ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

土曜日は1日雨降りで、植え替えが出来ませんでした。では日曜日にと思いきや、日曜日は朝から仕事で出ていました。朝から雨が降っていましたが、昼頃は晴れ渡る青空となり、午前仕事でしたから帰りにファーマーズ三郷店により、うっかりユーフォルビアを購入してしまいました。帰宅後、植え替えを開始しましたが、大変な目に遭いました。

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Euphorbia poissonii
毒性が高いと言われるポイソニイです。浅い鉢に植えたものが多いため、今年は深い鉢に植え替えています。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根は良く張っていました。
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植え替え後。非常に生長が良く、育てやすいユーフォルビアです。

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Euphorbia tortirama
あまり生長している感じはしませんでした。根はどうでしょうか? 木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。
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根の張りは良好です。塊根が思ったより太っていました。
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植え替え後。塊根を出しました。今年は枝も伸びてほしいものです。

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Euphorbia knobelii
クノベリイは非常に生長が早いユーフォルビアです。確かオザキフラワーパークで購入したような記憶があります。
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根はよく張っています。鉢が狭かったみたいですね。
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植え替え後。今年の生長も期待出来ます。

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Euphorbia phillipsioides
E. phillipsiaeに似たという意味のフィリプシオイデスですが、ソマリアものにも関わらず非常に丈夫で生長も良好です。木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。
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根張りは非常に良いですね。
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植え替え後。冬の間、3回も花を咲かせました。大変育てやすいユーフォルビアです。

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Euphorbia phillipsiae
フィリプシアエは最近生長が鈍っていました。確かサカタのタネが経営しているガーデンセンター横浜で購入したような気がします。
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しかし、根は非常に強く状態は良好です。
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植え替え後。今年はもう少し生長してくれると嬉しいのですが…

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子吹きシンメトリカ
子が少し邪魔になりつつあります。木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。
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抜いてみたら実生が生えていました。恐らくは、両生花で自家受粉したE. knobeliiでしょうね。
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植え替え後。今後、子を外すか考えなくてはなりませんね。実生は別に植えました。

植え替えるために鉢から抜いて写真を撮っていたところ、すごい早さで空に暗雲が立ち込め始めました。すると、雷鳴がとどろき叩きつけるような土砂降りになりました。取り敢えず、抜きっぱなしには出来ませんから、ずぶ濡れになりながら植えるだけ植えました。しばらくはとんでもない雨量で雷も偉い頻度で鳴り続け、こりゃあ今日の作業はここまでかと思いました。しかし、あっという間に空が明るくなり、パラパラと雨が降る天気雨になりました。まるで、熱帯雨林のスコールのようでしたね。やがて雨も止みましたから、植え替え後の写真を撮影して植え替えを再開しました。まあ、風邪は引きましたがね。


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昨日は日曜日にも関わらず仕事でした。まあ、午前仕事でしたが、せっかくだから帰りに武蔵野線の三郷駅近くにあるファーマーズ三郷店に寄って来ました。朝は雨が降っていたのに、その後には急激に晴れ間が広がりました。
しかし、4月は園芸店の多肉植物は大概微妙な季節で、新入荷はまだで冬を越したものばかりだったりします。まあ、それでもついでですから、駅から10分ほどと大した距離でもないので散歩がてら見てきました。
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暖かくなって来たせいか、外にある花は非常に多く鮮やかでした。野菜苗も沢山あります。それはそうとして、多肉植物のコーナーを見てみます。サボテンやエケベリアはまあまああって、アガヴェは以前よりもありましたね。まあ、まだまだ冬仕様で、多肉植物はこれからでしょうね。あと、私の好きなユーフォルビアは少なくて、Euphorbia ambovombensis、Euphorbia valida(=E. meloformis)、Euphorbia obesaがあった位です。ただ、Euphorbia multifoliaというユーフォルビアが気になりました。というのも、かなり特徴的な葉の形ですが、どこかで見た覚えがあるのです。しかし、どうしても思い出せません。どうにも気になってしまい、少々高い気もしましたが、ついつい買ってしまいました。

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Euphorbia multifolia
葉の先端をカットしたような独特のフォルムです。名前はそのまま「沢山の葉」ですから分かりやすいですね。

このあと、植え替えをしたり雷雨に見舞われたりしましたが、また別記事にします。E. multifoliaが気になりますが、未だに思い出せません…


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昨日に引き続きAloe of the world: When, where and who?』という論文をご紹介しています。昨日はアロエ属が誕生した1753年から、1930年までの約180年間のアロエの歴史を見てきました。本日は1930年代から、いよいよアロエ属の権威であるReynoldsが登場します。また、2000年以降は現在も活動している研究者の名前が現れます。また、例によって、所々に※印で私が注釈を入れました。では、アロエの歴史を見てみましょう。

1931~1940年
1930年代からアロエ属研究の第一人者であるG. W. Reynoldsが登場します。N. S. PillansやB. H. Groenewaldと共にアフリカ南部から膨大な数のアロエを記載しました。アフリカ南部からReynoldsは24種類、Pillansは9種類(1種類はSchonlandと共著)、Groenewaldは6種類を記載しました。ReynoldsのライバルであったH. B. Christianは南熱帯アフリカから8種類(1種類はE. Milne-Redheadとの共著)のアロエを記載しました。
O. Stapfはグラスアロエのために新属Leptaloeを創設しました(※7)。また、A. LemeeはA. Bergerのアロエの分類におけるSection Aloinellaeを属に格上げし、Aloinella Lemeeを創設しました(※8)。
他には、J. Leandriはマダガスカルの新しいLomatophyllumを、A. A. Bullockは東熱帯アフリカ、L. Bolusはアフリカ南部、I. B. Pole Evansはアフリカ南部、C. L. Lettyはアフリカ南部、A. Guillauminはマダガスカルから、それぞれアロエを1種類記載しました。
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Aloe spectabilis Reynolds (1937年命名)

※7 ) Leptaloe属はAloe myriacanthaを5種類に分けていました。また、Aloe minima、Aloe parviflora、Aloe saundersiae、Aloe albidaが含まれていました。しかし、Leptaloe属は現在では認められていません。

※8 ) Aloinella属はAloe haworthioidesが含まれていましたが、現在では認められていません。
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Aloe haworthioides
=Aloinella haworthioides


1941~1950年
1940年代初頭にB. H. Groenewaldはアフリカ南部のアロエに関する本を出版しました。また、1940年代のReynoldsは、『The Aloes of South Africa』という画期的なアロエの本を出版するために集中したため、アフリカ南部のアロエはあまり記載されませんでした。しかし、1950年に出版されたReynoldsの本はアロエの標準的な教科書となりました。
その間に、H. B. Christianは南熱帯アフリカと東アフリカで活発に活動し、東熱帯アフリカから6種類、南熱帯アフリカから2種類(1種類はI. Verdoornとの共著)、北東熱帯アフリカから1種類のアロエを記載しました。Guillauminはマダガスカルから3種類のアロエと、Lomatophyllumを記載しました。
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Aloe descoingsii Reynolds (1958年命名)

1951~1960年
1950年代、Reynoldsはアフリカ東部と北東部、及びマダガスカルに注意を向けました。以前のReynoldsはリンポポ川の北は調査しないというChristianとの合意によりアフリカ南部に集中していましたが、1950年にChristianが亡くなったため調査範囲が広くなったのです。Reynoldsは42種類もの新種のアロエを記載しました。内訳はアフリカ南部から1種類、南熱帯アフリカから6種類、東熱帯アフリカから9種類、北東熱帯アフリカから17種類(6種類はP. R. O. Ballyとの共著)、西中央熱帯アフリカから7種類でした。
また、Christianの死後に4種類のアロエが記載されました。南熱帯アフリカから1種類、北東熱帯アフリカから1種類、東熱帯アフリカから2種類(I. Verdoornとの共著)でした。
D. M. C. DrutenはUrgineaとされていたAloe alooides (Bolus) Drutenをアロエ属としました(※9)。P. R. O. BallyとI. Verdoornは北東熱帯アフリカから1種類のアロエを記載しました。
A. Bertrandはマダガスカルのアロエのために新属Guillauminiaを提唱しました(※10)。


※9 ) Urginea属は現在Drimia属の異名とされています。Drimia、Albuca、Schizocarphus、Fusifilum、Dipcadi、Ledebouria、Prospero、Austronea、Ornithogalum、Trachyandraを含んでいた非常に雑多なグループでした。

※10 ) Guillauminia属には、Aloe albida、Aloe bakeri、Aloe ballatula、Aloe descoingsii、Aloe carcairophila、Aloe rauhiiが含まれていました。しかし、Guillauminiaは現在では認められていません。
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Aloe bakeri
=Guillauminia bakeri


1961~1970年
Reynoldsは熱帯アフリカとマダガスカルで調査を続け、1966年に『The Aloes of Tropical Africa and Madagascar』を出版しました。この本も出版から数十年に渡り標準的なアロエ属の教科書となりました。Reynoldsはマダガスカルから4種類、北東熱帯アフリカから3種類(2種類はP. R. O. Ballyとの共著)、東熱帯アフリカから4種類、南熱帯アフリカ~アフリカ南部から1種類、南熱帯アフリカから7種類、アラビア半島から1種類のアロエを記載しました。
1960年代、J. J. Lavranosはアラビア半島から6種類のアロエを記載しました。
他には、W. Rauhがマダガスカルから1種類、I. Verdoornはアフリカ南部から3種類、(1種類はD. S, Hardyとの共著)、L. C. Leachはまだ南熱帯アフリカから1種類、J. M. Bosserはマダガスカルから3種類、W. Giessはナミビアから1種類のアロエを記載しました。


1971~1980年
J. J. Lavranosはアロエ研究を続け、アフリカ南部から2種類、アラビア半島から3種類(2種類はA. S. Bilaidiと、1種類はL. E. Newtonと共著)、東熱帯アフリカから4種類(3種類はL. E. Newtonとの共著)のアロエを記載しました。
L. C. Leachは南熱帯アフリカで活発に活動し、南熱帯アフリカから10種類、北東熱帯アフリカから1種類のアロエを記載しました。
W. Maraisは2種類のLomatophyllumを記載しました。
他にはD. S. Hardyはアフリカ南部から2種類、W. Giessはナミビア、アフリカ南部から2種類(1種類はH. Mermullerとの共著)、G. D. Rowleyは北東熱帯アフリカから1種類、G. Cremersはマダガスカルから2種類、B. mathewは西中央熱帯アフリカ(コンゴ)から1種類、I. Verdoornは南部及び南熱帯アフリカから1種類、S. Carterは東熱帯アフリカから3種類(P. E. Brandhamとの共著)のアロエを記載しました。
また、この10年間でアフリカ南部のアロエに関する本は、例えば1974年のBornman & Hardy、1974年のJeppe、1974年のWest、1975年のJankowitzなどが出版されました。
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Aloe erinacea D. S. Hardy (1971年命名)

1981~1990年
H. F. GlenとD. S. Hardyはアフリカ南部のアロエ研究を開始しました。
W. Rauhはマダガスカルから2種類、J. J. Lavranosはアラビア半島から1種類と北東熱帯アフリカから1種類、L. E. Newtonは東熱帯アフリカから4種類(2種類は
H. J. Beentjeと、2種類はJ. J. Lavranosとの共著)、S. CarterとP. E. Brandhamは北東アフリカから1種類とアフリカ南部から1種類、E. J. van Jaasveldはアフリカ南部から3種類(1種類はK. Kritzingerとの共著)、J.R. I. Woodはアラビア半島で1種類、D. C. H. Plowesはアフリカ南部で1種類のアロエを記載しました。

1991~2000年
1990年代にはアフリカ南部のアロエに関する本が2冊出版(2000年のGlen & Hardyと、1996年のVan Wyk & Smith )されましたが、アフリカ南部からは新しいアロエは記載されませんでした。しかし、東アフリカのアロエ研究は増加しました。L. E. Newtonは東熱帯アフリカから8種類、北東熱帯アフリカから1種類、S. Carterは東熱帯アフリカから6種類(1種類はNewtonとの共著)、北東熱帯アフリカから1種類のアロエを記載しました。また、Sebsebe Demissewは北東熱帯アフリカから12種類(1種類はP. E. Brandham、1種類はM. G. Gilbert、1種類はM. Dioliとの共著)、J. J. Lavranosは北東アフリカから3種類(1種類はS. Carterとの共著)、マダガスカルから5種類(1種類はW. Röösliとの共著)、アラビア半島から9種類(7種類はS. Collenetteとの共著)のアロエを記載しました。
W. Rauhはマダガスカルの4種類(1種類はR. Hebding、1種類はA. Razafindratsira、1種類はR. Geroldとの共著)のLomatophyllumについて紹介しました。さらに、マダガスカルから4種類(1種類はR. D. Mangelsdorff、2種類はR. Geroldとの共著)のアロエを記載しました。

P. V. HeathはGuillauminiaを支持し、新属Leemea P. V. Heathを提唱しました(※11)。
他には、A. F. N. Ellertは南熱帯アフリカから1種類、P. FavellとM. B. MillerとA. N. Al Gifriはアラビア半島から1種類、J-B. Castillonはマダガスカルから2種類のアロエを記載している。

※11 ) LeemeaではなくLemeeaの誤記です。Aloe boiteaui、Aloe haworthioides、Aloe parvulaが含まれていました。Lemeea属は現在では認められていません。
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Aloe parvula
=Lemeea parvula


2001~2010年
L. E. Newtonは東熱帯アフリカから4種類と北東熱帯アフリカから1種類、J. J. Lavranosはアラビア半島から7種類(1種類はB. A. Mies、2種類はT. A. McCoy、1種類はT. A. McCoyとA. N. Al Gifri との共著)、北東熱帯アフリカから8種類(すべてMcCoyとの共著)、東熱帯アフリカから6種類(すべてMcCoyとの共著)、マダガスカルから17種類(8種類はMcCoy、1種類はM. Teissier、5種類はMcCoyとB. Rakouthとの共著)のアロエを記載しました。
G. F. Smithはアフリカ南部から5種類(2種類はN. R. Crouch、2種類はR. R. Klopper)を説明しました。E.
 J. van Jaasveldは8種類のアロエを説明しました。1種類はA. B. Low、3種類はA. E. van Wyk、1種類はW. Swanepoelとの共著です。

この10年最大のアロエ研究の貢献は、J-B. CastillonとJ-P. Castillonの親子でした。マダガスカルのアロエの21種類の組み合わせを説明し、5種類のアロエを記載しました。
他には、S. S. Laneは南熱帯アフリカから1種類、P. I. Forsterはマダガスカルから1種類、S. J. ChristieとD. P. HannonとN. A. Oakmanは北東熱帯ですから1種類、A. F. N. Ellertはコモロ諸島から1種類と南熱帯アフリカから2種類、S. Carterは北東熱帯アフリカから1種類と南熱帯アフリカから1種類、N. Rebmannはマダガスカルから4種類、S. J. Maraisはアフリカ南部から1種類のアロエが記載しました。B. J. M. Zonneveldはアフリカ南部から4種類のアロエを記載し、2種類は一部の研究者に認められています。
この10年間に出版されたアロエの本は、2001年のCarter、2004年のLane、2004年のSmith、2004年のRothmann、2008年のSmith & Van Wyk、2010年のCastillon & Castillonがあります。


2011年以降
2011~2013年の間には15種類のアロエが説明されています。Sebsebe Demissewは北東熱帯アフリカから4種類(1種類はTesfaye Awas、1種類はI. FriisとI. Nordalとの共著)、E. J. van Jaasveldはアフリカ南部から3種類(2種類はW. Swanepoel、1種類はP. nelとの共著)、南熱帯アフリカから1種類のアロエを記載しました。M. DioliとG. Powysは東熱帯アフリカから新種を説明しました。J-B. Castillonはマダガスカルから1種類、J-P. Castillonはマダガスカルから2種類、L. E. Newtonは東熱帯アフリカから2種類、G. F. Smithと
E. Figueiredoはアフリカ南部から2種類(1種類はN. R. Crouchとの共著)の組み合わせを公表しました。
アロエ研究の重要な2冊の本が出版されました。2011年の『The Aloe Names Book』はアロエの学名と異名につえて解説しており、同じく2011年のCarterの『Aloes: the Definitive Guide』はReynolds以来はじめて全種類のアロエを一冊の本にまとめたものです。


以上が論文の内容となります。個人的には学名関連の話が好きなので、大変面白い論文でした。しかし、この論文の後、遺伝子解析の結果によりアロエ属は解体されることになりました。2013年の論文を根拠とするAloidendron (A. Berger) Klopper & Gideon F. Sm.、Aloiampelos Klopper & Gideon F. Sm.、2014年の論文を根拠とするGonialoe (Baker) Boatwr. & J. C. Manning、Aristaloe Boatwr. & J. C. Manningがアロエ属から分離しました。また、2013年にはG. D. Rowleyにより1786年に命名されたKumara Medik.が復活しました。当然ながら、アロエ属から分離したのはごく一部でありほとんどのアロエは未だにアロエ属のままです。また、2019年に命名された新属Aloestrela Molteno & Gideon F. Sm.は、遺伝的にはどうやらAloidendronに含まれるようですが、現在はまだAloestrelaのままです。今後変わる可能性はあるのでしょうか?
このように、この論文と同時期に出た論文により、その後のアロエは一変しました。2011~2020年のアロエ属は思いもよらぬ激変を経験しました。2021年以降のアロエはどうなっていくのでしょうか?



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Carl von Linneにより1753年に二項式の学名の記述方法が提案されアロエ属が誕生しました。つまり、Aloe L.です。しかし、実際にはそれ以前からアロエの仲間はヨーロッパで知られていましたが、ラテン語による特徴の羅列により記述されていました。von Linneによる1753年の『Species Plantarum』では、GasteriaやHaworthiaもアロエ属として記載されていました。これが、アロエ属の誕生に関する話ですが、それから270年ほど経ちアロエ属も激変しました。そのアロエ属の歴史を紐解いたRonell R. Klopper & Gideon F. Smithの2014年の論文、『Aloe of the world: When, where and who?』を見つけました。アロエの歴史を見てみましょう。ちなみに、2014年以降に学名が変更されたものもありますから、※印で私が注釈を入れました。

1753~1760年
von Linneが初めてAloe L.を記載しました。この中では、Aloe variegata L.のみが現在でもアロエ属として残されています。

1761~1770年
アロエ研究に貢献した最初の人物は、1768年に『Garden Dictionary』の第8版を出版したP. Millerでした。Millerは主に南アフリカから来た新しいアロエについて説明しました。
この時期に出版されたものとしては、N. L. Burmanによる『a new combination for Aloe vera (L.) Burm.f.』と、R. Westonによる南アフリカの1種類のアロエについてでした。

1771~1780年
1761~1763年にArabia Felix(現在のイエメン)でデンマークの遠征があり、同行したP. Forsskal
により初めてアラビア半島のアロエについて説明されました。しかし、1880年代後半までアラビア半島のアロエについては何もありませんでした。
この時期には、P. Miller、C. Allioni、F. Massonにより、南アフリカのアロエがそれぞれ1種類記載されました。
また、F. K. MedikusによりKumara Medik.が記載されました。(※1)

※1 ) Aloe plicatilisは、初めvon LinneによりAloe disticha var. plicatilisとされました。しかし、Aloe distichaとは現在のGasteria distichaのことです。このことが後に問題を引き起こします。MedikusがAloe plicatilisをKumara distichaと命名してしまったのです。正しく引用するならば、Kumara plicatilisとすべきでした。MedikusはAloe plicatilisをKumara属としたつもりでしたが、規約上ではGasteria distichaをKumaraとしてしまったのです。困ったことにGasteria属の創設よりもKumara distichaの方が命名が早かったため、規約上では現在のGasteria属はKumara属とする必要があります。ただし、規約に従うと大きな混乱を招くため、変更は行わず現状維持が提言され認められています。ちなみに、Aloe plicatilisはアロエ属から独立し、Kumara plicatilisとなりました。Medikusの提唱したKumara属が正しい引用により復活したのです。
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Kumara plicatilis
=Aloe plicatilis
=Aloe disticha var. plicatilis


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Gasteria disticha
=Aloe disticha


1781~1790年
J. B. A. P. M. C. de Lamarckはモーリシャス、東アフリカ、北東アフリカから1種類ずつのアロエを記載しました。また、C. Linnaeus jnr.(von Linneの息子=Linne filius)とA. Aitonは、アフリカ南部からそれぞれ新種のアロエを1種類記載しました。

1791~1800年
アフリカ南部ではC. P. Thunberg、R. A. Salibusy、C. L. Willdenow、A. P. de Candolleが新種を記載しました。de Candolleはアフリカ南部だけではなく、熱帯アフリカ北東部やアラビア半島、モーリシャスも記載しています。しかし、この1790年代に発表された10種類のアロエは、現在では使用されていないものです。

1801~1810年
1804年にA. H. Haworthはアロエ属の新しい分類を発表しました。また、Haworthはアフリカ南部から幾つかの新種を記載しましたが、現在ではそのうち2種類だけが認められています。
de Candolle、J. B. Ker Gawler、J. A. Schultesがアフリカ南部で、Willdenowはアフリカ南部とモーリシャスで新種を記載しましたが、現在では異名扱いとなり認められていません。

1811~1820年
Haworthはアフリカ南部から2種類、Reunion島から1種類のアロエを記載しました。Willdenowはアフリカ南部とモーリシャス、W. T. Aitonはアフリカ南部、Ker Gawlerはアフリカ南部とモーリシャス、Prince J. M. F. A. H. I. von Salm-Rifferscheid-Dick (Salm-Dick)はアフリカ南部で新種を記載しましたが、これは現在認められていません。
Willdenowは新属Lomatophyllum Willd.を提唱しました。Lomatophyllum(※2)はマダガスカルとマスカレン諸島に固有の液果を持つアロエです。
Medikusは樹木状のアロエであるRhipidodendron Medik.を提唱しました(※3)。
Ker Gawlerは主にマスカレン諸島の液果アロエをPhylloma Ker Gawlとして記載しました(※4)。現在、これらの新属はアロエ属とされています。

※2 )Lomatophyllum属は現在アロエ属に含まれることになりました。遺伝子を解析したところ、Lomatophyllumとされてきた種類同士が近縁ではなかったのです。離島で進化したアロエの収斂進化ということなのでしょう。

※3 )Rhipidodendron属は、Aloe dichotomaとAloe plicatilisを含むものでした。しかし、現在では認められていません。ちなみに、Aloe dichotomaはアロエ属から独立し、Aloidendron dichotomumとなりました。Aloe plicatilisは(※1)を参照。
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Aloidendron dichotomum
=Aloe dichotoma


※4 ) Phylloma属はLomatophyllumとされていたアロエのうち2種類が該当します。Aloe purpurea(=L. purpureum)をP. aloiflorumなど3種類に分けていました。また、Aloe macra(=L. macrum)はP. macrumとされました。

1821~1830年
Haworthはアロエの重要な研究をしており、アフリカ南部から10種類の新種を記載しました。さらに、Pachydendron Haw.を提唱しました(※5)。
W. J. BurchellとSalm-Dickは、それぞれアフリカ南部から1種類の新種を記載しました。J. A. SchultesとJ. H. Schultesは共同で2つのアフリカ南部のアロエの新しい名前と新しい組み合わせを発表しました。
H. F. Link、L. A. Colla、K. Sprengelはアフリカ南部、R. Sweetはマスカレン諸島、J. A. SchultesとJ. H. Schultesはアフリカ全域で、様々な新種を記載しましたが、その多くは現在使用されていないものです。

※5 ) Pachydendronはサンゴの化石につけられた学名ですからこれは誤りです。正しくはPachidendronです。Aloe feroxとAloe africanaが含まれていました。

1831~1840年
1830年代にはアロエに関する研究や出版物はあまりありませんでした。Salm-Dickがアフリカ南部、H. W. Bojerはマダガスカルとマスカレン諸島、E. G. von Steudelはアラビア半島とアフリカ南部で新種を記載しましたが、現在は異名とされています。1837年に出版されたBojerの『Hartus Mauritianus』は、マダガスカルとマスカレン諸島のアロエを記載した初めての記録です。

1841~1870年
この30年間はアロエ属はあまり変化がありませんでした。Salm-Dickがアフリカ南部から2種類の新種を記載しました。von SteudelはPhylloma属について整理しました。R. A. Salisburyは新属Busipho Salisb.を創設しました。BusiphoにはAloe feroxが含まれていましたが、現在では認められていません。

1871~1900年
この30年間はJ. G. Bakerがアロエ研究を独占しました。Bakerは生涯に42種類の新種と20の異名を記載しました。Bakerによりソコトラ島とマダガスカルのアロエの正式な説明がなされました。アロエ研究はアフリカ南部から始まり、東アフリカから北東の熱帯アフリカにまで及びました。アロエに関する沢山の著作として、1883年の『Contribution to the Flora of Madagascar』、1896年の『Aloe to the Flora Capensis』、1898年の『Flora of Tropical Africa』などが知られています。
A. Todaroは1880年代後半から1890年初頭にかけて、熱帯アフリカの北東部と西部の4種類のアロエを説明しました。1888年から1895年の間にH. G. A. Englerは、アフリカ南部から1種類、東熱帯アフリカから4種類のアロエを記載しました。
他には、W.T. Thiselton Dyerがアフリカ南部から1種類、I. B. Balfourがマダガスカルから1種類、G. F. Scott-Elliotがマダガスカルから1種類、A. B. Rendleが東熱帯アフリカから1種類、C. E. O. Kuntzeがアフリカ南部から1種類、W. Watsonが北東熱帯アフリカから1種類を記載しています。
A. Deflersは1885年から1894年の間にアラビア半島を探検しました。Forsskal以来120年ぶりにアラビア半島でアロエが調査されました。Deflersはイエメンとサウジアラビア南部に遠征し、Aloe tomentosa Deflersを記載しました。この間にG. A. Schweinfurthは熱帯アフリカ北東部から3種類、アラビア半島から2種類のアロエを記載しました。
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Aloe somaliensis C. H. Wright ex W. Watson
(1899年命名)


