ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

もう9月も終わりですが、予報ではどういうわけか、しばらくは30℃を超える日もあるようです。しかし、大分過ごしやすくなってきました。多肉植物たちの様子はどうでしょうか?

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メロフォルミス錦 Euphorbia meloformis cv.
2020年夏に鶴仙園で購入したメロフォルミス錦です。当時は単頭でしたが、子が出来てかなり大きくなりました。

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Euphorbia lenewtonii
今年の6月のビッグバザールで入手したばかりですが、大部枝が増えてきました。枝が混んで面白い形になるようです。

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奇怪ヶ島 Euphorbia squarrosa
今年の春のビッグバザールで入手した実生苗です。枝が順調に伸びています。まだ塊根はツメの先ほどのサイズです。

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Euphorbia silenifolia
2020年の4月にファーマーズ三郷で購入。冬型の難物ですが、なんとか3年維持してきました。まあ、育っている実感はありませんが。


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Euphorbia sp. nova somalia hordio
謎の未記載種です。今年の3月にルームズ大正堂八王子店で購入しました。かなり生長は良いのですが、垂れ下がりながら伸びる面白いユーフォルビアです。地を這いながら育つのでしょうか? 不思議ですね。

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Euphorbia gottlebei
去年の夏にヨネヤマプランテイションの即売会で入手しました。枝分かれしない面白い花キリンです。根元から叢生するはずですが、まだ単頭です。


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Euphorbia erinacea
2020年に鶴仙園で購入しましたが、あまり育った実感に乏しいですね。去年は乾かしすぎて外の葉が枯れてみすぼらしくなりました。今年は水をたっぷり与えて、あまり乾かさないようにしたらきれいに仕上がりました。ちなみに、唐錦(A. melanacantha)の変種とされることもありますが、現在では独立種とされています。


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Haworthia triangularis
去年の秋にあったタナベフラワーのイベントで入手しました。この名前は園芸名で、おそらくはAloe triangularisから来ています。A. triangularisとは、現在のHaworthiopsis viscosaに相当します。大型でざらつかないタイプなのでしょう。


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亀甲竜 Dioscorea elephantipes
越谷のレイクタウンにある園芸店で購入しました。今はもうないみたいです。
10年くらい育てている亀甲竜ですが、ツルが伸びてきました。イモは地中に埋めれば早く大きくなりますがコルク層は発達しません。地上に出して育てればイモの育ちは遅くなりますが、コルク層が発達します。私の亀甲竜は、サイズの割にはまあまあコルク層が発達しています。最近はイモは大きいのにコルク層が薄いものは良く目にしますね。


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Agaveに引き続き、CITES2018を取り上げます。本日はメキシコの乾燥地を中心に分布するFouquieriaについてです。

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Fouquieria Kunth, 1823

Fouquieria科の唯一の種であるFouquieria属には11種類あり、メキシコと米国南部の乾燥地に見られる乾性低木です。CITES2018には3種類が記載されています。
★Fouquieria fasciculataは高さ4〜15mになる木本で、幹の下部は直径60cmまで膨れます。枝は先細りし、赤いトゲがあります。幹は基部で膨れ、円錐状に細くなるのではなく、急激に細くなります。CITESの附属書Iに記載されています。
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Fouquieria fasciculata
             (Humb. ex Roem. & Schult.)  Nash, 1903
異名 :
・Cantua fasciculata Humb.
                ex Roem. & Schult., 1819

・Bronnia spinosa Kunth, 1823

★Fouquieria purpusiiは高さ4mになることがあり、先細りになる薄緑色の幹にコルク色のマーキングがあります。CITESの附属書Iに記載されています。
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Fouquieria purpusii Brandegee, 1909

★Fouquieria columnarisはFouquieria最大種で、高さ20mになります。幹は緑色がかります。花弁は黄色が多く、柱頭は花弁より長く伸び、花は散房花穂ではなく末端穂につきます。幹は基部だけではなく、全体的に太くなります。CITESの附属書IIに記載されています。
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Fouquieria columnaris (Kellogg)
      Kellogg ex Curran, 1885

