾燥化により急激に種分化し多様化したと考えられます。トウダイグサ属はグループ内で複数回の多肉植物化が起きているようです。リュウゼツラン科とガガイモ科は乾燥化により急激に多様化し絶滅率が低いことが特徴です。ハマミズナ科は多肉植物化により種分化が促進されていませんが、多肉植物化した種の絶滅は少ないようです。ベンケイソウ科は多肉植物化することにより絶滅率は高くなったものの、不釣り合いなほど種分化は急速でした。


以上が論文の簡単な要約となります。
いくつかの多肉植物の分類群について、シミュレーションにより種分化を推定しました。しかし、これは現在あるデータから推測されたものですから、データが増えれば変わりうる一時的なものかも知れません。論文にあるグラフを示していないので分かりにくいとは思いますが、要するに仮説はまあ大体当てはまる傾向はあるみたいです。まだ説明がつかないことも沢山あるみたいですから、今後の進展に期待します。


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花と言えば、色とりどりの美しい姿を思い浮かべますが、それらは被子植物の花です。被子植物の多くは蜜などの報酬を与え、目立つ花弁で昆虫などの花粉媒介者を引き寄せ、花粉媒介者があちこちの花をめぐることにより受粉し種子が出来ます。被子植物より早い時代に誕生した裸子植物は、針葉樹などその多くが風媒花です。この裸子植物から被子植物への進化の過程で、古い時代に花粉媒介者により受粉する植物が誕生したのでしょう。近年、ソテツ類が昆虫により受粉する虫媒花であるという論文が出ており、様々な種類と分類のソテツで虫媒が確認されています。もしかしたら、ソテツが地球上で初めて花粉媒介者により受粉した植物かも知れません。当然、現在のソテツの花粉媒介者たちの祖先が、初めて花粉媒介者となった動物である可能性があります。ソテツの花粉媒介者は甲虫がよく知られていますが、アザミウマも関与するという話も聞いたことがあります。
さて、という訳で本日のお題は花粉媒介者の誕生についてです。本日ご紹介するのは、Irene Terryの2002年の論文、『Thrips: the primeval pollinators?』です。この「Thrips」とは「アザミウマ」のことです。アザミウマは原始的な昆虫で、一般的には作物や園芸植物につく害虫として知られていますが、実際にはカビや胞子を食べるものや、肉食のものもあります。アザミウマは非常に古い時代に生まれた昆虫ですが、地球で最初の花粉媒介者なのでしょうか?

アザミウマ媒花の発見
アザミウマには花粉食の種類が沢山おり、受粉に影響を与える可能性があります。しかし、学術的には見過ごされてきました。それは、アザミウマが効率的な花粉媒介者の特徴を欠いているからです。まず、アザミウマは非常に小さいため花粉が付着する数も少なく、花粉が付着するような構造もありませんし、移動性もあまりないと言われてきました。しかし、Gottsberger(1995)はアマゾンのシソ科植物2種類で、花粉を運ぶアザミウマを発見しました。花は小さく直径4mm以下でした。その後も、トウダイグサ科のMacaranga属の2種類など、熱帯地方の小型の花を咲かせる植物でアザミウマによる花粉媒介が報告されています。

ソテツと虫媒
さて、ソテツは古生代に生まれた雌雄異株の植物で、現存する裸子植物の中では最も古い植物です。長い間、ソテツは風媒花と考えられて来ました。しかし、Norstogら(1986)はメキシコ原産のソテツであるZamia furfuraceaはゾウムシにより受粉ことを観察し、ゾウムシの除去により種子生産が大幅に減少することを報告しました。それ以降、ゾウムシの仲間と様々なソテツとの共生関係が報告されています。

ソテツとアザミウマの関係
オーストラリアのソテツであるMacrozamia macdonnelliiは、1994年のFosterらの報告によりゾウムシにより媒介されることが明らかになりました。そのため、Macrozamiaはゾウムシか風により受粉すると考えられて来ました。しかし、Mound(1991)やChadwick(1993)によりMacrozamia communisで、Mound(1998)によりMacrozamia riedleの花でアザミウマが見つかりました。また、Terry(2001)によりMacrozamia communisのアザミウマの花粉媒介を試験しました。風の効果を除外したりゾウムシを除外しても、種子生産は減少しませんでした。

アザミウマの重要性
著者らは、複数のMacrozamia macdonnellii群で、1つの雄花で5万匹ものアザミウマ(Cycadothrips albrechti)を確認しました。雄花は10m離れた場所でも分かる強烈な臭気を発し、アザミウマは午後には一斉に臭気を発する雌花に移動しました。アザミウマ1匹あたり平均20粒の花粉をついていました。1日で胚珠あたり5700粒もの花粉が運搬されました。著者はC. albrechtiというアザミウマがM. macdonnelliiの唯一の花粉媒介者であると考えています。
Macrozamiaのうち4種類はアザミウマでのみ花粉媒介され、8種類はゾウムシでのみ花粉媒介され、3種類はアザミウマとゾウムシにより花粉媒介されます。また、20種類以上のMacrozamiaはまだ調査されていません。今まではアザミウマが花粉媒介する可能性を考慮していませんでしたから、今後の調査次第ではアザミウマ媒花のソテツは増えるかも知れません。

アザミウマ媒花は新しい?
Macrozamia属は化石による記録では、少なくとも白亜紀後期には誕生しています。しかし、ソテツのアザミウマ媒はオーストラリアでのみ見つかっています。アザミウマとソテツの関係は新しい時代に出来た可能性もあります。化石記録は不足しており、化石からの推定は困難です。
著者はオーストラリアの地理とソテツの分布から、アザミウマ媒の起源を考察しています。Macrozamiaは大陸全体に分布していましたが、現在はいくつかの地域に残されているだけです。対するCycadothrips属のアザミウマはすべての地域で見られ、他の植物には見られませんでした。さらには白亜紀の大規模な海洋侵入は大陸を島々に分裂しましたが、この島々はMacrozamiaとCycadothripsが対応していました。このことから、白亜紀の海洋侵入前にソテツとアザミウマは関係を結んでいたと考えることも出来ます。


化石記録からの推定
ソテツは少なくともペルム紀には存在し、初期のMacrozamiaは6500万年前の化石で、8500万年前にオーストラリアから分離したニュージーランドで発見されました。ゾウムシの祖先はジュラ紀後期に、現存するゾウムシ類は白亜紀前期から見つかっていますが、ソテツの受粉に関わるゾウムシの仲間は新生代まで進化しませんでした。現在、ソテツに関与するゾウムシは、木材に穿孔するタイプの祖先に由来すると考えられています。現在のソテツは各大陸に分布しますが、ゾウムシの花粉媒介はそれぞれ独立に進化したと考えられています。この仮説が正しければ、ソテツの花粉媒介者はゾウムシの進化の前に存在していたことになります。

アザミウマの起源
アザミウマの祖先グループは古生代に誕生し、被子植物と現代のソテツの属の誕生前から存在しています。Cycadothrips属はアザミウマの系統解析が結果からは被子植物の誕生前から存在すると考えられています。著者はアザミウマが植物の最も古い花粉媒介者であると考えています。

2億8000万年前  石炭紀
  →ソテツ誕生?
2億4400万年前  ペルム紀
  →アザミウマ誕生
2億1300万年前  三畳紀
  →ソテツ優勢、甲虫誕生
1億4400万年前  ジュラ紀
  →被子植物誕生?、ゾウムシ誕生
6500万年前  白亜紀
  →現代のソテツ科の誕生、Macrozamia誕生、
   現代のゾウムシ科の誕生
5500万年前  暁新世
  →現代のゾウムシ属の台頭?
3800万年前  始新世
  →ソテツと関係するゾウムシ属の誕生

以上が論文の簡単な要約です。
マクロザミアとアザミウマの関係から、始原の花粉媒介者の存在まで推定していますが、やや飛躍し過ぎている気もします。しかし、ソテツが一番古い虫媒花であるならば、それが絶滅した今は存在しない分類群の昆虫でない限りは、アザミウマかゾウムシが最も古い花粉媒介者である可能性があることは確かでしょう。だだし、著者に抜けているのは、風媒花の視点です。古代のソテツは、アザミウマやゾウムシが誕生してもまだ風媒花であり、虫媒を開始したのは最近かも知れません。化石記録が見つかるまではその可能性も除外出来ないのではないでしょうか?

しかし、それはそうと、最近は販売されるソテツも増えて来ましたが、まったくソテツは流行りませんでしたね。今は新葉が展開するソテツ栽培にとって素晴らしい時期にも関わらず、ネット掲示板のソテツスレも閑散としており、まったく悲しい限りです。私のソテツ関連記事も非常に不人気です。本当はもっとソテツが流行って、様々な種類が販売されるようになれば私も嬉しいのですが…


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花キリンはマダガスカル原産の、乾燥地に生える灌木です。分類的にはユーフォルビア属ゴニオステマ節に含まれます。塊根性花キリンはまあそれなりに人気がありますが、塊根がではない多くの花キリンは今ひとつ良く知られていないように思われます。本日は「MEMOIRES DE L' INSTITUT SCIENTIFIQUE DE MADAGASCAR」という書籍シリーズの第5巻、1954年に出版されたE. VRSCH et J. Leandriによる「LES EUPHORBES  MALGACHES EPINEUSES ET CHARNUES DU JARDIN BOTANIQUE DE TSIMAZAZA」を見てみましょう。なんと言っても、豊富な花キリンの図譜があり、眺めるだけでも楽しい本です。ちなみに、この図譜は植物園の植物を描いたもののようです。興味深いのは、Euphorbia viguieriの分類は今でもこの本が根拠となっていることです。まあ、内容はフランス語でまったく読めませんから、図譜だけ私の興味のあるものだけ見てみます。

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Euphorbia viguieri
これは我が家のE. viguieriですが、現在5つの変種がありすべてがこの本により定義されています。ちなみに、1954年のUrsch & Leandriにより4変種が分類され、それ以外は自動的にE. viguieri var. viguieriとなりました。ですから、単にE. viguieriと言った場合は、5変種を含んだ名前だったりします。とはいえ、我が家のE. viguieriは変種viguieriでしょう。


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Euphorbia viguieri var. tsimbazazae

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Euphorbia viguieri var. vilanandrensis

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Euphorbia viguieri var. ankarafantsiensis

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Euphorbia viguieri var. caproniana

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Euphorbia neohumbertii

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Euphorbia lophogona
このようなE. viguieriに似たタイプの花キリンは沢山ありますが、あまり見かけませんね。


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Euphorbia francoisii
現在、フランコイシイは存在しませんが、この花キリンは何者でしょうか? 一応、フランコイシイは現在E. decaryiとされていますが、この図譜は似ていません。かつて、E. decaryiと呼ばれていたE. boiteauiを指しているのかも知れません。

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Euphorbia didiereoides

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Euphorbia pedilanthoides

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Euphorbia finarantsoae

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Euphorbia ankarensis
現在はE. denisiana var. ankarensisとされています。


他にも気になる花キリンはありますが、まだ勉強中です。E. milii系の花キリンは最近整理されて、学名も変更されているみたいです。花キリン自体が現在でも整理中ですから、今後も変わっていく可能性が高いでしょう。学術的な動向には目が離せませんね。


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「サボテンの地理的二分法仮説」なる説を聞いたことがありますか? 私も今回記事を書くにあたって初めて知ったくらいですから、まったく偉そうなことは言えませんが、 何やら気になりました。という訳で、本日はサボテンの地理的二分法仮説について南アメリカで調査を行った、A. A. Azrabeらの2017年の論文、『Assesing the geographical dichotomy hypothesis with cacti in South-America』を見ていきましょう。

「地理的二分法仮説」とは、熱帯と温帯を比較した時に、熱帯は資源は豊富ですが一般的な花粉媒介者の種類が少なく、温帯は資源は限られますが一般的な花粉媒介者の種類は豊富であるということを指すようです。ただ、この時に熱帯の花は特殊化して花粉媒介者と強く関係を結び安定した受粉システムを持っており、温帯の花は沢山の種類の花粉媒介者が特定の関係を結ばずに受粉が起きているというのです。
過去にこの仮説は南アメリカでも検証されましたが、1種類のサボテンが該当するかを見ただけです。この研究は南アメリカのサボテンで本格的に地理的二分法仮説を検証する取り組みです。評価方法は、熱帯地域の5箇所、温帯地域の5箇所を選び、サボテンの受粉活動を観察しました。1箇所につき30個体のサボテンを監視しました。花粉媒介者の選考効果を最小化するために花の咲く高さは同程度とし、花粉媒介者の誘引に差がないように花の密度も類似した条件を選びました。

結果は、温帯のサボテンは熱帯のサボテンより1.9倍も花粉媒介者の種類が高いものでした。熱帯地域では、花粉媒介者の多様性や均一性が低下し、より専門的な受粉システムが見つかりました。しかし、これらの結果は過去に調査された、南アメリカや島嶼部での結果と一致しませんでした。
以下に調査したサボテンと、主たる花粉媒介者を一覧にしました。

熱帯地域
Cleistocactus sepium(エクアドル)
  →コウモリ、ハチドリ
Harrisia tetracantha(ボリビア)
  →ハチ目
Neocardenaria herzogiana(ボリビア)
  →ハチ目、甲虫目
Haageocereus pseudomelanostele(ペルー)
  →コウモリ、ハチドリ
Echinopsis atacamensis(チリ北部)
  →ミツバチ、ハチドリ、スズメガ

温帯地域
Echinopsis walteri(アルゼンチン北部)
  →ハチ目
Echinopsis atacamensis(チリ中央部)
  →ミツバチ、ハチドリ、スズメガ
Echinopsis leucantha(アルゼンチン中央部)
  →蛾、ハチ、鳥
Echinopsis leucantha(アルゼンチン中央部)
  →蛾、ハチ、鳥
Echinopsis chiloensis(チリ中央部)
  →スズメガ、ハチ、ハエ

※熱帯地域では1種類の花粉媒介者で全体の50%以上を占め、3種類程度でほぼ100%でした。しかし、温帯地域では1種類の花粉媒介者では全体の50%以下であり、主に4〜8種類の花粉媒介者で割と均一に訪花しています。

地理的二分法仮説は90年代半ばに策定されました。これは、北半球の熱帯地域で、柱サボテンがコウモリに依存する特殊化した花であるという評価から来ています。これらの検証はメキシコの熱帯地域と温帯地域でなされたものでした。しかし、南半球や島嶼部では結果は異なり、プエルトリコやボリビアでは、単一の花粉媒介者との親和性が見られたため、仮説は部分的にしか認められませんでした。
しかし、なぜ緯度に沿って二分されるのかは分かっていませんが、花の特徴(タイミング、色、報酬)、気候(気温、降水量)などが関係しているかも知れません。

以上が論文の簡単な要約となります。
私も地理的二分法仮説については初めて知りましたが、非常に不思議です。
それはそうと、過去の研究とは異なるということですが、当該論文を読んでいないので詳細は不明です。しかし、この論文のように条件を揃えたり、複数種を調査したりという確実性を担保するための工夫が足りていなかっただけかも知れませんね。まあ、島嶼部については別の理由があっても良さそうですけど。




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植物の花は繁殖のための器官であり、種子を作るには受粉する必要があります。ですから、植物にとって受粉は非常に重要です。当ブログも植物の受粉に関して度々記事にしていますが、それは私が非常に興味があるからでもあり、実際に植物の論文では受粉に関係するものが非常に多いという現実を映しているせいでもあります。何か面白い論文はないかと探していたら、2009年の「South African Journal of Botany」という学術誌の75号に、南アフリカの植物の受粉についてまとめた社説が掲載されていたので、本日は簡単に見ていきましょう。タイトルは『Advances in the pollination biology of South African plants』です。

1. ダーウィンから現在まで
ダーウィンは1859年に自然淘汰、1862年にランの受粉、1877年に植物育成システムについての本を出版しました。ダーウィンは受粉生物学の枠組みを提供し、ヴィクトリア朝に南アフリカに入植した自然主義者に大きな影響を与えました。この時期、南アフリカに拠点を置く博物学者による花の機能形態に関する論文がダーウィンに送られ、リンネ協会のジャーナルに掲載されました。この時期の注目すべき人物は、東ケープに拠点を置くイギリスの博物学者であるJP Mansell Wealeや、グラハムズタウンに拠点を置く入植者のMary Barber、ケープタウンの南アフリカ博物館の最初の学芸員であるRoland Trimenなどが挙げられます。
受粉生物学はダーウィンの時代に開花した後、南アフリカでは衰退しました。1951年にStefan Vogelが南アフリカに遠征し、1954年に南アフリカの花の受粉に関する画期的なモノグラフを出版するまであまり研究されませんでした。1950年から1980年の間、受粉生物学の分野では持続的な研究はありませんでした。例外は1978年のDelbert Wiens & John Rourkeによる研究で、ヤマモガシ科植物のげっ歯類による受粉の発見につながりました。1980年代には、鳥類とフィンボスの植物の受粉相互作用に焦点が当てられました。
1990年から現在までは、南アフリカでは受粉生物学の研究は著しく増加しています。注目に値するのは、アヤメ科およびラン科植物の、昆虫による高度に専門化された受粉システムや、花の擬態様式、共進化といった概念が研究されています。受粉生物学がまだ探索段階であり、次々と新しい植物鳥花粉媒介者の相互作用が発見されています。最近の論文は、効果的な花粉媒介者の特定、受粉の状況、花のポリネーターへのアピールと報酬の定量化、新しい植物育種システム、第三者による相互作用という5つのテーマがあります。