1901~1910年
この10年間の最も著名なアロエ研究者はA. Bergerで、アロエ属の新しい体系とモノグラフを含む研究を行いました。Bergerはアフリカ南部から9種類(うち2種類はH. W. R. Marlothとの共著)、南熱帯アフリカから2種類、東熱帯アフリカから5種類、北東熱帯アフリカから3種類、西部及び西中央熱帯アフリカから1種類、マダガスカルから3種類、コモロ諸島から1種類のアロエを記載しました。また、Bergerは新属Chamaealoe A.Bergerを提唱しました(※6)。
S. Schonlandは1900年代にアフリカ南部のアロエを研究し、9種類の新種を記載しました。
その他には、J. G. Bakerは、H. G. A. EnglerとE. G. Gilgは南熱帯アフリカ、I. B. Balfourはソコトラ島、G. KarstenとH. Schenckは北東熱帯アフリカ、A. B. Rendleは東及び西中央熱帯アフリカ、Marlothはアフリカ南部から新種のアロエを記載しました。

※6 ) Chamaealoe属はChamaealoe africanaからなる属でした。これは現在のAloe bowieaのことです。A. bowieaは初めは1824年にBowiea africana Haw.と命名されました。しかし、Bowiea属からアロエ属に移る際に、すでにAloe africana Mill.というアロエが1768年から存在したため、Bowiea africana→Aloe africanaという移行が出来ませんでした。そのため、1829年にAloe bowiea Schult. & Schult.f.と命名されました。Chamaealoe africana (Haw.) A.Bergerは1905年に命名されましたが、現在では認められていません。
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Aloe bowiea
=Chamaealoe africana


1911~1920年
I. B. Pole Evansはアフリカ南部から14種類のアロエを記載しました。他には、S. Schonlandがアフリカ南部、A. Bergerは南部及び南熱帯アフリカ、A. B. Rendleは南熱帯アフリカから2種類、J. DecorseとH. -L. Poissonはマダガスカルから、それぞれアロエを記載しました。

1921~1930年
R. Decaryはマダガスカルから3種類のアロエと、後にアロエ属に移されたガステリアを記載しました。
1926年にマダガスカルのアロエとLomatophyllumに関する重要な本がJ. M. H. A. Perrier de la Bathieにより出版され、22種類のアロエが新たに記載されました。また、Decaryによりガステリアとされたアロエは、Aloe antandroi (Decary) Perrierとされました。Perrier de la BathieはLomatophyllumの6種類の新種を記載しました。
他には、P. Danguyがマダガスカル、E. Chiovendaは北東熱帯アフリカから2種類、E. A. J. de Willdermanは西中央熱帯アフリカ、A. Bergerはアフリカ南部、M. K. Dinterはアフリカ南部、N. S. Pillansはアフリカ南部、L. Guthrieはアフリカ南部からアロエを記載しました。

さて、記事が長くなってしまったので、一度ここで切ります。内容的にもアロエ属の権威であるReynoldsが1930年代から登場します。明日に続きます。


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花キリンは冬の間も咲き続けていたりしますが、寒さに弱いものは葉が落ちて休眠状態でした。しかし、そんな葉を落とした花キリンでも、4月に入り暖かくなるといち早く花を咲かせてくれます。ということで、今月は花キリンをピックアップしました。

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Euphorbia moratii
去年の冬に入手しましたが葉の数が倍以上となり、次々と開花しています。花色は地味ですが、花は上向きに咲くので目立ちます。

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Euphorbia cylindrifolia
寒さに強く、冬の間も咲き続けます。

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Euphorbia ambovmbensis
こちらも丈夫な塊根性の小型花キリンです。何故か未開花。

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Euphorbia tulearensis
塊根性の小型花キリンです。花は小さいのですが、冬でもよく開花します。


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Euphorbia rossii
冬の間は葉がない状態でした。最近葉が伸びてきて、いつの間にやら開花しました。花は固まって咲きます。塊根性で葉が細長い花キリンです。

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Euphorbia gottlebei
新しい葉が出てきました。細長い葉が出る花キリンですが、枝は途中で分岐しません。


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Euphorbia cap-saintemariensis
3月に入手したばかりですから、寒さにどの程度強いかは分かりません。蕾つきだったので次々と開花しています。

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Euphorbia subapoda
冬の間、少しいじけた感じで小さい葉が出たり枯れたりしていました。ようやくまともな葉が出てきましたが、心配なので根の状態を確認するために植え替えする予定です。


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Euphorbia mangokyensis
まだ入手してから生長していないため、特徴がよく分からない花キリンです。冬の間、葉はありませんでした。ようやく、少しだけ葉が出てきました。


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Euphorbia pedilanthoides
新しい葉が出てきました。枝が非常に細い花キリンです。未開花。


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Euphorbia didiereoides
葉のない状態でホームセンターで冬を越したようでしたから割と心配していましたが、新しい葉が出てきました。全体的に大柄ですが、葉もかなりのサイズみたいです。

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Euphorbia guillauminiana
葉が出てきました。これも一応、花キリンの仲間です。花は非常に地味で分かりにくいので気が付かないうちに終わっていたりします。


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Euphorbia pachypodioides
パキポディウムのような、という意味の名前を持つ花キリンです。冬の間に葉はすべて落ちました。

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Euphorbia neohunbertii
「噴炎竜」なる名前がある花キリン。強光に弱いみたいです。ちなみに、「噴火竜」とは他人のそら似で、それほど近縁ではありません。

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Euphorbia viguieri
「噴火竜」の名前がある花キリン。古い葉が落ち初めました。こちらは強光を好みます。

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Euphorbia viguieri var. capuroniana
入手したばかりですが、葉が伸び初めました。

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Euphorbia bongolavensis
冬の間は葉を落としていましたが、新しい葉が出てきました。こちらはマダガスカル原産のユーフォルビアですが、花キリンではなく灌木状となります。


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Pachypodium densiflorum
花キリンではありませんが、デンシフロルムがパキポディウムでは一番早く開花しました。


最近は植え替えばかりしていますが、いつの間にやら暖かくなってきましたから、そろそろ室内の多肉植物を出さなくてはなりません。ハウォルチアとガステリアは出したのですが、それ以外はこれからです。週末は忙しくなりそうです。


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今年の3月にザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションで開催された多肉植物BIG即売会に行って参りました。家からは遠いのですが、たった1回の乗り換えで行けて、横浜市営地下鉄ブルーラインの新羽駅から降りて直ぐにありますから大変楽チンです。今年の即売会は例年より規模を拡大しており、あちこちから仕入れたようで、数だけではなく割と珍しいラインナップでした。
そこで入手したのがEuphorbia bubalina、いわゆる「昭和キリン」と呼ばれるユーフォルビアです。決してレアな種類ではありませんが、やや面白味の欠ける見た目のせいか、基本的に園芸店には並びません。

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Euphorbia bubalina

さて、何か情報はないかと調べてみましたが、役に立ちそうなものはほとんどありませんでしたね。販売サイトはまあまああるのですが、一番知りたい原産地の情報などは残念ながら見つけられませんでした。アフリカの多肉植物となるユーフォルビアに関しては、何故か論文も非常に少ないので、こういう時困ってしまいます。

とりあえず、学名について見てみましょう。学名は1860年に命名されたEuphorbia bubalina Boiss.です。異名として、1898年に命名されたEuphorbia laxiflora Kuntze、1915年に命名されたEuphorbia tugelensis N.E.Br.があります。
E. bubalinaの命名者のPierre Edmond Boisserは、スイスの植物学者で探検家でした。19世紀最大のコレクターの一人で、ヨーロッパ、北アフリカ、中東を旅して、膨大な分類学的な成果をあげました。Boisserは著名な植物学者であるde Candolleに師事していたということです。
そのBoisserが1860年の出版した『Centuria Euphorbium』を入手したので見てみました。なんと、ラテン語で植物の特徴を羅列しただけの昔ながらの記載方法でした。一応、翻訳をかけてみましたが、「直立、細長い、多肉質、円筒形…」というような形式で淡々と書かれているだけで正直よく分かりませんでした。"bubalina"という種小名の由来を知りたかったのですが、特に記載はありませんでした。残念。
ちなみに、Boisserの1860年の論文以外にも、E. bubalinaの根拠となる論文があります。それは、P.V.Bruynsの2012年の論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』です。この論文は南アフリカに分布するユーフォルビアのリストを、ひたすらに列挙した面白味のないものです。ただ、初めて命名された論文、タイプ標本の情報、異名について調べられており、大変便利なものです。E. bubalinaについてはどう書かれているでしょうか?

Centuria Euphorbium: 26(1860).
Type: South Africa, Cape, among thorn-bushes near Buffelsriver, Drege 4615 (P, holo.). [Boisser(1860) cited a specimen in 'h. Bunge', so this sheet is taken as the holotype.]

一行目はBoisserが初めて記載した論文の名前と、ページと記載年ですね。二行目からは種を記載する基準となる標本(ホロタイプ)の情報です。採取地点が「Buffelsriver」なんて書いてありますね。要するに「バッファロー川」という意味でしょう。すると、「bubalina」とはバッファローを表すラテン語の「bubal」から来ているのではないでしょうか?

ちなみに、E. bubalinaは、この論文では「Euphorbia subg. Rhizanthium」とされています。要するに「Rhizanthium亜属」ですが、論文によっては「Athymalus亜属」だったりします。さて、このRhizanthium亜属(Athymalus亜属)には様々なユーフォルビアを含みます。少し詳しく見てみましょう。

2013年に発表された『
A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文では、Athymalus亜属の遺伝子を解析しています。その論文では、E. bubalinaはAnthacantha節(Section Anthacanthae)のFlorispina亜節(Subsection Florispinae)に分類されます。Florispina亜節には、E. obesa、E. polygona(E. horridaを含む)、E. pulvinata(笹蟹丸)、E. susannae(瑠璃晃)、E. stellispina(群星冠)、E. ferox(勇猛閣)、E. heptagona(=E. enopla, 紅彩閣)、E. bupleurifolia(鉄甲丸)などの有名種を含みます。E. bubalina自体はE. clava(式部)に近縁なようです。また、Anthacantha節には他にもMedusea亜節(Subsection Medusea)があり、名前の通りタコものユーフォルビアが含まれます。

そう言えば、キュー王立植物園のデータベースには、「Native to: Cape Provine, KwaZulu-Natal, New Zealand North」なんて書いてありました。前の2つは南アフリカの州ですが、何故かニュージーランドとあります。いや、さすがにニュージーランドは自生地ではなくて移入種ですよね。E. bubalinaを含むFlorispina亜節はどれも南アフリカ原産ですから、さすがに誤記だと思います。


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本日は大物を植え替えます。というか、まだ植え替えが終わりません。なんと鉢が尽きました。私の見積もりが甘いだけかもしれませんが…

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Aloe peglerae
いかにも窮屈な感じがします。去年は急激に育ちました。葉が多くなり水やりが少し難しい感じがします。木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。

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根の状態は悪くありませんが、鉢底まで根がまわっていました。
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植え替え後。4号鉢から6号鉢にスケールアップしました。
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水やりしやすくなりましたね。もっと葉の枚数が増えてペグレラエらしい姿になるまでにどれくらいかかるでしょうか?

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Pachypodium densiflorum
枝が伸びまくるデンシフロルムです。花茎もビョンビョン伸びていますね。今は亡き近所にあった園芸店にて入手。

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育つのが早いというか、異様に縦長に育ちました。本によるとパキポディウムは生まれつき縦長になったり、潰れて育ったり様々な個性があるみたいです。私のデンシフロルムはただ単純に徒長しているだけではなく、苗の内から細長く縦長で、枝の角度もあまりに上向きでした。
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しかし、この感じは非常に不味い。果たして鉢から抜けるのか心配になります。
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抜けました。というか、鉢をハンマーで叩きながら、結構時間をかけてです。結構難儀しましたね。
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カチカチです。
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盆栽用のレーキを用い、熊手部分で根を崩したり、ヘラ部分で突き刺したりして徐々にほぐしていきます。
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しかし、根元の太い根の周囲はまったくほぐれずお手上げ状態です。仕方がないので、最終的にジェット水流で固まった用土を除きました。水はけが悪くなり腐っても困りますからね。
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植え替え後。10号鉢に植えました。大きすぎる気もしますが、どうせ何年もこのままなので…
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地上部が大きすぎてバランスが悪く、根が張るまでぐらつくので、しばらくは縛って固定しておきます。

そう言えば、このデンシフロルムで今年の3月末から始めた植え替えもちょうど80鉢目(たぶん)となりました。まだ、植え替えは続きますが、記念すべき(?)100鉢目はやはり我が家では大物のZamia furfuraceaを植え替える予定です。去年は初めて開花したりと頑張ってくれました。あまり植え替えをしていないので、さすがに頃合いですかね。



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植え替えはまだ続きます。まるで、果てがなく終わりがないようですが、すべてを植え替えする訳ではありません。今週末には終わらせたいところです。今回はサボテンがメインです。

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Gymnocalycium intertextum
ちょっと端に移動してしまいました。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根の状態は良好です。
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植え替え後。インターテクスツムはトゲが暴れていていいものです。

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Gymnocalycium gibbosum subsp. borthii
潰れた形が楽しいボルティイです。こちらも鶴仙園西武池袋店にて入手。
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塊根が非常に発達しています。地上部より根に水分を貯蔵してます。なにやら、エチゼンクラゲみたいですね。
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植え替え後。普段は見えませんが、塊根は切らずに残します。

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瑞昌玉
Gymnocalycium quehlianumらしいとされているサボテンです。木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。
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根は非常に良いのですが、根ジラミがちょろっといました。一応、根を洗いましたが…
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植え替え後。浸透移行性殺虫剤撒いておきましたが、効果のほどは不明です。

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バッテリー
最近よく見るタイプのバッテリーです。何故か鳥についばまれてしまい傷があります。またまた、鶴仙園西武池袋店にて入手。
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塊根がありますね。
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植え替え後。バッテリーは割と異なるタイプがあり面白いギムノです。

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新鳳頭
Gymnocalycium quehlianum系とされることもあります。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根は渦巻いています。短い鉢に植えていたので曲がってしまいました。
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植え替え後。新鳳頭はまだ小さいので特徴が出るのはこれからです。

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Euphorbia robecchii
何故かE. robechchiiの名前で販売されることもあります。購入時、水を切られていたのか根が干からびていました。ビッグバザールにて入手。

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根が生えてきましたね。ご覧の通りの実生苗です。購入時には双葉がまだついていました。
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植え替え後。根は復活したので、今年は地上部が生長して欲しいものです。

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貴青玉錦 Euphorbia meloformis cv.
E. meloformis系の交配種を貴青玉と言いますが、その貴青玉の斑入りのものです。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根には問題がありません。
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植え替え後。貴青玉錦は斑入りにも関わらず非常に丈夫で、強光にもよく耐えます。どうやら、完全に葉緑体が抜けている訳ではなく、斑の下に葉緑体があって光合成をしているそうです。

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Pachypodium eburneum
去年の夏に調子を落としました。ぐらついていたので、根をやられたのは分かりますが、その原因は水のやりすぎではなく水が少なかったからみたいです。葉の生長が止まって、幹が凹んで、それから根という順番でしたからね。武蔵野線の三郷駅近くにあるファーマーズガーデンにて入手。

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ご覧の通り、元からあった根は死にました。変なところから新しい根が出ています。
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植え替え後。幹は凹むと完全に元には戻らないと言われますが、苗だからなのか完全に元通りに復活しました。新しい根は貧弱なので、まずは根を育てなければなりませんね。

私はユーフォルビアがメインでサボテンはギムノカリキウムを少々育てているだけです。昔、少しだけサボテンを育てていましたが、現在は様々な多肉植物を育てて考え方を改めました。サボテンは主根を切って細根を生やしたほうが育ちが良いとされ、私も昔はそうしていました。しかし、今は根を整理せずに植え替えしています。基本的に太い根には水や養分を吸収する働きはなく、体を大地に固定したり、地下深くまで根を張るための土台でしかありません。ですから、細根を出させた方が生育が良好なのは頷ける話です。自生地ならいざ知らず、栽培環境では太い根は不要な存在でしょう。塊根に至っては水分の貯蔵のためのものですから、栽培環境ではやはり不要な存在です。しかし、サボテンもまた多肉植物・塊根植物の1つとして捉えるならば、太い根を切らずに育てるのも野趣があり面白いのではないかと思い、あえて根を切らずに育てています。まあ、サボテンの塊根は表に出して観賞するものではありませんから、植え替えの時しか見ることが出来ませんが。まあ、私自身は早く大きく育てたいという訳でもないので、ゆっくりでも面白く育ってもらえればそれでいいのです。


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今回はハウォルチアの残りと、ツリスタ、アストロロバを植え替えます。

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Haworthiopsis glauca var. herrei RIB 0217
グラウカの変種ヘレイです。フィールドナンバーのRIBは調べても出てきませんが、RIBとはRecorded by Ingo Breuerのことみたいですね。硬葉系ハウォルチア。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根の張りはまあまあです。
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植え替え後。根がすでに出ている子を1つ外しました。硬葉系ハウォルチアはいまいち人気がありませんが、こういう青白いのは人気が出そうな気もします。

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Haworthiopsis koelmaniorum
コエルマニオルムは、遺伝子解析結果では硬葉系ハウォルチアの中でも独特の立ち位置です。窓はありますが、Haworthiopsis venosaの仲間と近縁というわけでもありません。ビッグバザールにて入手。

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根は強めです。
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植え替え後。コエルマニオルムが綺麗なのは今だけで、遮光していても常に真っ赤になり窓が分かりにくくなります。

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"Haworthia triangularis"
実在にこの名前のハウォルチアは存在しません。どうやらHaworthiopsis viscosa系みたいですね。川崎市のタナベフラワーにて入手。

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根はかなり張っていました。
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植え替え後。ちょっと日が足りていない模様です。

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Tulista minor Swellense
かつては、硬葉系ハウォルチアとされていたツリスタです。"Swellense"は採取された産地の名前で、イボ(結節)が目立ちます。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根は少ないですね。去年の生長が今一つだったせいでしょう。
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植え替え後。去年は日焼けこそしませんでしたが、少し日に当てすぎていじけてしまいました。今年は適切な日照で綺麗に育てたいものです。

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Tulista minor
こちらは一般的なタイプです。横浜のコーナン港北インター店にて入手。

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根の張りは良好。
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植え替え後。こちらの生長には問題がありません。

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Tulista marginata
マルギナタの小苗です。まだ、葉は回転していません。イボ(結節)も控えめですが、将来はどのように育つでしょうか。コーナン港北インター店にて入手。

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根には問題がなさそうです。
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植え替え後。去年はあまり動きがありませんでした。しかし、根の状態がいいので今年の生長には期待が出来ます。

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Astroloba spiralis
「ハリー」の名前で入手しました。いわゆるAstroloba halliiですが、これは裸名(nom. nud.)なので正式なものではありません。Astroloba pentagonaやAstroloba spirelaも、スピラリスで統一されました。ビッグバザールにて入手。

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根は細いものは枯れがちでした。
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植え替え後。割と大型なので鉢も見合うサイズにしました。

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Astroloba foliolosa
「フォリオサ」の名前で入手しました。間違いですがそう呼ばれがちみたいです。ビッグバザールにて入手。

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根は貧弱です。
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植え替え後。どうしても斜めに育ってしまいます。そもそも根が斜めに生えているので難しいところです。

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Astroloba rubriflora
かつてはPoellnitzia rubrifloraでした。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根はやはり貧弱。
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植え替え後。そろそろ、Astrolobaとしては異質な赤い花を見てみたいところです。

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今年のハウォルチアとツリスタ、アストロロバの植え替えはこれでおしまいです。後はユーフォルビアとアロエがまだ残っています。


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相も変わらず、終わりの見えない多肉植物の植え替えに勤しんでいます。今回はハウォルチアばかりです。

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十二の巻
Haworthiopsis attenuata系交配種です。硬葉系ハウォルチアはHaworthiopsisとなりました。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根はまずまずのところです。
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植え替え後。十二の巻はつい買ってしまいます。このようなノーマルタイプが一番形が整っています。

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Haworthiopsis attenuata
「特アルバ」という選抜タイプ。新羽駅近くのヨネヤマプランテイションにて入手。

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根の張りは良好。
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植え替え後。バンドは強いのですか姿は乱れがちです。

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Haworthiopsis fasciata DMC 05265
こちらはアテヌアタ系ではなくファスキアタです。フィールドナンバーつきです。ビッグバザールにて入手。

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根の張りは非常に良いですね。
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植え替え後。DMCナンバーはDavid Cumming氏の採取個体です。早くも花茎が伸びて来ました。

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竜城 Haworthiopsis viscosa
そう言えば、入手したのは冬で以前植え替えた時には根がほとんどありませんでしたね。硬葉系ハウォルチア。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根の張りは結構いいみたいです。
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植え替え後。これでも入手から倍くらい伸びました。

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五重の塔 Haworthiopsis tortuosa
埼玉県のシマムラ園芸にて入手。

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根の張りは良好。
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植え替え後。そう言えば、五重の塔はHaworthiopsis viscosa系の雑種と考えられており、現在はHaworthiopsis × tortuosaとなっているようです。

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Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
「鷹の爪」(Haworthiopsis reinwardtii)の品種(form)です。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根の張りは良好。購入時にあった真下に伸びる根はすべて枯れて、新しい根と入れ変わったみたいです。
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植え替え後。2つに分けました。H. reinwardtii系は今後集めたい硬葉系ハウォルチアです。

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風車 Haworthiopsis scabra var. starkiana
Haworthiopsis scabraのざらつきがない変種です。この個体は葉が短く太ったタイプ。硬葉系ハウォルチア。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根は太く荒い感じがします。
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植え替え後。自生地では強光に当たり黄色くなりますが、中々日焼けが怖くて自生地の姿を再現出来ません。

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Haworthia herbacea
小さい沢山の窓と短い禾があるタイプの軟葉系ハウォルチアです。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根は太ったものでした。
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植え替え後。子株がいくつか出来ていますね。

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Haworthia magnifica var. notabilis JDV 87/197
Jakobus D. Venter氏の採取個体です。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根は割と枯れていました。
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植え替え後。子を外しました。しかし、どうにも水っぽくて葉がポキポキ折れてしまいました。現在はHaworthia maraisiiの変種Haworthia maraisii var. notabilisとなりました。

さて、植え替えはまだ続きます。しかし、ハウォルチアは鶴仙園さんばかりですが、いつ行ってもハウォルチアだらけなのでついつい買ってしまいます。


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ソテツの根にはサンゴ根と呼ばれる不思議な形状の根があります。これは何かと言えば、細菌(バクテリア)がソテツと共生関係を結んだものです。植物と細菌の共生と言えば、マメ科植物の根粒が有名です。マメ科植物の根粒は、大気中の窒素ガスを固定してアンモニアに変換することが出来ます。植物は大気中の窒素を利用出来ませんが、アンモニア態窒素は栄養分として利用可能なのです。
さて、このソテツのサンゴ根は古くから研究されてきたようですが、最新の研究成果をまとめた論文を見つけました。Aimee Caye G. Chang, Tao Chen, Nan Li & Jun Duanによる2019年の論文、『Perspectives on Endosymbiosis in Coralloid Roots : Association of Cycas and Cyanobacteria』です。なるほど、サンゴ根はそのまま「Coralloid Roots」なんですね。というより、サンゴ根という言葉自体が英語から来ているのかもしれません。
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Dioon spinulosumのサンゴ根は地際に形成されていました。

ソテツのサンゴ根と共生する細菌は、意外にも光合成をする細菌です。いわゆる、藍藻(藍色細菌、シアノバクテリア)と呼ばれている細菌で、一見して藻のように見えます。しかし、遺伝子が核膜に包まれておらず、細胞質中に浮かんでいる状態です。これを一般的に原核生物と呼び、藍藻は葉緑体の元になった細菌であると考えています。一昔前には日本でも河川や湖沼に生活排水が処理されずに垂れ流した結果、富栄養化によりアオコと呼ばれる藍藻が増殖し腐敗して異臭を放ったりしました。まあ、この富栄養化は洗剤にリンが含まれていたことが原因だったようで、現在では洗剤にリンはほぼ含まれなくなりました。
さて、わざわざ地中にある根に共生する細菌が光合成できても意味がないような気がしますが、個人的な感想ではサンゴ根は浅いところに出来やすいように思われます。なお、ソテツと共生する藍藻は主にネンジュモです。ネンジュモは緑色の珠を数珠繋ぎに連ねたような藻です。実際にサンゴ根を切って断面を見るとと外皮側に薄く緑色の層があり、藍藻が存在することが分かります。

サンゴ根の形成に先立って、プレ・サンゴ根(precoralloid roots)を形成します。この段階では藍藻は存在しないのにプレ・サンゴ根は形成されます。このプレ・サンゴ根が藍藻との共生のために形成されるものかどうかは、実はよく分かりません。他に何か機能がある可能性もあります。しかし、現実的にプレ・サンゴ根にネンジュモが感染することにより、サンゴ根が形成されるのです。
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Dioon eduleの根に形成されたサンゴ根ですが、プレ・サンゴ根あるいはサンゴ根の初期段階と思われます。

しかし、窒素ガスというのは利用しようと思うと、大変厄介な存在です。なぜなら、窒素ガスは窒素原子が2つ結合したものですが三重結合によりがっちり連結しており、様々な物質に反応を示さない不活発な分子だからです。ですから、窒素は大気の78%を占めるにも関わらず安定しており、我々が呼吸のために大量に吸い込んでも何も起こりません。しかし、ネンジュモは空気中の窒素ガスをニトロゲナーゼという酵素で、三重結合を解離させ水素と結合させて生物が利用可能な形とするのです。

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Zamia furfuraceaのサンゴ根はDioonとは形が異なります。

藍藻はいつでもニトロゲナーゼを使うわけではなく、通常は周囲に栄養分が不足している場合に使われます。この時、藍藻は普段の細胞よりわずかに大きいヘテロシスト(heterocysts)という形態になります。ニトロゲナーゼは酸素で不活性化してしまうため、細胞に厚い壁を持ったヘテロシストにより酸素を遮断出来るようです。しかし、サンゴ根ではソテツとの共生関係のためだけに、藍藻はヘテロシストを形成します。
また、藍藻はヘテロシスト以外にもいくつかの形態に変化します。運動性がありソテツの出す化学物質に反応して感染に関与すると言われているhormogoniumや、環境の悪化によりakinetesと呼ばれる胞子になります。akinetesは寒さや乾燥に強く、60年以上耐えることが出来ると言います。