異名 :
・Idria columnaris Kellogg, 1863
・Fouquieria gigantea Orcutt, 1886

用途は、造園や観賞用の鉢植えとして、多肉植物愛好家に求められています。CITESのデータベースによると、人工繁殖した個体の取引は非常に少なく、その大部分は米国、スペイン、ドイツ、チェコ共和国により輸出されています。大きな現地球は米国から入手できる可能性がありますが高額です。
附属書Iに記載されたF. fasciculataとF. purpusiiは、生きている個体か否かを問わずすべての取引が規制されています。附属書IIに記載されたF. columnarisは、種子、花粉、切り花、組織培養された植物を除いて、取引が規制されています。
Fouquieriaは種子と挿し木から育てることが出来ますが、生長は非常に遅く広く普及しているとは言えません。種子や苗はオンライン及び、ヨーロッパや米国のナーセリーから入手出来ます。

以上がCITES2018のFouquieriaの項目です。日本ではFouquieriaの人気はイマイチですが、F. fasciculataの苗が、イベントで高額で取引されているのを見たことがあります。幹が太らず観賞価値が低いF. diguetiiやF. macdougaliiは、何故か園芸店に苗が並んだりもしました。イベントではF. columnarisやF. fasciculataの現地球も稀にありますが、やはり非常に高額です。しかし、パキポディウムやオペルクリカリアほどには流通はないようですね。日本国内に限って言えば、違法取引が問題となるレベルの人気はなさそうです。
私はFouquieriaの実生苗、あるいは挿し木苗を購入しています。しかし、中々育ちが遅く、見られるようになるまではまだまだ長い時間がかかりそうです。


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外来種は日本でも問題となっていますが、この問題は国内のみならず世界中で起きています。昔から木材やコンテナに紛れて害虫が侵入したり、ペットとして持ち込まれたアライグマやミシシッピアカミミガメが捨てられて野外で繁殖してしまっているケースなどがあります。しかし、近年ではオンライン取引により、個人的に植物を輸入するケースが増えて来ました。しかし、その中には違法なものも含まれている可能性があります。現状ではオンライン取引に対する監視の目がゆるいため、違法取引の最大の懸念点となっています。ということで、本日は植物のオンライン取引について調査した、Jacob Maherらの2023年の論文、『Weed wide web: characterising illegal online trade of invasive plants in Australia』をご紹介します。

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ホテイアオイ Pontederia crassipes
一般的にはEichhornia属とされますが、現在はPontederia属とされているようです。
『Nova genera et species plantarum』(1823年)より。


オーストラリアはすでに29000種以上に及ぶ外来植物が導入されており、在来植物は深刻な影響を受けています。そのため、オーストラリア政府は厳格な輸入措置とリスク評価を実施しています。管理措置は州政府が行い、管轄区域におけるその分類群の取引の禁止を「宣言」します。宣言された植物は、供給、販売、輸送が禁止され、違反に対しては罰金が科せられます。しかし、ウェブ取引では実店舗がなくでも良く、簡単に郵送されたりと、従来の措置を回避する可能性があります。国際郵送はあまりにも多いため、すべてを調べることは困難です。

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Orbea variegata(上)
ガガイモ科の多肉植物で、スタペリアと同様に星型の花を咲かせます。
『Hortus botanicus panormitanus』(1877年)より、Stapelia atrataとして記載。