2. 効果的な花粉媒介者
①昆虫による受粉システム
Potgieterら(2009)は、Plectranthus属のS字形の花冠が花粉媒介者である蜂の湾曲した口に対する適応であり、花粉を媒介者しない、あるいは効率の悪い訪問者を排除するフィルターとして機能する可能性を指摘しました。
次に花粉媒介者に適応した送粉シンドロームと花粉媒介者の関係についてです。De Merxemら(2009)は、Tritoniopsis revolutaの細長い花は口器の長いナガテングバエにより受粉するとされてきました。しかし、ナガテングバエがいない場合、蜜が溜まって口器の短いミツバチも蜜を吸うことが出来ることが分かりました。
ミツバチは鳥媒花にも訪れます。アロエは南アフリカの代表的な鳥媒花ですが、Symelら(2009)はAloe greatheadii var. davyanaを訪問するミツバチが、重要な花粉媒介者であることを示しました。
アフリカのソテツであるEncephalartos属は、甲虫により花粉が媒介される可能性があります。Suinyuyら(2009)は、3種類の甲虫(ヒラタムシとゾウムシ)がEncephalartos friedrici-guilielmiの効果的な花粉媒介者であることを示しました。

②脊椎動物による花粉媒介
南アフリカはオーストラリアと同様に、鳥類や哺乳類による受粉に適応した割合が高いとされています。Brownら(2009)は高地のKniphora属の植物の花の、最も頻繁な訪問者はDrakensberg Siskinというヒワの仲間でした。これは、蜜を主食としない鳥による開花時期だけの花粉媒介者が、非常に受粉に重要であることが分かりました。
Westerら(2009)は、Whiteheadia bifoliaという1属1種のユリ科植物が、げっ歯類による花粉媒介を受けていることを明らかとしました。

3. 花のポリネーターへのアピールと報酬
ほとんどの植物は受粉のために動物の行動を誘導する必要があります。花粉媒介者にアピールするための花の色や香り、報酬となる蜜と花粉を利用します。
Peterら(2009)は、地生蘭であるHabenaria epipactideaの香りの生成が、スズメガの活動時間と一致していることを示しました。
上で取り上げたBrownらの論文では、Kniphoraの蜜は非常に希薄でヘキソースが優勢であり、鳥媒花に一般的なパターンであることを示しました。
タイヨウチョウ(sunbird)は蜜を専門とするスペシャリストですが、効率化した採蜜により受粉に関与しない盗蜜を頻繁に行います。Coombsら(2009)によると、ゴクラクチョウカの仲間(Strelizia reginae)の強化された花被の基部により、タイヨウチョウや昆虫の盗蜜を防ぐ障壁となっているということです。
植物は動物を利用しますが、それが無報酬であることすらあります。Combs & Pauw(2009)によると、報酬のないランであるDisa karrooicaへのナガテングバエの訪問は、近隣に生えるペラルゴニウムに似ているからかも知れません。


以上が論文の簡単な要約です。この号は花粉媒介者や受粉に関する特集号だったみたいで、そのまとめのようなものです。内容を限定したにも関わらず、内容は多岐にわたり受粉生物学の研究が盛んであることが分かると同時に、新しい知見の多さからはあまりに調査が進んでいない分野であることも分かります。
花粉媒介者と受粉のシステムは考えられていたよりも非常に複雑で、意外性のあるものでした。当ブログでも度々取り上げてはいますが、論文を読むたびに毎度驚かされます。


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世界各地には未だに伝統医学が存在し、地域によっては住民の生活に深く根付いています。特に現代医学が浸透していない開発途上国には顕著です。しかし、このような伝統医学は様々な野生の植物を利用するため、場合によっては希少な植物が用いられてしまうこともあります。このような場合、野生の植物ではなく栽培された植物を利用することが出来れば、簡単に解決するでしょう。しかし、問題は栽培した植物が野生の植物より劣っていないかという疑念です。これは、薬用植物の栽培を考案する際の一番の問題点で、栽培品を下に見るのことは世界的に一般的です。しかし、希少植物の保護の観点から薬用植物の栽培を行う場合は、栽培品はその効果が疑われ、結局は野生の希少植物が使われてしまうという悪循環を断つことが中々出来ていない現状があります。ですから、栽培品の品質の証明は野生植物の保全対策としても急務課題と言えます。本日は栽培された蒼角殿(Bowiea volubilis)を市場で取引される野生株との薬効を比較した、M. A. Masondoらの2013年の論文、『A comparison of the pharmacological properties  of garden cultivated and mutch market-sold Bowiea volubilis』を見ていきます。

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蒼角殿 Bowiea volubilis

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B. volubilisの花

蒼角殿(Bowiea volubilis)は、南アフリカ東部に広く分布し、南アフリカの伝統医学で使用される薬用植物の14%におよびます。球根にはいくつかの強心配糖体が含まれています。強心配糖体は心筋に作用し鬱血性心不全の治療にも使用されますが、使い方次第では心臓に悪影響があります。しかし、伝統医学では様々な病気に対して利用されてきました。球根の汁を分娩時に妊婦に与えたり、感染症対策に皮膚に塗布したり、眼痛に対しても使用されます。さらに、ズールーの薬草医は腹水、不妊、膀胱炎、腰痛、筋肉痛などのためにB. volubilisを処方します。

南アフリカでは公式あるいは非公式の市場の両方で、薬草植物の需要は増加しており、明らかに規制はされていません。最大の懸念は使用される薬用植物の部位の85%は、球根や塊茎、樹皮などの再生不可能な部位であることです。多くの植物が過剰収穫により絶滅、あるいは絶滅の危機に瀕しています。B. volubilisもまた、過剰収穫により減少し、南アフリカのレッドデータリストで脆弱種に指定されています。
研究者は薬用植物の絶滅リスクに対抗するために、薬用植物の小規模農業を提案しました。しかし、伝統医学のヒーラーは野生の薬用植物はより強力であると信じているため、栽培品への転換は進まないままです。

著者らは大学の植物園で栽培された約5歳のB. volubilisを、Muthi市場で取引されている株と比較しました。B. volubilisは乾燥させてから粉末にし、5gを石油エーテル(PE)、ジククロメタン(DCM)70%エタノール(EtOH)、および水で1時間の超音波処理により抽出しました。抽出物を濾過した後に真空濃縮し、これを微生物への薬効を見るためにエイムズ試験を実施しました。エイムズ試験では、4種類の最近株である枯草菌ATCC6051株、黄色ブドウ球菌ATCC12600株、大腸菌ATCC11775株、肺炎桿菌ATCC13883株、および真菌であるカンジダ・アルビカンスATCC10231株を試験しました。 
エイムズ試験の結果は、枯草菌に対しての各抽出物は栽培品と野生植物で同等あるいは栽培品の方がやや有効、黄色ブドウ球菌に対しては栽培品が有効なものと野生植物が有効なものとがあり、大腸菌は栽培品と野生植物で同等、肺炎桿菌は野生植物の方がやや有効、真菌は野生植物の方がやや有効でした。
B. volubilisは様々な感染症に利用されていますが、今回の試験結果では野生植物であっても抗菌力はかなり貧弱でした。とはいえ、今回試験された微生物以外に効果が高い可能性もあります。とりあえず、今回の結果からは栽培品と野生植物の間で大きな違いはないことが確認されました。植物の薬理活性は育ち方や年齢、サイズ、季節により異なるとされ、効果が最大となる栽培方法が分かればより有効かも知れません。


次に抗炎症作用(いわゆる消炎作用)についても試験され、栽培品も野生植物も抗炎症作用を持つことが確認されました。有機溶媒で抽出されたものより、水で抽出されたものの方が作用は強いものでした。2種類の炎症物質を阻害するかを見ましたが、1種類(COX-2)は水抽出物では栽培品も野生植物も100%炎症物質を阻害しました。もう1種類(COX-1)は水抽出物では栽培品は約50%の阻害、野生植物では90%以上を阻害しました。今回の結果から、伝統医学における疼痛および炎症性疾患に対するB. volubilisの有効性が確認されました。

以上が論文の簡単な要約となります。
抗菌力に対しては調べた範囲では曖昧な結果でしたが、消炎作用に関しては強い作用があることが確認されました。わざわざ有機溶媒を使用しなくても水で抽出可能であったことは、伝統医学での利用方法と合致しており、実際に利用される際に利便性が高いと言えるでしょう。COX-1に関しては野生植物の方が強い作用があるようですが、論文中にもあるように適切な栽培方法の確立により解決可能であるかも知れません。また、野生植物においてもCOX-2に対する効果の方が高いので、COX-2の効果に適した利用方法を考慮するという考え方もあるでしょう。
この論文の最大のネックは、その検体の少なさです。そもそも、B. volubilisが収穫された場合により生育が異なるでしょうから、期待される効果にバラツキがあるかも知れません。あちこちの産地を比較する必要があります。もしかしたら、産地により大幅に成分比率が異なるかも知れず、その場合は栽培品以下のものもあるかも知れません。さらに言えば、栽培品の生育環境が不明であり、それが標準的な栽培方法かどうか考えなければなりません。
最後に、抗菌力に関して1つだけ。本来ならば、B. volubilisが利用される地域で疫学調査を行い、その地域でB. volubilisにより治療などで対策される微生物を特定し、その微生物に対して効果があるかを見る必要があります。しかし、現実的には①薬用植物の薬理作用の研究、
②薬用植物の原産地における利用方法の調査、③疫学調査の3点はバラバラに研究されています。この3点はセットにならないと本当の意味における確証が得られませんから、本来の目的である栽培品への代替は進まないでしょう。


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冬は室内に多肉植物を取り込んでいますから、室内には水受けやらミニ扇風機やら色々ありますが、なんと未だに出しっぱなしです。最近、ようやく受け皿を洗ったりはし始めましたが、片付いておらずやや雑然としています。ネタがないので、今日は少し多肉植物の様子をご紹介します。

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Pachypodium densiflorum
春先からずっと開花しています。

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枝が多いので、どれかしらの枝から花茎が出て来ます。

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Dioon spinulosum
新しい葉が出てきましたが、我が家のソテツの中ではかなり遅いフラッシュ。


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Dioon edule
スピヌロスムよりエドゥレの方が早かったので、整った美しい葉が展開中です。


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Zamia furfuracea
フルフラケアは新しい葉の展開はすでに完了しました。

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Aloe bowiea
初めての開花です。
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非常に地味な花ですが、株が充実してきた証拠でしょう。 しかし、この地味であまり開かない花は、ミツバチではなく蛾により受粉するのかも知れませんね。

なにやら、風邪を引いて治りかけたと思ったらまたかかってみたいなことを繰り返していましたが、これは私だけではないみたいですね。たちの悪い風邪が小学校で大流行しており、長引くのが特徴みたいです。最近、会社の同僚が子供から風邪をうつされたらしく、毎日激しく咳き込んでおり、案の定私もうつされてさしまいました。まあ、うつされたのは私だけではありませんが。とにかく咳が止まらないので、休日は家に引きこもっています。体調不良というよりは周囲に風邪をばらまいて歩きたくないですからね。咳が治まるまでは、しばらくは色々と自重です。


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花はそのサイズや形、花色により、花を訪れる花粉媒介者はある程度は決まっていたり制限されています。小さな花はそれだけで訪問者をある程度は限定しますし、細長い管状の花ならば差し込むことが出来る細長いクチバシや口吻が必要です。逆に巨大な花ならば、ミツバチのような小型の昆虫は花粉に触れることがなく、花粉に触れていても柱頭に触れることがなければ受粉しませんから有効な花粉媒介者とは言えません。学術的には花の構造などから有効な花粉媒介者が想定されており、花を訪れても受粉には重要な役割を果たしていないと見なされることがあります。しかし、それは実際の調査により観察され、花粉媒介者の種類により結実するか否かを確認する必要があります。本日は、そんな本来予測される花粉媒介者ではない花粉媒介者の意義について調査したD. Geelhand de Merxemらの2009年の論文、『The important of flower visitors not predicted by floral syndrome』をご紹介します。

論文で調査の対象となるのは、Tritoniopsis revolutaという南アフリカ固有のアヤメ科植物です。管状の花を咲かせ、長い口吻を持つProsoeca longipennisというツリアブモドキ科の昆虫(以下、ナガテングバエ)により受粉すると考えられています。この論文では、本来の花粉媒介者ではないAmegillaというミツバチがT. revolutaの花を訪れる意義について調査しています。
T. revolutaは産地により花の長さが異なり、管状の花に適応した花粉媒介者により受粉すると考えられています。Swartberg山地ではT. revolutaの管の長さは14〜34mmで観察によりテングバエ(Prosoeca ganglbaueri)が花を訪れることを確認しました。Langeberg山地では管の長さは最大84mmに達しており、これまでの観察では花粉媒介者は不明なままです。ナガテングバエは38〜40mmの口吻を持ち、T. revolutaの花粉媒介者とされますが、その口吻はLangeberg山地のT. revolutaの花より短いものでした。

著者らはLangeberg山地のGysmanshoek峠沿いに生えるT. revolutaを調査しました。峠の北側には非常に長い花(平均55.8mm)が生え、南側には短い花(平均30.5mm)のT. revolutaが生えていることがわかりました。また、Tradouws峠の北側には非常に長い花(平均69.6mm)を持つT. revolutaが自生します。Tradouws峠の南側には短い管状の花(平均10.6mm)を持つTritonio ramosaが自生しますが、ミツバチにより受粉したという記録があります。さらに、Potberg近郊のDe Hoop自然保護区に短い花(平均29.6mm)を持つT. revolutaでも観察されました。観察は日中に花を訪れた昆虫の種類と、実際の花の長さ、花が受粉し種子が出来たかを確認し受粉成功率を算出しました。

結果として、T. revolutaにはミツバチがどの場所でも訪れました。ミツバチはGysmanshoek峠の短い花に頻繁に訪れ、Gysmanshoek峠の長い花とT. ramosaにはあまり訪れませんでした。Tradouwsではナガテングバエが採集されました。また、GysmanshoekではCosmina fuscipennisというハエが花粉を食べている様子が観察されています。このC. fuscipennisというハエは、9匹中1匹のみが花粉を持っていました。ミツバチ(
Amegilla)は21匹中18匹で86%が花粉を持っていました。他の種類のミツバチも7匹中5匹で花粉を持っていました。ナガテングバエは採集された1匹には花粉がありました。
口吻の長さはミツバチでは4.6〜8.6mmでしたが、ナガテングバエでは71.3mmでした。これは、TradouwsのT. revolutaの花の長さと一致しています。しかし、著者らの3年間に及ぶ観察では、ナガテングバエはほとんど観察されていません。ミツバチ(
Amegilla)は数が多くT. revolutaの花に頻繁に訪れ、花粉が付着している可能性が高いことから、T. revolutaにとってミツバチが重要な花粉媒介者であると考えられます。ミツバチは長い花にはあまり訪れず、短い花により多く訪れました。長い花は種子が少なく、短い花のT. revolutaはT. ramosaと同じくらいの種子を作りました。これらの結果から何が言えるでしょうか?
著者はナガテングバエが豊富にいた場合は、ミツバチは蜜にアクセス出来ず頻繁に訪れないと言います。これは、ナガテングバエは口吻が長く上手に蜜を吸ってしまうため、競合したらミツバチには分が悪いということなのでしょう。ただ、ナガテングバエの個体数は変動が激しく、ナガテングバエが少なければミツバチがメインの花粉媒介者となるのでしょう。

以上が論文の簡単な要約となります。
T. revolutaの花はミツバチの口吻の3倍程度の長さがあることから、T. revolutaはナガテングバエの受粉に適応している可能性は高いのですが、短い花ならばミツバチにより受粉します。どっちつかずな気もしますが、花の長いT. revolutaはナガテングバエとの共生を強化していき、いずれミツバチが完全にアクセス出来ないより長い管状の花に進化するかも知れません。しかし、短い花はミツバチにより受粉しますから、花が長くならないかも知れません。ミツバチは学習効果により、短い花が生える地域に多く訪れますから、やがて生殖隔離が起きて別種となるかも知れませんね。


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昨日はコウモリや蛾により受粉する柱サボテンについての論文をご紹介しました。論文で調査されたPilosocereus leucocephalusは夜間に開花する柱サボテンでした。夜間に咲く花は白色のものが多いのですが、サボテンは日中咲くものの方が多いでしょうし、花色も多様です。日中に花が咲くサボテンの受粉はどうなっているのでしょうか? 一般的に花の受粉は蜂の役割が大きいとされますが、アフリカの大型アロエは様々な鳥が蜜を吸いに来ますし、受粉に対する寄与は蜂よりも鳥の方が大きいことが明らかになっています。アメリカ大陸にはハチドリという花の蜜に特化した鳥が分布し、ハチドリに受粉を依存する鳥媒花も存在するはずです。という訳で、本日はP. Gorostiague & P. Ortega-Baesの2014年の論文、『Haw specialised is bird pollination in the Cactaceae?』をご紹介します。サボテンの鳥媒花に関する調査を実施しています。

一般に南アメリカでは鳥媒花のサボテンが多いとされ、主にハチドリにより受粉すると考えられています。Oreocereus属、Cleistocactus属、Matucana属、Denmoza属などの細長い管状の花は、鳥媒花として進化してきたとされています。論文で調査したサボテンは高地性のCleistocactus属で、管状の赤系統の花を咲かせます。Cleistocactus baumamniiとCleistocactus smaragdiflorusは、管状の細長い花を咲かせ、ほとんど開かず先端が少し開くぐらいです。調査地はアルゼンチンのSalta州、La Bodeguitaです。