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Zamia integrifolia(異名Zamia floridana)のサンゴ根は青みがかり、藍藻がいることが分かります。

2019年にはソテツ(Cycas revoluta)の根から、hormogoniumを誘導する因子(
diacylglycerol 1-palmitoyl-2-linoleoyl-sn-glycerol)を単離することに成功しているそうです。そこで、考えられるサンゴ根が形成される筋書きは以下の通りです。まず、ソテツはプレ・サンゴ根を形成し、誘導因子を分泌し移動性があるhormogoniumを誘引します。hormogoniumはプレ・サンゴ根に感染しますが、このままだと取り込まれた藍藻は窒素固定を行いません。なぜなら、窒素固定は藍藻がヘテロシストとなる必要があるからです。そこで、藍藻が感染したらhormogonium誘導因子の放出を停止し、取り込まれた藍藻はヘテロシストの形態へ移行し窒素固定を開始するのです。ちなみに、hormogonium誘導因子の放出を抑制する遺伝子が1997年に発見されているそうです。
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Cycas revoluta

以上のように様々なことが分かりつつあります。しかし、サンゴ根形成のメカニズムはいまだに分かっておらず、ソテツとネンジュモの関係も明らかとなっていない部分が沢山あります。著者らはこれらの研究には限界があるとしています。まず、感染実験が必要ですが、ソテツの生長を考えると非常に長期に渡る試験となる可能性があります。では、in vitro(試験管内)で実験するにせよ、サンゴ根の組織培養の方法を構築することから始めなければならないでしょう。
この論文自体がソテツのサンゴ根研究の成果をまとめた、ある種の一里塚のようなものです。ここから論文に記された研究の道筋をゆっくりと進展していくのか、それとも革新的な技術の開発で一気に解決してしまうのか、まあそれは都合の良すぎる話ですが、今後の研究を私もゆっくり待ちたいと思います。


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プラントハンターはヨーロッパの列強国が世界中に派遣した植物採取人たちのことです。もちろん、国家が国策として行っていたわけではなく、ヨーロッパの園芸熱の高まりにより、ヨーロッパの人々は異国の珍しい植物を入手しようとしたのです。
さて、本日はそんなプラントハンターについて書かれたAlice M. Coatsの「プラントハンター東洋を駆ける」(八坂書房、2007年)をご紹介しましょう。原版は世界中のプラントハンターについて書かれているそうですが、日本語版はその中から日本と中国を舞台にした部分のみを抜粋しています。基本的には次々とプラントハンターの人生が語られ、内容は非常に濃密です。語られるのも、日本では有名なシーボルトやケンペルだけではなく、存命中はまったくその業績が知られていなかったようなプラントハンターすら登場します。


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日本はプラントハンターが訪れた時には、すでに園芸ブームが繰り返しあったわけで、プラントハンターも植木屋が沢山あることに驚いた様子です。また、日本では何かと話を異国の聞きにくる知識人も結構いた様子もうかがえます。中には帰国したプラントハンターに植物を送り続けた日本人すら登場します。国や時代が代われど人のつながりは普遍的ですね。
さて、日本や中国からヨーロッパに渡った植物は沢山あれど、そのすべてが栽培された訳ではありません。初期は地球を半周する船旅に耐えられないものも多く、植物輸送用のミニフレームである「ウォードの箱」が開発されるまでは生き残るものはわずかでした。また、船が難破することもしばしばでした。
日本からはアジサイやアオキ、ツツジなどの花木やユリやサクラソウなどの草花を始め、非常に多くの植物が導入されました。意外にも針葉樹が何かと登場しますが、庭木としての活用が期待されたのかも知れません。また、桜は中々導入されませんでしたが、理由はよく分かりません。開花期を見逃していただけなのでしょうか?
プラントハンターは園芸植物だけを求めた訳ではなく、沢山の乾燥標本を作ってヨーロッパに送っています。それらの標本を元に学名が付けられていますから、現在でもそれらは貴重な資料です。

最近、日本でもプラントハンターと呼ばれる人がいます。しかし、テレビで放映しているところを見ると、実際に採取するために探検している訳ではなく、世界中を飛び回って買付をしているバイヤーであることが分かります。とは言うものの、昔のプラントハンターも、ほとんど都市部で植木屋などから購入するだけだった人物もいないではありません。まあ、当時はヨーロッパからアフリカ西岸を帆船で南下して、喜望峰を回り北上し、インドや東南アジアを経由して東アジアに来るだけで大変な冒険ではありました。また、中国では盗賊や海賊に悩まされ、病気になったものも多く現地で亡くなったプラントハンターもいます。中には現地民に襲撃されて命を落としたプラントハンターすらいます。昔のプラントハンターは危険をかえりみず、わずかな報酬でまったく未知の世界に飛び出した、まさに冒険家だった訳です。

この本の原版は割と古いもので初版は1969年ですから、何となく時代を感じる記述が目立ちます。例えば中国ではプラントハンターは所詮は余所者でしかないというのに、便宜を図らない中国に批判的です。しかも、侵略的なヨーロッパ列強の姿勢には無批判で、読んでいると列強に侵食される中国の方が悪いかのように感じてしまいます。どうにも西洋中心主義が色濃い雰囲気ですが、実は1990年代でも学術世界ですら生き残っていた思想ですから、時代を考慮するならば仕方がないことかもしれませんね。


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近年、花キリン類の分類が見直されつつあります。というのも、花キリン類は外見上の判別が難しく、非常に混乱したグループとされているからです。恐らく、これから花キリン類は大胆に整理されていくことになるのでしょう。さて、本日はそんな花キリンからEuphorbia cap-saintemariensisをご紹介します。
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Euphorbia cap-saintemariensis

まずは学名の話から始めましょう。初めて命名されたのは1970年のEuphorbia cap-saintemariensis Rauhでした。しかし、1984年にEuphorbia decaryi var. cap-saintemariensis (Rauh) Cremersとする意見もありました。しかし、E. cap-saintemariensisをE. decaryiの変種とすることは、Rauh & Buchlohにより批判され、一般にも認められませんでした。しかし、様々なサイトでは今でもE. decaryi var. cap-saintemariensisと呼ばれることもあるとされ勝ちですが、真相はただそう言う意見もあったというだけです。
しかし、ここで1つ解説が必要でしょう。E. decaryiの名前はどうやら混乱があったようで、現在E. decaryiと呼ばれる植物はE. boiteauiを指し、本来のE. decaryiとは現在E. francoisiiと呼ばれている植物のことなんだそうです。つまり、E. decaryi var. cap-saintemariensisという名前は、現在のE. francoisiiに対してではなく、本来のE. boiteauiに相当する植物に対する変種とされたということになります。
このように、E. decaryi、E. boiteaui、E. francoisiiを整理したのは、2016年のJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonでした。しかし、CastillonらはE. decaryi var. cap-saintemariensisをE. boiteauiと関連付けることはせず、E. cap-saintemariensisとして独立する考え方を支持しました。2021年にはE. decaryiの近縁種を整理した
Haevermans & Hetterscheidも、E. cap-saintemariensisを独立種とする考え方を支持しています。
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Euphorbia boiteaui

2013年に発表されたBrian L.Dorseyらのユーフォルビアの遺伝子を解析した論文では、E. cap-saintemariensisはE. rossii、E. tulearensis、E. beharensisと同じグループとされています。また、E. ambovombensis、E. decaryi(=E. boiteaui)、E. cylindrifolia、E. francoisii(=E. decaryi)は同じグループで、E. cap-saintemariensisのグループとは姉妹群です。ということで、どうやらE. cap-saintemariensisは言うほどE. boiteauiに近縁ではないようです。
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Euphorbia tulearensis

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Euphorbia rossii

次に原産地の情報ですが、花キリンですから当時ながらマダガスカル原産です。E. cap-saintemariensisはマダガスカル島の最南端の岬にあるCap Sainte-Marie保護区に特有ですが、種小名が地名に由来することが分かります。生息地域は約0.9km2と非常に狭く、絶滅の危機に瀕しています。生息地は平らな石灰岩の台地で、風が吹きすさぶ嵐の多い地域です。E. cap-saintemariensisは完全な直射日光か、他の植物にまだらに覆われた半日陰で育ちます。Alluaudia comosa、Alluaudiopsis fiherensis、Aloe millotii、Crassula humbertiなどと共に育ちます。生息環境を見ると、Euphorbia decaryiより日照を好むことが分かります。
育て方を調べていたところ、面白いことが書かれていました。植え替え後もE. cap-saintemariensisが休眠状態だった場合、植え替えのダメージが回復する2週間程度経った後、40~50℃のお湯を与えると通常2~7日で休眠から覚めると言います。ショック療法みたいなものかもしれませんが、結構乱暴な方法ですね。

さて、種小名は「cap-saintemariensis」な訳ですが、「capsaintemariensis」とハイフンを入れない表記もよく見られます。正式にはハイフンを入れるようです。名前の由来である「Cap Saint Marie」は、「Cap Saint-Marie」とも表記されることもあります。学名とは逆のような気がしますが、この場合は「Cap」+「Saint-Marie」を表しています。 ですから学名では「cap」+「saintmarie」となっているのでしょう。まあ、意味的には「聖Marieの岬」ですから、分けるなら「聖Marie」と「岬」ですよね。ずいぶんとつまらないことを言ったかもしれません。


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Welwitschia mirabilisはナミブ砂漠に生える奇妙な植物です。生長点から出る2枚しかない葉が一生伸び続け、先端は枯れて葉が裂けるため、何枚も葉があるように見えたりします。ほとんど雨が降らない地域にも生えるため、1本の根が伸び続けて地下水を利用しているのだと言います。推定寿命は400~1500年と非常に長命な植物です。日本では「奇想天外」なる妙な名前もあります。
さて、Welwitschiaは砂漠の植物ですから、CAM植物ではないかと言われて来ました。これは光合成の方法に関する話です。少し解説しましょう。一般的に日本に自生する植物の多くはC3植物です。C3植物は取り込んだ二酸化炭素を、炭素が3つからなる物質に変換します。しかし、乾燥地の植物にはC4植物とCAM植物が多く、取り込んだ二酸化炭素を炭素が4つからなる物質に変換します。光合成するためには気孔を開いて二酸化炭素を取り込む必要がありますが、乾燥地では日中に気孔を開くと蒸散により水分が逃げてしまいます。ですから、C4植物やCAM植物は日中は気孔を閉じていて、夜間に二酸化炭素を取り込んでおくのです。さらに、CAM植物は取り込んだ二酸化炭素を最終的にリンゴ酸に変換して水分に溶かした状態で貯蔵することが出来ます。Welwitschiaは極端な乾燥に耐えるためにCAM植物であろうと考えることは、何らおかしなことではありません。しかし、驚くべきことにWelwitschiaはCAM植物ではなく、C3植物だということが分かりました。つまりは、光合成をするために日中気孔を開いてガス交換をして、大量の水分を蒸散により失っているのです。つまりはWelwitschiaは生長が遅く不活発な印象とは裏腹に、大量の水分を地下深くから吸い上げて、吸い上げた水分を大量に蒸散により失うかなり動的な植物なのです。


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奇想天外 Welwitschia mirabilis
(神代植物公園)


本日はWelwitschiaと菌との関係性を調査したK.M.Jacobson、P.J.Jacobson、O.K.Miller.Jr.の1993年の論文、『The mycorrhizal status of Welwitschia mirabilis』をご紹介しましょう。当ブログでは植物と菌との共生関係=菌根について度々取りあげていますが、多くの植物は菌類と共生関係を結び様々な恩恵を受けていることが明らかとなっています。極めて乾燥した地域に生える直根しかないWelwitschiaには菌類との共生は縁がないような気もします。しかし、何事も実際に確かめなければ確証は得られないものです。著者らはナミブ砂漠の7つの地域で、Welwitschiaの根を調べています。ただし、植物を傷付けない非破壊調査であるため、岩のひび割れに生えるWelwitschiaは流石にお手上げだったということです。

さて、先ほどから菌だとか菌類などと呼んできましたが、今回の調査はアーバスキュラー菌根菌を対象としています。アーバスキュラー菌根菌は植物の根の組織内に入り込んで、まるで植物の根と一体となったかのようなアーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は植物の80%以上で確認されている汎用性が高い菌根菌です。
さて、まずはW. mirabilisを調査した7つの地域について見てみましょう。1つ目(A)は浅い砂質土壌がある狭い渓谷で、Euphorbia phyllocladaなども生えていました。2つ目(B)は1つ目地域で乾燥した一年草が見らる場所です。3つ目(C)は広大な砂利の平野で、何百ものW. mirabilisが、干上がって固まった石膏からなる水路の跡に生えていました。他の植物はまばらで、ZygophyllumやArthraeruaなどが生え、枯れた一年草の残骸がありました。雨が降るとその時だけ一年草が生えるのでしょう。4つ目(D)はMessum川の南です。硬い石膏からなり、掘ると地下には岩がある状態でした。W. mirabilis以外ではZygophyllumのみが見られました。5つ目(E)はSamanab川の浅い岩だらけの水路と隣接する砂利からなる平野です。Zygophyllumが唯一の多年草です。6つ目(F)は5つ目の河川の土手で、ZygophyllumとStipagrostisが見られました。7つ目(G)は岩だらけですが、密に草に覆われていました。

全体的な特徴は7つ目以外は、Welwitschiaと他の種類の植物が2~10mも離れて生えていたことと、降雨量が0~100mmと非常に少ないことです。また、7つ目だけは降雨量が150~200mmと比較的雨が降る環境でした。
A、D、Fでは5つのサンプルでは菌根を確認出来ませんでした。また、CとEでは菌根を持たないものもありましたが、よく発達した菌根を持つものもありました。FとGはすべての個体で菌根が確認されました。
また、土壌中の菌根菌の胞子を調べたところ、W. mirabilisの菌根がない個体では胞子は見つかりませんでした。また、Gにおいては菌根がよく発達し、胞子濃度も非常に高いものでした。
W. mirabilisにどのようにして菌根菌が広まるのか、2つのシナリオがあります。1つは風で胞子が拡散する可能性です。しかし、平野部の地面は石灰質で覆われており、飛んできた胞子が定着することは難しいかもしれません。そうなると、雨が降った時だけ生える一年草の根に感染した菌根菌が由来なのでしょう。なぜなら、一年草が生えるくらい雨が降り、W. mirabilisの周囲に一年草の枯れ草がある場合にW. mirabilisに菌根が見られたからです。

以上が論文の簡単な要約となります。極めて厳しい環境に生えるW. mirabilisには、通常の手段では菌根菌も近寄ることが出来ないことが分かります。しかし、一年草が生える環境では、一年草から菌根菌がやってくるのです。しかし、極地の植物であるWelwitschiaですら、菌根を形成することがあるということに驚きます。ただ、この論文では菌根の存在を確めはしましたが、菌根菌がWelwitschiaに如何なる恩恵をもたらしているのかは、まったく不明です。とは言うものの、それを確めるにはWelwitschiaをポットに植えて人工的に菌根菌を接種したグループとしていないグループを比較する必要があります。しかし、根が極めて長いWelwitschiaのポット栽培は中々困難かもしれません。また、差がはっきりするくらい栽培するとなると、生長が遅いため非常に長期間の栽培が必要でしょう。1年ならまだしも5年10年、あるいはそれ以上となる可能性もあります。あまり、現実的とは言えないかもしれませんね。


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まだまだ植え替えは続きます。今回はちょっと大きいものもあります。

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Aloidendron ramossimumです。なにやら大きな鉢に植わってます。年末の木更津Cactus & Succulentフェアで入手しました。
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根はかなり太いですが、枯れた根も結構ありました。Aloidendron dichotomumもそうですが、根は荒い感じがします。
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植え替え後。生育は遅いので、じっくり付き合っていきたいですね。

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Dioon spinulosumですが、非常に生育が良いので植え替えます。武蔵野線の三郷駅近くにあるファーマーズガーデンで入手しました。
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根の張りが良好です。
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よく見ると、ソテツに特有のサンゴ根が出来ていました。
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植え替え後。4号鉢から6号鉢にグレードアップしました。涼しげで美しいソテツです。100年以上前にメキシコでD. spinulosumを探したCharles J. Chamberlainが絶賛したことも頷けます。

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Euphorbia fianarantsoaeです。あまり見かけない花キリンです。この前のヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会で入手しました。
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根は少ないですね。
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植え替え後。このタイプの花キリンは周年花が咲く可能性がありますから、株を充実させたいですね。

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Euphorbia viguieri var. capuronianaです。一応は花キリンです。この間のビッグバザールで入手しました。

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水はけの悪いピートモス系の用土に植えられていました。腐らせそうなので根を洗いました。
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植え替え後。Euphorbia viguieriはすでに育てていますから、どう違うのか実際に比べてみたいですね。

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昭和キリン、Euphorbia bubalinaです。ヨネヤマプランテイションで入手しました。
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根は結構下の方にありました。
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植え替え後。この仲間には失敗経験がありますから、徒長させないように育てたいものです。

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Euphorbia silenifoliaです。かなりの難物と聞きます。ファーマーズガーデンにて入手。
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根は意外としっかりしていました。
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植え替え後。3年ほど育てていますが、あまり育った実感はありません。維持していると言った方が正しいかもしれませんね。花咲かないかな…

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一般的にEuphorbia francoisiiの名前で流通している花キリンです。実はEuphorbia decaryiで、E. decaryiの名前で販売されているのはE. boiteauiということです。シマムラ園芸で入手。
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根はかなり太っています。というか、根の勢いが凄いですね。
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植え替え後。どうにも根が縦に長くなってしまいます。むしろ、長い鉢に深植えして、地中で塊根を肥らせた方が面白いかもしれませんね。


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今日も植え替えです。今回は小物ばかりです。

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Gymnocalycium andreae var. leucanthum LB15239です。フィールドナンバー付きです。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根はこんな感じ。太いゴボウ根がありますね。
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植え替え後。Gymnocalycium andreae(黄蛇丸)は黄花ですが、var. leucanthumはleuco=白ですから、白花ですかね?

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Euphorbia gamkensisの小苗です。しかし、用土が細かいせいか、水やりする度に苗が右に左に移動してしまいます。ビッグバザール購入品。
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根はこんな感じ。まだ苗なのでこんなもんでしょう。
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植え替え後。ちと用土の粒が大きすぎますが、細粒はないので仕方がありません、タコものらしくなるまで、あと何年かかるでしょうか?

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Pachypodium graciliusの小苗。育ったような育たなかったような…。ビッグバザール購入品。
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意外と根の張りは悪くありません。干からびそうなので、甘やかしてきました。
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植え替え後。鉢が大きすぎますが、今年は頑張って欲しいところ。

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Euphorbia greenwayiですが、手前の2本は最近伸びてきた枝です。ビッグバザール購入品。
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鉢から抜くと新しい枝が沢山出ていました。
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植え替え後。非常に美しいユーフォルビアですが、生育が旺盛で嬉しく限りです。

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Euphorbia resiniferaですが、生長が始まっています。こちらも鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根は地上部に比べて貧相ですね。
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一緒に謎の多肉植物が生えていました。
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植え替え後。自生地ではマット状に広がりますが、再現できませんね。謎多肉はニグラの鉢に植えました。

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Euphorbia ellenbeckiiです。年末に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。
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根は非常に繊細で絡み付くような長いものでした。あと、枝がぽろっととれてしまいました。
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植え替え後。取れた枝も植えました。

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Haworthiopsis nigra IB12484です。プラ鉢のスリットから地下茎で芽が出ていたものを独立させたものです。ですから根なしの株でした。今回は根が出たか確認します。
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抜いてみたら根がちゃんと出ていましたね。
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植え替え後。謎多肉も同居させました。

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Euphorbia caput-medusaeです。抜く前の写真を取り忘れました。これでもだいぶがっちりとしました。埼玉県のシマムラ園芸にて入手。
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植え替え後。まだ、タコものらしさはありませんが、すでに花は咲いています。今年もすでに花芽が出来ています

という訳で、ちまちま植え替えています。何だかんだで4月は植え替えで終わってしまいそうな予感があります。屋外の多肉植物置き場の整備がまったく進んでおらず、毎週やるやる言っているだけでダメですね。そう言えば、原材料の輸入の関係か資材が入手出来なくて困っています。どしたものやら…


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先週は雨で植え替えが出来なかったので、相変わらず植え替えに勤しんでいます。根の状態の確認も出来ますし、塊根の生長は割と楽しみだったりします。

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Euphorbia didiereoidesですが、先週ルームズ大正堂八王子店で購入したばかりの花キリンです。園芸店で冬を越したように感じますが、根の状態はどうでしょうか?
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意外に根の状態は悪くありませんでした。まあ、鉢が狭い感じはありますが…
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植え替え後。だいぶ用土が増えたので、これからは根を充実させていきます。しかし、花キリンにしては激しいトゲです。

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同じくルームズ大正堂八王子店で購入したばかりのユーフォルビアです。Euphorbia sp. nova. somalia hordioというラベルがありました。
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2株が植わっていました。しかし、やたらにぐにゃぐにゃ変な角度で植えられていました。挿し木なんでしょうけど、なんか大雑把な仕事です。
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植え替え後。2鉢に分けました。なんか枝が暴れ勝ちですよね。樹形を整えるのに苦労しそうです。

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Euphorbia sapiniiですが、雑草の勢いの方が激しく負けてしまっていますね。いつぞやのビッグバザールにて入手。
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抜いてみたら、なにやらマンドラゴラ感が強い塊根でした。根の先端が鉢底に当たってしまっていたようです。
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植え替え後。少しだけ出しました。いや、出す必要はなさそうですが、直ぐに根が鉢底に達してしまいそうなので。去年は葉が3枚しか出ませんでしたが、初めてトゲも出ました。今年の生長が楽しみなユーフォルビアだったりします。

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Pachypodium brevicaule、いわゆる「恵比寿笑い」です。なにやら鉢が狭く見えます。神代植物公園の多肉植物展で入手。
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根はパンパンでした。完全に根詰まりする前に植え替え出来てよかったです。
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植え替え後。他のパキポディウムより弱いようなことを言われますが、若い内は非常に丈夫です。

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Pachypodium brevicalyxですが、パキポディウム苗の中でも生長が著しいので、根の方も詰まっていそうです。確か横浜のヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会で購入したような記憶があります。
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根が完全に鉢の形になっています。
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植え替え後。今年もぐんぐん生長して欲しいですね。

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Pachypodium enigmaticumですが、標準的な生長具合です。葉は冬でも割と残りました。こちらは、ビッグバザールで入手。
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根はそれほどでもないですね。
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植え替え後。ちょっと大きめの鉢に植えました。パキポディウムの中では大きめの花が咲くエニグマティクムですがまだ未開花です。一時は偽物も出回ったといいますから、早く花を拝んでみたいところです。

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スーパーゼブラとラベルにはありますが、いわゆる「十二の巻」の選抜タイプです。Haworthiopsis attenuata系品種です。世田谷ボロ市にて入手。DSC_2442
根は貧弱でしたが、すでに動き始めています。
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植え替え後。十二の巻は正直人気がありませんが個人的には大好きなので、気になる株があればまた買ってしまうかも…

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Euphorbia tulearensisですが、葉はやたらと増えるものの幹はあんまり変わりません。鶴仙園西武池袋店で入手。
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塊根がかなり発達していました。植え替えごとに少しずつ出していきます。
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植え替え後。一気に立派になりましたね。トゥレアレンシスは(花キリンとしては)割と高額ですが、実は恐ろしく丈夫で育てやすい花キリンです。

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今回はここまで。とは言え、まだまだ植え替えは続きます。十分な数の鉢を準備したつもりが、すでに足りなくなりそうです。取り急ぎ入手しなくては…


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雪女王Aloe albifloraが開花しました。アロエの花言えば赤~橙~黄色ですから、白い花は珍しい花色です。まさかの開花でした。まさに、albi(=白)flora(=花)ですね。
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雪女王 Aloe albiflora

雪女王は今年の正月明けに世田谷ボロ市で購入しました。いかにも休眠中といった色合いで、外側の葉は枯れ混んでいました。そのため、今年は植え替えをしてしっかり株を充実させて、来年花を拝めればという腹図もりでしたから、まさかの開花です。
一般的に赤系統の花はアフリカでは鳥媒花で、アロエの花には様々な鳥蜜を求めて訪れます。ガステリアのように、赤系統で小型の花だと太陽鳥が訪れます。日本だと赤系統の花にはマルハナバチが来ますが、白花には蛾やハエが訪れます。
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女王錦 Aloe parvula

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Gasteria baylissiana

アロエ類では広義のハウォルチア(Haworthia, Haworthiopsis, Tulista)は白花で蛾が訪れます。ハウォルチアは筒状の花の形からして、蜂が訪れることはなさそうです。
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Haworthiopsis glauca var. herrei

では、肝心の雪女王はどうでしょうか? 緑色の筋が入るところなどハウォルチアに似た部分もあります。しかし、ハウォルチアより花が開くので、蜂やハエも来るだけのスペースはありそうです。とは言え、実際には匂いなどで特定の昆虫を呼び寄せる機構があったりもしますから、実際に花を訪れる昆虫を観察する必要があるでしょう。
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雪女王 Aloe albiflora


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Euphorbia resiniferaはモロッコ原産のサボテンに似た多肉質のユーフォルビアです。日本では「白角キリン」の名前があります。アフリカのユーフォルビアの中では、それほど特徴的ではないためか人気があるとは言い難く、あまり見かけない多肉植物ではあります。しかし、多肉質なユーフォルビアの多くは南アフリカを中心に、アフリカ東岸を北上してソマリアやエチオピアの高地、紅海の向こう岸のアラビア半島、さらにはマダガスカル島に分布するものが大半です。その点で言えば、北アフリカのモロッコに分布する多肉質のユーフォルビアは珍しくはあります。同じモロッコ原産の「大正キリン」が何故か普及種となっていますが、そちらの方が不思議な感じがします。大正キリンもそれほどインパクトのある見た目とは言えませんからね。さて、実は個人的にE. resiniferaについては興味があったので、2月に池袋の鶴仙園に行った際、たまたま見かけたのですが、迷わず購入しました。