著者らはウェブサイトの植物取引広告を1年間監視し、植物の取引を記録しました。結果、1年間で235162件の植物広告を収集し、10000件はいずれかの州で取引が禁止されている種類でした。最も収集された違法植物は、ウチワサボテンと水草でした。ウチワサボテンは、Opuntia microdasys(金烏帽子)やOpuntia monacantha(単刺団扇)、Opuntia ficus-indica(大型宝剣)、あるいは他のウチワサボテンも取引されました。水草は、Eichhornia crassipes(ホテイアオイ)やLimnobium laevigatum(アマゾントチカガミ、アマゾンフロッグビット、現在の学名はHydrocharis laevigata)が一般的でした。また、頻繁に検出された侵入植物は、Zantedeschia aethiopica(オランダカイウ、Calla)やGazania、Hedera helix(セイヨウキヅタ、アイビー)、Lavandula stoechas(フレンチラベンダー)、Rubus fruticosus(ブラックベリー)、Orbea variegata、Azadirachta indica(インドセンダン、neem)でした。

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大型宝剣 Opuntia ficus-indica(左)
『The illustrated dictionary of gardening』(1884-1888年)より。


ウチワサボテンは簡単に増やすことが出来ますが、トゲがやっかいなため、増えすぎると最終的には処分に困ることになります。その結果、ウチワサボテンは投棄されることがあるようです。また、ウチワサボテンの処分に困り、売却したいと思っている人もいるようです。

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Calla(左上)
『Beautiful flowers』(1890年)より。


以上が論文の簡単な要約です。
オーストラリアは有袋類など固有種の宝庫です。同じように植物も固有種が多く、独自の生態系があります。オーストラリア政府も固有種を守るために、規制はかなり厳しくしているようですが、現実問題として違法な植物の取引は行われてしまっています。ウチワサボテンなどは鉢に植えていなくても、節で切ってお手軽に発送可能です。簡単に挿し木で発根しますし、乾燥地のオーストラリアでは野外でもよく育ちます。実際にオーストラリアでウチワサボテンが増えすぎて、対応に困っているという報道を見たことがあります。1年中野外でサボテンを育てられるというのは羨ましい話ですが、環境が合いすぎるというのも、それはそれで困ったことのようです。

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金烏帽子 Opuntia microdasys(右下)
しかし、刺さって抜けない芒刺のせいで、増えすぎた金烏帽子を取り除くのは大変そうです。
『The Cactaceae: description and illustrations of the catus family』(1919年)より。


さて、この違法オンライン取引はオーストラリア特有の問題ではないでしょう。インターネットは世界中のあらゆる国を結んでいますから、違法オンライン取引はすべての国で行われているのものと考えても良いかも知れません。日本ではどうでしょうか? 私にはその実態は分かりませんが、法的な問題は別にして、風潮としては違法取引に対する問題意識は薄いように感じられます。外国語の苦手な日本人は海外との取引は少ないような気もしますが、実際は分かりません。
最後に蛇足ですが、論文のタイトルの「Weed wide web」はURLのwww、つまり「world wide wide」をもじったものでしょう。wwwは世界中のウェブサイトをハイパーテキストでつなぐシステムのことらしいのですが、実質これはインターネットと同義となっているようです。ですから、「Weed wide web」は、インターネットを介したオンライン取引を示唆しています。しかし、この「Weed」とは雑草のことですが、実際には取引されるのは観賞用の植物であり、実態に合わないような気もします。よく調べると、「Weed」には雑草から転じて、庭や畑の望ましくない植物を指す意味もあるようです。ウチワサボテンは庭に植えられている時は好ましくても、敷地から逸出してしまえば生態系を脅かす「望ましくない植物」になってしまうということでしょう。


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以前、アロエとユーフォルビアについて、ワシントン条約(CITES)の附属書に記載された種を取り上げたことがあります。本日は、アメリカ大陸の主にメキシコから米国に分布するAgaveについてご紹介したいと思います。参考にしたのは、2018年に発行されたCITES2018です。早速、見てみましょう。