観察の結果、C. baumanniiにはハチドリだけが訪れました。C. smaragdiflorusは、ハチドリとクマバチ(Xylocopa)、さらにミツバチが訪れました。花からは蛾の鱗粉の付着はなく、UVランプで捕獲された蛾にはCleistocactusの花粉はありませんでした。

調査された2種類のCleistocactusは赤い管状の花を持ち、典型的な鳥媒花の特徴を持ちます。この管状の花は鳥類形質(ornithophilous trait)とも呼ばれ、他の花粉媒介者に対する物理障壁として機能する可能性があります。また、鳥が訪れる花の花粉は赤いことが多いようです。

以上が論文の簡単な要約です。
論文では過去のサボテンの花粉媒介についても長々と解説されていましたが要約が難しく、話があちこちに飛んで焦点を絞れないため割愛させていただきました。
さて、内容についてですが、今回調査したCleistocactus2種は、花色的にも形状からも日中に訪れる花粉媒介者により受粉している可能性が大きいことが分かります。さらに、C. baumanniiはハチドリ以外の花への訪問者はなかったことから、この種は鳥媒花に特化しているようです。C. baumanniiの花はほとんど開かないため、細長いクチバシを差し込むことが出来るハチドリ以外は利用出来ないのかも知れません。C. baumanniiはハチドリに非常に強く依存しており、おそらくはハチドリ以外では受粉出来ないのでしょう。
調べるとサボテンも中々面白い話が沢山あるようです。他にも何か面白い論文がないか調べてみようと思います。


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本日はElaiosmeなる種子に付いた謎の栄養分についての論文をご紹介する予定でした。Elaiosmeについて基本的なことがわかりそうな論文が見つかったのでPDFをダウンロードしたところ、何故か違う論文でした。リンク先が誤っているというか、2つの論文が逆になっているのかと、ダウンロードした論文のタイトルで検索してダウンロードしたところ、また別の論文が出てきてしまいました。もうめちゃくちゃですね。仕方がないので、論文の掲載誌に飛んでダウンロードしましたがエラーが出てしまい、時間を変えてダウンロードして下さいというメッセージが表示されてしまいました。サイト自体が駄目みたいです。いやはや、困ったことです。という訳で、本日は誤ってダウンロードしてしまった論文を、せっかくなのでご紹介したいと思います。それは、Antonio Mipanda-Jacomeの2019年の論文、『Bats and moths contribute to the reproductive success of the columnar cactus Pilosocereus leucocephalus』です。もう、タイトルからして「コウモリと蛾は〜」で始まってますからね。たまたまダウンロードしたのに、すでに面白そうです。早速内容を見てみましょう。

柱サボテンの花は釣鐘形でピンク色がかった白色、不快な臭いが特徴で、このタイプの花を「chiropterophilic flowers」と呼んでいます。論文で調査したPilosocereus leucocephalusもchiropterophilicな花を咲かせます。P. leucocephalusは過去に昼間を訪れる花粉媒介者(蜂や鳥)と夜間に訪れる花粉媒介者(コウモリや蛾)の受粉への貢献度が調査されています。P. leucocephalusの花を観察すると、鳥や蜂も花を訪れていましたが、昼間の花粉媒介者による結実は11.9%に過ぎず、夜間の花粉媒介者により88.1%が結実していました。
柱サボテンの受粉は、一般にコウモリによるものと考えられています。しかし、赤外線カメラにより蛾も柱サボテンの花を訪れていることが明らかになりましたが、蛾は花粉や柱頭に触れていないため受粉には寄与しないと考えられて来ました。

この論文では、P. leucocephalusを夜間に訪れるコウモリと蛾により、花が受粉したかを調査しました。コウモリや蛾は夜間に活動するため直接の観察は困難です。だからと言ってライトを使用すると、訪れる花粉媒介者に影響を与えるかも知れません。論文では、3.5cmメッシュの金属製のカゴによりコウモリが入れない花と、ナフタレンを花の周囲に撒いて蛾が来ないようにした花を準備しました。赤外線カメラで花を観察し、訪れた花粉媒介者の種類を特定し、実際にその花が結実したかを確認しました。
観察では、全体的な花への訪問率は、蛾は62.3%でコウモリの37.7%より高いものでした。しかし、柱頭や葯に花粉媒介者が触れた割合は、蛾は28%でコウモリほ95%でした。しかし、赤外線カメラの観察では詳細は不明瞭でしたから、蛾の訪問は過小評価されているかも知れません。
実際に花が結実したかを確認したところ、コウモリが訪れた花は100%が結実し、蛾が訪れた花は34%が結実しました。

結果としてP. leucocephalusの主要な花粉媒介者はコウモリでした。これは、コウモリが毛深く花粉を大量に運搬し、機動力に優れているためと考えられます。対して、蛾の受粉への貢献度はコウモリよりも低いものでしたが、訪れる数が多く必ずしも無視出来ない結実率でした。蛾の受粉は以前に考えられて来た以上に重要である可能性かあります。

以上が論文の簡単な要約です。
花粉媒介者がいなければ受粉出来ませんから、花粉媒介者は植物にとっては重要なファクターです。しかし、花粉媒介をするコウモリは季節により渡りをする習性があり、渡りの移動先の環境破壊によりコウモリは最近非常に数が減少しています。コウモリの数が好転する可能性は低く、将来的な柱サボテンの花粉媒介者の絶滅は時間の問題かも知れません。今回の論文の調査により、コウモリだけではなく蛾も受粉にある程度は貢献することが明らかとなりました。コウモリの減少が進んでも、受粉はゼロにはならないことは柱サボテンにとってプラスの要因です。しかし、受粉率の低下により、野生の柱サボテンの数は除々に減少していく可能性があります。そう考えるとあまり安心は出来ない現状ではあります。将来的にも巨大な柱サボテンが育つ、素晴らしい自生地の姿が見られなくなるのは悲しいことです。


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標高と植生は非常に強い関連があります。標高と植生などと言うと、いったい何のことを言っているのかと思われるかも知れませんが、簡単に言うと山に登ると生えている植物が変わりますねというだけのことです。山に登ると除々に気温が低下していきますから、温帯にある山に登っても、頂上のお花畑で見られる植物は亜寒帯と似ていたりします。これは、氷河期に現在の温帯域まで分布を拡大した北方の植物が、氷河期の終焉の際に涼しい山地に取り残されたものです。まあ、それほどの高地ではなくても、平地と異なる環境に適応した植物が優勢になりますから、北方からの遺存種だけではなく在来の植物にも変化があります。では、多肉植物は標高の変化により、何かしらの違いが生じるものなのでしょうか?
という訳で、本日は標高の違いとサボテンの関係を調査したD. E. Gurvichらの2014年の論文、『Diversity and composion of cactus species alnong an altitudinal gradient in the Sierras del Norte Mountains (Cordoba. Argentina)』です。早速見てみましょう。

アルゼンチンのコルドバ州のSierras del Norte山脈のサボテンの豊富さと組み合わせを明らかにすることを目的としています。標高203〜970mの55点において調査し、8属24種のサボテンが確認されました。11種類が球状、5種類が短い柱状、3種類は柱状、5種類はウチワサボテン型でした。最も頻繁に見つかったのは、81%で見つかったOpuntia sulphurea(ウチワサボテン型)と、56%で見つかったGymnocalycium erinaceum(球状)でした。1箇所でのみ見つかったのは、外来種のOpuntia ficus-indica(ウチワサボテン型)でした。次に少なかったのは、2箇所で見つかったGymnocalycium robustum(球状)、Opuntia salmiana(ウチワサボテン型)、Cereus aethiops(短い柱状)でした。
ギムノカリキウムの6種、Gymnocalycium bruchii、Gymnocalycium monvillei、Gymnocalycium erinaceum、Gymnocalycium mostii、Gymnocalycium robustum、Gymnocalycium quehlianumはコルドバの固有種であり、そのうちG. erinaceumとG. robustumはこの調査地点に固有です。

注 ) 柱状のサボテンとは、論文では「Arborescent」、つまりは「樹木状」となっています。これは、背が高くなって枝分かれする柱サボテン状の育ち方のサボテンのことです。「樹木状」と訳してしまうと、コノハサボテンと間違う可能性があるため「柱状」としました。ここで、「柱サボテン」と訳さなかったのは、「Arborescent」にはウチワサボテンであるOpuntia quimiloを含んでいたからです。ちなみに、「ウチワサボテン型」というのも、「ウチワサボテンのような」という意味ですから、O. quimiloを除外しています。

柱状のサボテン以外は全体的に1種類は確認されましたかが、柱状のサボテンは600m以上の標高には分布しませんでした。球状のサボテンでは、G. erinaceumは広い範囲の標高に分布しましたが、G. bruchii、Parodia erinacea、G. monvilleiは狭い範囲の標高に分布しました。ウチワサボテン型のサボテンは標高との関連は見られませんでした。

高い標高に特徴的なサボテンはすべて球状で、G. monvillei、G. bruchii、P. erinaceaでした。対する低地には、Stetsonia coryne(柱状)、Cleistocactus baumannii(短い柱状)、G. schickendantzii(球状)がよく見られました。

種の豊富さは、調査地点により1〜11種類と変化があり、平均5種類が観察されました。傾向としては、標高が高いほど全体の種類は減少し、柱状および短い柱状のサボテンは標高が低いほど豊富でした。

標高により形態が単調になるのはすでに報告がありますが、この研究では柱状および短い柱状の種類の減少として見られます。この結果は、形態が低温に異なる反応を示すことを示します。背が高い柱状のサボテンは、より低温に影響されます。球状のサボテンは背が低いことが低温に耐えられる要因かも知れません。球状のサボテンは低温に耐性があるものの、その特徴は暖かい環境では優位にはならないということです。著者らは、これらの標高と植生の関連を、主に低温に由来すると考えています。しかし、一般に標高が上がるとより乾燥する傾向があります。種子の発芽などを考慮するならば、標高と乾燥の関係性も調査する必要を感じているそうです。

以上が論文の簡単な要因となります。
サボテンも標高により遷移があるということが明らかになりました。この論文は調査地がアルゼンチンのSierrar del Norte山脈でしたが、他の地域ではどうでしょうか? サボテンの構成や環境が異なると違いはあるのか、あるいはサボテン以外の多肉植物ではどうかと、興味が尽きない話題かも知れません。
さて、論文では24種類のサボテンを4つの形態に分類して分析していました。一応、それらを一覧で示すことにします。

①球状のサボテン(Globose)
Echinopsis aurea
Echinopsis spiniflora
Gymnocalycium bruchii
Gymnocalycium erinaceum
Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium mostii
Gymnocalycium quehlianum
Gymnocalycium robustrum
Gymnocalycium schickendantzii
Parodia erinacea
Parodia mammulosa

②短い柱状のサボテン(short columnar)
Cereus aethiops
Cleistocactus baumannii
Echinopsis candicans
Echinopsis leucantha
Harrisia pamanensis

③柱状のサボテン(Arborescent)
Cereus hankeanus
Stetsonia coryne
Opuntia quimilo

④ウチワサボテン型のサボテン(Opuntioid)
Opuntia anacantha
Opuntia elata
Opuntia ficus-indica
Opuntia salmiana
Opuntia sulphurea


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本日は小ネタです。『Southern African Journal of Botany』という学術誌に、研究の要約が掲載されていました。今回は、南アフリカの花の受粉に関する2つの記事をご紹介します。記事のタイトルにあるポリネーターとは、花の花粉を運ぶもの、つまりは花粉媒介者のことを指します。

1本目は、アフリカで花の蜜を吸うことに特化した鳥であるタイヨウチョウの、花の色に対する好みを調査したA. Heystekらの2013年の記事、「Flower color preference of sunbird pollinators」です。
植物が別種に進化する際、花色などに変異が生じる可能性がありますが、花粉媒介者の好みにより新たなタイプが維持されるかが決定されるのかも知れません。花色の多型はフィンボスのEricaで頻繁に生じ、Orange-breasted Sunbird(Anthobaphes violacea)による採蜜により受粉します。調査では白とピンク色の二色性の花を咲かせるErica perspicuaを観察し、花を訪れるタイヨウチョウを記録しました。タイヨウチョウは花から隣の花へ移動しながら採蜜しますが、色ではなく距離が近い花へ移動し採蜜しました。花色を考慮しないのであれば、二色性の花の多型が維持される可能性は低くなります。しかし、タイヨウチョウが最初に選ぶ花は87%がピンク色の花でした。タイヨウチョウが訪れた花の受粉率は花色で違いはありませんでした。
以上が記事の内容ですが、タイヨウチョウはアロエやガステリアの受粉に関与するため、私も気になる存在でした。記事を読んだ感想としては、おそらくはタイヨウチョウには花色に対する好みがあるのでしょう。しかし、それよりも少ない移動距離で効率的に採蜜する行動が優先された結果として、タイヨウチョウの持つ花色に対する好みがマスクされてしまった可能性があります。

2本目は、養蜂が鳥媒花に及ぼす影響を調査したS. Geerts & A. Pauwの2009年の記事、『Does farming with native honeybee affect bird pollination in Cape fynbos?』です。
飼育されたミツバチは、自然環境の在来植物や花粉媒介者に悪影響を及ぼすことが知られています。野外の自然環境下で養蜂の影響がテストされた研究はありませんが、養蜂により環境中のミツバチが自然な数より多くなり過剰になる可能性があります。記事ではミツバチの巣箱を南アフリカのフィンボス地域に設置し、野生のヤマモガシ科植物を対象に観察しました。主に蜜が利用出来るのか、採蜜する鳥の数、鳥の多様性、ミツバチの豊富さを、巣箱の設置前後で比較しました。結果として、環境中のミツバチの数を増やすことは出来ましたが、蜜の利用可能性、鳥の個体数、鳥の多様性に変化はありませんでした。ミツバチの密度が高い場所では、サトウガラという鳥は減少しましたが、単なる傾向であり重要なものとは見なされません。ヤマモガシ科植物の豊富な蜜は、資源をめぐる競争の可能性を排除するようです。ミツバチが影響を与える場合は、蜜の量が制限されるような環境が考えられます。よって、ミツバチが環境中に増えたとしても、ヤマモガシ科植物とその蜜を食べる鳥には悪影響はないと結論づけます。
以上が記事の内容となります。ミツバチは花の受粉にとって重要なことは知っていましたが、競合する採蜜者に影響を及ぼす可能性をすっかり失念していました。確かにミツバチが増えて蜜を独占してしまえば、競合に負ける花粉媒介者が現れるでしょう。しかし、その場合に、競争相手として想定されるのは、同じ採蜜性の在来のハチでしょう。移動距離から考えても、鳥の方が範囲が広く、花がないなら容易に他の地域に移動してしまいます。また、蜜が豊富ヤマモガシ科植物ではなく、蜜に制限がある小型〜中型の花ではどうでしょうか? より影響が強く出るのような気がします。少し気になることもあります。それは、採蜜=受粉ではないということです。動物が蜜を求めて花を訪れたとしても、雄しべや雌しべに訪蜜者が触れなければ受粉は起こらない訳で、植物からすればただの蜜泥棒ということになります。記事にあるヤマモガシ科植物はミツバチにより受粉しているのでしょうか? 気になることが沢山ありますね。


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植物栽培は様々な病害虫との闘いですが、そのなかでも致命的なのはウイルス病です。簡単に伝播・蔓延し、基本的に治す手段はありません。この植物のウイルス病については、何故かあまり園芸書にも詳しく書かれていません。そんな植物のウイルス病について書かれた珍しい本がありますので、ご紹介します。本日ご紹介するのは、井上成信による『ランのウイルス病 診断・検定・防除』(農文協、2001年)です。

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植物のウイルスはインフルエンザウイルスのように、空中を漂って感染したりはしません。基本的に接触感染ですが、ウイルスに感染した植物に触れた手で他の植物に触ると感染する可能性があります。特に植え替えの際にランの根は傷つきやすく、大量のウイルスが手に付くことになります。また、株分けや枯れ葉の処理のために使用したハサミやナイフからも感染します。また、アブラムシ、ハダニ、アザミウマ、センチュウなどにより媒介されます。灌水した際に鉢底から流れ出る水からもウイルスは検出され、特に吊り鉢から流れ出る水がウイルスをばらまくことがあります。面白いことに、市販のタバコはタバコモザイクウイルスが90〜100%という高率で含まれているという報告があります。しかも、紙巻きタバコに加工されていても感染力があるため、タバコをもみ消した時などに葉に指が触れた手で植物に触れると、感染が起こる可能性があるということです。
基本的にウイルス病は治す手段がないため、持ち込まないことが重要です。そして、感染源となるアブラムシやハダニの防除に努めるしかありません。また、ウイルス病の鉢があった場所に、他の鉢を置くと感染してしまうため、置き場を流水でよく洗い、漂白剤などで消毒します。鉢同士も葉が接触しないように少し離し、落ち葉が他の鉢に落ちないように気を配る必要があります。使用するハサミやナイフ、ピンセットなども使いまわしはせず、流水で物理的な汚れを取り除いてから消毒します。鉢や用土の使いまわしはウイルスの感染が起きるため注意が必要です。用土は使いまわしはせず、鉢はしっかりと洗浄と消毒が必要です。
本書は様々な種類のウイルス病についての専門的な解説もありますが、興味を引くのはなんと言っても様々な症状が写真で示されていることです。ウイルス病ではよくあるまだら模様になるだけではなく、葉がよれたり、褐斑を生じたり、凹みを生じたりと症状は様々です。