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白角キリン Euphorbia resinifera

さて、E. resiniferaですが、調べてみると思わぬ記述に遭遇しました。なんでも、「紀元前25世紀頃に東方の王により発見された、おそらくは最初にユーフォルビアと名付けられた植物である可能性がある」というのです。「東方の王」が誰を指すのかは分かりませんが、気になる記述です。
もう少し調べて見ると、最も古い薬用植物の書物の中に、「Euphorbium」と呼ばれるラテックスを含む抽出物についての記述がありました。また、Numidiaの王であるJuba2世の侍医であったEuphorbusへの言及により大プリニウスにより注目されたとあります。つまりは、Euphorbusという医者がE. resiniferaの乳液を薬として使用していて、それが後にEuphorbiumと呼ばれていたということですかね? Euphorbiaという属名自体がここら辺から来たのでしょう。
Numidiaは北アフリカの地中海沿岸部に存在した王国です。現在のモロッコは、かつてのNumidiaのちょうど隣にありますから、E. resiniferaがNumidiaで知られていたことは不思議ではありません。


さて、私が気になっていたのは、アフリカのユーフォルビアの遺伝子解析の結果です。2013年に発表された論文によると、E. resiniferaはE. venefica(E. venenificaは異名)の仲間であるというのです。E. veneficaの仲間として、E. sapinii、E. sudanica、E. unispinaがあげられていますが、この仲間は木質化する幹の先端から葉を出すタイプです。論文では調べられていませんが、E. poissoniiもこの仲間でしょう。さて、何が不思議かと言うと、1つはあまりに形状が異なることです。E. resiniferaはあまり背が高くならず、地際で分岐してクッション状に育ちます。多肉質でサボテンのようなE. resiniferaとE. veneficaの仲間はあまりに異なります。とりあえず、論文の遺伝子解析の結果を見てみましょう。

             ┏━━E. sudanica
         ┏┫ (モーリタニア~東アフリカ)
         ┃┗━━E. venefica
     ┏┫            (東アフリカ)
     ┃┗━━━E. unispina
 ┏┫   (ギニア湾~チャド、スーダン)
 ┃┗━━━━E. sapinii
 ┫                   (アフリカ中央部)
 ┗━━━━━E. resinifera     
                         (モロッコ)


どうやら、E. resiniferaはE. veneficaの仲間の根元にある植物のようです。E. resiniferaに一番近縁なのはE. sapiniiです。もちろん、これはE. resiniferaからE. sapiniiが進化したという訳ではなく、E. resiniferaとE. sapiniiの共通祖先からそれぞれが進化したという意味です。しかも、共通祖先から分かれた時からE. resiniferaが存在したとは限らず、そこから再び分岐した結果の1つがE. resiniferaであるかもしれないのです。
何故かと言うと、絶滅した植物がかつては存在したかもしれないからです。化石では基本的に遺伝子は調べられませんし、そもそも化石になる植物はほんの一握りであり、そのほとんどは朽ちてしまい化石にはなりません。よく、進化論への反論として、進化の空白を指摘する「ミッシング・リンク」という考え方がありますが、これは生き物が死んだら必ず化石になるという素朴な勘違いがあるように思えます。例えば、庭の植木が秋に紅葉し、やがて葉が落ちたとしましょう。その落ち葉は、やがて腐って腐葉土になり土に還ります。では、庭の落ち葉が腐らずに化石になる可能性はどれくらいあるでしょうか? 考えてみたら、直ぐに庭の落ち葉が化石になる可能性はまったくないことに気が付きます。実は化石になるには、腐る前に無酸素状態に置かれるなど、かなり特殊な条件が必要です。植物の化石はある種の奇跡的な偶然の産物なのです。
という訳で、かつて存在したかもしれない祖先はまったく分かりません。どうしたら、近縁であるはずのE. resiniferaとE. sapiniiの間に、このような形状の違いが生まれるのでしょうか? 大変不思議です。かつて存在した、E. resiniferaとE. sapinpiiの共通祖先から分岐したE. sapinpiiの祖先は、E. resiniferaとE. sapiniiの中間的な形状だったのでしょうか? 無論、共通祖先がどのような形状であったかすら分からないのですが…

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Euphorbia sapinii

次に分布にはそれなりの謎があります。E. resiniferaはモロッコ原産ですが、近縁なはずのE. sapiniiはカメルーン中央アフリカ、チャド、ガボン、ザイール原産であり、あまりに地理的に距離がありすぎます。かつては分布が異なりお互いに隣接していたとか、中間を埋める絶滅種がいた可能性もあります。さらに言えば、かつては共通祖先が広く分布しており、西部はE. resiniferaとなり東部ではE. sapiniiとなったというシナリオも考えられます。
しかし、不思議なのはE. sapiniiの分布するモロッコの隣国である、モーリタニアまで分布するE. sudanicaとは遺伝的に一番距離があるということです。とは言え、E. sudanicaは東アフリカまで分布が非常に広いので、現在の分布は単純に分布域が拡大しただけかもしれません。

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Euphorbia poissonii
 
最後に学名について見てみましょう。学術的に認められた学名は、1863年に命名されたEuphorbia resinifera O.C.Berg & C.F.Schmidtです。1882年にはTithymalus resinifera (O.C.Berg) H.Karst.とする意見もありましたが、認められていません。また、1942年には、Euphorbia resinifera var. typica CroizatEuphorbia resinifera var. chlorosoma Croizatという2つの変種が提唱されましたが、やはり現在は認められていない学名です。

まあ、以上のように長々と語ってきた訳ですが、実はこの仲間の遺伝子解析にはやや問題があります。論文はE. veneficaの仲間だけを調べたのではなく、様々なユーフォルビアを解析した中の1つに過ぎません。全体の関係を見る事が目的ですから、細かい部分の精度が低い様子がうかがえます。E. veneficaの仲間だけで新たに解析して欲しいところです。なんだかんだで、だいぶ妄想を語ってしまった訳で、何かしらの確証が欲しいですね。


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樹木状となるアロエは、アロエ属から分離しアロイデンドロン属(Aloidendron)となりました。アロイデンドロン属で一番有名な種類はかつてアロエ・ディコトマ(Aloe dichotoma)と呼ばれていたアロエです。現在はAloidendron dichotomumとなっています。アロイデンドロン属は7種類あるとされています。つまり、A. dichotomum、A. ramosissimum、A. pillansii、A. barberae、A. tongaensis、A. eminens、A. sabaeumです。しかし、2019年に出たアロイデンドロン属の遺伝子を解析した論文によると、A. sabaeumはアロイデンドロン属ではなくアロエ属であることが分かりました。さらに、アロエ属から分離されたAloestrela suzannaeが、実はアロイデンドロン属に含まれてしまうことも明らかになりました。今後、公的データベースの情報も改定されていくかもしれません。

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さて、そんなアロイデンドロン属ですが、A. dichotomum以下はほとんど見かけません。最近、ようやくA. dichotomumの実生苗が流通し始めたばかりですから、さもありなんと言ったところです。私はたまたま千葉のイベントでA. ramosissimumを入手しましたから、本日はA. ramosissimumについて少し調べてみました。
とは言うものの、思ったより良い情報はありませんでした。しかし、あちこちのサイトを見たところ、どうもどれも似た内容ばかりであることに気が付きました。おそらく、南アフリカ生物多様性研究所(SANBI)が主宰している「PlantZAfrica」というサイトから来ているようですね。私も「PlantZAfrica」の記述を参照します。その前に、キュー王立植物園のデータベースを確認しておきましょう。なぜなら、A. ramosissimumがディコトマの亜種であるとしているサイトが割と目についたからです。

まず、始めは1939年にAloe ramosissima Pillansと命名されました。この名前が一番使われてきた馴染みがあるものでしょう。2000年にディコトマの変種であるとするAloe dichotoma var. ramosissima (Pillans) Glen & D.S.Hardyや、2002年にはディコトマの亜種とするAloe dichotoma subsp. ramosissima (Pillans) Zonn.とする意見がありました。この意見を参照としているサイトはまだあります。2013年にアロエ属ではなくアロイデンドロン属とするAloidendron ramosissimum (Pillans) Klopper & Gideon F.Sm.とされました。その後の遺伝子解析結果からも、アロエ属ではないことが確認されています。属内の関係では、A. dichotomumやA. pillansiiと近縁ということです。

さて、「PlantZAfrica」の内容に移ります。
A. dichotomumとA. ramosissimumとの最大の違いは、枝の分岐の仕方です。A. dichotomumは直立した太い幹の上部で枝分かれしますが、A. ramosissimumは根元から枝分かれを始め球状に育ちます。A. dichotomumは高さ10mを越えますが、A. ramosissimumは高さ2mほどです。
A. ramosissimumの分布は南アフリカのRichtersveldとナミビア南部に限定されます。A. ramosissimum非常に乾燥した岩場に生え、年間110mm以下の冬の降雨に依存しています。この地域では気温が46℃にもなります。
英名は「maiden's quiver tree」、つまり「乙女の矢筒の木」と呼ばれますが。「quiver tree」はA. dichotomumのことですから、A. ramosissimumが小型なことや枝振りからそう呼ばれているのかもしれませんね。ちなみに、「矢筒の木」とは、A. dichotomumの枝を矢筒を入れるために使用したと言われているためです。そういえば種小名の「ramosissimum」は、ラテン語で「ramosis」が「枝」で、「ssima」が「とても」という意味ですから、「最も分岐した」という意味になります。A. ramosissimumの特徴を良く表している名前です。

A. ramosissimumの花は鮮やかな黄色ですが、sugarbirdや蟻、ミツバチが蜜を求めて訪れます。翼のある種子は風で運ばれ、他の植物の近くで発芽します。これをナース植物と言って、日陰を作るので実生の生育にとって重要です。しかし、やがてA. ramosissimumはナース植物より巨大になり、結果的にナース植物は枯れてしまいます。

「PlantZAfrica」の記事は、まあだいたいこんな感じです。他のサイトでは、生長は遅く開花する1~1.5mになるまでに10~15年ほどかかると言います。どうやら、私が花を拝めるまで長い時間が必要なようです。また、若いツボミは食用となり、アスパラガスに似た味ということです。しかし、流石に10年以上かけて育てたA. ramosissimumを、開花前に食べてしまうのは憚られますね。とにもかくにも、このA. ramosissimumとは長い付き合いになるのでしょう。


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植物の研究では分野によりますが、野外で植物を観察したり標本を作製したりすることもあります。これらの標本は研究者個人のコレクションではなく、大学や博物館に貴重な資料として納められます。もちろん、これはプロの研究者が採取地などの詳細な情報と共に標本化されるものですから、私のような素人が採取したものとは重要性・信頼性・学術性において雲泥の差があります。これらのコレクションは乾燥標本、つまりは押し花ですからペッタンコで色も褪せてしまっています。そのようなものが役に立つのかと思ってしまいますが、実際大いに役に立ちます。単純に葉や花の形を比較するだけではなく、例えば茎に細かい筋がある、葉の裏に微小な毛がまばらにあるなど、後から詳細に調べることも可能です。さらに、過去の標本や、違う産地の標本同士を比較することも可能です。最近では、標本から遺伝子を取り出して解析することも出来るようになりました。同じ種類の産地の異なる標本の遺伝子を調べるだけで、実は良く似ている別種であったなんてこともあり得る話なのです。

という訳で、前置きが長くなりましたが、標本の採取はこのデジタルな時代にあってもなお重要です。本日は、そんな研究者の標本採取の旅について書かれた本をご紹介したいと思います。それは、塚谷裕一/著『秘境ガネッシュヒマールの植物』(研成社)です。

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表紙はいわゆるヒマラヤの青いケシです。この調査は、ネパール・ヒマラヤのガネッシュヒマールで行われました。ガネッシュヒマールは王政時代は入山禁止だった秘境中の秘境で、ほとんど調査が及んでいない地域です。調査の目的はガネッシュヒマールに分布する植物をリストアップすることです。1種類につき最低6セットの採取を目標としていますが、これは世界6箇所の研究機関に配布して、広く世界中の研究者たちに利用してもらうためです。もちろん、必ずしも6セット揃うとは限りませんが。
調査はチームで行われ、それぞれが専門分野を持っています。とはいえ、自分の専門分野外についても採取する必要があります。ちなみに、著者はシロイヌナズナを実験材料としていますが、ヒマラヤ地域にも分類的に近い固有種が分布しています。国内にはほとんど標本が存在しないため、著者は標本を必要としているのです。また、今回は標本だけではなく生きた植物を採取して持ち帰り、種子をとることを目指しています。
流石にヒマラヤ地域ですから、標高も高く環境は厳しいものです。著者も高山病で常に頭痛に見舞われながら採取をこなしていきます。ポーターがいるとは言え、野営地では標本を作るために採取した植物を乾燥させたりと、中々忙しい道中です。標高が上がれば高山病、下がれば蛭だらけと楽は出来ないのです。

さて、中々このような学術調査の道中については語られませんから、大変興味深く読みました。というのも、このようなフィールドワークは道中に様々な出来事があったはずですが、そのような細々したことは論文には書かれません。研究に関係ないことは記載しないのは当たり前のルールです。今回は採取が目的ですから論文は書かれないかもしれませんが、国から研究費が出ていますから報告書の提出が必要です。しかし、この場合の報告書は論文よりさらに簡潔な無味乾燥な代物です。著者が見たもの感じたことは論文には示されません。このような本は大好物なので、見かけたら必ず入手するようにしていますが、大きな出版社ではなく有名なものではないため中々難しいものです。1960~1980年くらいには、この手の本はよく出ていたのですが、最近はあまりないみたいです。昔は海外調査自体が稀で、海外旅行も今より少なかった時代の読者も、見知らぬ海外に興味が高かったのかもしれません。現代人は海外旅行は当たり前な上、ネットの膨大な情報で、感覚的に秘境など無いに等しいのかもしれません。個人的には寂しくもあるのです。


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植え替えをしたいのですが雨続きで困ってしまいます。土曜日は夕方に雨が止んだので、少しだけ植え替えをしました。しかし、直ぐに暗くなってしまったので、植え替え出来たのはほんの少しだけです。

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今回はこれだけです。

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Pachypodium makayensis
いわゆる「魔界玉」です。冬の間にあまり葉は落ちませんでしたが、暖かくなってきたせいか古い葉が落ち始めました。ビッグバザールにて入手。
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暗くなってきたのでピントが合いませんね。しかし、根の張りは非常に良いです。
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植え替え後。新しい葉がわずかに出始めています。良く見ると花芽が上がって来ています。

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Pachypodium windsorii
葉がちょっとだけ残りました。ビッグバザールにて入手。

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こちらも根の張りは非常に良いですね。
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植え替え後。丈夫ですが育つのはゆっくりみたいです。

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バリダ
バリダはEuphorbia validaとかEuphorbia meloformis var. validaとか言われますが、今はEuphorbia meloformisの範囲内とされています。鶴仙園西武池袋店にて入手。

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根の状態は良好。
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植え替え後。バリダは育てやすくて外見も良くていい多肉植物です。

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インファウスタ
Euphorbia infaustaと呼ばれますが、やはりEuphorbia meloformisに含まれてしまっています。プロトリーフで購入したような気がします。

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根の状態はこちらも良好。
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植え替え後。子を外すかどうか悩みどころです。

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Euphorbia polygona var. noorsveldensis
ホリダ系です。ビッグバザールにて入手。

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若い実生苗です。根の状態は悪くないですね。
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植え替え後。冬に入手しましたから、生長はこれからです。今年の生長が楽しみです。

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Euphorbia clavarioides var. truncata
「神蛇丸」と呼ばれています。少し徒長気味です。ビッグバザールにて入手。

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暗いので露光時間を長くしたせいでブレブレ。
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植え替え後。生長は遅いので締めて育てたいですね。

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Euphorbia pachypodioides
最近は生長が鈍り勝ちです。埼玉県のシマムラ園芸にて入手。

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思ったより根が細いですね。
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植え替え後。やや安定感がなかったので、少しだけ深植えしました。

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× Astrolista bicarinata
「天守閣」の名前もあります。異名であるスキンネリーの名前が使われ勝ちです。Astroloba × Tulistaの自然交雑種です。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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根は硬く荒い感じがします。
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植え替え後。枯れた葉を取り除きました。

今年の植え替えはもう少し早く始めるつもりでしたが、うっかり忘れていてまだ始めたばかりです。まだまだ終わりませんから、雨が降ってしまうと遅れてしまい困ったものです。屋外の多肉植物置き場をそろそろ整備する必要もあります。何かと時間ががなくて困りますが、来月はイベントに出るのを少し抑えて、色々作業しなければならないでしょうね。


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2月は多肉植物のイベントはあったものの、あまりにも寒いために家に引きこもりがちでした。しかし、3月になり日中は暖かくなりましたから、イベントに毎週のように参戦しています。昨日は町田駅近くにある町田シバヒロという広場で開催される「つながる輪petitfes.vol11」に行くつもりでしたが、雨が降っている中、野外イベントは大変なのでパスしました。まあ、イベントが中止となったかどうかは分かりませんが…
さて、昨日はルームズ大正堂八王子店ガーデンメッセで、「Succulent Blossom vol.4」が開催されました。ルームズ大正堂は家具屋さんなのですが、なぜか多肉植物も販売しているのです。ということで、昨日は八王子に行って来ました。

ガーデンメッセは八王子駅からの直線距離は短いのですが、何やら少し遠回りしないとたどり着けないみたいで、歩くと20分近くかかるみたいです。ですので、八王子駅からバスに乗ります。バス乗り場は、八王子駅北口の5番乗り場の京王バス「八王子車庫行き」です。数分で「あったかホール前」に着きます。下車してから横断歩道を渡って直ぐにルームズ大正堂八王子店に到着します。まあ、すでに見えているので、間違い様はありませんが。

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さて、ガーデンメッセに到着すると、かなりの賑わいで驚きました。何やら手製の植木鉢やら様々なグッズが販売されているようで、長々とした行列が出来ていました。有名な作家さんが来ていたのでしょうか。まあ、私には関係がないことですから、売り場を見に行きます。外の売り場は水溜まりが多く気を付けなくてはなりませんでしたが、概ねエケベリアでしたね。まあ、セダムなどの他のベンケイソウ科植物もあったみたいです。また、アロエやアガベも多少はありました。かなり格安のディコトマ(Aloidendron dichotomum)があったくらいですかね。
続いて室内売り場へ。室内は多少の観葉植物があって、端の方に狭い多肉植物コーナーがありました。こんなものか…と思いましたが、じっくり見ることにしました。というのも、ガーデンメッセへは10時ちょいに着いたのですが、なんと10時台は帰りのバスがないので11時過ぎまで足止めされてしまうからです。
という訳で時間はたっぷりあるので、ゆっくりしました。竜鱗や竜城、多少のサボテン、パキポディウムの小さな実生苗、柱状ユーフォルビアの普及種など、まあ良く見るラインナップでした。しかし、少し変わったところでは、メセンブリアントイデス(Bulbine mesembryanthoides)やシゾバシス・イントリカータ(Schizobasis intricataは異名で、現在はDrimia intricataとなっています)が格安でありました。また、どうやらガーデンメッセで冬を越したとおぼしきパキポディウムが捨て値で販売されていました。ラインナップが多少変わっていて、ゲアイ(Pachypodium geayi)、ラモスム(Pachypodium ramosumは異名で、現在はP. lamereiと同種とされています)、ミケア(Pachypodium mikea)、ラメレイ(Pachypodium
lamerei)と言った売れ筋とは言いかねるものばかりでした。まあ、こんなところです。2時間かけて来た甲斐があったかどうかは微妙なところですが、買ったものは少し面白いものです。

以下は購入品の紹介です。名前は付いていた名札のままです。
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ディディエレオイデス
Euphorbia didiereoidesです。あまり見ない植物ですが、花キリンの仲間です。Didiereaのように強いトゲに覆われますから、名前は「Didierea」と「~のような」という意味の「-oides」からなります。何やら思ったより大柄でずんぐりした感じです。花キリンは勉強中ですから嬉しい出会いでしたね。

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パキポディウム・ルテンベルギアナム
Pachypodium rutenbergianumです。捨て値でした。まあ、お店からしたら生きているかすらよく分からない感じでしょうから、在庫処分品ですかね。これからが多肉植物の季節ですから、新しい多肉植物も続々入って来るのでしょう。
しかし、帰宅したらすっぽぬけました。根が腐っている訳ではなく、乾燥で根が干からびたみたいです。生きている根は短いもののありますから、しばらく養生すれば大丈夫でしょう。
しかし、ルテンベルゲンシスは観賞価値の低いパキポディウムですから、当然人気もなくあまり見かけません。変に剪定して肥らせるより、灌木として育ててみようかと思います。

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ユーフォルビア・ソマリア・ホルディア
Euphorbia sp. nova somalia hordio
未記載種ですね。ソマリア原産なのでしょうか? 妙に気になるユーフォルビアです。
しかし、この生産者には見覚えがあります。おそらく、軽石の下にはヤシ殻繊維やらが入っているだけですから、来週植え替えます。

よく考えたら、購入品はイベントとは無関係なものですね。しかし、イベントでもないと八王子くんだりまで行かないので、外出するきっかけとしては良かったと思います。市場に出ている多肉植物の種類は同じなのに、バイヤーの好みなのか園芸店によってラインナップが微妙に異なるところが面白いところです。
実は出掛けている暇はなく、植え替えをしなければなりませんが、いずれにせよ昨日は雨で植え替えは出来ないのでまあいいでしょう。来週末、晴れたら一気に植え替えをしてしまう予定です。


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植物の葉の形は様々です。当たり前のように思われるかもしれませんが、生存に適した形や大きさというものがあるならば、似たような葉ばかりになるのではないのでしょうか? この葉の多様性は大変興味深い分野で、日本では植物学者の塚谷裕一さんが何冊か本を出しています。本日は日本植物生理学会が監修する2008年に刊行された『進化し続ける植物たち』(化学同人)という本から、塚谷裕一さんの論考、「植物の柔軟性はどのように進化してきたのか」をご紹介します。

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屋久島は多くの植物が本土とは異なります。構成は同じなのですが、全体的に小型で大抵は本土に生える植物の変種扱いとされています。塚谷さんは屋久島の小型の植物は渓流植物ではないかと考えました。渓流植物は文字通り渓流に生える植物で、水の増減が激しい渓流ではふいに強い水流を受けやすい環境です。ですから、渓流植物は小型になる傾向があるのです。
例えば、屋久島原産のヒメツルアリドオシという植物は、日本各地に見られるアリドオシの変種とされます。ヒメツルアリドオシはまるでアリドオシのミニチュア版のような大変小さな植物ですが、ただ小さいから変種とするのは大げさではないかと塚谷さんは考えたようです。そこで、日本中のアリドオシを集めて葉の縦の長さと横幅を測定してみました。すると、日本各地のアリドオシは様々なサイズの葉を持ちますが、葉の縦の長さと横幅の比率はほぼ同じでした。縦軸に葉の長さ、横軸に葉の幅を表したグラフを書いてみると、綺麗な直線となるのです。驚くべきことに、ヒメツルアリドオシはその直線の一部で連続しており、確かに小さいもののアリドオシとの境は見つかりませんでした。ヒメツルアリドオシの葉を顕微鏡で見てみると、葉のサイズは異なるのにアリドオシとまったく区別はつきませんでした。つまり、細胞のサイズが小さくなるわけではなく、細胞数を減らしてミニチュアの同じ形を作っているのです。

次に金華山(宮城県)ではオオバコが小さな葉をつけ、しかもそれは鹿が食べるからだという話を聞き、調査に向かいました。実際に金華山で植物は小型化したり、匂いがきつくなったり、トゲが長くなったりと鹿に対する防衛策が発達しています。ちなみに、小さくなることがなぜ防衛策となるのかと言うと、鹿は地面に鼻を着けて草を食べないので背の低い草は食べられにくいということです。
さて、金華山には自然のブナ林がありますが、鹿が苗を食害してしまうため、新しい木がまったく育ちません。実は金華山にはもともと鹿はいなかったのですが、金華山に神社を建てた時に人為的に鹿を放したということです。鹿に苗を食べられてしまうため、ブナは古木ばりで若い木でも樹齢500年ということです。しかし、よく考えたら鹿が放たれたのは、500年前くらいだったのかもしれません。この樹齢500年の「若い樹」は鹿に食べられずに育ったからです。
ここで、面白いことに気がつきます。鹿が放たれてからたった500年ほどしか経っていないのに、植物は防衛策をこれだけ発達させているのです。進化は急激に進んだことが分かります(※1)。

(※1)直ぐに思い付く疑問として、なぜブナは食べられる一方で食べられないように進化しないのか?、他の植物が出来ているならばおかしいのではないか? というものです。私も最初、そう思いました。しかし、ブナは種子が発芽してから、その個体が生長して実をつけるまでの時間が長すぎるのではないでしょうか。発芽してから1年以内に種子をつける一年草とは条件が異なり、世代交代が遅く進化速度も緩やかなはずです。そして、そもそも実生が食べられてしまうため、次世代が育たないので進化しようがありません。ブナは倒木更新が一般的ですから、発芽して育つ苗自体の数も少ないので、鹿害を受けやすいのではないでしょうか。

これらは非常に希なケースかと思いきや、実は鹿のいる宮島(広場県沖)でもオオバコなどの植物が小さいというのです。島+鹿は植物の葉を小さくするのでしょうか? 。さっそく、全国の島を調査しましたが、必ずしも島+鹿で葉が小さくなる訳ではないようです。ある程度の大きさのある島じゃないと植物の小型化は起きないようです。どうやら、島が小さすぎると鹿が植物を食べ尽くしてしまい、植物が進化する前に全滅するということが分かりました。
さて、実は鹿だけではなく、古い神社仏閣に生えるオオバコなども小型化するということが知られているそうで、これを神社仏閣型と呼んでいるそうです。これは鹿ではなく、神社仏閣の境内など敷地内はよく整備されており、雑草が抜かれる傾向が強いからかもしれません。古くは江戸時代の書物にもその旨が書かれており、由緒正しい神社仏閣ほど小型化するとされていたようです。つまり、由緒正しいということは、その神社仏閣が古くからあるということでもあります。それだけ長い年月、植物に淘汰圧がかかっていたということのでしょう。ちなみに、古い神社仏閣は数百年の歴史があり、金華山の約500年と年月的に似ていますね。
オオバコは日本中に分布しますが、やはり屋久島のオオバコは小型でヤクシマオオバコとされています。しかし、やはり小型の宮島のオオバコもヤクシマオオバコではないかという考え方もあるのだそうです。しかし、日本中のオオバコを集めて遺伝子を調べたところ、意外なことが分かりました。大型のオオバコ、小型のオオバコがそれぞれ分布を広げたのではなく、小型化はあちこちでその都度起こっていたのです。様々な実例を見てきた私たちには特に意外な話ではありませんが、これまでの一般的な考え方を覆したのです。