Agaveは250種以上からなり、うち2種類はCITESに記載されています。
・Agave parvifloraは附属書Iに記載されており、国際的な取引は禁止されています。直径15〜25cmの小型のロゼットを形成し、ワックス状にコーティングされ、白くマーキングされた濃い緑色の葉を持ちます。葉の縁には白いフィラメントがあります。花茎は高さ1.8mになり、淡い黄色の花を咲かせます。
A. parvifloraは観葉植物として栽培されます。分布はアリゾナ州南部とメキシコのソノラ砂州北部に限られるため、米国とメキシコの両方の法律で保護されています。
CITESの貿易データベースによると、A. parvifloraは生きた植物と種子が取引されています。ワシントン条約の許可した栽培場で栽培されたA. parvifloraの、主な輸出国はタイとドイツです。単に栽培個体の主な輸出国はオランダで、次がドイツとメキシコです。種子は米国から中国、日本、カナダ、オランダ、台湾、チェコ共和国へ輸出されています。


・Agave victoriae-reginaeは附属書IIに記載されています。葉は10〜15cmで、最大50cm程度の小型種です。緑色の葉の縁に沿って独特の白いマーキングがあります。葉はコンパクトな螺旋状のロゼットを形成します。花茎は高さ4mほどで、赤味がある様々な色の花を咲かせます。
A. victoriae-reginaeは観葉植物として人気があり、乾燥地の造園に利用されます。最も耐寒性が強いにも関わらず、湿潤な温帯地域での造園には適していません。
A. victoriae-reginaeの取引は人工的に繁殖させた植物で、生産量は少数です。主な輸出国はイタリア、スペイン、タイ、オランダです。


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Agave victoriae-reginae
『The Gardener's chronicle』(1875年)より


以上がCITES2018のAgaveの項目です。A. parvifloraは「姫乱れ雪」、A. victoriae-reginaeは「笹の雪」として日本でも良く知られた小型種です。Agaveはワシントン条約に記載され、国際取引が規制されている種は少ないようです。ただ、原産地における野生植物の違法採取はどの程度多く脅威なのかが気になります。
日本ではアガヴェは流行真っ盛りと言った感もありますが、タイプ違いや園芸種が人気なようで、現地球を求める動きは見られません。より強いトゲの個体を求めたり、美しい覆輪がある品種が出来たりと、園芸的にも発展しているようです。最近では特に若い人たちが積極的に実生を行っているようですが、この流れは原産地の植物の保全の観点からも推奨出来ます。


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植物の花は受粉し種子を作るための器官です。豊富な蜜や花粉は、花粉を運び受粉を手伝ってくれる受粉媒介者への報酬です。しかし、中には花そのものを食べてしまったりして、受粉を妨害してしまうような動物もいます。これを、とりあえず「送粉系撹乱」と呼ぶことにしましょう。さて、そんな送粉系撹乱の例を探してみたところ、Lophophoraを調査した論文が見つかりました。それは、Maria Isabel Briseno-Sanchezらの2022年の論文、『Biotic interaction prior to seed dispersal determine recruitment probability of peyote (Lophophora diffusa, Cactaceae), a threatened species polmllinator-dependent』です。Lophophoraは受粉にとって重要な蜜や花粉が少ない植物と言われています。報酬が少ない場合、送粉系撹乱を受けやすいような気もしますが実際はどうなのでしょうか?

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Lophophora williamsii
L. diffusaの良い図がなかったのでL. williamsiiで代用。
Echinocactus williamsiiとして記載。
『Gesambescheibung der Kakteen』(1898年)より


Lophophora diffusaはチワワ砂漠の固有種です。L. diffusaは自家受粉せず、必ず相手が必要な他家受粉花です。開花期間は長く、甲虫やバッタ、ミツバチが訪れます。果実は小さく受粉後2ヶ月ほどで成熟しますが、種子は少なく1つの果実に40個未満です。種子はエライオソーム(蟻に運んでもらうための栄養)があるため、蟻により拡散しているようです。また、種子は水が染み込まず水に浮くため、雨により流される可能性もあります。