以上が本の一部を抜粋したです。あくまでランの話であってサボテンや多肉植物には関係がなさそうですが、必ずしもそうとは言えません。ランはウイルス病の見本市のようなもので、とにかくウイルス病はなんでも感染してしまうため、このような本が出たわけです。しかし、植物のウイルス病は本来の宿主とは異なる植物にも感染するため、サボテンや多肉植物にも野外の植物からアブラムシやハダニなどを介してウイルスが感染する可能性があります。実際にランのウイルスを鑑定するために、他の植物にランのウイルスを接種する試験があるくらいです。

植物のウイルス病と言えば、オランダのチューリップバブルの頃は、モザイク斑がウイルス病であると分からず、非常に高額で取引されました。これは、日本の古典植物にも見られ、江戸時代の園芸書の品種には、明らかにウイルス病とおもわれるものがありました。本書でも、寒蘭などの古典園芸で用いられてきたCymbidiumには、「金砂」と呼ばれる明瞭な斑が現れるタイプがありましたが、これはORSVというウイルスによるものでした。この事実は著者が明らかにしたということですが、植物に価値がなくなるため、中々受け入れられなかったそうです。しかし、ウイルス斑であるか否かなど我々のような素人には分かりませんから、斑入りの植物を目の前にした時に区別が付かない気もします。


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私はハウォルチアをいくつか育てていますが、基本的に硬葉系、つまりは現在のHaworthiopsisばかりです。硬葉系ハウォルチアのイボイボした連中が好みです。しかし、相変わらず本物のファスキアタ(H. fasciata)は見かけず、アテヌアタ(H. attenuata)系統ばかりです。まあ、アテヌアタはアテヌアタで改良が進み、コレクションするのにうってつけです。何だかんだで、私もアテヌアタを見かけるとついつい買ってしまいます。さて、そっくりさんとして有名なファスキアタとアテヌアタが、まあまあ集まりましたから、箸休め的な軽い記事にしてみました。

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十二の巻
日本では昔からありますが、有名な割に由来がよく分からない多肉植物です。日本で作出された園芸品種と言われています。葉の内側にイボがある特徴からは、十二の巻がアテヌアタ系とするのが妥当でしょう。しかし、純粋なアテヌアタとも考えにくいため、アテヌアタ系としておくのが穏当かも知れません。十二の巻は若干外見が異なるいくつかのタイプがあることから、おそらくは交配種なのでしょう。最近は大柄の荒々しいバンドの品種も十二の巻の名前で販売されていますが(次の十二の巻)、交配種を十二の巻と称しているだけで、本来の十二の巻ではない気がします。

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十二の巻
バンドが荒々しく入るタイプ。実は従来の十二の巻の方が、均整がとれて美しい姿となります。最近はこちらのタイプも十二の巻として販売されています。

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松の雪
アテヌアタのバンドがつながらず、細かく散るタイプ。私の手持ち個体は、やや均整が乱れた姿です。

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アテヌアタ 特アルバ
アテヌアタの選抜品で、バンドは太く強いのですが、どうにも姿が乱れてしまいます。

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スーパーゼブラ
バンドが太いアテヌアタ系の品種です。通常の十二の巻に一番近いバランスの良い姿です。ラベルにはH. fasciataとありますが、葉の内側にもイボがあるためアテヌアタ系でしょう。純粋なアテヌアタではなく十二の巻の選抜品種なのでしょう。

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Haworthiopsis attenuata f. tanba
アテヌアタの矮性品種。品種改良されたものではなく、野生の個体が由来です。

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Haworthiopsis fasciata DMC05265
次はファスキアタです。フィールドナンバー付き。バンドはよく見るとつながっていません。

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Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
ファスキアタの矮性品種。野生の個体が由来みたいですが、あまり情報がありません。イボは小さくまばらです。

思うこととして、本来のアテヌアタは葉が開いた形なのではないかということです。私の手持ちでは、特アルバと松の雪、f. tanbaは純粋なアテヌアタですが、葉は開きます。しかし、十二の巻は葉があまり開かないため、あるいはファスキアタの血も入っているのかも知れません。ただ、特徴的には葉の内側にイボがあるため、アテヌアタ系のように見えます。単純に良型の個体を選抜しただけの可能性もありますが、なにせ十二の巻の誕生は非常に昔のことですから真相は誰にも分からないでしょう。しかし、由来が分からないにも関わらず、十二の巻は非常に優れた園芸品種です。丈夫でちゃんと育てれば大変美しいものですが、その丈夫さ故に室内でインテリア代わりにされて徒長していたり、野外で放置されてカリカリに干上がっている十二の巻を見るのは悲しくもあります。

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去年、神代植物公園で開催された多肉植物展へ行きましたが、素晴らしい仕上がりの十二の巻がありました。普及種であっても、ちゃんと育てればこれだけの貫禄が出るのです。このような素晴らしい十二の巻を育てられるようになりたいものです。


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多肉植物の論文を読んでいると、大抵の多肉植物は様々な原因で減少しており、絶滅が危惧されているものも珍しくないということが分かります。都市開発や農業開拓などの大規模な環境破壊もありますが、放牧による家畜の踏みつけなども侮れない要因です。しかし、他の植物と比べて多肉植物に多いのは、違法採取による減少です。
しかし、自生地の環境の悪化や開発に関しては、現地調査による論文がありますが、違法採取や違法取引に関しては正確な状況は不明瞭です。本日はサボテンの違法取引に対する、我々のような趣味家の意識調査を実施したJared D. Margulieらの2022年の論文、『Prevalence and perspective of illegal trade in cacti and succulent plants in the collecter community』を参照にしてみましょう。

論文では、違法な野生生物取引(IWT)は生物多様性に対する深刻な脅威であるにも関わらず、違法な植物採取と違法取引の蔓延に関する研究は不足しているとしています。サボテンと多肉植物の愛好家のいくつかのグループの441人を対象に、サボテンと多肉植物の違法採取や違法取引に関するアンケートを実施しました。
違法なIWTは比較的裕福な国が主体となり、植物の違法取引は量も金額でもIWTの大部分を占めます。植物は絶滅の可能性のおそれのある種の国際取引に関する条約(CITES)に記載される種の85%にもなります。鑑賞用に国際取引される植物の中でも、サボテンと多肉植物は過剰採取により最も強く脅かされており、その多くは違法です。国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストのサボテンの評価では、種の31%が絶滅の危機に瀕しており、47%が鑑賞用のコレクションのための採取の影響を受けていることが明らかとなっています(2015年)。

CITESに対する意識調査
調査はオンラインの匿名で実施され、主にアメリカ合衆国とイギリスの愛好会を対象としました。
回答の59%はサボテンの国際輸送にはCITESの文書が必要であることを知っていましたが、他の多肉植物(Aloe、Pachypodium、Euphorbia)においてもCITESに関係していることを理解している人はあまりいませんでした(39%以下)。また、メキシコのサボテンの種子の国際輸送にCITESの許可が必要であることは、回答者の半数(50.8%)が知っていました。

CITESに関する意識調査では、CITESがサボテンや多肉植物の保護のために非常に重要である(60.6%)、やや重要である(26.5%)と捉えています。また、CITESがサボテンや多肉植物の違法採取や違法取引を減らすためにやや役立つ、あるいは非常に役立つとする回答は72%に上りました。しかし、一方で否定的な意見もあります。例えば、「種子は自由取引されるべきで、種子からの栽培は利益の少なさから植物密輸業者には旨味がありません。CITESがあっても違法取引は行われており、CITESは金銭的利益のために生息地での商業的違法採取を止めていません。それは、種子から苗床で栽培された無害な国際取引を違法としているため、監視されていない密輸を奨励する結果となっています。」という意見がありました。CITESの有効性に関しての懸念は、CITESは種の喪失に対する主要な脅威に対処していない、あるいは不十分な抑止であるとするものでした。回答者はCITESは重要であることは認めつつ、「希少種の繁殖は促進されるべきで、そのような植物が合法的に購入できるのならば、違法採取はなくなるでしょう。」と、ただ禁止するだけのシステムを批判し解決策を提示しています。

さて、このようなCITESに対する懸念にも関わらず、74%の回答者は野生のサボテンと多肉植物の採取が非常に深刻な問題であり、71%が違法採取の問題の増加を認識していました。回答者は野生植物の採取は受け入れられないと考えています。愛好家は野生植物の採取より種子の採取に肯定的でした。

では、実際の愛好家たちの植物の取引について見てみましょう。結果、回答者の5.3%が書類なしで植物を購入し、8.6%が書類なしで植物を輸送したと回答しました。
回答者の85%がサボテンと多肉植物の愛好会が植物保護の取り組みにおいて、重要なあるいは非常に重要な役割を持っていると報告しました。回答者はCITESが愛好家と協力し、植物を合法的かつ安全に繁殖と配布を行うことを望んでいました。

CITESに対する疑念
回答者はCITESの存在とサボテンと多肉植物の国際取引の許可にかなり精通し、ほとんどの回答者がCITESを非常に重要であると捉えていました。しかし、27%の回答者はCITESの有効性に対して不確実性あるいは疑問を呈し、一部はCITESに関する十分な知識の欠如によるものでした。回答者の認識としては、CITESは「欠陥がある」、「効果がない」、「多くの抜け穴がある」としており、大幅な改訂を望んでいます。CITESに対する信頼の低下は、貿易規制を無視することを正当化してしまう原因になる可能性があります。

東アジアが原因?
回答者の中には、違法採取の深刻化は北米やヨーロッパの趣味家には関係がなく、東アジアの趣味家の問題であると回答しました。しかし、実際に最近起きている事件は、アジア地域特有の問題ではなく、ヨーロッパやアメリカ合衆国でも依然として問題となっています。このような、「擦り付け」は非常に人気があるようです。しかし、ヨーロッパ地域とアメリカ合衆国だけではなく、多肉植物の違法取引需要の中心地の1つとして、中国、日本、韓国を含む東アジアが重要なことは確かであり、調査が必要です。

違法取引を減らすことは可能か?
回答者はCITESに詳しく、愛好会に対して教育すれば良いという問題ではないことが明らかとなりました。サボテンや多肉植物の愛好家は人工繁殖した植物や種子の提供し、サボテンや多肉植物の保全に対し貢献できると考えています。著者らは保全対策立案者やCITES締結国に対し、利害関係者との協議を奨励します。合法で人工的に繁殖した植物のみを収集することを提唱すると共に、愛好会内の違法取引を減らすことが不可欠です。

以上が論文の簡単な要約です。
基本的にCITESは違法取引の監視と規制が主体であり、希少植物の取引自体を減らすための取り組みが、十全になされているとは言えません。回答者の例にあるように、希少植物の人工繁殖により流通量を増加させる取り組みは必要だと思います。しかし、この方法は規制に穴を開けるために悪用されたり、偽装が行われる可能性があるでしょう。しかし、ただ手をこまねいているより、監視体制や取引を厳格にすることなどにより、運用すべきではないでしょうか。現状は守りに入っているだけですが、これからは積極的に違法取引の旨味を1つずつ潰していく必要を私は感じます。


あと、日本を含めた東アジアの違法取引の現状については、私にもよく分かりません。ただし、 Pachypodium rosulatum subsp. graciliusなどの現地球が、あちこちの園芸店に当たり前のように置かれ、その状態が10年以上続いている現状は恐ろしく感じています。近年ではコピアポアが人気なようですが、取引が禁止されている現地球と思われるサイズの黒王丸(Copiapoa cinerea)がなぜか市場に現れているようで、何かしらの疑念が拭えません。とはいえ、日本政府がCITESを無視しているという事実はなく、日本もCITESに従い希少植物の輸入を禁止していますし、摘発された事例もそれなりにあります。しかし、事実として沢山の希少植物が輸入されていることもまた事実ですが、必要な書類が揃っていれば日本政府はそれ以上の追求は出来ないため、日本政府を責めても解決はしないでしょう。むしろ、現地球の入手に関して、我々趣味家の意識を変えることの方が重要かも知れません。現地球の購入や栽培は、あるべき趣味家の姿として恥ずべきことであるという共通認識を持ち、現地球の栽培に対して批判的な姿勢を趣味家の多くが持つことが出来れば、国際的な批判を受けざるを得ない現状を変えることが出来るかも知れません。完成された現地球を調度品のように飾るのではなく、日本で実生された苗を現地球の姿を目指し工夫して育て上げることは、むしろ趣味家としての本懐であり本来のあるべき姿であると言えないでしょうか?


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暑い日もあり、まったくハウォルチアの季節ではありませんが、いくつか花が咲いたのでご紹介します。まあ、ほとんど硬葉系ですけどね。

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Haworthiopsis fasciata DMC05265
フィールドナンバー付きのファスキアタが開花中です。

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花茎は非常に長く伸びます。
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花はこんな感じ。

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Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
矮性のファスキアタです。花茎が初めて出て来ました。

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スーパーゼブラ Haworthiopsis attenuata cv.
アテヌアタ系です。おそらくは、十二の巻の選抜タイプです。花はまだですが、大分育ってきました。


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松の雪 Haworthiopsis attenuata
松の雪はアテヌアタの白いバンドがつながらないタイプです。

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花茎が伸びています。
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開花中。

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Haworthiopsis scabra JDV 95/17
フィールドナンバー付きのスカブラです。初めて開花しました。
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花茎が伸びています。
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開花中です。

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Tulista pumila var. sparsa
スパルサも花茎が伸びてきました。

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Haworthia arachnoidea
アラクノイデアにも花茎が出て来ました。

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Aloe bowiea
アロエ感のないアロエのボウィエアですが、大分株が充実してきました。去年は花茎は出ましたが枯れてしまったので、咲けば初めての開花です。


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ユーフォルビアは世界中に分布し、ポインセチアやハツユキソウのように多肉植物ではないものも沢山ありますが、乾燥地に生えるものは多肉質でサボテンによく似た種類もあります。基本的にユーフォルビアはシアチウム(Cyathium)と呼ばれる特殊な形状の花序により特徴付けられます。花の特徴は植物分類学では最も重要な因子で、植物分類学者ならば花の構造を見れば未知の植物でも大体の分類群が分かります。しかし、ユーフォルビアの小さな花序の特徴を肉眼で観察するのは、我々アマチュアには中々困難です。また、ユーフォルビアにはかなりの大きさにならないと開花しないものもありますから、趣味でユーフォルビアを栽培している場合、ユーフォルビアの花序を見ることはあまりに時間がかかるでしょう。ですから、我々のような趣味家は、花の特徴ではなくトゲなどの他の特徴をもって種類を特定しています。今日は、そんなユーフォルビアの花序以外のお話です。
本日、ご紹介するのは
Camelie IFRIMの2018年の論文、『STUDIES ON EPIDERMAL APPENDAGES FROM VEGETATIVE ORGANS AT EUPHORBIA SPECIES CULTIVATED IN BOTANICAL GARDEN IASSY』です。ルーマニアの大学からの論文のようです。植物園で栽培されるユーフォルビアの花序以外の外見的な特徴を取り上げています。やはり、論文中でも形態学的研究は非常に稀で、しかも北半球のユーフォルビア(おそらくは多肉植物ではない種類)についてです。南アフリカなどのユーフォルビアはトゲなどの付属物は研究されてきませんでした。著者はトゲと毛状突起、葉の跡について調査しました。
アフリカのユーフォルビアは多肉質でトゲがあり、サボテンによく似ています。これは、収斂進化のよく知られた例です。ユーフォルビアのトゲはサボテンのトゲ(※1)とは異なり、茎が起源(※2)であり「トゲの盾(※3)」(spine shield)があります。


(※1) 一般的にサボテンのトゲは葉が由来と言われます。しかし、木の葉サボテンには葉とトゲの両方がありますから、少しおかしいような気もします。確かにサボテンのトゲは葉が由来ですが、一般的に芽を守るために生える鱗片葉が由来ではないかと言われているようです。

(※2) 柱サボテン状のユーフォルビア(ユーフォルビア亜属)は、確かに角が硬質化してトゲが出来ているように見えます。しかし、ホリダやバリダなどのアティマルス亜属は花茎がトゲになっています。
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トゲは花茎由来です。花茎の先端に花が咲きます。

(※3) 柱サボテン状のユーフォルビアは、トゲとトゲの間が硬質化してつながるものがあります。
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『Flora capensis』(Brownら、1925)では、アフリカのユーフォルビアのトゲには、3つのタイプがあるとしています。
1. 枝の頂点がトゲに変わった
  →E. stenoclada
2. 花序の茎がトゲに変わった。
  →E. ferox
3. 「托葉棘」と呼ばれる対のトゲ。葉の痕跡に向かって異なる位置にある。
  →E. caerulecens 

3種類目のトゲは托葉ではないことにBrownは気付きましたが、この用語はユーフォルビア属の専門文献(Carter, 2002)においても使用されています。

spine shield(トゲの盾)はアフリカのユーフォルビアの種の同定に重要かも知れません。しかし、Beentje & Chee, 2014では、spine shieldはほとんど使用されず、「トゲが突き出した角質パッド」(horney pad from which the spines stick out)として定義されています。Dorseyら(2013)は、spine shieldは「通常、2つか4つのトゲの生長をもたらす」と指摘しています。これは、Carter(1994)により「トゲとして修正された1対のトゲと1対の托葉」であると解釈されています。

論文においてはspine shieldの他に、葉の痕跡、毛状突起が、特徴として挙げられます。論文では最後に植物園のユーフォルビアの特徴を羅列していますが、これは意外と冗長でそれほど重要な事は書いていないので割愛します。その代わり、私の育てているユーフォルビアを例にして、ユーフォルビアの持つ外見的特徴を見てみましょう。
論文は割と大雑把な分け方で、あまり分類を意識していないようです。ここでは、せっかくなので遺伝子解析の結果から得られた分類に則って見ていきます。ユーフォルビア属は4亜属に分けられます。そのうちEsula亜属やChamaesyce亜属は多肉植物ではないものがほとんどです。ここでは、多肉質のユーフォルビアの大半を占めるEuphorbia亜属と、園芸用によく栽培されるAthymalus(Rhizanthium)亜属を扱います。