葉の大きさは思ったよりも可変で、環境に合わせて柔軟に変わってしまうことが分かりました。しかも、それがせいぜい数百年で起こることも驚きです。植物は単純に大きさの大小で別種や変種に分類されたりしますが、もしかしたらそれらは誤りである可能性もあります。まあ、大きさに限らず、例えば日本の南北に分布する植物では、南限と北限の植物は驚くほど異なっていたりしますが、実際には南北の中間地点はグラデーションのように特徴が移り変わり、どこかで区切ることが出来ないこともあります。そもそも種とは何かとは大変な難問ですが、これらの知見を踏まえるとさらにややこしいことになり、恐ろしく曖昧なものになってしまうかもしれません。
さて、実は塚谷さんの本領はこれからで、葉のサイズに関わる遺伝子を解析しています。大変興味深い話ではありますが、またの機会とします。塚谷さんの著作は何冊か手元にありますから、またそのうちご紹介出来ればと考えております。


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花キリンとはユーフォルビアに属するマダガスカル原産の低木です。赤や白、ピンクなどのユーフォルビアにしては目立つ花(実際には花弁ではなくて苞)を持つEuphorbia milii系(※1)は、園芸店で様々な品種が販売されています。 しかし、花キリンにはE. milii系だけではなく、様々なタイプがあります。その中には小型で、多肉質の時に縮れた葉を持つ塊根性のものもあります。その代表的な種類は、Euphorbia decaryiやEuphorbia francoisiiでしょう。しかし、E. decaryiやE. francoisiiという名前は間違っているのだというJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonの論文が出ています。しかし、J.-P.Castillon & J.-B.Castillonの論文はフランス語で書かれており、残念ながらフランス語が分からない私には読むことが出来ませんでした。一応、機械翻訳をかけてはみたのですが、学名や専門用語が多いせいかは分かりませんが実に酷いもので、何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。一文一文を丁寧に単語から翻訳していけば、おそらくは理解出来るのでしょうけど、あまりに面倒臭いので見て見ぬふりをして放置していました。

(※1) 2021年に定義が曖昧だったE. miliiは再定義され、流通している良く目にする花キリンはEuphorbia splendensとされています。本来のE. miliiは先端をカットしたような葉を持つものに限定されるとのことです。まだ論文の要約しか読んでいませんから、そのうち詳細をご紹介出来ればと考えております。

さて、本日ご紹介するのは、2021年のTiomas Haevermans & Wilbert Hetterscheidの論文、『Taxonomy decisions and novelties in the informal Euphorbia decaryi group from Madagascar』です。なんと、J.-P.Castillon & J.-B. Castillonの論文の内容を踏まえて、Euphorbia decaryiと関連のある仲間をE. decaryiグループとして、新たに再構成しています。私が読むことが出来なかった論文の内容も英語で解説されており、非常に助かりました。

①E. decaryiとE. francoisii
まず、2016年にJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonにより、いくつかの名前が混乱したユーフォルビアについて、標本などの資料から正しい学名を明らかにしました。一般的にEuphorbia francoisiiと呼ばれている花キリンは実はEuphorbia decaryiのことで、今までEuphorbia decaryiと呼ばれていた花キリンはEuphorbia boiteauiだというのです。
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一般的にE. francoisiiの名前で販売されているこの花キリンは、実はE. decaryiでした。つまり、E. francoisiiという学名は異名となります。(※2)

(※2)とはいえ、市販されるE. francoisiiは複雑に交配されており、様々な種類が混じっている可能性があります。

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一般的にE. decaryiの名前で販売されているこの花キリンは、実はE. boiteauiとのことです。

②E. decaryiの変種についての概要
次にE. decaryiには3つの変種がありましたが、2016年のJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonは、2つの変種をE. boiteauiの変種としました。つまり、E. decaryi var. spirosticha →E. boiteaui var. spirosticha、E. decaryi var. ampanihyensis →E. boiteaui var. ampanihyensisという変更です。しかし、3つ目の変種であるE. decaryi var. robinsoniiは、これが「真の」E. decaryi(本来のE. decaryi)であるのか、E. suzanneae-marnieraeのことを示しているのか曖昧なため、学名は現状維持で変更されませんでした。著者らはJ.-P.Castillon &  J.-B.Castillonの意見に基本的には同意しますが、異なる意見も持っています。著者らはE. boiteaui var. ampanihyensisはE. boiteaui var. spirostichaと同種であり、独立種であるEuphorbia spirostichaであるとしています。
また、旧・E. francoisii系(本物のE. decaryi)の変種であるE. francoisii var. crassicaulisをJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonは本来のE. decaryiの変種としてE. decaryi var. crassicaulisとしました。しかし、著者らは独立種であるEuphorbia crassicaulisとしています。

③E. cap-saintemariensisは独立
さて、1984年にCremersはE. decaryiグループについて記載しました。それが、E. decaryi var. ampanihyensis、E. decaryi var. robinsonii、E. decaryi var. cap-saintemariensisです。しかし、var. cap-saintemariensisをE. decaryiの変種とすることはRauh & Buchlohにより批判され認められた学名ではありません。J.-P.Castillon & J.-B.Castillonは、var.cap-saintemariensisをE. boiteauiとせずに、独立種たる特徴があるとして1970年に命名された最初の名前であるE. cap-saintemariensisを受け入れました。

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Euphorbia cap-saintemariensis

④var. spirostichaとvar. ampanihyensis
E. decaryi var. ampanihyensisはE. boiteaui var. ampanihyensisとされましたが、Cremersの言うところのvar. ampanihyensisの茎や葉が小さいなどの特徴はE. boiteauiと一致しません。Cremersにより強調されたvar. ampanihyensisは、葉と杯状花序苞(※3)の至るところに「腺」が存在するということです。この「腺」は、実際には腺機能はない肥大した円錐形の乳頭様の細胞です(※4)。確かに、その「腺」はE. decaryi var. ampanihyensisのパリにあるホロタイプ(模式標本)と、Boisser自身が作製したカラースライドで見ることが出来ます。
E. decaryiグループのいくつかでは、葉や茎、杯状花序苞の表面に「乳頭細胞」が見られます。「乳頭細胞」が多いE. tulearensisや、数が少なくしばしばより小さく面積が狭いE. boiteauiやE. suzannae-marnieraeがあります。これらの観察から、著者らはE. boiteaui var. ampanihyensisの匍匐根系(※5)、「乳頭細胞」の形態と分布、茎、斑点、葉、杯状花序苞のサイズと形態は、E. spirostichaとの密接な関係を示しているように見えます。E. spirostichaの現生植物の特徴はE. decaryi var. ampanihyensisと一致しますが、一見すると茎の形に違いがあるようです。E. spirostichaの茎は大抵は丸みがあり、葉の落ちた跡は螺旋状に並び、古い茎には跡が残らず滑らかです(※6)。しかし、1984年のCremersの記述ではE. decaryi var. ampanihyensisの茎は角張っているが、跡は残らないとしています。とはいえ、実際の生きた標本は角ばり、また様々な段階の茎があり、強い螺旋状から弱い螺旋状、あるいは直線的なものもあります。このように、E. spirostichaは言われているよりも多様であることが分かります。結論として、1984年のCremersの示すE. decaryi var. ampanihyensisは、1986年のRauh & Buchlohの示すE. decaryi var. spirostichaは同じであるということが示唆されます。また、本来ならば先に命名された名前が優先されますが、var. ampanihyensis(1984年)よりもvar. spirosticha(1986年)の方が広く知られているため、著者らは敢えてvar. spirostichaを優先し、E. spirostichaと命名しました。

(※3)ユーフォルビアの花には花弁がなく、一見して花弁に見えるのは苞。Cyathophyll.
(※4)「腺」とは一般的に液体を分泌する構造を示します。
(※5)stoloniferous roots system. 
下の写真は鉢から抜いたE. boiteauiですが、太く白いものは根ではなく地下茎です。

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(※6)E. boiteauiは角張った茎を持ち、葉の落ちた跡は直線的で、古い茎には跡が残ります。下の写真のE. boiteauiは、分岐の根元まで突起や葉の落ちた跡が残っています。
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⑤var. robinsoniiとは?
1984年にCremersはE. decaryi var. robinsoniiを報告しました。2016年のJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonは、var. robinsoniiに関してはE. boiteauiあるいはその他の種に移動させませんでした。Cremersの示したvar. robinsoniiの分布地域をJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonが数回訪れましたが見つけることが出来ませんでした。著者らはCremersの標本を探しましたが残念ながら追跡出来ませんでした。J.-P.Castillon & J.-B.Castillonは、この曖昧な状況と、E. decaryi、E. suzannae-marnierae、E. waringiaeとの類似性がありはっきりと判断出来ないことから、E. decaryi var. robinsoniiの名前は維持されることになりました。
しかし、著者らは地理的な不確実性にも関わらず、var. robinsoniiはE. suzannae-marnieraeであると考えています。1984年のCremersの記述に手がかりがあります。ホロタイプのE. decaryi var. robinsoniiは、塊根と長い葉柄があり、縁が波状の幅の狭い披針楕円形から狭菱形の葉には特に上面に「腺」があるとしています。
類似性があるとされるEuphorbia waringiaeは、菱形の葉ではなく狭披針形から線状であり、托葉全体に縁があるため除外出来ます。しかし、CremersのE. decaryi var. robinsoniiは縁全体に托葉があります。いわゆるE. francoisii(本当のE. decaryi)は様々な形状の葉があり、Cremersの言うvar. robinsoniiの披針形や菱形のものもありますが、葉には乳頭はなく滑らかで光沢があります。また、Cremersはvar. decaryiは典型的なE. decaryiよりもかなり小さいと述べています。CremersはE. francoisii var. francoisiiの名前も使用していますが、これはおそらくEuphorbia crassicaulisに基づいています。
以上からvar. robinsoniiはE. suzannae-marnieraeであると著者らは考えています。乳頭状の葉の上面と葉柄が狭く菱形で基部が短く、狭く長い葉などの特徴など、E. suzannae-marnieraeと一致します。栽培するとE. suzannae-marnieraeは匍匐根を持ち直立する傾向があります。


⑥新種E. decaryi var. durispina
近年、Euphorbia decaryi var. durispinaというラベルがついた植物が導入されています。導入元はドイツのExoticaでしたが、そのデータベースでは"Heidelberg74941"に対応するとあります。しかし、残念ながらハイデルベルク植物園にvar. durispinaを示すものはありませんでした。var. durispinaという名前は正式な学名ではなく園芸名です。著者らは過去に知られている種類ではないと感じましたが、由来が不明なため正式な記載を控えました。
ところが最近、Petr Pavelka氏から送られてきたマダガスカルのユーフォルビアの写真を調べたところ、Amboasaryの北にvar. durispinaが分布することが分かりました。また、同じ特徴の標本も発見しています。
著者らはvar. durispinaを独立種と考えています。形態学的に近縁なE. boiteauiの短い4mmの托葉とは異なり、var. durispinaはより長い7mmなどいくつかの特徴が異なります。また、E. spirostichaに似ますが、はるかに短い托葉突起(2mm)があり、しばらくすると消え、葉は非常に小さな結節(1mm)があります。
以上のことから、著者らはvar. durispinaを新種と考え、Euphorbia durispinaとしました。E. durispinaは高さは最大5cmで非常に小さく、匍匐根を持ちます。


⑦用語について
この論文では、かなり特殊な用語が使われています。正直、どう訳したものか悩みました。著者らによると、「podarium」とは、Rauh & Buchlohにより葉柄の周辺領域と定義されました。私は「托葉」と訳しましたが、一般的に定義される托葉とはまったく異なります。「podarium」は著者らが「podarium appendages」(=托葉突起と訳した)と呼ぶ、鱗片のような突起が融合した基部で構成されるそうです。また、E. decaryiグループの中で本来のトゲを発達させたのは、E. tulearensisとE. parvicyathophoraのみだそうです。

⑧キュー王立植物園のデータベース
さて、現在のキュー王立植物園のデータベースでは、E. decaryiグループはどのような分類となっていますでしょうか。論文に出てきた名前を調べてみました。以下に示します。

1, E. boiteaui Leandri
   ①E. boiteaui var. boiteaui
   ②E. boiteaui var. ampanihyensis
      (Cremers) J.-P.Castillon & J.-B.Castillon 
       =E. decaryi var. ampanihyensis Cremers
   ③E. boiteaui var. spirosticha
      (Rauh & Buchloh) 
 
        J.-P.Castillon & J.-B.Castillon
       =E. decaryi var. spirosticha
                 Rauh & Buchloh
2, E. crassicaulis (Rauh) Heav. & Hett.
       =E. francoisii var. crassicaulis Rauh
       =E. decaryi var. crassicaulis (Rauh)
              J.-P.Castillon & J.-B.Castillon
3, E. decaryi Guillaumin
    ①E. decaryi var. decaryi
        =E. francoisii Leandri
        =E. francoisii var. rubrifolia Rauh
    ②E. decaryi var. robinsonii Cremers
4, E. cap-saintemariensis Rauh
       =E. decaryi var. cap-saintemariensis
            (Rauh) Cremers
5, E. suzannae-marnierae Rauh & Petignat
6, E. waringiae Rauh & Gerold


見てお分かりのように、著者らの主張が認められているのは、E. crassicaulisの独立についてのみです。var. ampanihyensis=var. spirosticha、あるいはE. spirostichaの独立は認められておりません。さらに、var. robinsonii=E. susannae-marnieraeや、新種E. durispinaも認められていないようです。しかし、これは「現在は」という保留が付きます。まだ、論文が出たばかりですから、今後の変更は十分あり得るでしょう。
それはそうと、花キリンは非常に混乱した分類群ですが、最近整理され始めました。非常に気になるところです。E. decaryiグループも含め、まだ整理は続くのでしょう。今後も注視していきたいと考えております。


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今年の正月明けに開催された、新年のサボテン・多肉植物のビッグバザールでラフレシアリサーチさんからFouquieria leonilaeを購入しました。相変わらず、珍しいものを持ってきてくれます。購入時は葉のない小さな棒でしかなかったのですが、最近暖かくなってきましたから葉を初めて拝むことが出来ました。F. leonilaeは、11種類のFouquieriaの中でも一番新しく発見された種類です。しかし、命名は1961年のFouquieria leonilae Mirandaですから、今から60年以上前とかなり昔ですね。
さて、そんなF. leonilaeはあまり見かけないFouquieriaです。一体どんな植物なのでしょうか? 少し調べた限りでは、まともな情報はあまり出てきません。仕方がないので、海外の雑誌をちょろっと読んでみました。

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Fouquieria leonilae

まずは、2014年の「Acta Succulenta」から。
F. leonilaeは高さ2m、最大4mの低木で、直径15cmのやや細い幹を持ちます。幹は多肉質で柔らかく、皮は緑色で非常に薄く紙のようです。枝は少なく上部にあります。F. leonilaeはFouquieriaの中で最小のトゲを持ち、葉は卵形で最大5cmです。花は赤く細長い筒状で、ハチドリにより受粉する鳥媒花です。
分布はメキシコのGerrero州の中央Balsas窪地、Zopilote渓谷でのみということです。F. leonilaeの分布する岩だらけの谷は20平方km強です。標高は400~600mです。特に若い植物はBurseraやJaprophaに似ています。瓦礫だらけの斜面などで育つため、一見して岩生植物に見えます。この地域では、Mammillaria guerreronisやNeobuxbaumia mezcalaensis、Agave aff. petrophilaが見られます。

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次にCentral Arizona Cactus and Succulent Societyによる、2017年の「Central Spine」を見てみましょう。
この可憐な種はFouquieriaの中でも最も珍しいものの1つです。比較的細い枝分かれがあります。花はわずか30~60cmで咲き、長い花序と濃い血のように赤い色で可憐です。欠点は寒さ(マイナス2.2℃未満)に対する感度であり、水をやりすぎると腐敗しやすいようです。十分な光を与えても良いですが、西日(afternoon sun)をあまり当てなければ、Fouquieriaの中でも最も魅力的でユニークなものの1つになることが出来るでしょう。

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思いの外、大きな葉が出ました。

というわけで、F. leonilaeについて少し調べました。まあ、大した情報はありませんでしたが、割合小さいうちから花が咲くみたいですから将来が楽しみですね。そういえば、Fouquieriaは11種類ありますが、いつの間にやら7種類が集まりました。最近は変わった植物が入手しやすいため、もしかしたらそのうち全種類集まってしまうかもしれません。とはいえ、ネット通販や種子には手を出さず、偶然イベントで入手出来るのを待ちます。出会いは一期一会ですからね。


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昨日の続きで、植え替えをしています。

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そういえば、レンギョウがいつの間にか咲いていました。

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今回はこんな感じ。バラエティー豊かなラインナップ。

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Pachypodium bispinosumです。去年の植え替えではPachypodium succulentumは根が鉢底に当たってしまっていたので、こちらも気になるところです。
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やっぱり窮屈な感じです。しかし、何やら足が生えているみたいですが…
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植え替え後。細根が上の方にあるため、あまり塊根は出せませんので、少しだけ塊根を出しました。

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Euphorbia longetubeculosaですが、根の状態はどうでしょうか?
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挿し木ではなくて、実生苗だったみたいですね。
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植え替え後。まだ根が少なく枝分かれしていませんから、安定感はいまいちです。なので、やや深植えしました。

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Euphorbia decaryiです。正しくはEuphorbia boiteauiですが、これだけE. decaryiの名前が流通してしまうと、今さらの変更は混乱を引き起こすだけかもしれません。というのも、E. francoisiiと呼ばれているユーフォルビアが、正しいE. decaryiだからです。
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実生苗ですね。挿し木苗はよく売っていますが、実生苗はあまり見ません。
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植え替え後。しかし、何故か実生苗より挿し木苗の方が丈夫で生長が早かったりします。なんとなく理由は分かりますが、確証を得るために少し調べてみます。

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Aloe bakeriは根がやられていました。どうやら、化粧砂の下に水捌けの悪い用土が入っていたので、常に湿った状態となってしまったみたいですね。
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植え替え後。しばらくは乾かしてみます。

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Stephania erectaです。まあ、実際にはStephania pierreiが正しい学名だったりします。なぜ、S. erectaの名前が流通しているのかは分かりません。
それはそうと、一見して何も植わっていないように見えますからすっかり忘れていて、12月末くらいまで外に出しっぱなしでした。生きているか不明な状態。

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意外と平気でしたね。
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植え替え後。よく考えたら普通の観葉植物の土でも良かったかも。

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Euphorbia groenewardiiです。ただの奇妙な棒のようですが…。ビッグバザール購入品。
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根は割としっかりしていました。
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植え替え後。本来はトゲが出るはずなんですよね。冬に入手しましたから、今年の生長が楽しみ。

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Aristaloe aristataですが、実に混んでいます。鉢より大きいため、水やりしても水やり出来ているのかよく分かりませんでした。ビッグバザール購入品。
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子は陰になり徒長気味です。
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子を外しました。
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植え替え後。分けて植え替えしましたが、何か増やしても意味がないような
気もします。欲しい人もそうそういないでしょうし。


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Dioon eduleです。生長が非常に遅いらしいですね。木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。
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根はこんな感じ。
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良く見ると根粒があります。ソテツの仲間はシアノバクテリアと共生関係を結んでおり、その根粒をサンゴ根とか呼んでいますね。育つと本当にサンゴ状の塊になります。
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植え替え後。少しだけ塊茎を出して、鉢も大きめにしました。焦らずじっくり付き合うことにします。

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フィールドナンバー付きのギムノカリキウム。
左はGymnocalycium friedrichii VoS 01-017/a、右はGymnocalycium mihanovichii VoS 01-007です。木更津Cactus & Succulentフェアにて入手。

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根張りは悪くない感じです。
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植え替え後。うっかり、根を乾かさないで植えてしまいました。しばらくは乾燥させておきます。

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植え替え後。しかし、まだまだ植え替えしなくてはいけない多肉植物は沢山あります。鉢と用土はたんまりあるので、休日は植え替えばかりする羽目になりそうです。


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すっかり植え替えを忘れていて、しかも土がないという失態を犯したので、ホームセンターで色々買ってきました。赤玉土と鹿沼土をベースにして、軽石、くん炭、堆肥を混ぜこんだ用土です。

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これだけ買えばきっと足りるはず…

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そういえば、怪魔玉に花が咲きました。怪魔玉は冬も屋外栽培です。霜にあたって葉が落ちましたが、花だけ咲いています。完全放置でしたが。

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こちらも野外組。霜にあたってオブツーサもそれなりにダメージはあった模様。

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同じく野外組の竜鱗。

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さて、さっそく植え替え開始。まずは孔雀丸Euphorbia flanaganiiから。何故か冬に枝が枯れがちになります。
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抜いたら意外と根が下の方にあり、浅い鉢だったので根の広がるスペースが狭かったみたいです。
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植え替え後。深い鉢に植えたので、根のスペースは十分なはず。

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Euphorbia clavigeraですが、あんまり根がない状態で購入しました。枝はあまり伸びませんでしたが、どうでしょうか? 木更津Cactus & Succulentフェアで入手。
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抜いてみると、塊根がかなり太っていました。どうやら、根が鉢底に当たって曲がってしまったようです。
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植え替え後。少しだけ塊根を出しました。今年は枝も伸びて欲しいものです。

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Aloe spectabilisです。小さい抜き苗でしたが、思いの外生長が早く狭い感じがします。ラフレシアリサーチさんのオマケ苗。
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幹が出来ていますね。根張りは良好です。
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植え替え後。生長が早いので大きめの鉢に植えました。

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Euphorbia obesaも植え替え。最近は生長が今一つで、老化が進んでいます。
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根は貧弱。植え替え時ですね。
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植え替え後。まだまだ老化に負けず頑張って欲しいものです。

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Operculicaryaの何か。O. borealisの名義で入手しましたが、少し特徴が異なる気がします。しかし、芋がはみ出しています。 
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やっぱり根が底に当たって曲がっちゃいますよね。底でとぐろを巻いてしまうという話はよく聞きます。
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やたらに長いポリポットに植えることにしました。
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植え替え後。さすがにこれで大丈夫なはず。

というわけで、少し植え替えをしました。もう少し植え替えましたが、長くなりすぎたので明日に続きます。しかし、様々な種類の鉢を用意しておいて良かったです。


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どれだけ小さな庭でも、そこに土があれば何かしらの雑草がたくましくも生えてきます。ガーデニングを趣味としている方なら、雑草は大なり小なり厄介な存在でしょう。私も育てている多肉植物の鉢に、どこから来たのか様々な雑草が生えてきます。早期に抜かないと根を深く張ってしまい、中々取り除くのにも手を焼くことになります。こんな趣味の範疇の園芸でも厄介な存在なのですから、農業における雑草は厄介どころの話ではないでしょう。もちろん、科学の力により除草剤なるものが開発され使用されます。しかし、たかが雑草と侮るなかれ。雑草には人間の知恵など凌駕する力があるようです。本日はその雑草が主役の話をしたいと思います。参考とするのは2003年に出版された『雑草の逆襲』(全国農村教育協会)です。早速、簡単に内容をご紹介しましょう。

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農業では雑草は実に厄介な存在です。せっかくまいた肥料を吸ってしまいますし、背丈が高くなれば日照を遮ります。あまりに雑草が蔓延ると、そこから病害虫が拡がることもあります。風通しも悪くなりカビなどによる病気も起こりやすくなります。そのため、除草剤がまかれますが、日本各地で異変が起きているというのです。雑草は本来、実に沢山の種類があります。しかし、除草剤をまいていると、何故か1種類の雑草のみが蔓延る、奇妙な光景が現れ始めたのです。
事の起こりは1980年の埼玉県のことでした。荒川堤外地の桑畑でパラコートなどのビピリジリウム系除草剤に抵抗性があるハルジオンが見つかりました。驚くべきことに、このハルジオンは通常の16倍の除草剤にも耐えることが分かりました。

では何故除草剤が効かないのでしょうか? そもそもパラコートはどのように効くのかというと、葉に光が当たると光合成しますが、その反応にパラコートが作用して活性酸素を生じて葉の組織に損傷が生じるようです。そこで、パラコートに耐性のあるハルジオンやアレチノギクの葉を切って、切り口から標識したパラコートを吸わせてみました。すると、パラコートは葉脈にはありましたが、葉の組織にはありませんでした。つまり、光合成がおきる葉の組織にパラコートが行かないため、活性酸素が生じないということのようです。
しかし、不思議なのはハルジオンのパラコート耐性が、原産地の北米ではなく日本で初めて発生したという事実です。一般的に原産地は種内の多様性が高いことから、北米でこそパラコート耐性が出てくるような気がします。ただ、ハルジオンは日本では大量発生しますが、北米では重要な雑草ではありません。これは、ハルジオンが本来は存在しない侵略者であるため、競争相手がいないだとか、北米でハルジオンにつく病害虫が日本にはいないだとか理由は色々と考えられます。そのため、ハルジオンに対し日本では北米より大量のパラコートが使われてきたということかもしれません。

さて、除草剤に限らず薬剤耐性が起きる仕組みとは、①薬剤の吸収・移行を阻害する、②薬剤を分解してしまう、③薬剤の作用部位が変異してしまう、という3つが考えられます。ハルジオンのケースは①の薬剤の吸収・移行の阻害によるものですね。
さらに、北海道や東北で、水田雑草であるミズアオイやアゼトウガラシにSU剤という除草剤に対する耐性が見られました。SU剤は植物がアミノ酸を合成する過程のアセト乳酸合成酵素(ALS)を阻害しますが、ミズアオイやアゼトウガラシはALSの変異によりSU剤が効かないと考えられているようです。つまり、③の薬剤の作用部位の変異によるものです。
また、何も除草剤抵抗性は日本だけの話ではなく、世界中で起きている現象です。しかも、複数種類の作用機序が異なる除草剤に抵抗性を獲得した雑草も現れているようです。さらには、オーストラリアのボウムギやカリフォルニアのイヌビエのように、解毒機構を発達させてほとんどの除草剤を無効化する「スーパーバイオタイプ」と呼ばれる恐ろしい雑草さえ出てきてしまっています。②の薬剤の分解によるものですね。