試験はメキシコの標高1438mにあるQueretaro州Penamillerで実施されました。植生はLarrea tridentata、Fouquieria splendens、Mimosa sp.、Bursera sp.などの低木が優勢です。
L. diffusaの花の蜜量を測定しましたが、22%の花は蜜がありませんでした。最も蜜量が多い花でも0.36μL(0.00036mL)に過ぎず、平均は0.054μLであり0.1μLを超えることはほとんどありませんでした。
花には甲虫(Acmaeodera=フナガタタマムシ属)と数種類のミツバチ(Macrotera、Lasioglossum、Ashmeadiellaなど)が訪れました。観察した年により甲虫が優勢の場合もミツバチが優勢な場合もありました。また、受粉率は年により変動が激しいものの、結実はほとんどが開花した花の半分以下でした。


乾燥地では水の少なさがストレスとなり、蜜の生産に悪影響を及ぼします。蜜の減少は花と花粉媒介者の相互作用を減らし、受粉率を低下差させる可能性があります。また、L. diffusaの花粉媒介者の訪問率は非常に低く、訪問者の少なさが受粉率の低さの原因かも知れません。他とは研究では、L. diffusaの花に人工的に花粉をつけると、種子が20%も増えることが示されています。

以上が論文の簡単な要約です。
L. diffusaは蜜の量が少なく、蜜がない花まであることが分かりました。そのことが花粉媒介者である昆虫にとって魅力的ではないことは明白で、訪問者の少なさは種子生産に悪影響を及ぼしています。論文では水の少なさがストレスとなるとありますが、水の量と蜜の量には相関があるのでしょうか。そうであるならば、栽培している個体は蜜量が豊富ということになります。しかし、本来L. diffusaは乾燥地に適応しているはずです。乾燥化が進み蜜生産量が減少したというのなら分かりますが、環境に適応した結果がただ示されただけのような気がします。要するに、沢山の種子を作れない代わりに、蜜の生産を最小限にしているのかも知れません。蜜が少なかったりなかったりしても、花が咲いていればとりあえず昆虫は訪れるでしょう。群体性のミツバチなら蜜がなければ仲間を呼びませんが、単独性のミツバチなら花が咲いていれば騙されて花を訪れるでしょう。花粉を目当てに訪れることも考えられますが、花粉媒介者とは基本的に一過性の付き合いなのかも知れませんね。



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先日のビッグバザールの購入品を植え替えました。用土は様々で、乾き具合が把握出来ないため、冬や真夏以外では、なるべく早めに植え替えをするようにしています。根の状態はどうでしょうか? 

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Euphorbia hedyotoides
赤玉細粒は思うよりジメジメするので、個人的には苦手です。

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根の状態は悪くありません。
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少し塊根を埋め気味にしました。根が細いので、しばらくは水を多めにやるつもりです。

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Euphorbia beharensis
挿し木苗ですが、根はどれくらいあるでしょうか。用土は水はけが良さそうですね。

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根はチョロリとあるくらいです。まあ、問題ありません。

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Aloe calcairophila
赤玉細粒を単用するのは割と心配になります。

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根は動いていません。かなりの加湿状態でした。
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排水の良い用土に植えたので、根は動いてくれるでしょう。

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Aloe saundersiae
こちらも湿っぽい感じがします。

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根はかなり加湿でしたが、良く動いているようです。水が好きなのでしょうか? 良く見たら、子株か3つほどついていました。
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植え替えましたが、花は咲いてくれるでしょうか? 

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白磁盃 Aloe pratensis
こちらも根が心配。

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これは駄目ですね。加湿で少しやられ気味です。しかし、根元から新しい根が出ていますから、まあ大丈夫でしょう。
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根が太く荒いタイプみたいですから、大きめの鉢に植えました。しかし美しいアロエですね。

私は水はけ重視の用土で植えています。ですから、非常に乾くのが早いのは良いのですが、乾き過ぎて萎れがちになります。ですから、成長期は頻繁な水やりが必要で、やや面倒ではありますが。


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鈴木正彦・末光隆志 / 著、『「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ』(中公新書)が刊行されました。生物は利己的であるというのは基本的なことですが、共生関係など利他的な戦略は、ただ利己的であるよりも生存に有利であったりします。そんな、共生関係について生物界を広く見渡し紹介した1冊です。内容的には植物だけではありませんが、植物も扱われており、以外と本では触れられない話が多いように思われます。内容について、植物関連部分の概要だけ少しご紹介します。