①New World clade
Euphorbia亜属はアジア・アフリカ・ヨーロッパなどの旧世界のものと、南北アメリカ大陸の新世界のものに分けられます。夜光キリン(E. phosphorea)など一部のものは、南米原産ですがNew World cladeではありません。
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Euphorbia weberbaueri
ウェベルバウエリの茎の断面は歯車状ですが、ribは葉の跡から3本出ます。葉は非常に小さくすぐに脱落します。

②Goniostema節
Euphorbia亜属のOld World cladeは非常に多様で種類が多いので、節(section)ごとに見ていきます。
Section Goniostemaはいわゆる花キリンの仲間で、マダガスカル原産です。茎はトゲのあるものが多く、基本的に木質化します。多肉質なユーフォルビアの葉は脱落性のものが多いのですが、花キリンの葉は長期間脱落せずに残り、葉が脱落した跡が非常に目立ちます。また、塊根性のものが多くあります。花が美しいので鑑賞用に園芸品種が盛んに栽培されます。
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Euphorbia viguieri
ヴィグイエリは葉と幹で光合成する花キリンでは珍しいタイプです。葉は大きく長く残ります。幹はサボテンのように太りトゲがあります。葉の跡は小さく目立ちません。


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Euphorbia neohumbertii
ヴィグイエリとは他人の空似で、それほど近縁ではありません。幹は緑色ですが、ヴィグイエリと比べると光合成にあまり寄与していないように思えます。葉の跡は非常に目立ち、特徴的な縞模様になります。


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Euphorbia didiereoides
大型の花キリンで幹は木質化します。トゲは強く葉の跡は目立ちません。


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Euphorbia boiteaui
ボイテアウイははっきりしたトゲはありませんが、少し毛羽立ったような小さな突起があります。葉の跡は割と目立ちます。


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Euphorbia ramena
ラメナはトゲではなく毛のようなものが出て来ます。


③Deuterocalli節
Old World cladeです。Section Deuperocalliは、マダガスカル原産の棒状の多肉植物です。同じマダガスカル原産のGoniostema節の姉妹群です。
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Euphorbia alluaudii
アルアウディイは葉の跡が枝に沢山残ります。葉は非常に小さくすぐに脱落します。

④Momadenium節
Old World cladeです。かつては、Momadenium属でしたが、近年ユーフォルビア属とされました。そのため、学名が変更されています。
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Euphorbia magnifica
かつてのMonadenium magnificumです。特徴的なトゲと、まばらな葉の跡が目立ちます。葉は硬く丈夫で長く残ります。

⑤Euphorbia節
Old World cladeです。柱サボテン状で大半がアフリカ大陸原産ですが、一部はアジア原産です。トゲとトゲの間が角質化してつながるものがあります。大型の多肉質のユーフォルビアはSection Euphorbiaと考えて間違いありません。
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Euphorbia canariensis
多くのユーフォルビアは生長点に葉を持ちます。トゲが出る時に一緒に葉が出て、その葉はいずれ脱落します。しかし、カナリエンシスは葉がまったく出ません。

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Euphorbia griseola
グリセオラはトゲとトゲの間の稜が角質化してつながります。この特徴はEuphorbia節には良く見られる構造で、苗のころはつながっていない種類もあります。

⑥Florispina亜節
Athymalus亜属、Anthacantha節に分類されます。Subgenus Athymalusはいくつかの節(section)からなりますが、その大半は多肉植物ではなく樹木となります。多肉質なものはSection Anthacanthaに固まっており、その中でもSubsection Florispinaは中心的です。
Subsection Florispinaは園芸用に有名な種類が多く含まれ、いくつかの種類は大量生産されています。トゲは花茎由来ですが、花が咲かないとトゲが出ないものと、花が咲かなくてもトゲ(花茎)が出るものがあります。
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Euphorbia meloformis
バリダはメロフォルミスに含まれています。枯れた花茎が残ってトゲのように見えます。メロフォルミスは花が咲かないとトゲは出ません。


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Euphorbia polygona var. horrida
ホリダのトゲは花が咲かなくても出ます。しかし、花茎由来なので、よく見ると表面は滑らかではなく苞葉の残骸のような構造が見えます。


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Euphorbia ferox
フェロクスのトゲは非常に強いのですが、やはりホリダと同じくトゲは花茎由来ですから苞葉の残骸のようなものが見えます。


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Euphorbia bubalina
ブバリナはトゲはありませんが、葉は長く残ります。葉の跡が残ります。


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Euphorbia bupleurifolia
ブプレウリフォリアはブバリナと似たような育ち方ですが、イボが鱗状になります。イボの先端が葉の跡なので、葉の跡が下を向きます。


⑦Dacthylanthes亜節
Athymalus亜属、Anthacantha節に分類されます。塊根から多肉質の枝を出すものがあります。
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Euphorbia globosa
クロボサは脱落性の小さな葉の跡が点のように残ります。


⑧Medusea亜節
Athymalus亜属、Anthacantha節に分類されます。いわゆるタコもの(Medusoid)で、多肉質の幹からトゲのない枝を沢山伸ばします。枝は再分岐せず、いずれ脱落します。
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Euphorbia gorgonis
ゴルゴニスは本体が扁平に育ちますが、枝は非常に短く育ちます。枝には脱落性の小さな葉の跡があります。

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Euphorbia schoenlandii
スコエンランディイは本体が縦に伸びるタイプです。枝は短く、枯れた枝が長く残りトゲのように見えます。

⑨Balsamis節
Athymalus亜属に分類されます。半多肉植物くらいの位置づけの乾燥地の灌木で、幹は水分を貯めるためにやや太りますが塊茎とまではいきません。
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Euphorbia balsamifera
バルサミフェラは樹木状に育ちます。トゲはなく、幹は全体的にやや太くなります。

一般的に論文ではユーフォルビアの特徴として、花序(Cyathium)の詳細な解剖学的特徴が記されます。しかし、それ以外の特徴となると意外と曖昧で、大雑把すぎて近縁種との違いが分からないこともしばしばです。わざわざ、近縁種との見分け形を記述したような論文はあまりなく、入手したユーフォルビアの名札と本当に同じ種類か確かめるのも中々困難です。この論文はあくまでも基本的な情報と問題提起程度の内容ですから、今後発展させた論文が出てきて欲しいところです。


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かつてハウォルチアと呼ばれていた植物は現在では3分割され、Haworthia、Haworthiopsis、Tulistaとなりました。これらは、花の特徴が似ていたため一つのグループとされていましたが、花以外の特徴は異なり、遺伝的にもそれほど近縁ではありません。Haworthiopsisは日本では硬葉系ハウォルチアと呼ばれていましたが、まだハウォルチア属だった頃はHexanglaris亜属とされていました。HaworthiopsisとTulista以外のハウォルチアを日本では軟葉系ハウォルチアと呼び、Haworthia亜属とされていました。
さて、本日はまだハウォルチアの分割が一般化していない2015年のNatalia Volodymyrivna Nuzhyna, Maryna Mykolaivna Gaydarzhyの論文、『Comparative characteristics of anatomical and morphological adaptations of plants of two subgenera Haworthia Duval to arid enviromental conditions』をご紹介します。論文では、Haworthia亜属とHexanglaris亜属の、乾燥への適応について、その形態と構造から検討しております。

この論文で調べられたのは、Haworthia亜属はH. angustifolia、H. blackburniae、H. chloracantha、H. cooperi、H. cymbiformis、H. marumiana、H. parksiana、H. pygmaea、H. retusaの9種類。Hexanglaris亜属はH. attenuata、H. coarctata、H. fasciata、H. glabrata、H. glauca、H. limifolia、H. pungens、H. reinwardtii、H. viscosaの9種類です。

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Haworthia cooperi cv.

Haworthia亜属のロゼットは直径5〜6cmを超えることはあまりありません。H. parksianaやH. blackburniaeなどの葉は細長く幅は5mmを超えません。葉はしばしば光沢があり滑らかで、しばしば透明の「窓」や毛状突起があります。
Hexanglaris亜属は濃い緑色で、
窓と毛状突起がありません(※)。葉の表面は厚くしばしばイボや突起があります。この特徴はH. limifoliaに典型的で、H. glaucaとH. coarctataでは適度にありますが、H. pungensとH. viscosaにはありません。しかし、H. viscosaは非常に厚いクチクラを持ちます。最小の葉はH. glaucaやH. reinwardtii、H. viscosaで、葉の幅はH. glaucaやH. reinwardtii、H. pungensが狭いようです。

(※) H. pungensには毛状突起があり、H. koelmaniorumには「窓」があります。

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Haworthiopsis limifolia

葉の気孔はHaworthia亜属は多く、Hexanglaris亜属は少ない傾向があります。全体として向軸(Adaxial side)より背軸(Abaxial side)に多く見られます。しかし、1mm×1mmの面積内の気孔は、Haworthia亜属のH. retusaは非常に多く向軸は23.9個、背軸で36.7個でしたが、H. chloracanthaは向軸で2.6個、背軸で5.3個で少ないものでした。また、Hexanglaris亜属のH. glaucaは向軸で2.6個、背軸で3.6個でしたが、H. reinwardtiiは向軸で14.5個、背軸で13.1個と多いものでした。

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Haworthiopsis coarctata

葉の水分含有率を調べたところ、Haworthia亜属のほとんどが90%以上でしたが、Hexanglaris亜属は多くは87〜89%でした。Haworthia亜属の例外はH. parksianaで、水分含有率は87%でした。また、Hexanglaris亜属のH. glaucaの水分含有率は84%以下でした。

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Haworthiopsis viscosa

以上の結果から、以下のことが言えるそうです。Hexanglaris亜属に見られる様々な付属物やクチクラの発達は、強い日光を分散します。逆に滑らかな表面を持つHaworthia亜属は水分の放出が大きくなっています。
気孔が向軸より背軸に見られるのは、太陽光が向軸にあたるからではないかとしています。

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Haworthiopsis pungens

以上が論文の簡単な要約です。
私は旧ハウォルチアを構成していたHaworthiopsisやTulistaは好きで集めていますが、軟葉系ハウォルチアには詳しくないため、論文を読んでいても今ひとつピンとこない感があります。しかし、硬葉系ハウォルチアの方が乾燥に強いのは、言われるまでもなくまあなんとなくわかりますよね。軟葉系ハウォルチアは窓以外は地中に埋まって育ったりしますから、強光や乾燥に耐えるための分厚いクチクラ層は必要ないのでしょう。今にして思えば、花以外の特徴は軟葉系ハウォルチアと硬葉系ハウォルチアで結構異なっていたわけですね。遺伝子解析の結果では、軟葉系ハウォルチアはKumara属(旧Aloe plicatilisなど)と近縁で、硬葉系ハウォルチアのTulista属はGonialoe属(旧Aloe variegataなど)、Aristaloe属(旧Aloe aristataなど)、Astroloba属に近縁とされており、
Tulista属以外の硬葉系ハウォルチアはGasteria属と近縁とされています。この論文のように花以外の特徴で、遺伝子解析の結果で近縁なもの同士を比較したらどうなるでしょうか? どうにも気になりますね。


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バルサミフェラ(Euphorbia balsamifera)は、アフリカ北部に広く分布していると考えられていた灌木状のユーフォルビアです。しかし、遺伝子を解析すると、何とバルサミフェラと思われていたユーフォルビアは、3種類に分割されることになりました。ギニア湾沿いに広く分布している集団は、バルサミフェラとは別種のEuphorbia sepiumとして独立しました。また、アフリカ北東部に分布する集団は、以前はバルサミフェラの亜種とされがちでしたが、Euphorbia adenensisとして独立しています。では、肝心のバルサミフェラはというと、モロッコ、西サハラ、カナリア諸島にのみ分布する集団を指すようになりました。
さて、バルサミフェラはアフリカ大陸原産のユーフォルビアには珍しく、割と研究されており論文もそこそこ出ているようです。しかし、残念なことにユーフォルビア研究は毒性のある乳液の化学成分の解析が盛んで、その生態を調べたような論文は非常に稀です。やはり、毒性がある=何らかの強い活性を示す物質がある、という図式なのでしょう。そんな中、バルサミフェラの利用法について実験をした、 S.Y.Mudi & Y.Dattiによる2014年の論文、『REPELLENT EFFECT OF THE LEAF EXTRACTS OF EUPHORBIA BALSAMIFERA (AIT) AGAINST ANOPHELES GAMBIA』を見つけました。

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Euphorbia balsamifera

昆虫により媒介される伝染病には、マラリア、西ナイル熱、デング熱、ライム病など公衆衛生上、深刻なものが多くあります。その多くが虫刺されが原因ですから、病気の蔓延を防ぐための取り組みが必要です。これらは開発途上国、特に熱帯地方の最も重要な公衆衛生問題、および社会・経済的発展の障害の1つです。WHOの1997年の公表によると、マラリアだけで年間1.5〜270万人の感染死亡者と、3〜5億件の感染患者を出しています。
主に熱帯諸国の20億人以上の人がデング熱、マラリア、フィラリア症などの蚊媒介性疾患のリスクにさらされています。蚊による虫刺されを防止するには忌避剤の使用が実用的とされますが、化学合成された忌避剤はやや毒性が高いことが知られています。さらに、合成忌避剤は非分解性であり、環境負荷が高いことも問題です。最近では、バジル、クローブ、タイムなどの植物から蚊ご忌避する成分を抽出する試みがなされています。
論文ではバルサミフェラの葉を乾燥させて粉砕したものを、90%のエタノールに浸けて成分を抽出しました。これをろ過・濃縮し、メタノールに溶解しました。このメタノール溶解物を、石油エーテル、クロロホルム、酢酸エチルでそれぞれ再抽出し、抽出液を乾燥させました。この作業により、それぞれの有機溶媒に溶解する異なる成分が分離されてくるわけです。
これらの成分が蚊を忌避されるかを調べるために、腕にエタノールに溶かした抽出物を塗布し、蚊が忌避するかを確認しました。ただのエタノールのみを塗布した場合と比較して、効果を確認しています。使用した蚊は、ハマダラカの1種(Anopheles gambiae)で、大学が飼育しているものです。
では、忌避実験の結果を見ていきましょう。

抽出物名   12.5%含有 25%含有
エタノール   90.9%   96.9% 
石油エーテル  41.0%   30.7%
クロロホルム  97.2%   100%
酢酸エチル   32.4%   21.6%
メタノール   53.6%   46.3%

12.5%と25%含有したものを使用しています。%は蚊の忌避率です。最初のエタノール抽出物には様々な成分が入っているはずで、忌避効果のない物質も沢山あるはずです。それでも、非常に高い蚊の忌避率でした。クロロホルムで再抽出したものは、さらに高い蚊の忌避率でしたから、クロロホルムで抽出される分画に忌避作用のある物質が含まれているのでしょう。

以上が論文の簡単な要約になります。著者はクロロホルム分画に含まれている物質を特定したいと結んでいます。
さて、この論文は珍しく薬ではありませんでしたが、多肉植物の論文を読んでいると、植物から薬効成分を分離しようという試みは一般的です。私はそういうタイプの論文を記事にはしないのですが、あまり知られていないように思えますから、少しこの点について解説しましょう。
植物から薬効成分を分離し、やがては薬にといった論調の論文は沢山あります。しかし、現実には成分を分析して、効果を試してみて、有効成分を特定して、そこで終わりです。基本的に現代では生物から薬は作られません。どうしてでしょうか?
昔は科学の程度が低かったので、抗生物質を始めとした生物から薬効成分を探していました。しかし、現代では科学の進歩に伴い、薬の開発は様変わりしました。例えば、ある病気に対する薬を開発する場合、昔は様々な生物の抽出成分や化合物を、反応させて薬効を確認していました。しかし、今では病気の分子構造を分析し、そこにピッタリ結合する分子構造を考えだして、合成専門のプロが合成方法を考案し、実際に合成された物質を用いて薬効を試験します。自然物質はその多くが偶然効果のある部分が多少ある程度ですが、合成物質は始めから効果があることがわかっているのです。ですから、植物由来成分が薬になる可能性はほとんどありません。実際に日本の大学でも盛んに生物由来の薬効成分探しはされていますが、その探し出された薬効成分に対して興味を示す製薬会社は基本的にありません。せいぜいが健康食品になる程度です。
では、植物由来成分には意味はないかと言うと、必ずしもそうとも言えないと思います。化学合成による製薬は、あくまで製薬会社の理論です。化学合成薬は欧米諸国では流通しますが、貧しい国の人々には手が届きません。製薬会社は開発費用を回収しなければ赤字になってしまいますから、基本的に新薬は高価です。現実を見ると、貧しい国には現代医療が圧倒的に不足しており、未だに民間療法が中心です。中には毒性が高いものもあり、処方を誤ると非常に危険です。民間療法で使用される植物から薬効成分を抽出出来れば、地産の素材で安価な薬剤を作り出すことが出来るかも知れません。当然、薬効は合成薬より弱いかも知れませんが、現状を変える可能性はあります。
さて、この論文のように、その土地に生える植物を利用するというのは良いアイディアです。環境の合わない外国産の植物を環境破壊しながら無理をして育てるより、元々自生する植物を栽培した方が良いでしょう。特に乾燥地で無理な灌漑農業をすると、地下水が毛細管現象で引っ張られてしまい、土壌中の塩分が地表に析出してしまいます。もし、外国産の植物が乾燥に強かった場合では、逆に野外に逸出する可能性があるためやらないに越したことはありません。現代は少数のメガファーマが医薬品業界を牛耳っていますが、地産地消の医薬があっても良いのではないかと思います。