しかし、考えて見れば雑草とは実にたくましいもので、人類の叡智など軽々と乗り越えてしまいます。まったく異なるタイプの除草剤が開発されても、基本的にはいたちごっこで、直ぐに乗り越えられてしまうのでしょう。これは、近年重大な問題と化している抗生物質に耐性のある細菌の出現と同じ現象です。こちらも多剤耐性菌の出現により医療現場に多大な負荷がかかってしまっています。やはり、こちらも除草剤と同様に終わりのない戦いを強いられています。
除草剤自体は人体にも有害な物質ですから、使わないに越したことはないのでしょう。しかし、狭い庭ですら雑草を蔓延らせている私には、農家は広い農地を手作業で雑草を抜くべきだとはとても言えません。やはり、人間の知恵など「たかが雑草」にすら勝てないのでしょうか? こうなってしまうと、除草剤とはまったく異なる手法による、新たな除草方法が求められているのかもしれませんね。


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今年も植え替えをしなくてはならないのですが、すっかり忘れていていつの間にやら3月も終わってしまいます。あわてて植え替えようと思ったのですが、肝心の土がちょろっとしかありませんでした。仕方がないので、取り敢えず少しだけ植え替えしました。

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本日はこれだけ。

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先日、横浜にあるコーナン港北インター店で購入したばかりの多肉植物たちです。傷んだものもあった中からいいやつを選びましたが、根の状態が心配ですから最優先で植え替え。
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まずは、十二の巻から。根の張りは悪いものの、腐っている感じはありませんでした。むしろ、カラカラに乾いていて痩せているパターンみたいです。
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植え替え後。鉢も大きくしました。乱れた荒いバンドがワイルドでいい感じです。

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植え替え後のGasteria glomerata。割と良い状態でした。よく見ると根元に子供が吹いています。植え替え前は埋もれて気が付きませんでした。

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植え替え前のTulista marginata。去年、少し焦がしました。その後、調子を落としていましたから植え替えました。鶴仙園西武池袋店にて入手。
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植え替え後。根張りは今一つでした。今年はきれいに育てたいものです。

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植え替え前のAloe descoingsii。Ruchiaさんから購入したので、根に問題はないでしょう。ただ、枯れ葉が邪魔なので植え替えついでに取り外します。
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植え替え後。枯れ葉を除いてすっきりしました。

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去年のクリスマスイブに木更津Cactus & Succulentフェアで購入したEuphorbia balsamifera。妙に乾きやすい土に植わっていたので気になっていました。
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根は割と貧相でしたが、弱った感じはありません。
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植え替え後。枝分かれさせてこんもりとした感じに育てたいものです。

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植え替え前のEuphorbia handiensis。去年の冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで購入しました。おそらく、E. balsamiferaと同じ業者さんから購入。
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少しネジラミがいました。根を流水でこすり洗いしましたが、通常はこの物理攻撃が一番効きます。しかし、根がゴツゴツしているため、何やらすべて取りきれた気がしません。
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植え替え後。根に殺虫剤を吹き掛けて、用土に浸透移行性殺虫剤を仕込みましたが、効果の程は分かりません。

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そういえば、庭の乙女椿が満開でした。樹は小さいですが、今年は咲き年のようです。

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普及種ですが花の形が非常に整った良い品種です。

まだまだ植え替えしなくてはならない多肉植物は沢山ありますから、徐々にやっていきます。いや、まずは用土を買い込まなくては。まあ、こんな風にぐずぐずやっていると、あっという間に夏になってしまいそうです。


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昨日はザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会に行ってきた訳ですが、せっかく新羽まで来たのですから、コーナン港北インター店にも寄りました。新羽駅からバスで折本町というバス停で降りて横断歩道を渡って直ぐにあります。ガーデン館という巨大な温室があり、特に多肉植物が豊富で、とにかく売り場が広いので数だけならトップクラスかもしれません。見映えの良い大型で高額なものから、安価なミニ多肉植物まで様々です。今回は何がありますでしょうか?

今回、新しくアガヴェ・コーナーが出来ていたのは、やはり流行を感じました。しかし、全体的には今回はまだ寒いこともあり、どうやらホームセンターで一冬越したものが多いようです。ユーフォルビアなどはやや痛みや葉先の枯れが目立ちました。しかし、エケベリアなどのベンケイソウ科は回転が良いせいか、新しいものも多かったように見受けられます。何故かSansevieriaがかなり充実しており、1つのコーナーが出来ていました。アロエも割とありやや珍しいものもありました。流石にアロエに痛みはありませんでしたが。さて、ハウォルチアやガステリアがあるコーナーを見ましたが、軟葉系ハウォルチアは割と元気なのに、何故か硬葉系ハウォルチアとガステリアは痛みが激しく買う気にはなりませんでした。とはいえ、少し面白いものもありましたから、元気なものを選んで購入しました。まあ、ホームセンターですから、多肉植物の入荷が活発になるのはこれからですよね。

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グロメラータ
Gasteria glomerata。私が去年入手して育てている株はやや白味がかり葉に丸みがあるタイプですが、こちらは緑色が強く葉が長いタイプ。こちらのタイプのほうが、van Jaarsveldが新種として記載した当時の写真の個体に近く見えます。


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十二の巻
Haworthiopsis attenuata系品種を「十二の巻」と呼びます。白いバンドの入り方は様々ですが、この個体はバンドの幅は広いものの、バンド間が広いのが大変面白い。一部、バンドが崩れて「ドーナツ冬の星座」みたいになっています。ちなみに、H. fasciataではないので注意。


昨日に続き、ザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションとコーナン港北インター店にはしごしてきました。個人的には大満足で、色々と見られて楽しかったです。
3月は先週の「春のサボテン・多肉植物のビッグバザール」もありましたし、来週にもイベントがあります。3/26には町田シバヒロという町田駅近くの公園で「つながる輪多肉petitfes.vol11」という多肉植物のイベントがあり、同日にルームズ大正堂八王子店ガーデンメッセで開催される「Succulent Blossom vol.4」という多肉植物のイベントがあります。一応行ってみる予定ですが、初めてなのでどういうイベントかはよく分かりません。もし行けたら記事にしたいと思います。



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横浜市営地下鉄ブルーラインの新羽駅近くにあります、ザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションに行って来ました。今日と明日の2日間「多肉植物BIG即売会」が開催されたからです。まあまあ遠いので滅多に行けませんが、イベントとなれば話は別です。実に去年の夏以来のヨネヤマプランテイションですが、何か面白い多肉植物はあるのでしょうか?
あいにくの雨模様でしたが、花粉症の私にとってはこの時期の雨は逆に有り難く感じます。まあ、少し肌寒くはありましたが。さて、開店時間前に到着しました。いつも、開店時間前に始まっていますが今回もそうで、売り場はまあまあ込み合っていました。今年はイベント・スペースが広くなり、割と珍しいラインナップでした。目移りしましたが、安いものだけを購入しました。
売り場は今ブームのアガヴェ・コーナーができていたのが印象的でした。相変わらず、パキポディウムの苗も沢山ありました。珍しくサボテンも割と充実していましたね。あと、ガステリアがちょいちょいあり、少し驚きましたが。しかし、レアものは非常に高額なので断念。結局はお手頃なユーフォルビアをチョイスしました。通常、園芸店ではユーフォルビアは普及種しか見かけませんが、今回は色々と取り揃えていたのでまったく嬉しい限りです。


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Euphorbia fianarantsoaeです。花キリンは分類が混沌としていますから、勉強しなくてはと思っています。

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Euphorbia bubalinaです。「昭和キリン」の名前があります。逆鱗竜E. clandestinaに近い仲間ですがどうにも逆鱗竜は間延びしやすく苦手なのですが、昭和キリンはどうでしょうか? 詰まった良い形に育てたいものです。

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Euphorbia heterodoxaです。不思議な形ですが、これもユーフォルビアです。外見的にも、いかにもな南米原産種。しかし、E. heterodoxaの画像を漁ると、このように筋張ってはいないみたいなんですよね。むしろ、E. apparicianaの近縁種にも見えます。E. weberbaueri感が強いのですがよく分かりません。新大陸のユーフォルビアには詳しくないので詳しく調べてみる必要があります。

ということで、あまり見かけないユーフォルビアがあり園芸店の開催としては、かなり満足感の高い即売会でした。しかも、この3点は非常に安価でしたから、懐にも優しいというオマケつきです。これで大満足で帰宅するかと思いきや、実はまだ続きます。このあと、横浜市営バスに乗って、コーナン港北インター店のガーデン館を見に行くからです。せっかく遠く横浜まで来たのですから、バスで10分ほどと近いので立ち寄ります。コーナンの記事は明日まとめます。
さて、「多肉植物BIG即売会」は明日も開催されます。多肉植物好きなら見に行っても損はないと思います。


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最近、植物と菌類との関係について、幾つか記事にしています。ここで一つ、良い本がありますからご紹介します。それほど重要な話には思えないかもしれませんが、大抵の植物は菌類と共生関係を結んでいます。
さて、本日は2020年に出版された『菌根の世界』(築地書館)をご紹介します。内容はまあ実際に手にとって読んでいただくとして、菌根の基礎的な部分のみ解説させていただきます。なお、説明しにくい部分もありますから、私が一部情報を追加していますので悪しからず。

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さて、まずはキノコの話から始めましょう。キノコには大まかに分けて3つのタイプの生態があります。1つは落ち葉を分解するキノコで、身近な例ではブナシメジやツクリタケ(マッシュルーム)、えのき茸、フクロタケなどです。2つ目は木材を分解するキノコで、身近な例では椎茸や舞茸、ヒラタケ、ナメコ、キクラゲなどがあります。そして、3つ目が植物と共生関係を結ぶ菌根菌です。菌根菌では松茸やトリュフ、ポルチーニなどが有名ですが、一般的に栽培が難しく高額なキノコです。もちろん、ここに名前が出たキノコだけではなく、他にも沢山の種類のキノコがあります。これらのキノコが作る菌根を「外生菌根」と呼び、植物の根の周囲に服を着せたかのように、キノコの菌糸が被います。植物とキノコの間で栄養分のやり取りがあり、植物の生育にとって非常にプラスとなっていることが分かっています。

菌類にはキノコを作らないものもあり、一般的にカビと呼ばれています。カビには、生き物の死骸を腐らせるものと、植物に寄生するタイプの病害菌と、植物と共生するカビがあります。植物と共生するカビは、アーバスキュラー菌根と呼ばれる特殊な菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は、なんと植物の根の組織にカビの菌糸が入り込んで、植物と菌が一体化してしまいますから、これを「内生菌根」と呼んでいます。アーバスキュラー菌根は痩せ地に生える植物でよく発達し、貧栄養に育つ植物にとって極めて重要な存在です。また、様々な作物などでアーバスキュラー菌根菌の接種により、植物の生育が良くなることが確認されています。アーバスキュラー菌根菌は、栽培困難な外生菌根とは異なり、相手を選ばずしかも簡単に接種できます。
さらに、驚くべきことに4億3000年前に初めて植物が陸上に進出した時、すでにアーバスキュラー菌根が存在していた可能性があります。なぜなら、上陸したばかりの植物にはちゃんとした根がないため、栄養分を上手く吸収出来ていたとは考えにくいのです。アーバスキュラー菌根菌が存在していれば、根の代わりに菌糸が栄養分を運んでいたのではないかというのです。さらに、アグラオフィトンという植物化石の仮根(まだ未発達な根)にアーバスキュラー菌根に類似な構造が観察されています。アーバスキュラー菌根菌であるグロムス菌亜門は、(おそらく遺伝子解析により)4~5億年前に近縁な菌類から分かれたと考えられており、その点においても符合します。


アーバスキュラー菌根菌は農業への応用が期待されますが、実はすでに製品化されているそうです。しかし、残念ながらあまり普及していない現実があります。なぜなら、菌根は土壌中の栄養分が少なく場合により効果が期待できるわけで、日本のような過剰に化成肥料をまく農業では効果が表に出にくからです。実験的には肥料を減らしても高い収率が期待できるということですから、使い方次第では面白いのではないかと思います。最近、サボテンにアーバスキュラー菌根菌を接種した論文をご紹介しましたが、生長が良くなり病原菌の影響を減じました。乾燥した過酷な環境に生きる多肉植物はいかにも菌根菌と関係していそうです。アーバスキュラー菌根菌の応用は効果が期待できるかもしれません。

以上のように、簡単に菌根について解説させていただきました。しかし、これはいわばさわりの部分でしかなく、内容的には様々な角度から菌根について語られています。植物と菌類の関係は様々で非常に複雑です。外生菌根の話や蘭菌の話、苔やシダの菌根の話など大変興味深い内容です。大変面白く勉強になる良い本ですからオススメします。


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最近、沖縄で海外のソテツにつく害虫が見つかりました。Aulacaspis yasumatsuiというカイガラムシの一種です。昨日、ニュースで初めて知ったのですが、沖縄は2例目で実は昨年の10月に奄美大島で発見されており、すでに700本のソテツに拡がってしまっているそうです。その増殖の早さから思いの外、大事になる可能性があります。

ニュースの元記事はこちら。
A. yasumatsuiはタイなどの東南アジア原産のカイガラムシです。繁殖力が強く世界中の温暖地に拡散してしまっています。野生ソテツの宝庫であるメキシコではA. yasumatsuiをかなり警戒しているようです。今までA. yasumatsuiが確認されたソテツはCycasだけではなく、Zamia、Dioon、Stangeria、Macrozamia、Bowenia、Encephalartosで見つかっていますから、ソテツの仲間はすべて被害に合うと考えた方が良いようです。

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Dioon spinulosum

カイガラムシはカメムシの仲間で植物の汁を吸いますが、吸われた部位は白く細胞が死んだ状態となります。大量に増えればやがて光合成が出来なくなります。葉についたA. yasumatsuiは葉をすべて取ってしまえば済みますが、幹の鱗片の間や地下部位についたA. yasumatsuiを除去するのは大変な困難でしょう。

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もし、A. yasumatsuiが鱗片の隙間に入ってしまったらと考えると、とても除去しきれる気がしません。

A. yasumatsuiがついて何もしなければ1年ほどでソテツは枯死する可能性があると言います。対策は、見える範囲にいるものは取り除くか、カイガラムシ用の殺虫剤をまくしかありません。それでも、地下部位などすべてを取り去るのは至難の技かもしれません。また、もし本土にA. yasumatsuiが定着してしまった場合、除去しても野外の他のソテツから新たなA. yasumatsuiがやって来るかもしれません。


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Zamia furfuracea

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Cycas revoluta

A. yasumatsuiは東南アジア原産ですから、寒さに弱いような気もしますがよく分かりません。そもそも、私は熱帯原産のソテツを冬は室内に取り込んでいます。温室で育てている人もいるでしょう。そうなると、もしA. yasumatsuiが寒さに弱かったとしても、冬に生き残るでしょうからA. yasumatsuiの耐寒性の有無に意味はないかもしれません。また、屋外にあったとしても、土壌中は暖かいので地下で生き残るものもあるかもしれませんし、一般的に耐寒性が高い卵で冬を越す可能性もあります。沖縄は離れているからなどと楽観視は出来ないでしょう。近年、ソテツシジミという、ソテツを食害する南方系の蝶が、1992年に沖縄で確認されてから、現在では関東地方各地で確認されるに至りました。この蝶も日本列島をじわじわ北上して来たわけです。地球温暖化により気温も上昇してきていますから、A. yasumatsuiが本土に上陸するのも時間の問題でしょう。

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Dioon edule

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Zamia integrifolia(=Z. floridana)

ソテツシジミが関東地方のあちこちで発見されているニュースを見て、まあいざとなれば芋虫を捕殺するだけなので、それほどの脅威は感じませんでした。しかし、Aulacaspis yasumatsuiは初期に気が付かず蔓延してしまうと、手に負えなくなる可能性が大です。私もソテツを何種類か育てていますから、注意しないといけませんね。


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植物の種子は地面にばらまかれたら直ぐに発芽する訳ではありません。大抵は発芽に適した時期まで休眠します。とはいっても種子の発芽可能な期間は決まっています。条件が発芽に適していない場合でも、種子が何年も耐えられるとは限りません。場合によっては毎年新しい種子が出来るので、種子の寿命はその年のみというこのもあるのでしょう。また、よくあるパターンとして、研究者が種子を良い条件で何年も保存し、種子を撒いたら発芽しましたという場合でも、実際の野生に生える植物では様々な悪条件により速やかに種子が死亡したりします。このギャップを埋めるためには、野外で種子を含む土壌を採取してきて、その土壌中にある種子が発芽するかを確認することが必要となります。かつてKumara plicatilis(=Aloe plicatilis)の種子寿命について調べた論文を記事にしたことがありますが、やはり自然状態の種子ときちんと研究室で管理された種子では発芽可能な期間が異なりました。

Kumara plicatilisの発芽についての記事はこちらをご参照ください。
さて、本日はサボテンの種子に関する論文をご紹介します。それは、Lucía Lindnw-López, Guadalupe Galíndez, Silvia Sühring, Valeria Pastrana-Ignes, Pablo Gorostiague, Angela Gutiérrez & Pablo Ortega-Baesの2018年の論文、『Do cacti soil seed banks? An evalution using species from the Southern Central Andes』です。

まずは、内容に入る前に用語の説明から。土壌中で発芽せずにいる種子を'seed bank'と言います。直訳すると「種子銀行」ですが、今回は貯蔵種子と訳させていただきます。また、論文中で土壌中の貯蔵種子を'soil seed bank'と呼び、これをSSBと略しています。貯蔵種子の区分として、種子の生存が1年以下の一過性の貯蔵種子、1年以上生存し続ける持続性貯蔵種子に分類出来ます。

過去の研究ではサボテンの種子はSSBを形成出来るとされています。しかし、これは種子の形態学的及び生理学的特性から推察された結論であって、実際の野生のサボテンの種子について調べたものではありませんでした。そこで、この論文では野生のサボテンのSSBを調査することとしたのです。

調査はアルゼンチンのサボテンの多様性が高いとされるSalta州の12の地点で実施されました。野生個体から採取された種子を地面に埋めました。土壌の採取は新しい種子が形成される前に行われました。直径10cm、深さ3cmの円筒形の金属製の筒により土壌を採取しました。また、1つの地点で裸地とナース植物の下の2点の採取が実施されました。ナース植物とは乾燥地に生え葉を繁らせ陰を作る植物で、その木陰は遮光され地面の温度を下げます。そのため、ナース植物の下は実生が生き残りやすい環境と考えられています。
残念ながら種子が少なく分析出来ないサボテンもありました。論文で分析できたのは、Echinopsis atacamensis、Echinopsis terscheckii、Echinopsis thionantha、Gymnocalycium saglionis、Gymnocalycium schickendantzii、Gymnocalycium spegazziniiの6種類でした。

さて、これらのサボテンの種子は24ヶ月後に回収した場合、生き延びたものはありませんでした。全体的な傾向としては、生存率は経過時間が長いほど低下しました。6ヶ月後ではE. thionanthaとG. spegazziniiは生存率が低下しましたが、それ以外の4種類の種子はほとんど生存率は低下しませんでした。しかし、1年後では6種類すべてで非常に生存率は低下しましたが、発芽能力がある種子が存在します。

このように、サボテンは短期間ではあるもののSSBがあることが分かりました。しかし、著者らは他の論文の報告から、単純に発芽能力が経年劣化するのではなく、病原性真菌の感染により種子が死亡している可能性も指摘しています。個別の種子を見てみると、G. schickendantziiは採取されて直ぐの種子より、6ヶ月に回収された種子の方が発芽率が良いという意外な結果でした。これは、一度種子が休眠して後熟成している可能性が指摘されます。
この研究では、ナース植物の効果は確認出来ませんでした。E. thionanthaはナース植物の下の種子は発芽率が低下しました。理由は定かではありませんが、経過時間の方がファクターとしては大きいようです。一般的にはナース植物の効果は複数の報告があります。しかし、ナース植物のアレロパシー効果により付近の種子にダメージがあった可能性も指摘されます。アレロパシー効果とは植物が様々な物質を放出して、周囲に影響を与えることを言います。この場合は、ナース植物の将来的な競争相手となる可能性のある他植物の種子が発芽しないように、ナース植物が生長阻害物質を放出しているのかもしれません。ナース植物となる植物も慎重に選ぶ必要性があったのかもしれません。


以上が論文の簡単な要約です。乾燥地の過酷な環境下でも、サボテンの種子は1年間は生存するものもあることが示されました。個人的には、流石に自生地では短期間に発芽出来ないと速やかに死亡するような気がしていました。それが、まさか短期間であろうと貯蔵種子が存在することに驚きました。多肉植物は過酷な環境に生えるものが多いので、貯蔵種子の存在が私の中で俄に面白い存在となりました。興味が出てきましたから、何か良い論文がないか調べてみたいと思います。


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植物は常に闘っています。とはいえ、動物の喰う・喰われるの関係に比べると、非常に静かで密やかな闘いです。植物は常に周囲の他の植物と、光や栄養分を巡り競いあっているのです。その闘いには植物ごとに独自の戦略があります。本日はオオブタクサの戦略を例に、植物の闘いを見てみましょう。参考としたのは1996年に出版された、鷲谷いづみによる『オオブタクサ、闘う -競争と適応の生態学』(平凡社・自然叢書)です。

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まずはオオブタクサとはどんな植物なのでしょうか。実はオオブタクサは正式な名称ではなく、実際にはクワモドキというそうです。ブタクサに似ていて(実際に近縁)、とても大きいのですから、オオブタクサの方が実態を表しているような気がしますから、以降はクワモドキではなくオオブタクサで統一します。
オオブタクサは北米原産の帰化植物で、大豆に混入して持ち込まれた可能性があるそうです。輸入された大豆は種苗用ではなく加工用ですから、どのような経緯で野外に逸出したのかは良く分かりません。河原などによく生えるのだそうです。関東地方でもかなり増えているようです。しかし、生える場所からしてあまり目につきにくいような気がします。
オオブタクサは一時期のセイダカアワダチソウのように、ある区域を埋め尽くしてしまうことがあります。オオブタクサは風媒花ですから、密集地では花が咲くと大量の花粉で周囲が黄色く見えるほどだそうです。風媒花は風任せですから、数打ちゃ当たる方式で虫媒花より多くの花粉を作り、しかも周囲にばらまきやすい構造となっています。ですから、オオブタクサは花粉症の原因の1つになっています。ちなみに、セイダカアワダチソウは虫媒花ですから、それほど沢山の花粉を作りませんし花粉をやたらに環境中にばらまいたりはしません。風媒花ではないのでそんなもったいないことはしないでしょう。セイダカアワダチソウが花粉症の原因のように言われますが、果たして本当なのでしょうか。あのように、目立つ花を咲かせるのですから、虫媒花であるのはどちらかと言われたら分かりやすい方ですよね。


さて、日本の植物からするとオオブタクサはインベーダー(侵入者)なわけですが、そもそも日本の環境中にインベーダーの入り込む余地がなければ定着しません。一般的には隙を付くのが定石で、空いたニッチに侵入する場合と、攪乱地に侵入する場合があります。ニッチとは生態的地位という分かりにくい訳語がありますが、要するにどういう場所でどんな環境かということです。空いたニッチ、つまりある環境を他の生き物が利用していない場合、競争相手がいないため簡単に侵入出来ます。次に攪乱地ですが、一般的には山火事や崩落地、洪水の跡など流動的な場所です。攪乱地では本来の生態系が崩壊していますから、様々な生き物が侵入するチャンスがあります。そのため、攪乱地では周囲より様々な生き物が見られ多様性が著しく高いことがあります。また、人工的な都市環境は本来の自然とは全く異なりますから、侵入者の比率が高い環境と言えます。しかし、オオブタクサは隙を付く戦略ではなく、あくまで競争して打ち勝つという在来の植物に真っ向勝負を挑んでいます。
※河原自体は攪乱地でもあります。

そもそも、オオブタクサは北米においても特殊な植物です。アメリカで実施された調査では、オオブタクサが生えると遷移が進まなくなるそうです。一般的に裸地には、まずイネ科の雑草など生長の早い一年草が生えてきます。その後は、先駆植物という荒れた環境に生える植物、例えばアカメガシワや松が生えます。環境は移り変わり、対応するように植物相も移り変わりますが、これを遷移と言います。オオブタクサは一年草としては非常に大型で、最大6mにもなります。背が高いと日照を独占できますから、オオブタクサは大変有利です。日照を巡る競争に勝てないのなら、オオブタクサが占有する区域では他の植物が生えることは非常に困難です。オオブタクサが生えると種の多様性は1/8にまで低下するということです。

では、なぜオオブタクサは他の雑草と競争して打ち勝つことが出来るのでしょうか? 背が高くなり太陽光を独占出来るということも確かに1つの理由ですが、オオブタクサより早く芽吹き生長する植物がいたら、オオブタクサの実生は陰となり育たないかもしれません。なぜ、オオブタクサが勝てるのか、非常に不思議です。
その理由の1つが、オオブタクサの種子のサイズが1cm近くにもなり、周辺の雑草の中では大型であることが原因だと考えられています。種子が大きければそれだけ沢山の養分を含んでいますから、発芽すると種子の沢山の養分を使って急激に生長することが出来るのです。
種子が大きいほど養分が多くなり生長が早くなりますから、他の雑草も種子を大きくした方が有利な気もします。しかし、種子の大きさは種によってバラバラですが、そこにもやはり意味があります。オオブタクサは親植物が巨大なので、大きな種子を作ることが出来るという側面もあります。しかし、それだけではないのかもしれません。
種子を作るには沢山の栄養分をつぎ込まなくてはなりませんから、親植物が種子を作れる限界があります。仮に親植物の種子につぎ込める栄養分が等量と仮定しましょう。その場合、大きな種子ならコストが高いので少数しか出来ず、小さな種子ならコストが低いので沢山作ることが出来ます。小さな種子は大量にばらまかれて、種子の養分は少ないので育たないものも多いのでしょう。しかし、実は種子のサイズは、種子に貯蔵された養分だけの問題ではありません。なぜなら、大きな種子は重いため基本的に親植物の近くに落下しますが、小さな種子は軽いため親植物から離れてあちこちに分散します。オオブタクサが同じ場所に高密度に生えるのは、種子が重くあまり拡散されないからでしょう。小さな種子はオオブタクサ集落でオオブタクサと競争する必要はなく、広く拡散してそのうちのどれかが良い条件であれば問題がないという訳です。そう考えると、必ずしも大きな種子が有利とは言えないような気がします。要するに戦略が異なるだけと言えるでしょう。


次にオオブタクサは種子の目覚めが早いと言います。関東地方では2月頃だと言います。種子は暖かくなると芽を出しますが、オオブタクサは他の雑草の種子が目覚める前にいち早く芽を出すのです。これは非常に有利な戦略ですが欠点もあります。早く芽を出してしまうと、まだ寒いこともあって霜が降りたり寒波などでせっかくの実生がダメージを受けて枯れてしまうかもしれません。しかし、オオブタクサはイヤらしいことに、種子の発芽にバラつきがあり、次から次へと順次発芽するので問題がないようです。
これは非常に優れた戦略です。何でも、オオブタクサはオギ原にまで侵入しているそうですが、これは種子の目覚めの早さと関係があるかもしれません。オギやススキなどは地下茎に栄養分を貯蔵しているため、暖かくなると急激に生長します。オギは人の背丈ほどになりますから、オギ原はオギが占有することは普通です。しかし、オギが目覚める4月までにオオブタクサはすでに生長を開始しており、アドバンテージがある状態から競争を始めるのです。


今回はオオブタクサを例に取りましたが、非常に面白い生態を持っていました。しかし、他の植物も非常に多様な戦略を取っています。何となく庭に生えているように見える雑草も、実は優れた戦略の末にそこに生えているのかもしれませんね。


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昨日、五反田TOCビルで春のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。
今年は杉花粉の飛散量が大変なことになっており、花粉症の私は苦しい日々を送っています。仕事もあるプロジェクトが佳境に入り疲労が蓄積していますから、ビッグバザールに行くか悩みました。しかし、個人的に多肉植物の流行り廃りを見に行く楽しみがあり、世相の多肉植物の流行りを目撃出来るビッグバザールはどうしても行かなくてはなりません。
しかし、最近は忙しいこともあり多肉植物に割ける時間が中々取れませんから、むやみやたらに増やすのも考えものです。まあ、見るだけでも構わない位の意気込みでビッグバザールに参加しました。さて、今年のビッグバザールはどんな感じでしょうか?