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Haworthia koelmaniorumは、葉の上面に透明な窓があるハウォルチアです。しかし、硬葉系ハウォルチアはHaworthiaから分離しHaworthiopsisとなったことから、コエルマニオルムもHaworthiopsis koelmaniorumとなりました。さて、このコエルマニオルムですが、原産地の南アフリカでは減少しており、保護の対象となる希少な多肉植物であるとされています。本日はコエルマニオルムの生息地を調査したE.T.F.Witkowski & R.J.Listonの1997年の論文、『Population structure, habitat profile and regeneration of Haworthia koelmaniorum, a vulnerable dwarf succulent, endemic to Mpumalanga, South Africa』を参考に見ていきましょう。

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Haworthiopsis koelmaniorum
透き通っている様子が良く分かります。

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夏場は遮光していても、ストレスで赤くなり透明な窓が分かりにくくなります。

コエルマニオルムは珪岩で出来た尾根の斜面に7個体群が存在しますが、すべて自然保護区外です。1994年のBoydによる保全報告書では1800〜2000個体が自生すると推定されました。コエルマニオルムの知られている脅威は、コレクターによる収集や、伝統医学の医薬品としての採取があります。また、近年では特に日本のコレクターがハウォルチアに対して非常に熱心です。
この7つの個体群は、すべてMpumalanga州のGroblesdal地区(標高900〜1100m)に位置します。25年間の年間降水量の平均は720mmであり、その84%は10月から3月にかけて降ります。平均気温は暑い月で37.1℃、寒い月で3.1℃でした。冬には霜が下ります。また、コエルマニオルムの分布する尾根の間の低地が麦畑となったたことで、畑にならなかった高地のコエルマニオルムだけが飛び地状に残った可能性もあるそうです。


さて、実際の調査の結果、全体で1591個体のコエルマニオルムを確認しました。個体群は場所により25〜588個体までと幅がありました。また、火災により67%が被害を受けていました。種子を採取して発芽させたところ、湿らせてから7〜9日で発芽しました。発芽率は79〜89%でした。コエルマニオルムに近縁とされるH. limifoliaの種子の寿命は約5〜7ヶ月であるため、コエルマニオルムは貯蔵種子(seed bank)は持たない可能性が高いと考えられます。
コエルマニオルムの生える尾根と、尾根と尾根の間のコエルマニオルムが生えていない地域の土壌も比較されています。それによると、どこの土壌も砂質でほぼ同じでしたが、小さな違いはあったようです。分布域の土壌はほぼ同質でしたが、コエルマニオルムが生えていない土壌はやや粘土質が多い傾向がありました。
コエルマニオルムは岩の亀裂に生える傾向がありました。ただ、岩の亀裂がコエルマニオルムの生育に適しているかは分かりません。例えば、通常の場所に生えたコエルマニオルムは牛の踏みつけにより破壊されていることが報告されています。さらに、そういう場所は他の草も生えていることから、火災があった時に枯れ草を燃料として強く燃え上がり、コエルマニオルムに強いダメージを与えた可能性があります。
自生地のコエルマニオルムは、成熟した植物はありましたが苗は見られませんでした。これは、発芽はするもののすべて枯れてしまっているようです。苗にとって非常に好ましい特殊な環境がある程度長く続いた時のみ、苗は定着可能であると考えられます。そのため、自生するコエルマニオルムは分結して増えているものも多いと推定され、遺伝的多様性は低いと考えられます。
コエルマニオルムは寿命が長い植物と考えられており、分結と稀に訪れる苗の生育可能な時まで種子を作り続けることにより維持されてきたようです。ですから、家畜の踏みつけや違法採取により親植物が失われると、非常にダメージが大きいと考えられます。その生長の遅さもあり、回復には大変な時間が必要でしょう。

火災のダメージについては、多肉植物を対象とした2つの仮説があります。
①多肉植物は火に耐性はなく、燃えやすい他の植物が生えない岩場や砂場、たまたま火災が起きていない場所でのみ生きられる。
②多くの多肉植物は生長点が十分に保護されており、火災に強い。
コエルマニオルムは火災が起きない岩場の破れ目に生えることにより、火災から身を守っているようにも見えます。しかし、コエルマニオルムは火災によりダメージを受けても、生き残ることも確認されています。上記の2つの仮説はコエルマニオルムに関して、両方とも当てはまると言えます。岩の破れ目付近には、燃料となる植物が少なく、火災が起きても強い火力で焼かれにくいことは明らかだからです。さらに、他の植物より火災に強いコエルマニオルムは、火災により他の植物が失われることにより、他の植物との競争を有利なものとしている可能性もあります。

コエルマニオルムは自然な種子繁殖はあまり期待出来ないため、種子由来の苗を人工的に育てて移植するなどの方法により、保護活動を行う必要があります。牛の放牧を減らしことにより、踏みつけによる被害を減少させることが出来ます。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、野生のコエルマニオルムはたった1591個体しか存在しないというのは、中々衝撃でした。現在、国内で売りに出されているコエルマニオルムは1500株ではすまないでしょうし、趣味家が育てているコエルマニオルムはそれ以上でしょうから、野生のコエルマニオルムがいかに少ないかが分かります。我々趣味家としては、野生の多肉植物の減少は悲しむべきことでしょう。
しかし、論文の中で日本のコレクターの台頭が軽く触れられておりますが、これは何を意味するでしょうか? さすがに日本人が南アフリカまで頻繁に行って、違法採取を繰り返しているという訳ではないでしょう。違法採取は現地の人たちの収入源になっていたりしますが、これはその違法採取した植物を欲しがる人がいるから行われているのです。
現在の日本の状況は、正直あまり褒められたものではありません。輸入されてきたベアルートがイベントや専門店だけではなく、基本的に管理が出来ない大型園芸店などにも並べられており、どれだけの野生株が違法採取により失われたのかを考えると胸が痛みます。違法採取された植物は正規ルートでは買えませんが、あちこち回って採取情報がロンダリングされてしまうため、結局は市場に出回ることになります。これは種子の売買以外を禁止することでしか防ぐ方法はありません。その他の取り組みとしては、例えばソテツは市場に流通量が増えれば違法採取は減ると考えて、効率の良い増やし方や育て方が研究されています。また、Euphorbia susannaeは原産地では非常に希少な多肉植物ですが、どうやらアメリカで組織培養による大量生産がされたようで、市場流通量が激増して一気に安価な普及種となり、もはや違法採取されまものをわざわざ購入する必要はなくなりました。日本でもE. susannaeは、種子によるものと考えられますが、大手業者により大量生産されており、流通量も多く安価な普及種となっています。
現地株ではなく種子由来の苗が出回れば良いわけですが、現在日本国内に流通しているのは小型の苗ですから国内実生なのでしょう。コエルマニオルムは日本では人気種ではありませんが、軟葉系ハウォルチアなどは人気です。しかし、日本ではきらびやかな交配種が人気で、ハウォルチアの現地球を求めている人はほとんどいないでしょう。とはいえ、我々趣味家も野生の多肉植物の保全に対して、もう少し興味を持っても良いように思います。


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かつて、Aloeに近縁と考えられていた、HaworthiaやGasteria、Astrolobaは、近年の遺伝的解析の結果においてもやはり近縁であることが判明しました。アロエ属自体が分解されたこともあり、このAloeに近縁な仲間をまとめてアロエ類と呼んでいます。このアロエ類の増やし方と言えば、種子をまくか葉挿しが一般的でしょう。Haworthiaは割と増えやすいので株分け出来ますし、葉挿しも容易です。Gasteriaは小型種は良く子を吹くので株分けで増やせますが、大型種は中々増えにくいものです。また、Gasteriaは葉挿しも出来ますが、難しいものもあるようです。Aloeは葉挿しは出来ません。小型種は容易に子を吹くものが多く、中型種でも割と子を吹きます。茎が伸びるものは、茎を切って挿し穂に出来ます。しかし、Aloeには子を吹かず、茎も伸びないような種もあるため、繁殖は種子によるしかないものもあります。
さて、このような増やし方をされているアロエ類ですが、バイオテクノロジー分野での培養技術についても検討がされています。本日ご紹介するのは、Arthur M. Richwineの1995年の論文、『Establishment of Aloe, Gasteria, and Haworthia Shoot Culture from Inflorescence Explants』です。この論文は、人工的な培地上でアロエ類を培養して増やすことを目的としています。早速内容を見ていきましょう。

今回、実験に使用したのはAloe 、Gasteria、Haworthiaというアロエ類です。種類としては、Aloe  barbadensis、Aloe  harlana、Gasteria liliputiana、Gasteria species(不明種)、Haworthia attenuata、Haworthia coarctata、Haworthia limifoliaでした。
人工培養では、不定形の細胞塊を作るカルス培養が一般的ですが、著者はシュート培養に挑んでいます。シュート培養は培養上で植物組織を培養し、茎と葉がついたシュートが出来て伸長します。シュート培養は、著者により確立した、red yucca (Hesperaloe parviflora)の花序を用いた方法を適応しています。zeatin ribosideという物質を含んだ培地に、アロエ類の未熟な花序を1cmの長さに切断して培養します。切断した花序は、薄めた塩素系漂白剤と界面活性剤に浸けて表面を滅菌しています。25℃で白色蛍光灯を当て、6週間ごとに新しい培地に移しました。

結果は8週間以内に、Aloe 2種、Haworthia3種、G. liliputianaでは、苞葉の窪みからシュートが出て来ました。12週までにG. speciesからシュートが出て来ました。
シュートは長期維持が可能で、8ヶ月維持されました。シュートは通常培地に移すだけで、植物ホルモンの添加なしでも容易に発根し、その後に土壌に植栽されました。

以上が論文の簡単な要約です。
シュート培養について、私は詳しくは知らないのですが、花茎から増やす面白い方法だと思いました。一般的に植物を増やすバイオ技術としては、カルス培養があります。このカルス培養は、葉も根もない細胞の塊を増やし、植物ホルモンを添加することにより葉や根を形成させる方法です。簡単に増やすことが出来ない洋蘭では、昔から使用されてきました。カルス培養はほぼ無限に増やせますから、非常に効率の良い方法です。しかし、不定形の細胞を爆発的に増やすせいか突然変異が起きやすく、増やせば増やすほど変異が蓄積していきます。しかし、シュート培養は大量生産には向きませんが、突然変異を起こしにくい方法です。園芸目的の生産より、希少な野生植物の増殖においてより有効な増殖方法ではないでしょうか。
そう言えば、胡蝶蘭は稀に花茎から子を吹くことがありますが、私の育てている多肉植物でも花茎から子を吹くことがありました。そもそも、花茎は子を作る能力がはじめからあるのでしょう。

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Gasteria distichaですが、花茎から芽が出ています。
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拡大するとちゃんと葉があります。これを挿し木すれば増やすことが出来ます。

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Euphorbia globosaの花茎の先端(左上)からも、子が出来ています。


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Fouquieriaはメキシコの砂漠に生える灌木です。F. columnarisやF. fasciataは幹が太る塊茎植物として園芸用に栽培されます。しかし、ほとんどのFouquieriaは塊茎植物ではありませんから、それほど人気があるという訳ではありません。
そう言えば、私が入手したFouquieriaはいつの間にやら8種類になりました。最近は様々な多肉植物の苗が流通していますから、人気があろうがなかろうが、あちこちのイベントに行っていると簡単に集まってしまうのです。私の育てているFouquieriaはすべて苗で、小さい代わりに何より安価でしたから、コレクションするにもハードルが低くていいですね。さて、Fouquieriaはここ数年はよく目にしますが、あまり育てている人の話はネットでも聞きませんし、花が咲いたという話もありません。それなりに流通しているはずですから不思議です。単純にFouquieria好きが少ないので、話題に出にくいだけかも知れませんけどね。
実はFouquieriaは乾くとすぐに葉をポロポロ落としてしまうので、困っていました。去年は頻繁に水やりしてみましたが、暑い日には乾くのが早いせいかやはり葉が落ちてしまいました。砂漠に生える植物なのにおかしな話です。基本的に塊茎や塊根がないため、なぜ砂漠に生えることが出来るのか不思議です。根も細く細かいため、とても乾燥に強く見えません。いったい、どのような手段で砂漠に生えることが出来ているのでしょうか? 今後、調べてみたいですね。
という訳で、あまりにも育たないので、仕方なくFouquieriaはすべて腰水栽培しています。私のライフサイクルでは、水やりはせいぜい週2回くらいしか出来ませんから仕方がなくです。しかし、驚くべきことに、今のところFouquieriaたちは大変調子がよく、葉が勢いよく出てきました。

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腰水栽培中。

Fouquieriaは遺伝子を解析されており、種同士の遠近が明らかとなっています。それは、2018年に発表された『Recent radiation and  dispersal of an ancient lineage : The case of Fouquieria (Fouquiericeae, Ericales) in American deserts』という論文で、Fouquieriaの遺伝的な系統関係を調べています。ちなみに、Fouquieriaは現在11種類が認められていますが、この論文ではF. burrageiは調べていないようです。(◎は私が育てているFouquieria)

                            ┏━━◎F. ochoterenae
                        ┏┫
                        ┃┗━━◎F. leonilae
                    ┏┫
                    ┃┗━━━◎F. diguetii
                    ┃
                ┏┫        ┏━◎F. splendens
                ┃┃┏━┫
                ┃┗┫    ┗━F. shrevei
    ┏━━┫    ┃
    ┃        ┃    ┗━━━◎F. macdougalii
    ┃        ┃
┏┫        ┗━━━━━◎F. formosa
┃┃
┃┗━━━━━━━━◎F. columnaris

┃                            ┏━F. purpusii
┃                        ┏┫
┗━━━━━━┫┗━◎F. fasciculata 1
                            ┃
                            ┗━━◎F. fasciculata 2


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Fouquieria columnaris
コルムナリスは「観峰玉」という名前もあります。かつては、Idria属とする意見もありましたが、遺伝的解析の結果で、完全にFouquieriaに含まれることが確定しました。しかし、葉が薄く柔らかいせいかハダニが付きやすくてやや難儀しています。


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Fouquieria splendens
スプレンデンスは先月入手したばかりです。葉のない状態でしたが、外に出して腰水したら急激に葉が出てきました。葉はコルムナリスによく似ていて薄く柔らかいのですが、少し幅がなく細長い雰囲気があります。面白いことに、遺伝的には他のFouquieriaよりコルムナリスに近縁という訳ではありません。シュレヴェイに近縁です。


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Fouquieria macdougalii
小さく丸い葉に覆われたマクドウガリイですが、葉は薄く柔らかいものです。スプレンデンスに近縁です。


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Fouquieria diguetti
ディグエティイは、葉柄が長くスプーン型の葉が特徴です。葉はやや厚みがあります。レオニラエやオコテレナエに近縁です。


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Fouquieria formosa
フォルモサは、葉に厚みがあり硬い方です。葉は小さいものの、長さに対して幅は広く丸く見えます。


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Fouquieria leonilae
レオニラエは小型種の割に葉は大きいようです。室内で出た葉は外に出したら陽焼けしましたが、遮光はしません。灌木は葉が陽焼けしても、強光に適応した新しい葉が出て来ますから問題はありません。オコテレナエに近縁です。


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Fouquieria fasciculata
ファスキクラタの葉は厚みがあり硬い方です。葉に光沢があるのは、表面にケチクラ層が発達しているからです。クチクラは葉の耐久性を高め、病害虫に対して抵抗性が高くなります。プルプシイに近縁です。


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Fouquieria ochoterenae
オコテレナエも葉に光沢がありますから、葉は厚みがあり硬い方です。レオニラエに近縁です。

以上のように8種類のFouquieriaの葉を比べてみましたが、意外にも葉の特徴は遺伝的な遠近とは無関係でした。本当は花や枝振り、トゲについても比較したいところですが、まだ苗なのでまだ出来ません。
Fouquieriaは赤色の変わった形の花が咲き、ハチドリが蜜を吸いに訪れるそうです。ぜひ、花を拝みたいところです。しかし、花が咲くまでにどれくらいかかるでしょうか? F. leonilaeは小型種で、早く花が咲くと海外の園芸雑誌にありました。非常に楽しみです。


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昨日のサボテン・多肉植物のビッグバザールで購入した多肉植物を植え替えました。というのも、販売されている多肉植物は意外と乾きにくい用土に植えられていたりしますから、気付かずに育ててしまい、過去に根腐れしてしまったものもあります。また、根の状態も気になります。根の張りが弱いものは、あまり厳しくしないで養生させる必要があるかも知れません。という訳で全部鉢から引っこ抜いて、根の状態をチェックしてみましょう。

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Euphorbia lenewtonii
根の張りは悪くありません。まだ、苗ですからこれからでしょう。


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Euphorbia hofstatteri
どうやら、挿し木苗のようですから塊根は出来なさそうです。まあ、格安でしたから特に文句もありません。根は少し弱いですね。排水の良い用土で水やりを多めにして、根を伸ばしていきます。


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植え替え後。プレステラ90に植えました。水やりは多めにしますが、日照は割と強めで行きます。

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Gymnocalycium ragonerii
球根みたいですがサボテンです。根は貧弱でした。どうやら塊根性みたいです。


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Aloe  florenceae
高地性のアロエですが、根はかなり強いので意外と丈夫そうですね。

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植え替え後。プレステラ90に植え替えました。ラゴネシイはしばらくは乾かしておきます。A. florenceaeは焦げそうな色合いですから、ハウォルチア棚に置きます。