毎度そうですが、整理券が配られる早い時間には行きません。だいたいは開催時間ギリギリくらいの到着なので、混雑のピークを見ることにはなります。昨日は何故か山手線が遅延しており、想定より少しだけ遅れての到着でした。しかし、今回のビッグバザールは恐ろしい混み具合で、エレベーターホールの前まで人に溢れていました。待機列の整理がいまいちで、よく分からない列が出来ていたりしてやや混乱した雰囲気でしたが…。開場してからも待機列は動かず、会場に入るまで10分くらいかかりました。大変な盛況具合です。暖かくなり新型コロナも自粛が解禁されたこともあるのでしょう。
さて、肝心の会場ですが、意外にも大混雑といった感じではありませんでした。これはあれですね。今回は待機部屋がないから廊下で余計に混雑していただけですね。しかし、多肉植物ブームはまだまだ続く感じがします。若い人が多いこともあり、今後も盛り上がっていきそうです。

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今回の入場証はこんな感じ。ちゃんと日付も入るようになりました。

さて、今回のビッグバザールですが、アガヴェ専門店が2つもありました。ここ数回のビッグバザールに出店しているお店は人だかりが凄まじく、全く売り物が見えませんでした。今、流行りのアガヴェはなんでしょうか? 気になりますが、私のような野次馬が熱心なアガヴェファンを掻き分けて見に行くのも憚られましたから断念しました。その他にも初出店とおぼしきお店もありました。また、今回はエケベリアなどのベンケイソウ科植物も割と目につきました。ピクタ系ハウォルチアも専門店が2つほどありましたし、中々人気があるようです。ビッグバザールではお世話になる可能性が高いラフレシアリサーチさんは、種子販売と輸入品と思われる抜き苗(ベアルート)が並んでいましたね。コミフォラが安かったのですが、基本的にベアルートは買わない主義なので今回は断念しました。

ここからは、購入品に入ります。例によって名前はラベル表記のままです。
①入り口直ぐ左のアロエのカット苗が売っているブースへ。今回はカラフルなアナナスも並んでいました。このブースではGonialoe sladenianaやEuphorbia greenwayiをかつて購入したことがあります。今回はFouquieriaを購入しました。基本的にFouquieria fasciculataは小苗でも高額なので買わないのですが、今回はえらく安かったので購入。

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Fouquieria fasciculata
いつの間にやらフォウクィエリアも7種類目です。私が目ざとく探しているからというより、最近は本当に何でも売っているからだと思います。

②次は大型の高級コーデックスを並べているブースへ。毎度、足下に安い苗をザルに入れて並べていますが、非常に安いユーフォルビア苗(花キリン系が多い)がありますから今回もチェックしました。やはり、安いユーフォルビア苗が豊富にありましたので購入。
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ユーフォルビア・スクアローサ
Euphorbia squarrosaの実生苗。「奇怪ヶ島」などという、凄い名前があるようです。「飛竜」E. stellataのように塊根から枝を沢山出すタイプです。


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ユーフォルビア・ウーディー
Euphorbia woodiiの実生苗。中型のタコものユーフォルビア。最近は販売されるタコものも色々増えてきました。タコものは育てるのが苦手なんですが、よく目にする種類以外は非常に高額なことが多いので、安いとつい手が出てしまいます。


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ユーフォルビア・カプサインテマリエンシス
Euphorbia cap-saintemariensisの実生苗。塊根性花キリンです。E. decaryi var. cap-saintemariensisとされたこともありますが、遺伝子解析の結果ではE. decaryiやE. francoisii系ではなく、E. tulearensisに近縁なようです。すでに花芽がありますから、近日花を御披露目出来そうです。


③次は毎回出店しているガステリアやハウォルチアなどの交配種が並ぶブースへ。毎回出店していますが、購入は今回が始めてです。タコものの小苗を1つ購入。
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神蛇丸 クラバリオイデス var. トルンカタ
Euphorbia clavarioides var. truncataの実生苗。難物との噂がありますがどうでしょうか? 現在は「飛蛮頭」(なんという名前だ!)Euphorbia clavarioidesと同種扱いされていますが、枝が水平に並ぶタイプです。ちなみに、truncataとは、ラテン語で断ち切られたという意味です。「玉扇」Haworthia truncataは、まさに'truncata'と言ったところです。

④最後は以前にEuphorbia handiensis、木更津Cactus & SucculentフェアではEuphorbia balsamiferaを購入したブースへ。
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Euphorbia viguieri var. capuroniana
これも一応は花キリンの仲間です。Euphorbia viguieri var. capuroniiとしているサイトが結構ありますが、おそらくはEuphorbia capuroniiとの混同なので誤りですよね。


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Euphorbia horrida var. norveldensis
正しくはvar. noorsveldensisです。var. norveldensisはネットでも出てきますから、どうやら誤った名前が流通しているみたいですね。また、ホリダがポリゴナの変種となったことから、2013年にEuphorbia polygona var. noorsveldensisとなりました。
しかし、ポリゴナ系はいつの間にか11変種もあることになりました。しかし、違いがよく分かりません。var. polygona、var. horrida、var. anopliaくらいは分かりますが、市販されている様々なタイプのホリダがどの変種にあたるのかさっぱり分かりません。ポリゴナ系を分類したD.H.Schnabelの論文を探してみます。

今回は冬型はほとんどなく、最近少ないパキポディウム実生苗も復活の兆しがありました。また、今回はユーフォルビアが豊富でしたから、アロエは沢山あったものの購入しませんでした。Aloe pseudoparvulaは結構気になりましたが、安い苗しか買わないと決めてきたので購入せず。原種ガステリアやアストロロバは相変わらず壊滅状態でしたが、初出店のブースで硬葉系ハウォルチアがまあまあありました。H. coarctataやH. viscosaあたりですかね。総評としては概ね満足で、色々見られて良かったです。しかし、朝方は肌寒かったものの、結構気温は上がり会場の熱気もあり正直暑かったです。この分だと夏のビッグバザールは恐ろしい地獄の暑さになりそうです。

しかし、ビッグバザールの会場となるTOCビルは3月に建て替えが始まるため、これからどうするのか気になっていましたが、夏と秋のビッグバザールもTOCで開催するようです。どうやらTOCビルの工事が6ヶ月~1年ほど延期となったことが原因とのこと。五反田TOCは行きやすくてよかったので、とりあえずはほっとしています。


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早いもので、すでに3月も半ばです。本日は五反田TOCで開催されている春のサボテン・多肉植物のビッグバザールに行っています。ところで、ここのところ春めいた暖かい日が続きますが、杉も春を感じているのか花粉もいよいよ増えてきて花粉症の私は苦しい毎日ではあります。しかし、少しずつ生長する多肉植物も出てきました。嬉しいやら辛いやら…

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Dendrobium lindleyi
1本だけ早く咲きましたが、続けて3本咲いて実に華やか。そういえば、デンドロビウムに限らず蘭は根元に偽球根(pseudobulbous)があり、栄養分を貯蔵します。蘭は着生するものが多いし、かなり特殊化した植物です。

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Gasteria baylissiana
蕾は膨らんでいましたがようやく咲きました。実にかわいらしい花です。自生地ではガステリアの蜜を吸いに来た太陽鳥により受粉します。日本ではガステリアの蜜を吸いに来る生き物はいるのでしょうか?


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Aloe albiflora
花茎が伸びてきました。アロエらしからぬ白い花が楽しみです。


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Euphorbia phillipsioides
冬に一度咲きましたから、これで二度目の開花です。花はユーフォルビアの中でも特に小さく目立ちません。

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Euphorbia phillipsiae
こちらも少しだけ開花。


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Euphorbia greenwayi
根元から伸びてきた新芽があっという間に生長しました。勢いがあります。


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Euphorbia begardii
葉はほとんど落ちましたが、花芽がいつの間にか出ていて、1つだけ急に開花しました。花色は徐々にピンク色になります。Euphorbia primulifolia var. begardiiでしたが、最新の論文ではEuphorbia begardiiとされ独立種としています。キュー王立植物園のデータベースでも、論文を受けて学名が変更されています。

最新のユーフォルビアの論文はこちらをどうぞ。


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Euphorbia imperatae cv.
花キリンは割と一年中花が咲いたりしますが、暖かいせいか生長が始まり花芽が沢山付いています。これからが楽しみです。それはそうと、こちらも最新の論文で学名が変わりました。Euphorbia milii var. imperataeから独立しています。いままでは、すべてE. milii系にまとめる傾向がありましたが、肝心のE. miliiとは何かは混乱しはっきりしていなかったようです。


3月は多肉植物のイベントが沢山ありますが、行くか否か悩みどころです。見るだけでも楽しいので、なるべく行きたいですが花粉症が酷いので引きこもりたくもなります。そういえば、今日はつくばでザワフェス・リユニオンという多肉植物のイベントが開催されています。つくば駅の近くですから行きやすいのもいいですね。しかし、残念ながらビッグバザールと被るので行けませんが、興味はあります。被らない日にまた開催されるなら、一度見に行きたいですね。ビッグバザールの報告は明日します。お楽しみに。


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花粉を運ぶのは誰か? 植物のポリネーター(花粉媒介者)については個人的に気になっており、過去にはアロエやアガヴェについて論文を調べて記事にしました。しかし、陸上植物のライフサイクルを考えた時、ポリネーターの働きにより種子が出来るだけでは駄目で、その種子が散布される必要があります。果実を動物に食べてもらい、あちこちで糞をして糞中の種子がばらまかれるタイプのものが多いでしょう。また、オナモミのようにトゲなどにより動物の体に付着して運ばれるものも割とあります。エライオソームという栄養分が着いている種子は、蟻に巣穴に運搬してもらうタイプです。また、Uncarinaは踏みつけ種子で、果実が脚に絡み付いて踏まれる度に種子がこぼれるなんていうタイプもあります。逆に動物を利用しない植物は多くは羽があり風で散布されます。また、ユーフォルビアは種子を弾け飛ばしますが、散布すると言っても対して距離ではありません。
このように、種子の散布は様々な方法があり、植物によって様々な工夫が見受けられます。最近はこの種子の散布が気になるところです。ということで、本日はその一例を調査した論文をご紹介します。それはLaura Yanez-Espinosa, Felipe Barragan-Torres, Alejandra Berenice Ibarra & Jaime Ivan Moralesの2019年の論文、『Dispersal of Dioon edule cycad seeds by rodents in tropical oak forest in Mexico』です。この論文ではメキシコのサンルイスポトシ州の熱帯オーク林でDioon eduleというソテツの種子の行方を追跡しています。

ソテツは中生代に豊富で多様性があり、コーンごと種子を草食恐竜が食べることにより、糞として種子を拡散したと言われています。恐竜は絶滅しましたが、現在のソテツの種子は誰が運んでいるのでしょうか?
まず、実際のソテツの種子は1~3cmと大きいので、重力で落下し親植物の近くに留まります。しかし、雨により分散し、または小川の流れに乗ることもあります。とはいえ、基本的に分散力は低い種子と言えるでしょう。論文では自動撮影により種子を運ぶ動物を観察しました。結果は4種類のネズミが、Dioon eduleの種子を持ち去りました。しかし、ソテツの種子には毒があると言われています。
実際にマウスにDioon eduleの種子を与えると、神経系にダメージがあり7日後に死亡したそうです。しかし、この実験はDioon eduleの種子のみを餌とした場合です。実際に様々なものを食べている場合には、それほど問題にはならないようです。ネズミの巣穴にファイバースコープを入れて、巣穴の内部に貯蔵された種子を観察しましたが、やはり齧られて食用とされていることが分かります。
さて、せっかくの種子が食べられてしまっては意味がないような気もしますが、実際にはあちこちに貯蔵した種子のほとんどは放置される運命のようです。日本でもリスやネズミがドングリをやはりあちこちに貯蔵しますが、そのほとんどは利用されません。巣穴は地上より湿り気があり発芽に適した環境です。しかも、ネズミの糞などで周辺環境は富んでいます。何より、親株から離れた場所に移動できるメリットは計り知れません。

ネズミの種類により種子に対する行動に差があります。小型のネズミより中型のネズミの方が、Dioon eduleの種子を積極的に巣穴に運びます。これは、どういう理由でしょうか? 単純にとらえるならば、小さいネズミは大きい種子を運ぶのが大変だからです。エネルギー効率を考えた場合、大きすぎる種子は運搬にかかるコストが高くなりすぎて非効率的です。自身のサイズに見合ったより小型の種子を運搬する方が良いということになります。逆に中型のネズミにとっては、Dioon eduleの種子を運搬することは大したコストがかからないのでしょう。しかし、論文では他の可能性にも言及しています。それは、種子の毒性についてです。今さら種子の毒性について蒸し返すのかと思われるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。小型のネズミにとっては、Dioon eduleの種子は毒性が高すぎるのかもしれません。なぜなら、Dioon eduleの種子を同じ量食べた場合、体重の重い中型のネズミにとっては許容量ですが、体重の軽い小型のネズミにとっては致命的かもしれないからです。小型のネズミにとっては、運ぶのが大変な割にほんの少しずつしか食べられない効率の悪い食べ物です。

以上が論文の簡単な要約と言うより、一部を抜粋したものです。実は論文にはオークのドングリと比較したりとか様々な要素が含まれますが、今回は敢えて省きました。それは、種子が運ばれることのメリット・デメリットと、種子を運ぶ動物のメリット・デメリットについて重視したからです。
ネズミは何もソテツのために種子を運んでいるわけではありませんが、結果的に種子は拡散されます。しかし、そのネズミもサイズによりメリット・デメリットを天秤にかけて、自身のためだけに種子を運ぶのです。自然の中に何とも言えない絶妙なバランスが存在することに、大変驚かされますね。


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普段は本ばかり読んでいるので、積み上がった本の山が出来てしまいました。仕方がないので整理していたところ、大昔に神保町の古本街で入手したサボテンの本が出てきました。昭和28年に刊行された『サボテン綺談』(伊藤芳夫/著、朝日新聞社)です。

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タイトルに綺談とありますように、様々なサボテンに関するエピソードが語られます。ここいらへんの話も大変面白いのですが、後半の日本におけるサボテン受容、あるいは需要について書かれた日本サボテン史が個人的に大変興味深く感じます。昔のサボテンの流行はどのようなものだったのでしょうか?

模索期 1573~1865年
サボテンの渡来は非常に古いようですが、徐々に本草学者の目に止まるようになりました。しかし、「草にあらず、木にあらず」だとか「草中の異物なり」などと、変わってるなあ位の感想だったみたいです。模索期末期には様々なサボテンが海外から入ってきたようですが、育て方が分からずに丈夫なウチワサボテン以外は枯れてしまったみたいです。

黎明期 1865~1912年
明治時代に入り海外との交通が開け、流行があったようです。サボテンの斑入物が大流行し、サボテンの品評会が開かれ、早くもサボテン業者が現れました。明治末期には日露戦争の好景気により、サボテンは流行し多くのサボテン業者が出てきました。

混乱期 1912~1925年
大正時代に入ると様々な階級に普及し、東京中心だったのが関西にも拡がり、大正末期には全国に拡がりました。様々なサボテンが輸入され各業者が名前を付けたので非常に混乱した状態でした。

黄金期 1925~1942年
昭和に入りますが、この時代には研究熱心な栽培家が現れ始めました。大きなサボテン業者も現れ日本中の業者がカタログを出していたようです。

空白期 1942~1950年
太平洋戦争突入によりサボテン栽培どころではなくなり、業者も鳴りを潜めました。

復興期 1950年~
終戦後の混乱から復興までですが、戦争により多くのサボテンは珍品・銘品含め失われました。しかし、サボテンも復興の兆しがあり、若い世代も入ってきて、各所に愛好団体ができて様々な催し物が開かれています。斑入り物も流行っているそうです。

この本の出版が昭和28年、つまりは1953年ですから、終戦からまだ8年しか経っていません。まさに復興期の最中に書かれたということがわかります。とはいえ、サボテンの本が出版されるのは需要があるからです。すでに、サボテン・ファンは沢山いたということなのでしょう。しかし、このようにサボテンの歴史を知ると、それ以降も気になってしまいます。この本が出版されてから現在までのサボテンの流行はどうなのでしょうか?  ここ10年くらいは多肉植物ブームで、塊根植物、エケベリア、アガヴェなど、次から次へと流行が移り変わり、サボテンは少数派です。しかし、裾野が広がったことからサボテン人口自体は増えているような気もします。多肉植物のイベントでは若い人が非常に多いので、サボテン界にも新しい風が吹いているのかもしれませんね。


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剣光閣はスペインのカナリア諸島原産のユーフォルビアです。現在地の情報については、論文を参照に割と詳しい解説をしたことがあります。

原産地の情報についてはこちらの記事をご参照下さい。
冬に入手したこともあり完全に休眠状態でしたが、最近は日中暖かいせいか新しいトゲが出てきました。春がやって来ているという実感を感じます。

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剣光閣はスペインのカナリア諸島原産ですが、分布はカナリア諸島で2番目に大きいFuerteventura島のハンディア(Jandia)半島にあるハンディア自然公園の保護区域内の2箇所しか知られておりません。非常に狭い範囲に生える固有種です。火山の堆積谷に育ち、気候は非常に乾燥し暑く強風が吹きます。Euphorbia canariensisやAeonium sp.と共に生育します。ハエ(greenbottle flies)により受粉するそうです。
剣光閣の学名は、1912年に命名されたEuphorbia handiensis Burchardです。種小名は自生地のハンディア半島から来たのでしょう。


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昨今、環境問題が声高に叫ばれてはいますが、中々どうして解決策が見つからない難題です。環境破壊や異常気象は植物の生育にも多大な影響を与えます。日本でも夏の暑さは徐々に酷くなり、熱帯のようなスコールがあったり、超大型台風が頻繁に発生したりと異変は続きますが、実際に冷夏・暖冬も含め農作物の被害は相当なものがあります。異常気象を含め気候変動は野生の植物にも様々な影響を与えるはずです。分かりやすい例では、温暖化によって高山植物の分布はかなり変動しているそうです。数十年も継続して調査されている山では、かなりダイナミックに分布や高山植物の種類が変動していることが分かりました。高山はある意味で極端な環境ですから、気候変動の影響を受けやすいように思えます。その極端な環境に適応しているので、高山植物は急激な変動には対応しにくい植物と言えるでしょう。同様に極端な環境に育つ多肉植物にも、気候変動は影響して来るはずです。本日は、そんな多肉植物の1つ、砂漠に生えるパキポディウムと気候変動の関係について考察したDanni Guo, Leslie W. Powrie, Danielle W. Boydの2019年の論文、Climate Change and Biodiversity Threats on Pachypodium Species in South Africa』です。

南アフリカ南部にはPachypodium succulentumとPachypodium bispinosumという2種類のパキポディウムが分布します。この2種類のパキポディウムは分布が重なり、一見して良く似ていますが、遺伝的にも近縁であることがわかっています。
気候変動は南アフリカにおいても重大な問題であり、特に降雨量の変動は元より乾燥地に生える多肉植物にとって深刻な脅威である可能性が高いでしょう。
さて、この研究では過去の南アフリカの気象データから、今後の気候変動をコンピューターでシミュレートし、現在の2種類のパキポディウムの分布をやはりコンピューターでシミュレートしています。


結論として、P. bispinosumは気候変動により大幅に生息地が減少することが分かりました。もともとP. bispinosumは生息域が狭いこともあり、急激に個体数が減少する可能性が高いようです。なぜなら、分布が広ければ環境も様々で中には対応出来る環境があるかもしれませんが、分布が狭いとそうはいかないでしょう。
逆にP. succulentumはそれほど生息地が減少しません。ある生息地は消滅しますが、代わりに現在P. succulentumが生息していない他の地域に分布が移動しています。生息地が広いことが幸いしているようです。
さて、気候変動のうちパキポディウムに影響を与える要因をピックアップすると、降水量の季節性、乾季の降水量、暖かい四半期の降水量が挙げられます。これらは正にも負にも影響します。重要なことは、パキポディウムに影響を与えるのは気温ではなく降水量の変動であるということです。

以上が論文の簡単な要約です。地球温暖化は何も気温が高くなるだけではなく、海水面が暖められて海流に影響したりと、蒸発した湿った空気が影響を及ぼしたりと、様々な影響があります。当然ながら、南アフリカの降水量にも影響が出てくるのでしょう。しかし、今回はパキポディウムに影響を与えうるであろう他の様々な要因については考慮されていません。論文の主張だけでは弱く、まだ絶滅のリスクについて語ることは難しいとしています。ただし、それは人間の環境に与える様々な負の影響も加算されることになりますから、パキポディウムの明るい未来を描くことは大変難しいことのように思われます。


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文庫クセジュはフランスの新書のシリーズですが、1941年に出版されている古くからあるシリーズです。日本でも1951年から白水社から翻訳されており、国内だけですでに1000点以上が出版されております。様々な内容の本がありますが、フランス独特?の癖が強くて読みにくいものが多く、一般的とは言えないかもしれません。
さて、気になる文庫クセジュはたまに購入していますが、『花の歴史』というタイトルの本を入手しましたのでご紹介します。1965年の刊行ですから、割と古い本ですね。


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あくまでも、当時のフランスの目の届く範囲の地域と出来事からなりますから、そのほとんどはヨーロッパとヨーロッパの植民地あたりの話が中心となります。内容は3部構成で、「古代の諸民族における花」、「芸術の中の花」、「花の歴史」からなります。
最初の「古代の諸民族における花」は文献や遺物から、ギリシャ、ローマ、エジプト、インドなどの古代に飾られたり植栽された植木な花を再現しています。次に「芸者の中の花」は、彫刻や絵画、文学等による花について語っています。
最後に「花の歴史」ですが、主にヨーロッパで流行した植物の話です。チューリップ・バブルの話やバラ、蘭もありますが、やはり気になるのはサボテンと多肉植物です。少し見てみましょう。

フランスではサボテンは19世紀から流行り始めました。特に第二帝政時代のメキシコ遠征により沢山のサボテンがもたらされました。しかし、それも長続きせず、19世紀末から20世紀初頭にはブームは過ぎ去ったようです。Ch.バルデにより1892年に出版された『フランスの園芸』には、サボテンはわずか一行しか記載がありませんでした。当時流行っていた菊や蘭、シダにかなりの部分を割いているそうです。しかし、それも短期間のことで、やがて愛好家が現れます。最初のサボテン愛好家協会は1890年にアンヴェルス(ベルギーのアントウェルペンのこと)に創立されました。ドイツは長い間サボテンの国になっていました。第二次世界大戦前にはサボテン熱は高まり、1935年にはサボテン協会の会員は2000人以上となり、主要な町にサボテン愛好家のグループがあったほどです。
1932年にはP.フルニエはフランスのサボテン趣味の再興を語っており、その理由を考察しています。曰く、「住居が狭くなり大抵の花は部屋で育てることは困難となったが、サボテンは置いた場所に満足している。その穏やかな不変の姿に接し、熱や苛立ちを鎮める楽しみを見つけている」とのことです。
著者はオプンチア(ウチワサボテン)は非常に丈夫だが、愛好家にあまり求められていないとしています。オプンチアは大きく育つので鉢植えで室内に置けないことが心配され、フランスの気候では花が咲きにくいことが不人気の原因のようです。ウニサボテン(Echinopsis?)は最も普通のサボテンで、栽培が容易く花を多く咲かせます。マミラリアは栽培が比較的易しく花が多く美しいことから、非常に評価されているということです。カニサボテンとクジャクサボテンは最も古くから知られたサボテンの1つで、Phyllocactus phyllanthoidesは夏の間は薔薇色の美しい花が沢山つき非常に良く  知られているそうです。
サボテンは現在では非常に細分化されましたが、はじめて学名がついたのはサボテンをすべて含むCactus属でした。この本が出版された当時はどうだったのでしょうか? 出てくる名前を現在と比較していませんが、結構変わっているものもありそうです。