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Gasteria carinata var. verrucosa
根の状態は非常に良好です。


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Gasteria obliqua
Gasteria bicolorの名前で購入したガステリア。根詰まり気味でした。根の勢いが非常に強いですね。枯れ葉は取り除きました。


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植え替え後。根が非常に強いので大きめのプレステラ105に植え替えました。根が良いので今年の生長は期待出来ます。冬には花が咲いて欲しいですね。

植え替えはこんなところです。用土や鉢が異なると乾き具合が変わってしまい、鉢ごとの把握が難しくなります。今年は何とか統一させようと悪戦苦闘中です。それはともあれ、引き込んだ風邪をしっかりと治すところから始めます。


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風邪っ引きでしたが、ビッグバザールに行きました。昨日は体調を整えるために一日寝て過ごしましたが、やはりというか予想通り朝起きられずに、のんびり向かいました。まあ、今までも開場前には来ても、早い時間に整理券を貰ってまで並んだことはありませんけどね。あいにくの雨模様で少し涼しいくらいでしたが、毎度ビッグバザールは会場が暑いので、逆に良かったくらいです。逆に蒸された感じはしましたが…。開場前に並んでいないのでお客さんの入具合はよく分かりませんでした。えらく混雑はしていましたが、今回はどういう訳か40店くらい出店があり、会場がけっこう狭い感じでしたから、正直よく分からないところです。まあ、毎度ながら盛況なのは変わらずといったところでしょうか。
あまり遅く来るとスカスカに歯抜け状態の売り場を見る羽目になりますが、私の好きな多肉植物は人気はそれほどでもないため、まあ問題がないと言えばなかったりします。しかし、まあ早く行けば珍しい多肉植物を色々見られるというメリットはありますけどね。

今回は体調も万全ではないため、会場を1週ぐるりと巡って帰りました。とはいえ、混雑のため40分くらいかかりましたが。いつもは、じっくり見てくるところですが、今日はサラッと見て目に入ったものを購入。相変わらず安い苗ばかりです。以下、購入品ですが、名前はラベル表記のママです。

①まずは、会場の入口入ってすぐ左の、アロエのカットしたものが並べてあるブースへ。毎回、この位置ですが、以前にEuphorbia greenwayiやGonialoe sladenianaを購入しました。今回もアロエのカット苗と筒アナナスを並べていました。今回は珍しいことにガステリア苗があったので2つ購入。
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Gasteria verrucosa
現在はGasteria carinata var. verrucosaとなっています。カリナタ系のガステリアは非常に美しいですね。


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Gasteria bicolor
現在はGasteria obliquaと同種とされています。G. obliquaの方が命名が早かったので、G. bicolorの方が異名となりました。

②お次は錦玉園さんのブースへ。相変わらずエケベリアが沢山あり、女性陣に人気で人だかりが出来ていました。私は安い花キリン苗を購入。
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Euphorbia hofstatteri
花は下向きですが、模様が入っていますね。割と新しく見つかった花キリンです。

③前回、神蛇丸を購入したブースへ。なにやら可愛らしいアロエがあったので購入しました。アロエは置き場所を逼迫するのでなるべく買わないようにしていますが、小型種だし安かったこともありついうっかりね…
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アロエ フロレンシア
Aloe  florenceaeです。マダガスカルの高地性アロエです。ネット販売では希少だのなんだのと煽って高額になってますが、こいつはものすごく安かったですよ?


④最後にぺてぃのお店というブースへ。ここ数年では初めてみました。大阪の茨木からお越しみたいです。珍しくラゴネシーがあったので購入。あとユーフォルビア苗を1つ。皇帝がかなり安かったのですが、残念ながら今回は予算オーバーでしたから泣く泣く断念。
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Gy ラゴネシー
Gymnocalycium ragoneseiです。可愛らしい扁平なギムノカリキウムです。


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Eu レネウトニー
Euphorbia lenewtoniiです。タンザニア原産。育つと枝が混んで面白い形になりそうです。


ということで、ビッグバザールの購入品でした。今回はユーフォルビア苗は少ないような気もしましたが、よく考えると結構珍しい種類はあったような気がします。ただ、私の持っているものばかりでしたから、買わなかっただけですね。お安いユーフォルビア苗では、E. obesa、子吹きオベサ、E. polygona v. horrida、E. polygona v. noorsveldensis、E. gorgnis、E. squarrosa、E. cap-saintemariensis、E. decaryi(E. boiteaui)、E. francoisii(E. decaryi)、E. pachypodioides、E. guillauminiana、E. cylindrifolia、E. rossii、E. gymnocalycioidesあたりはあったと思います。今回はかつては高価だったE. tulearensisの実生苗があちこちにありました。数年前の半額以下まで安くなっています。まだ高額の時に購入してしまった私は歯噛みする思いです。しかし、E. tulearensisは丈夫で育てやすく美しい塊根植物ですからお勧めです。
出店がかつてない規模でしたから、本当に様々な多肉植物があったようです。しかし、今回はあまりゆっくりしていられませんでしたから、よく覚えていません。Haworthiopsis sordidaは相変わらずあちこちにありました。以前は高価で珍しかったのですがね。今一番勢いがあるアガヴェは相変わらず人気で、専門店は人だかりで囲まれていてまったく売り場が見えませんでした。まだまだアガヴェ・ブームは続きそうです。あと、一時は少なかったパキポディウム苗が復活して、あちらこちらにありました。多肉植物のご新規さんが沢山流入している証拠かも知れません。まったくもって嬉しい限りですね。



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いよいよ、明日は五反田TOCでサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されます。なぜか「夏の」ではなく「6月の」になっていますね。
しかし、私は以前引き込んでしまった風邪が、治りかけたりぶり返したりを繰り返して、基本的に体調不良です。仕事帰りに論文を読むもののいまいち集中出来ず、見た内容がそれこそ右から左にといった有様です。明日はビッグバザールに行くつもりではいますが、朝起きられる感じはしませんね。まあ、しかし今日は体調を整えるために、一日寝て何もせずぐうたら過ごすつもりです。という訳で、記事を書く気力がありません。仕方がないので、最近撮影した写真などをちょろりと載せてお茶を濁す次第。


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Euphorbia gottlebei
花キリンの仲間であるゴトゥレベイが開花しました。頭に固まって咲きます。枝は途中で分岐せず、根元から叢生します。私のゴトゥレベイはまだ1本なので、少し寂しい感じがしますね。


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Euphorbia leistneri
レイストネリに新葉が出てきました。レイストネリはダム建設に伴う原産地の消滅の可能性がある悲運のユーフォルビアです。


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Dioon edule
分かりにくいのですが、エドゥレにも新葉が出てきました。エドゥレは非常に生長が遅く、樹齢の長いソテツです。メキシコで調査したところ樹齢2000年を超えるものもあったと言います。このエドゥレは冬に購入しましたから、我が家では初めてのフラッシュです。これから、葉が展開していきますから楽しみですね。


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Dioon spinulosum
スピヌロスムは世界最大のソテツです。フラッシュ直前みたいですね。1909年の論文では高さ16mの個体が見つかっています。ちなみに、著者は高さ10mのスピヌロスムは、高さ1mのエドゥレより若いかもしれない、なんて述べています。
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1908年に撮影されたDioon spinulosum

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蘇鉄 Cycas revoluta
日本のソテツはZamia furfuraceaよりフラッシュは遅かったのに、葉の伸長はとても早いですね。新葉は20枚以上出ました。


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Euphorbia denisiana var. ankarensis
なぜか撮影してあったアンカレンシス。しかし、葉の産毛具合がよく撮れています。たまたまですが、良い写真です。E. ankarensisと呼ばれてきましたが、最近デニシアナの変種とされました。

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鉄甲丸 E. bupleurifolia
鉄甲丸に新芽と花が出てきました。鉄甲丸は調子が良いと、周年ちょくちょく開花します。


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Euphorbia gorgonis
ゴルゴニスが限界の色合いです。しかし、ゴルゴニスはタコものの中でも強光に強いので平気でしょう。


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Euphorbia gymnocalycioides
こちらも中々厳しい色合いです。真夏は場所を変えないと焦げそうです。

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Stephania pierrei
ステファニアが開花しました。S. erectaは実は異名で、正しくはピエレイです。
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花は地味ですね。

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そう言えば花菖蒲の季節ですね。いつの間にやら咲いていました。

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黄菖蒲も開花中。


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ソテツは起源の古い植物で、針葉樹やイチョウと同じ裸子植物です。針葉樹は風で花粉を運ぶ風媒花ですから、裸子植物は概ね風媒花と考えられて来ました。しかし、20世紀中頃くらいからソテツの仲間は風媒花ではなく、アザミウマやゾウムシにより受粉する虫媒花であると言われるようになりました。しかし、ソテツには昆虫にアピールするための目立つ花弁や苞はありませんし、昆虫に対する報酬である花の蜜もありません。いかなる手段で昆虫を引き寄せているのでしょうか?
調べてみたところ、2021年の割と新しい論文が見つかりました。それは、Shayla Salzmanらの論文、『Cycad-Weevil Pollination Symbiosis Is Characterized by Rapidly Evolving and Highly Specific Plant-Insect Chemical Communication』です。早速、内容を見ていきましょう。

Zamia属のソテツは、Rhopalotriaというゾウムシにより受粉が行われる虫媒花です。ゾウムシはソテツの雌花(corn)を食べて繁殖します。Zamiaはゾウムシに受粉を依存し、ゾウムシもまたZamiaに依存しています。要するに、これは共進化であり、お互いがお互いに適応して進化したと考えられます。例えば、Zamia furfuracea(※1)にはRhopalotria furfuraceaというゾウムシが、Zamia integrifolia(※2)にはRhopalotria slossoniというゾウムシという風に、ソテツとゾウムシの決まった組み合わせが出来ているのです。

(※1) Zamia furfuracea
日本ではZamia pumilaの名前で販売されることが多いようですが、Z. furfuraceaとはまったくの別種です。Z. furfuraceaは葉の幅が広く厚みがありますが、Z. pumilaの葉は細長く国内ではまったく流通していません。
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Zamia furfuracea

(※2) Zamia integrifolia
一般的にはZamia floridanaの名前で販売されています。古い論文でも、Z. floridanaの名前が使われていましたが、Z. floridanaより命名の古い名前が複数あることが判明し、最も命名が古いZ. integrifoliaが正しい学名とされました。このZ. integrifoliaが正しくZ. floridanaにあたる植物に相当するかは議論もあるようですが、その場合においてもZ. floridanaより古い他の名前が採用されるため、Z. floridanaが今後学術的に使用されることはありません。
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Zamia integrifolia

ゾウムシはソテツの発する揮発性物質に誘引されていると言います。論文ではZ. integrifoliaの雌花から揮発性物質を採取し、含まれる物質にゾウムシが反応するかを試験しました。ゾウムシを誘引する物質はサリチル酸メチルである、Z. furfuraceaのゾウムシを誘引する物質とは異なっていました。実際にZ. furfuraceaに誘引されるゾウムシは、サリチル酸メチルに反応しませんでした。逆にZ. furfuraceaから放出される1,3-オクタジエンは、Z. integrifoliaに誘引されるゾウムシは反応しませんでした。やはり、決まった相手と深く関係を結んでいることが明らかになりました。

また、論文ではZamiaの遺伝子を解析し、系統関係を調べています。さらに、Zamia各種の雌花から揮発性物質を採取し、そちらも分析して種類による違いを調べています。まず、
Zamiaの遺伝子の遠近と葉の形などの外見には、あまり相関が見られませんでした。要するに、葉の形が似ているからと言って近縁とは限らないということです。しかし、雌花から放出される物質は、外見よりも遺伝的遠近に関係が見られました。

以上が論文の簡単な要約です。
これは、大変興味深い結果だと私は思いました。ソテツとゾウムシが一対一の関係を結び、さらにはソテツの揮発性物質に系統関係と相関するならば、ソテツに来るゾウムシの系統関係を調べるべきでしょう。おそらくは、ソテツの遺伝子の分岐の仕方と、ゾウムシの遺伝子の分岐の仕方は、ある程度は相関があるはずだからです。仮にソテツAにゾウムシAが関係している時、ソテツAからソテツBが分岐したとしましょう。この時に、ゾウムシAと無関係のゾウムシXがソテツBと関係するようになる訳ではなく、ゾウムシAからソテツBに反応するゾウムシBが分岐する可能性が高いと考えられます。このような関係は、実際に様々な生物間で発見されています。
例えば、新型コロナはコウモリが由来ではないかという説があります。その真偽は兎も角として、コウモリの種分化と、感染するコロナウイルスの種分化には相関が見られます。他の例では、カメムシとカメムシの腸内細菌でも、この関係が見られます。カメムシはストロー状の口で植物の汁を吸いますが、植物の汁は糖分ばかりでタンパク質など様々な栄養素がほぼ含まれておりません。そのため、カメムシは腸内に種類ごとに特有の細菌がいて、植物の汁の糖分から様々な栄養素を作り出します。カメムシと腸内細菌の分子系統は驚くほどよく似ています。

実はソテツの受粉に関する話は過去に記事にしたことがあります。それは、日本のソテツに対する研究の話です。日本のソテツであるCycas revolutaは基本的に風媒花ですが、それは近くにある個体同士だけの話であり、ケシキスイという昆虫が花粉媒介に関わっているというものです。日本のソテツは風媒も虫媒もしていますから、まさに風媒花から虫媒花への移行の途中段階を目の当たりにしているのかも知れませんね。


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最近、Euphorbia confinalis subsp. rhodesiacaという、柱サボテン状のユーフォルビアを少しに見かけるようになりました。このユーフォルビアは大変美しい模様が入ります。しかし、ついこの間、川崎市にあるタナベフラワーさんで開催された多肉植物のイベントで、奈良からお越しのたにっくん工房さんからEuphorbia confinalisを購入しました。subsp. rhodesiacaと書かない以上は、これはsubsp. confinalisのことなのでしょう。これはまだ若い個体で、特徴が完全に明らかではない可能性もあり、比較は難しいかも知れません。しかし、中々情報が少なくやや難儀しましたが、多少は情報が集まりましたから列挙してみましょう。

とりあえずは、キュー王立植物園のデータベースで、現在認められている正しい学名を調べてみましょう。というのも、インターネットで検索すると「rhodesiaca」だったり「rhodesica」、あるいは「rhodesia」だったりと様々だからです。
E. confinalisの命名は割と遅く、1951年のEuphorbia confinalis R.A.Dyerです。R.A.Dyerとは、南アフリカの植物学者、分類学者であるRobert Allen Dyerのことです。ヒガンバナ科植物と多肉植物を専門としていました。
1966年には亜種rhodesiacaが命名されました。Euphorbia confinalis subsp. rhodesiaca L.C.Leachです。亜種rhodesiacaはジンバブエに分布します。L.C.Leachとは、ローデシアのアマチュア出身の植物学者であるLeslie Charles "Larry" Leachのことです。自費でスタペリア、ユーフォルビア、アロエを収集し研究しました。
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Euphorbia confinalis subsp. rhodesiaca

亜種rhodesiacaが命名されたことにより、亜種rhodesiaca以外のE. confinalisはEuphorbia confinalis subsp. confinalisとなりました。亜種confinalisはモザンビーク、ジンバブエ、南アフリカ北部州に分布します。
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Euphorbia confinalis subsp. confinalis

JSTORという論文などの電子ファイルを提供するサイトに、特徴が記されていたので見てみましょう。ただし、ここでいうE. confinalisが、亜種コンフィナリスを指しているかは不明です。もしかしたら、亜種ロデシアカを含んだ解説かも知れません。
◎E. confinalisは高さ4.5〜8(9.5)mの多肉質でトゲのある高木です。幹は単頭か数本の主枝から上向きの枝を出します。枝は長さ1〜1.5mで、3〜5稜です。稜の盾(稜の硬い部分)は、若い時は隣と離れており、やがてつながるようになります。トゲは0.5〜12mmで、すぐに脱落する葉は1mm×1mmくらいです。集散花序はトゲの2〜5mm上に水平に1〜3個あり、Cyathiaは垂直にあります。花柄は長さ2mm、集散花序の枝は長さ3mmほどです。Cyathiaは4.5〜6.5mmでカップ状の総苞があります。腺(glands)は幅2〜2.5mmで緑がかる黄色で、裂片(lobes)は1.5mm×1.5mmで丸く、深い鋸歯があります。雄花の苞葉の長さは3mmで葉状で、雄しべの長さは4〜5mmです。雌花の花被は三角形で直径3mm、花柱は長さ1.5〜3mmで途中で結合し頂端は二裂します。蒴果は深く裂け5mm×8mmで、長さ5〜8mmの反り返った枝があります。
◎Euphorbia confinalis subsp. rhodesiacaの幹は5〜6稜で、通常は枝がいくつもあります。末端の枝は4〜5稜です。トゲは強固で、長さ12mmまでです。

World of Succulentというサイトに、Euphorbia confinalis subsp. confinalisの情報があったので見てみます。サイトによると、「Labombo Euphorbia」という名前もあるようです。ここでは、両性花が指摘されています。
◎高さ9.5mまで生長するトゲのある多肉植物です。枝は単純かいくつかの枝があり、それぞれに湾曲した上向きの枝の冠があります。枝は3〜5稜で、淡い緑色から青緑色で、長さは最大1.5mmになります。トゲは対になっており、最大0.8mmです。花は小さく淡黄色で、トゲのすぐ上に3個のグループで咲きます。中央が雄花で、他2つは両性花です。