さて、続いて多肉植物も少しだけ見てみましょう。Sempervivumのことを、山の岩壁に付着したアーティチョークのようと表現しています。ベンケイソウ科では、Sedum、Aeonium、Cotyledon、Crassula、Echeverie、Greenovia、Kalanchoe、Pachyphytum、Rocheaがあるとしています。メセン類は500種類、Agaveは300種類ほど知られているとしています。アオノリュウゼツランは地中海沿岸部や北アフリカ、アゾレス諸島、マデイラ諸島、南アフリカ、マウリチウス島、インド、インドシナで野生化しているそうです。Agave parryiやAgave utahensisはパリ平野でも生育しているとのこと。Agaveの近縁種としてYucca、Agaveに間違われる植物として約200種類あるAloeがあります。Sansevieriaは室内栽培植物として、またAstroloba、Gasteria、Haworthiaはフランスでもコレクションとして増えつつあるようです。euphorbes(Euphorbia)は不思議なほどサボテンに似ており、P.フルニエは「素人でなくても騙される」と述べつつ、800種類以上あるトウダイグサ科植物を分類しています。灌木性ユーフォルビア、柱状ユーフォルビア、メドゥーサ・ユーフォルビア(タコもの)、メロン形ユーフォルビア(E. meloformis、E. obesa)があるとしています。サボテン型のユーフォルビアはサボテンとして18世紀末にフランスに渡来しましたが、最近まで広まりませんでした。スタぺリアの仲間は200種類以上あり、時にサボテンに似ています。スタぺリアは開花時に乾いた音を出して破裂し、驚くほど大きい星形の肉質な花を咲かせます。しかし、不幸なことに死肉の臭いがしてハエを呼ぶので、部屋で栽培することは出来ないとしています。キク科にも多肉植物はあり、KleiniaとOthonna、Senecioが挙げられています。
以上のように多肉植物は現在の主要なものは概ねあったように思います。今では一般的なHaworthiaは当時のフランスではあまり出回っていなかったようですね。また、あまり導入されていない節があるユーフォルビアは、意外にも様々な形態のものが認識されていたことがわかります。


というわけで、58年前に出版された園芸書を少しだけご紹介しました。とはいえ、これは日本語版の出版年ですから、原版はもう少し遡るのでしょう。当時の認識は現在と異なることがありますが、意外とその差異が面白かったりします。サボテンや多肉植物以外の部分の方がヨーロッパでは園芸として長い歴史がありますから、実は今日ご紹介した部分以外の方が面白かったりします。「花の歴史」というタイトル通り、興味深いエピソードが語られます。ご紹介したいのは山々ですが、長くなってしまったので本日はここまでとさせていただきます。


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3月に入り寒暖の差が激しいなっています。朝晩は寒いのですが、日中はかなり暑くなったりします。これからは多肉植物たちの動きが活発になりそうです。3月は多肉植物のイベントも盛り沢山な上、そろそろ屋外の多肉植物置き場の整備もしなければなりません。今年の冬は何故か強風の日が多く、多肉植物置き場のビニールがビリビリに破けたので、張り替えなくては。あと、手狭になってきたので、置き場の拡張を計画中です。

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Aloe parvula
花もそろそろ終わりです。思ったより丈夫で良く育ちますから、来年の花も期待出来ます。


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Dendrobium lindleyi
非常に丈夫で放置していても毎年開花します。去年は4月に咲きましたが、今年は早いですね。やはり、今年の冬は暖かかったみたいです。あと花茎は3本出ていますから、まだまだ楽しめます。


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Ionopsis utricularioides
こちらは東京ドームで開催される世界ラン展で10年前くらい前に購入しましたが、毎年開花します。手がかからなくて楽でいい洋ランです。ヘゴに着生させて育てています。というのも、斜め上方向に新しい芽を出すため、鉢植えだと根が浮き上がってしまい鉢に入らないから育てにくいのです。


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群星冠 Euphorbia stellispina
花芽が上がって来ましたが、群星冠のトゲは花由来です。花が咲かないとトゲが出ません。去年は正月明けには開花しましたから、今年は非常に遅い開花です。群星冠はアフリカのユーフォルビアには珍しく非常に低温に強いため、あまり気温は開花に関係がないような気がします。群星冠はトゲがまばらになりがちです。実は密にトゲをつけるチャレンジ中ですから、新しいトゲが出てほっとしています。


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去年の開花は経緯を追っています。

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Gasteria baylissiana
花芽が膨らんで来ました。小型種なので花茎も短いようです。


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花は小さくてかわいらしいですね。

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Fouquieria columnaris
新しい葉が生えて来ました。Fouquieriaの中では非常に葉が柔らかいせいか、葉ダニが蔓延して葉が萎れて生長がいまいちでした。今年は気を付けたいものです。


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Fouquieria leonilae
正月明けに購入したので、ずっと葉なしでしたがはじめて葉がお目見えしました。

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Euphorbia gamkensis
緑豆くらいのサイズの苗でしたが、冬の間に小豆くらいにはなりました。

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Tulista marginata
葉が回転し始めました。生長すると葉の形が変わるでしょうから、これからが楽しみです。

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Mirabilis jalapa
葉が急激に伸びて来ました。「ミラビリス・ジャラパ」の名前で販売していますが、要するにただのオシロイバナです。何故かネットでは高額で販売されていましたから、あまりにバカバカしいので記事にしたことがあります。しかし、未だに高額で販売されているようです。自分で種を取ってきて撒いた方が早いし、直ぐに大きくなりますから、わざわざ買うものではありませんよね。


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以前、Aloe parvulaについて調べていた時に、嫌石灰植物という言葉を知りました。嫌石灰植物とはケイ酸植物とも言われるようです。最近、イネ科植物などケイ素要求性が高い植物があるという記事を書いたことがあります。取り込んだケイ素で植物は体を補強しています。逆にトマトはほとんどケイ素を吸収しませんが、どうやらトマトは石灰を吸収して体を補強しているみたいです。そのため、トマトはカルシウム要求性が高く、カルシウムが不足すると尻腐れになるそうです。また、バラやカラタチもトゲにカルシウムを蓄積しているようです。しかし、残念ながら日本ではアルカリ性土壌ではまともに植物を育てるのは難しいようです。それは、どうしてでしょうか?

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Aloe parvula

ここで、森林総合研究所の2011年のレポートを見てみましょう。それは、香山雅純、山中高史、青木菜保子による『石灰質土壌に移植されたカシ2種の外生菌根菌の接種効果』です。九州には石灰岩地が多く石灰を採掘しています。そして、鉱山の採掘跡地は緑化が義務付けられているそうです。しかし、そもそも石灰岩地は自然に樹木が生えにくい土地ですから植樹が難しいのです。なぜなら、多量のカルシウムにより土壌が強いアルカリ性となっており、その影響で鉄やマンガン等の微量元素の吸収が抑制され、リンがカルシウムと結合してしまい植物が利用出来ないのです。そのため、石灰岩地の植生は構成が異なります。樹木では、低い標高の石灰岩地の主要樹種であるアラカシや、標高の高い石灰岩地にみられるウラジロガシが知られています。アラカシやウラジロガシはブナ科の植物ですが、ブナ科の植物は菌類と共生関係を結んでおり植物の根に菌糸がまとわりつく菌根を形成します。石灰岩地では菌類菌が分泌する酸により、カルシウムと結合したリンを溶かして植物が活用出来るようなるそうです。
さて、この研究ではアラカシとウラジロガシのドングリを植えて、菌根を形成する茸であるツチグリとニセショウロを培養したものを接種しました。①茸を接種しないグループ、②ツチグリを接種したグループ、③ニセショウロを接種したグループで、10ヶ月栽培しました。1グループあたり10本の個体数で実験しています。土壌のpHは7.03で弱アルカリ性です。

気になる結果は以下のようになりました。
ウラジロガシ
①接種していないグループでは、葉は0.5倍と減ってしまいました。幹と枝は2.5倍と微増、根は1.0倍と変化無しでした。
②ニセショウロを接種したグループでは、葉は1.1倍、幹と枝は2.1倍、根は1.8倍とすべて微増しました。
③ツチグリを接種したグループでは、葉は5.1倍、幹と枝は9,9倍、根は6.4倍とすべて著しく生長しました。

アラカシ
①接種していないグループでは、葉は0.7倍と減ってしまいました。幹と枝は1.4倍、根は1.2倍と共に微増しました。
②ニセショウロを接種したグループでは、葉は3.0倍、幹と枝は3.6倍、根は2.5倍とすべてで増加しました。
③ツチグリを接種したグループでは、葉は7.6倍、幹と枝は9.8倍、根は6.6倍とすべて著しく生長しました。

というように、アラカシもウラジロガシも、菌根菌の接種により生長が促進されました。ここから2つのことが読み取れます。1つは、石灰岩地に生える=アルカリ性土壌に強いと思われるアラカシやウラジロガシが、菌根菌がいないとまともに生長出来ないということです。というよりも、菌根菌と共生しているから石灰岩地で育つことが出来ていたのでしょう。2つ目は、ニセショウロよりツチグリの方が効果的であったことです。これは、ニセショウロがアルカリ性土壌に弱いので、ニセショウロ自体が上手く育たないのでしょう。もしかしたら、嫌石灰植物は共生する菌類がアルカリ性に弱いということもあり得るのかもしれません。
しかし、植物と菌類との共生関係は思った以上に重要であることがわかります。サボテンも菌類との共生が有効であるという論文を昨日記事にしました。他の様々な多肉植物も知られていないだけで、地下では菌類と共生関係を結んでいるのかもしれませんね。



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多くの野生の植物は菌類と共生関係を結んでいます。積もる落ち葉を剥がすと、茸の菌糸が一面に張りめぐらされています。森の木々は地下世界に広がる菌糸により、繋がっていたりします。これを菌根と呼んでいます。菌根は不思議なもので、植物の根が菌糸の服を着ているようなもので、植物と菌類はお互いに養分をやり取りしています。この菌根は思われていたより重要であることが近年わかりつつあり、様々な研究が活発になされているようです。さて、そんな菌根ですが、サボテンに対する影響を調べた研究がありましたのでご紹介します。Domenico Prisaの2020年の論文、『Gigaspora Margarita use to improve flower life in Notocactus and  Gymnocalycium plants and roots protection against Fusarium sp.』です。

この研究ではGigaspora margaritaという菌類をサボテンと共生させて、サボテンの生育とサボテンの病原菌に対する影響力を見ています。まずは、実験に使用したサボテンは、Gymnocalycium baldianum、Gymnocalycium mihanovichii、Notocactus eugeniae、Notocactus leninghausiiです。共生菌のGigaspora margaritaはグロムス門に分類されます。グロムス門は植物の8割と共生可能なグループで、アーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は、植物の根の組織内に菌糸が侵入して深く結びついており、主にリン酸を集めて植物に与えています。

栽培10ヶ月後、Gigaspora margaritaのあるグループとないグループで比較したところ、Gigaspora margaritaのあるグループでは、4種類のサボテンは高さと円周、地上部と根の重量、花と果実の数、花の寿命がすべて高い値でした。これは面白い結果です。根の重量があるということは根の張りが良いということです。当然、サボテンの生長にプラスでしょう。さらに、花数については、サイズが大きく栄養状態が良ければ、花数も増えるのは道理です。しかも、花の寿命が伸びていますから、花数の多さも加算されて、結果として果実も増えています。花の寿命が長いと、それだけ受粉のチャンスが増えますからね。

次に病原菌に対する反応です。この研究では、フザリウム(Fusarium)という植物感染性のカビを接種しています。フザリウムには沢山の種類がありますが、植物寄生性のカビが複数含まれます。フザリウムは実はまとまりのあるグループではありません。菌類には完全世代と不完全世代があり、この2つの世代を繰り返しています。完全世代とは有性生殖により胞子を作る世代で、不完全世代とは分裂や出芽など無性生殖する世代のことです。このうち、不完全世代しか知られていない菌類を不完全菌と呼んでいました。不完全菌は特徴で分類することが難しく、わからないものは取り敢えず不完全菌とされてしまっていたのです。というのも、完全世代と不完全世代では姿が全く異なることが多く、しかも違う植物に寄生します。それぞれの世代がすでに発見されていても、それが同じ種類であるとはわからなかったりします。とまあ、話が脱線しましたが、Gigaspora margaritaの有無で違いはあるのでしょうか?
結果は、Gigaspora margaritaがあることにより、サボテンの死亡率の大幅な低下が見られました。G. baldianumでは死亡率3.61%が0.78%、G. mihanovichiiでは死亡率2.84%が0.21%、N. eugeniaeは死亡率2.46%が0.21%、N. leninghausiiは死亡率0.84%が0.21%になりました。つまり、アーバスキュラー菌根の存在により、有害なフザリウムの被害を減らすことが出来たのです。
植物に感染するカビは特に農作物で良く調べられており、アーバスキュラー菌根菌の存在によりFusariumだけではなく、Aphanomyces、Cylindrocladium、Macrophomina、Phytophthora、Pythium、Rhizoctonia、Sclerotinium、Verticillium、Glomusといった病原菌に対しても防御する効果があることがわかっています。アーバスキュラー菌根菌はフザリウムだけではなく、様々な病原菌に対してもサボテンを守ってくれる可能性があると言えるのではないでしょうか。今後、研究が進展した暁には、サボテン用のアーバスキュラー菌が販売される未来がやって来るかもしれませんね。


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ビスピノスム(Pachypodium bispinosum)はアフリカ大陸原産のパキポディウムです。パキポディウムはマダガスカルで非常に多様化しましたから、やはりパキポディウムと言えばマダガスカルが本番といった感じは否めません。最近のコーデックス・ブームを牽引してきたグラキリウスは、やはりマダガスカル原産で現地球が大量に輸入されて来ました。しかし、アフリカ大陸原産のパキポディウムは今一つ目立たない存在です。しかし、これはこれで面白いので、本日はアフリカ大陸原産のビスピノスムをご紹介します。

ビスピノスムは外見的にはマダガスカル原産のパキポディウムとはかなり異なります。マダガスカルのパキポディウムは枝が太くずんぐり育ち、花が咲くと分岐します。しかし、ビスピノスムは細い枝をヒョロヒョロ伸ばし、開花とは関係なく分岐しアチコチから枝が出てきます。ですから、ビスピノスムは伸びすぎた枝を剪定しながら、まるで盆栽のように育てます。これは、P. succulentumと共通する特徴です。実はビスピノスムはスクレンツム(サキュレンタム)と見た目通り近縁で、花が咲かないと中々区別がつきにくいと言います。ビスピノスムとスクレンツムは南アフリカ南部に分布が重なり、遺伝的にも近縁です。ちなみに、遺伝的解析の結果では、ビスピノスムとスクレンツムは近縁で、この2種類に一番近縁なのはP. namaquanumということです。さて、では良く似たビスピノスムとスクレンツムの違いは何かというと、まずは花が異なります。また、スクレンツムはトゲか短いと言われています。実際に見てみます。
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Pachypodium succulentum
トゲは短く、葉の裏には毛はありません。


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Pachypodium bispinosum
トゲは長く華奢。葉の裏には少しだけ毛があります。


ビスピノスムは南アフリカの東ケープ州に分布しますが、通常は石の多い日当たりの良い場所に見られます。ビスピノスムとスクレンツムは冬は氷点下でも耐えることが出来るそうです。栽培する上では塊根を露出させて育てますが、自生地ではほとんど埋まった状態が通常のようです。我が家のビスピノスムの生育の様子を見てみます。
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2022年2月。去年の冬は葉がすべて落ちました。

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2022年7月。根元から新しい芽が吹きました。

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2023年3月。根元の枝はやたらと枝が伸びました。
購入時の写真も撮ったはずですが、なぜか見付からず…。枝は伸びましたが、思ったほど太りませんでした。とは言うものの、地下の塊根はどうなっているのか気になります。今年は植え替えるので非常に楽しみです。

ビスピノスムの学名は、1782年に命名されたEchites bispinosus L.f.から始まります。Echitesはフロリダ、中米、カリブ海地域に分布するキョウチクトウの仲間です。1837年にはPachypodium glabrum G.Donという命名もありましたが、先に命名された種小名である'bispinosus'が優先されるため、せっかく正しいくパキポディウムとしたのに認められません。1838年にはBelonites bispinosus (L.f.) E.Meyと命名されました。ちなみに、Belonitesはビスピノスムとスクレンツムのためだけに命名された属です。
さて、ビスピノスムがパキポディウムとされたのは1844年のことでした。つまり、Pachypodium bispinosum (L.f.) A.DC.です。良く見ると語尾が'-us'から'-um'に変わっています。属名が変更される時に語尾が変わることもありますが、どういう規則なのかはよくわかりません。ここら辺はラテン語そのものの規則もあるでしょうから、何やら難しそうですね。ちなみに、ビスピノスムを最初に命名したL.f.とはLinne filiusの略ですが、この'filius'は名前ではなく「息子」という意味で、学名のシステムを作ったCarl von Linneの息子です。しかし、Carl von Linneとvon Linneの息子も同じ名前なので、区別するために「リンネの息子」という表記になっているようです。
種小名の'bispinosum'は、'bis-'は「2回」とか「2度」という意味ですが、'pinos'は「松の木」ですが、正直よく分からないなあと思いました。しかし良く考えたら、これは'bis + spino'=「2本のトゲ」ですよね。実際にビスピノスムのトゲは2本がセットで生えてきます。


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ケイ素と言ってもあまりぴんとこないかもしれませんが、実はケイ素自体は地球の地殻の30%弱を占めるくらい大量に存在します。ガラスや水晶は二酸化ケイ素ですから、実は大変身近な存在です。半導体やシャンプーなどに入っているシリコンはケイ素が原料です。流石に植物には関係なさそうですが、大いに関係があります。身近な例ではイネ科の植物には大量のケイ素が取り込まれており、細胞の中に小さな水晶の結晶としてケイ素が存在します。イネ科の雑草が生い茂る草地に入ると皮膚に切り傷がついたりしますが、これは取り込まれたケイ素が原因で切れるのだと言われています。という訳で、植物とケイ素には関係があります。それはどんな関係か、昭和62年(1987年)に出版された『ケイ酸植物と石灰植物』(農文協)を参考にして見ていきましょう。

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日本の土壌は火山灰由来のものが多いのですが、雨が多く火山灰は透水性が良いため、土壌中のケイ素は溶脱してアルミニウムの割合が高くなります。アルミニウムはリン酸と結合してしまうため、地力を著しく落とします。そういう意味においては、日本の土壌は農作物を育てるのに適さないと言えます。土壌から流出したケイ素は河川水に溶け込みますが、 この溶けたケイ素を上手く利用したのが水田です。

そもそも、稲の栽培にはケイ素は不可欠です。なぜなら、水田にケイ素が不足すると生育が遅れ、さらに稲が倒れてしまい健全な生育が困難となるからです。ですから、地力が落ちた水田には、製鉄でできるスラグ(鉱滓)を投入します。スラグの主成分はケイ酸カルシウムですから、非常にケイ素が豊富です。ケイ素が豊富であると、茎や葉がしっかりするだけではなく、いもち病などに強くなることがわかっています。実は稲の葉や茎の15%以上がケイ素からなるわけで、稲は選択的にケイ素を吸収していることがわかります。

稲は強力にケイ素を吸収する希な例ですが、調べると多くの作物にケイ素は関係してきます。例外としてトマトがあり、ほとんどケイ素を吸収しませんから、ケイ素を与えても生長が良くなることはありません。しかし、実験的にケイ素が存在しない条件でトマトを育てると生育に問題が出てくるそうです。全くないというのも良くないのでしょう。さて、他の例を見てみるとキュウリが上げられています。キュウリは稲ほどではないにしろ、ある程度はケイ素を吸収するみたいです。実験的にケイ素を除くと生育に問題が出て、ウドンコ病にかかりやすくなりました。逆にキュウリはケイ素を与えるとウドンコ病に強くなります。実際に私もキュウリにケイ酸カルシウムを与えたところ、葉のサイズが大きくなり厚みが出て、茎に生えるトゲが非常に強くなって触ると刺さって痛いくらいでした。しかも、毎年発生するウドンコ病が出なくなったことには驚きました。あとは、個人的にはオクラの生育が非常に良好になった経験はあります。

という訳で植物もケイ素が必要なのだという話でした。しかし、この本はかなり専門的で盛り沢山な内容ですから、上記の内容は触りに過ぎません。このような良質な本は少ないので大変貴重です。
さて、私が稲の中にあるケイ素を知ったのは、実は園芸関係の話ではなく考古学でした。考古学では稲自体は腐ってしまうため、出土しません。たまたま炭になった炭化米がたまたま見つかった場合のみ、古代に稲作を行っていたと判断されてきました。しかし、上手く炭になった米があって、それがたまたま見つかることは中々ありません。炭化米が見つかっていないから、稲作が行われていなかったとは言いがたいのです。研究者が考えたのは、稲の中にあるケイ素を探すことです。イネ科植物の中には結晶となったケイ素があり、これをプラント・オパールと呼びます。イネ科と言っても種類によりプラント・オパールの形が異なり見分けることが可能です。そこで、遺跡の周囲を調べると、高い密度でプラント・オパールが見つかる場所が見つかったのです。昔は稲穂は地際から刈り取らず、穂刈りしていました。ですから、水田には稲の葉や茎由来のプラント・オパールが大量に残されることになります。このような手法で古代の水田跡を見つけているという話は大変な驚きで、大したものだと感心したものです。
この本を読んだことで、考古学と園芸が繋がりました。本を読んでいるとこのような偶然があり、より読書を楽しむことが出来ます。園芸関係で良い本がありましたら、また紹介させていただきます。


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2年くらい前は、まだコーデックス・ブームの余韻が残っていたのか、パキポディウムの苗があちこちに売っていました。五反田TOCのビッグバザールでも、今よりパキポディウムの実生苗が沢山並んでいました。現在のアガヴェ・ブームはまだ来ていない頃合いです。私もビッグバザールや大型園芸店で何種類かパキポディウムの実生苗を購入しましたが、今日はそのうちの1つであるPachypodium brevicalyxをご紹介します。まずは、我が家のP. brevicalyxの苗の様子から。

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2022年3月。トゲばかりが目立ちます。

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2022年7月。春先の新しい葉に加え、真夏にも新しい葉が生えてきました。

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2022年9月。葉は大きく強い印象です。

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2023年1月。まだ葉は落ちません。

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2023年2月。葉はだいぶ落ちましたが、まだ残っています。どうやら、春までこのまま持ちそうです。しかし、幹はかなり太りました。

P. brevicalyxがはじめて命名されたのは1934年のことで、P. densiflorumの変種とされました。つまりは、Pachypodium densiflorum var. brevicalyx H.Perrierです。1949年には独立種とされ、Pachypodium brevicalyx (H. Perrier) Pichonとされました。しかし、現在はPachypodium densiflorumと同種とされています。P. densiflorumとは葉が先細りとなり葉柄が短く、萼が短いなどの特徴の違いがあります。
'brevicalyx'とは、ラテン語で'brevis'=「短い」と'calyx'=「萼」という意味です。
しかし、P. densiflorumの花のサイズはかなり変動があり、P. brevicalyxはその範囲に入ってしまうということです。分布は標高200mにあるP. densiflorumの自生地のわずかに北西部ということで、P. densiflorumと分布が連続していることからも同種である可能性が高くなります。

しかし、P. brevicalyxは遺伝子が解析されていませんから、外見的特徴だけから判断するのは危険です。最近はあまりパキポディウムの遺伝子解析をしている論文は見かけませんから、P. brevicalyxの分類はまだ確定していないように思われます。また、そもそもP. densiflorum自体が多数の系統がある可能性があるため、P. brevicalyxの立ち位置はどうなるのか今後の研究の進展を待ち望んでおります。



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新型コロナが流行する前は神保町の古本街を度々散策していました。図鑑や理科系の書物が多い店ではサボテンの本もありました。その時に入手したのが、昭和61年に刊行された『サボテンの観察と栽培』です。

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ニュー・サイエンス社のグリーンブックスというシリーズで、ほんの100ページほどの小冊子です。理系の様々な分野の入門書で、この刊で131冊目ですからけっこう続いているシリーズです。

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内容は「サボテンとはどんな植物か」、「サボテンのおもな種類」、「サボテンの栽培」、「サボテンの管理」、「サボテンの繁殖」という5つの章からなります。1章の「サボテンとはどんな植物か」は、やはり当時はわからないことも多くあっさりとしています。原産地や当時の分類に触れています。2章の「サボテンのおもな種類」は、上の画像のように非常に簡単なものです。写真は少しだけあります。まあ、頁数が少ないため仕方がないのでしょう。

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昔懐かしの木製フレーム。

3章、4章、5章は育て方に関する部分です。3章では、まずサボテン栽培の要点は以下の4点としています。
①春先によい用土でていねいに植えつける。
②生長に必要な温度が得られる所に置く。
③十分に日照を与える。
④植物の欲しいときに灌水する。
詳細な解説が続きますが、実に当たり前のことです。しかし、突き詰めれば中々万全の体制を整えるのは難しいものです。栽培設備、用土、鉢、肥料、灌水、温度と通風、日照と遮光と続きます。
4章はサボテンの季節ごとの管理について述べられています。移植の時期と方法、病害虫についても詳しく解説があります。
5章はサボテンの繁殖についてです。一般的な挿し木、接ぎ木、実生の方法が解説されます。


内容的には以上の通りです。100ページ程度ですから種類の紹介は少ないのですが、栽培の基礎については十分な内容だと思います。しかし、今は園芸資材も進歩し種類も増え、ネットで簡単に誰でも入手出来るようになりました。例えば、様々な種類のアルミの簡易フレームが販売されていますから、新しく始める人で木製フレームを自作する人はいないでしょう。とは言うものの、サボテンの栽培方法自体はそれほど変わっていないでしょう。サボテン自体は変わりませんからね。という訳で、古いものですが今でも基本を学ぶには良い本だと思います。


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