Flora of Zimbabweというサイトに亜種ロデシアカについての記述がありました。
◎多肉質のトゲのある木で、主幹はいくつかの幹のような枝に分かれており、それぞれの枝には湾曲した上向きの枝が冠されています。この亜種は5〜6本の稜、より多くの主枝、連続的なトゲにより亜種コンフィナリスと区別されます。

いくつかのサイトを見てみましたが、なにやら似たような文言が並びます。おそらくは、共通した元ネタがあるのでしょう。とはいえ、元の文章がどこから来ているのかは分かりませんが…

さて、次いでE. confinalisの分類を確認しておきましょう。まずは
アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のTaxonony browserで検索してみます。
subgenus Euphorbia
section Euphorbia
つまりは、ユーフォルビア属(トウダイグサ属)、ユーフォルビア亜属、ユーフォルビア節ということです。ユーフォルビア節は、柱サボテン状の多肉質なユーフォルビアのほとんどが含まれる巨大なグループです。

次に2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文を見てみましょう。この論文ではユーフォルビアの遺伝子を解析しています。論文によると、E. confinalisに近縁なユーフォルビアは、E. evansii、E. grandidens、E. ramipressa、E. tanaensis、E. tetragonaあたりのようです。

2012年の『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』という論文では、E. confinalisは1951年の『Bothalia』という雑誌の6号222ページにおいて記載されたとあります。タイプ標本は南アフリカのTransvaal、Krunger国立公園は「The Gorge Camp」において、1949年の5月20日にCodd & De Winterにより採取されたものだそうです。

まあ、こんなところでしょうか。結局、大した情報はありませんでしたね。それはそうと、柱サボテン状のユーフォルビアはE. confinalisのように斑入りのものが多いのですが、この模様は種類ごとに決まったパターンがあるわけではありません。同じ模様でも異なる種類かも知れませんし、逆に異なる模様でも同じ種類かも知れません。一番重要なポイントは花ですが柱サボテン状ユーフォルビアはある程度のサイズにならないと開花しないものもありますから、トゲや稜、幹の形などの特徴で見分ける必要があります。


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一般に砂漠や湿地、高山などの特殊な環境に生える植物は環境の変動に脆弱です。当然ながら、乾燥地に生えるサボテンも強い影響を受ける可能性があります。世界規模で地球環境が変動する可能性が指摘されていますが、実際にはどうなのでしょうか? 気候変動がサボテンに与える影響をシミュレーションしたMichiel Pilletらの2022年の論文、『Elevated extinction risk of cacti under climate change』を見てみましょう。

サボテンは南北アメリカ大陸に分布しますが、環境により常に他の植物より優占している訳ではありません。サボテンは乾燥に適応したものが多いのですが、より湿った環境では、乾燥にそれほど強くない植物には勝てません。
しかし、今後アメリカ大陸は乾燥化がより進むと予想されるため、より乾燥に強いサボテンがむしろ増えるのではないかという意見もあります。たしかに、乾燥に強くないの植物は乾燥化に耐えられないでしょう。サボテンはCAM植物(※1)であり、乾燥化に対してはより有利だとされます。
しかし、乾燥化だけではなく、より高温となることも予測されており、多くのサボテンにとって好ましい状況とは言えないかも知れません。最近の研究では、わずか+2℃の高温によりサボテンに光合成障害が起きることや、高温によるサボテンの種子の発芽率の低下が報告されています。

(※1) CAM植物は、暑い日中は気孔を閉じて水分の放出を最低限とし、涼しい夜間に気孔を開いて二酸化炭素を吸収します。さらに、取り込んだ二酸化炭素をリンゴ酸として水に溶かした状態で貯蔵することが出来ます。ただし、その分だけコストがかかりますから、通常の植物(C3植物)より生長は緩やかとなります。

論文では、408種類のサボテンを評価しています。シミュレーションは、2050年と2070年の予測下の気候変動に対して、サボテンがどのように分布を拡大・縮小するかを見ています。
結果としてはSCA(※2)の変動が起きました。サボテンの大部分は好ましい気候の減少を経験する可能性があります。平均SCAは6%の減少に過ぎないため、比較的軽微に見えますが、これは一部の種類の大幅な増加により、減少が隠されてしまっているからです。分析すると、SCAの中央値付近では23%がSCAの1/4以上を失い、わずか2%がSCAの1/4以上を獲得すると予測されます。全体としては、種の60%がSCAの減少を経験します。

(※2) 適切な気候地域。(suitable climate area)

サボテンには種の多様性が高いホットスポットが存在し、メキシコ中央部、ブラジルの大西洋岸、ブラジルのCaatingaなどが知られていますが、将来的にこれらの地域では絶滅危惧種の急激な増加が予測されます。フロリダ州とアメリカ中央部の広い範囲で、サボテンの50%以上の種類が失われ、カリブ海地域や中南米のほとんどで絶滅危惧種が増加する可能性があります。

以上が論文の簡単な要約となります。
シミュレーションや解析のアルゴリズムは、残念ながら私には理解出来ませんから、その妥当性についての判断は出来ませんでした。しかし、過去の知見からすると、将来訪れるであろう高温に対し、サボテンがどこまで耐えることが出来るのかは悲観的にも感じます。また、乾燥に対しても論文ではサボテンに有利としていますが、それは他の植物との競争に対しての話でしかありません。他植物より相対的に乾燥に強いというだけで、極度の乾燥に強いという訳ではないはずです。以前、マダガスカルのユーフォルビアは、幹を太らせるサボテンタイプより、乾季に葉を落として休眠する塊根タイプの方が、乾燥に強いという論文をご紹介しました。果たして、サボテンは極度の乾燥に耐えられるのでしょうか?  ユーフォルビアとサボテンは異なりますから、イコールではないかも知れませんが、あまり甘い見立てで安心すべきではないと思います。何れにせよ、論文を読んでいて気候変動が多肉植物に対してポジティブに働くケースを私は知りません。まったくの一般人である私には、美しい野生の多肉植物がこの世界から失われないことをただ祈るだけです。


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トウダイグサ属(Euphorbia)は、最も種数が多い属の1つとされ、基本的に毒性のある乳液があります。種類によっては、皮膚に乳液がつくと激しい炎症を引き起こしたり、目に入ると失明する可能性があると言われています。一般的に植物の毒は草食動物に対する防御策であることが知られていますが、ユーフォルビアはどうでしょうか? 植物が毒を持つと、動物も毒に耐性を持ったものが現れ、さらに異なる毒を植物が産生するようなりに、その毒に対して動物が…、という風に植物と動物で終わりのない軍拡競争が行われます。では、ユーフォルビアの毒性はそのような軍拡競争の末の産物なのでしょうか?

調べてみたところ、M. Ernstらの2018年の論文、『Did a plant-herbivore arms race drive chemical diversity in Euphorbia?』を見つけました。タイトルはズバリ、「植物と草食動物の軍拡競争はユーフォルビアの化学的多様性を促進しましたか?」です。植物と草食動物の軍拡競争により、ユーフォルビアの毒の種類が多様になったのかを検証しています。
ユーフォルビアは約2000種あり、約4800万年前にアフリカで発生したと考えられています。3000万年前と2500万年前の2回に渡り、世界中に分散しアメリカ大陸まで分散が拡大しました。ユーフォルビアの毒は多環ジテルペノイド類によります。論文では43種類のユーフォルビアの遺伝的多様性、分布、毒の成分を調査しています。

ユーフォルビアは、旧世界のユーフォルビア亜属(subgenus Euphorbia)、アティマルス亜属(subgenus Athymalus)、エスラ亜属(subgenus Esula)と、主に新世界のカマエシケ亜属(subgenus Chamaesyce)からなります。
ユーフォルビア亜属は、南アフリカやマダガスカルに分布し、柱サボテン状になるE. cooperiやE. grandicornisのように巨大に育つもの、マダガスカルの花キリン類、飛竜などの塊根性のもの、旧・モナデニウムなどがあります。また、一部は南米原産のものもあります。
アティマルス亜属は南アフリカや西アフリカ、アラビア半島の一部に分布し、E. obesaやE. polygona var. horrida、鉄甲丸(E. bupleurifolia)、群生する笹蟹丸(E. pulvinata)、E. gorgonisなどのタコものなど、よく園芸店で見かけるユーフォルビアが沢山含まれます。
エスラ亜属はヨーロッパ原産のカラフルなカラーリーフとして最近良く目にしますが、アジアにも広く分布します。
カマエシケ亜属は主に南北アメリカの原産です。


さて、当然ながら旧世界から新世界へユーフォルビアは分布を拡大したと考えられますが、4亜属をそれぞれ10種類前後を調べたところ、新世界に分布するカマエシケ亜属のユーフォルビアは含まれる毒性成分が少なく種類も貧弱でした。これは、旧世界にはユーフォルビアを食害する蛾がいますが、新世界にはいないからかも知れません。このHyles属の蛾の幼虫は、ユーフォルビアに特化しています。しかし、南アフリカとマダガスカルでは、Hyles属の蛾がいない地域でも、ユーフォルビア亜属やアティマルス亜属の植物は毒性が高いことが明らかになっています。これは、過去に存在した外敵に対するものだったのかも知れません。例えば、クロサイはユーフォルビア亜属のユーフォルビアを広く食べることが知られています。

以上が論文の簡単な要約となります。
おそらくは、現在のユーフォルビアの毒性は、食害する外敵との軍拡競争の結果としてもたらされた産物なのでしょう。しかし、新世界に渡ったユーフォルビアには、もはや軍拡競争の相手がいないため、毒性がマイルドになっていったのでしょう。


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『生物の科学・遺伝』という雑誌の2023年5月1日に発行されたVol. 77号を購入しました。この号は花ハスの特集で、面白そうですから買ってみました。隔月の刊行なので、今年の3号になるそうです。

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購入を決めた決め手は、なんと言っても沢山のハスの品種の花の写真が掲載されていたからです。しかし、これほど沢山の品種があることには驚きました。そして、ハスの花は非常に美しいですね。それだけでも十分に楽しめました。もちろん、それだけではなくて、様々な角度からハスに迫っています。科学雑誌らしく、ハスの研究も紹介されています。
その前に、ハスの全般的な解説と利用についての総論、「花ハスの歴史と人々との関わり」や、2000年以上前の地層から発見されたハスの種子を発芽させることに成功させた、いわゆる古代蓮について経緯と特徴を解説した「大賀一郎博士とハスの研究」。さらに、様々な遺跡からハスの種子を見つけ、花を咲かせようというプロジェクトについて述べられた「お釈迦様のハスを探す冒険」があります。
科学的なものでは、次の論考があります。ハスの葉は水を弾きますが、その微細構造から撥水の仕組みを説明した「ハスの微細突起構造がもたらす超撥水性」や、ハスの葉のくぼみに溜まった水に気泡が出る現象を解説した「抽水植物ハスの換気システム」。ハスの地下茎であるレンコンの肥大についてと突然変異の赤いレンコンを調べた「根茎の肥大制御と着色」、ハスの花が発熱する現象を説明した「ハスの発熱現象と温度調節メカニズム」がトピックとしてあります。
赤いレンコンは将来的に食卓に登るかもしれないので気になりました。赤い色はアントシアニンという色素で、ブルーベリーなどに含まれるいわゆるポリフェノール類です。ポリフェノールは抗酸化作用がありますから、昨今の健康ブームから見て一般化するかも知れません。
そして、一番気になったのは、ハスの花の発熱現象についてです。なんと、この現象は明治31年に日本人研究者により英語論文が書かれており、その論文が世界初の報告だと言います。雑誌の内容的には、発熱のメカニズムが主です。しかし、気になるのはなぜ発熱する必要があるのかです。花の発熱と虫媒は関係すると聞いたことがありますが、それはどのような関係なのでしょうか? にわかに気になってきました。そのうち調べてみたいと思います。


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5月に神代植物公園のバラフェスタに行ってきました。バラも大変素晴らしかったのですが、大温室では様々な熱帯植物を見ることが出来ました。その中でもTacca chantrieriの花を見ることが出来て感激しました。実は去年も大温室に行きましたが、その時は残念ながら花を見ることが出来なかったのです。ですから、余計に嬉しかった訳です。
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Tacca chantrieri
見てお分かりのように、非常に不思議な形の花です。ぶら下がっている丸いものが花で、後ろの花ビラのようなものは苞でしょうか? しかし、垂れ下がる長いヒゲのようなものはいったい何でしょうか? 何より不思議なのは、なぜこのような形状をとったのかということです。花の形や色は意味があり、大抵は花粉媒介者に対するアピールです。このような地味な色合いの花には蝿が来たりしますが、その場合は腐敗臭やキノコ臭で蝿を呼ぶものが多いような気がします。では、この不思議な花を咲かせるT. chantrieriの受粉はどのように行われるのでしょうか。調べてみたところ、T. chantrieriの受粉に関してのLing Zhangらの2011年の論文、『PREDICTING MATING PATTERNS FROM POLLINATION SYNDROMES: THE CASE OF "SAPROMYIOPHILY" IN TACCA CHANTRIERI (TACCACEAE)』を見つけました。簡単に見ていきましょう。

Tacca chantrieriは中国南部や東南アジアに分布します。奇妙な花のために園芸で利用されます。しかし、奇妙な花を持つにも関わらず、Tacca属の受粉に関する調査はなされてきませんでした。1972年のDrenthや1993年のSawは、花の色と臭いが腐った有機物を模しており、訪れる蝿により受粉することを想定しました。暗い花色、長い糸状の付属物と苞、花のトラップ、蜜の欠如、腐敗臭は、蝿を利用するサトイモ科、ラン科、ウマノスズクサ科などの花の特徴です。しかし、T. chantrieriからは腐敗臭を感じません。著書らは人間には感知出来ない種類の臭気を発している可能性はあるとしています。

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Aristrochia salvadorensis
ウマノスズクサ科の花。

さて、実際の自生地における観察では、ほとんど昆虫は訪れませんでした。アリやコオロギが来ることがありましたが、雌しべや雄しべに触れることはありませんでした。まれに蜂が訪れて花粉を収集し受粉に寄与していましたが、頻度は低くメインの受粉媒介者ではなさそうです。不思議なことに、当初考えていた蝿は訪れませんでした。T. chantrieriは暗く湿った林床に生えますから、環境中に蝿は非常に豊富にも関わらずです。分かったことは、花に袋を被せて花粉媒介者を除外しても、受粉の効率に差はありませんでした。そこで、遺伝的を調べたところ、ほとんどの種子が自家受粉によるものでした。

私はこの結果を受けて、すぐに共進化による特殊化を思い浮かべました。植物が特定の昆虫と一対一の関係を結んでいた場合、花は特殊化し昆虫も適した形状に特殊化します。つまり、T. chantrieriはある昆虫に適した形状に進化しており、対応する昆虫はすでに絶滅している可能性です。もちろん、その昆虫が絶滅したのは今回の調査地である中国南部だけのことで、東南アジアの他のT. chantrieriは本来の受粉関係を結んでいる可能性もあるわけです。しかし、著者らは、対応する昆虫以外の昆虫が花に来れないような仕組みがT. chantrieriにはないため、その可能性は疑わしいとしています。著者らは訪れる昆虫の発生の増減が関係している可能性を指摘します。つまりは、訪れる昆虫が大量に発生した場合のみ、有効な他家受粉が起きるのです。また、中国南部が有効な花粉媒介者に適さない環境になったため、一見して受粉者がいないように見えるだけかもしれないとも言います。

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Anguraecum florulenthum
長い距がありますが、その先端に蜜が溜まっています。この蜜を吸えるのは、口器が特殊化した蛾のみです。蛾はこのランの蜜を吸うために特殊化し、ランと蛾は一対一の関係を結んでいます。しかし、もしその蛾が絶滅した場合、このランは受粉出来ず、いずれ絶滅してしまいます。

では、T. chantrieriは自家受粉に適応しているかというと、それも疑わしいとしています。何故なら、自家受粉に適応した植物は花が咲けばほぼ確実に結実しますが、T. chantrieriはそうではありませんでした。

さて、花の構造も受粉媒介者に影響する可能性があります。私はBulbophyllumというランを育てていますが、風で動く部分があります。花は大変な悪臭を放ちますから、蝿を呼んでいるのでしょう。すると、風で動く部分は蝿にアピールする効果があるのかも知れません。T. chantrieriも糸状の構造が沢山ありますから、受粉に関係していそうです。そこで、大きな苞葉や糸状の構造を除去する実験も行なわれました。しかし、そもそも除去していない植物にも昆虫がほとんどこないこともあり、除去しても差はありませんでした。
また、大きな苞葉は、日光を浴びて果実の発育のために光合成をしているとかも知れません。しかし、生える環境が暗い森の中であり、花茎が垂直に伸びるT. chantrieriは最適とは言えないため、説明としては疑問です。そのため、T. chantrieriの構造がどのような意味を持つのかは分かりません。

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Bulbophyllum wendlandianum
花の根本に毛があり風になびきます。さらに、中心部分がピコピコ動きます。大変な悪臭を放ちます。


以上が論文の簡単な要約です。
割と詳しく調査されたにも関わらず、結局は何も分からない実にスッキリしない結果でした。著者らの考察もいまいち説得力がありません。しかし、明らか進展はありました。以前は確証もなく、蝿が来るだろうと思われていましたが、最低限この研究における観察中は蝿は訪れませんでした。もちろん、蝿の種類や、他の地域に生えるT. chantrieriは異なるのかも知れません。今回、判明したことを基礎に置いて、後続の研究が行われることを期待します。あるいは、他の種類のTaccaではどうなのでしょうか? もし、他種では普通に蝿が来ていたりした場合、合わせて系統関係を調べたら、花の謎は一気に解けるかも知れません。


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