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①細胞内共生説
ミトコンドリアや葉緑体は元来は細菌であったという細胞内共生説は、1970年のリン・マーグリスの『真核生物の起源』にまで遡ります。すぐに認められたわけではなく、中々受け入れられなかったとはいえ、細胞内共生説について学術レベルの内容を一般書籍で解説した本はあまりなかったと言えます。葉緑体の誕生は植物の誕生でもあるわけですから、生物の進化の歴史では非常に重要なイベントです。マーグリスの時代より研究は進んでいますから、最新の情報を得ることが出来ます。

②虫媒花と昆虫の進化
当ブログでも、サボテンや多肉植物と花粉媒介者の関係についての論文をいくつかご紹介してきました。しかし、論文は狭い範囲の的を絞った話でしたから、その基本的な有り様についてはわかりませんでした。本書では、様々な実例を挙げて花粉媒介の有り様を解説しています。共進化やアリ植物を始めとした、植物と昆虫の関係性を広く解説しており勉強になります。

③菌根菌と植物の関係
野生の植物は菌類と共生関係を結んでいるものが非常に多く、乾燥地に生えるサボテンや多肉植物も例外ではありません。私も何度か記事にしたことがあります。根粒菌の話だけではなく、蘭菌の話やアーバスキュラー菌の話もあり、植物と菌類の共生関係の基本的な部分を学ぶことが出来ます。

内容的には動物や菌類の話も沢山あります。しかし、このように植物だけを分けないという書き方は少し珍しいですね。研究者は基本的に1分野に突出するため、広く扱うのは中々難しいように思われます。本書は2人の専門が異なる研究者の共著で、お互いに内容を補っています。読んでいて感じたのは、植物もまた生物界の一部分に過ぎないのだという当たり前のものでした。しかし、基本的に生物学の一般書籍は、動物は動物、植物は植物に絞って書かれがちですから、その当たり前の意識が薄れがちです。私などはサボテンや多肉植物の論文に前のめりで入り込んでいるため、そのことをついつい忘れがちです。一度立ち止まって、広く見回してみるのも必要なことだと思いなしました。おすすめします。


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本日は待ちに待ったサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。一体、どのような面白い植物に出会えるか、楽しみにしていました。
ビッグバザールは朝早いので寝坊することもしばしばでしたが、今回は開場が10時といつもより遅いため、開場前に到着しました。相変わらず9月に入っても暑く、汗を拭きながらの開場待ちでした。

しかし、9時20分頃から整理券を配布と言っていましたが、すでに配り終えていたようで、一般待機列に並びました。今回は開始時間が遅いため、皆さん早く来たみたいですね。

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今回はいつも以上の混雑で、中々会場に入れませんでした。出店もいつもより多かったわけですが、残念ながら個人的には今回はイマイチでした。単純に私好みのものが少なかっただけとも言います。
私の好きなユーフォルビアは手持ちにあるものばかりでしたね。基本的に3000円以下しか買わないようにしていますから、塊根性のユーフォルビアは見るだけです。アストロロバ、ハウォルチオプシス、ツリスタ、ガステリアも駄目でした。パキポディウム苗は沢山ありましたが、現在は集めていません。あと、今回はアロエが少なくてあまり選ぶ余地がありませんでした。
全体的には大きな塊根・塊茎植物があちらこちらに並ぶのはいつものことです。アガヴェはあちこちにありました。相変わらず人気なようです。エケベリアを沢山並べるブースが2、3あり、こちらも人だかりがありました。ハウォルチアも結構多く、禾が美しいタイプもあちこちにあり、ちょっと気になりました。ただ、見てもあまり分からないため、もう少し勉強してからにします。

さて、本日の購入品はこちら。
今回はブースが多いせいかいつもと並びが異なり、混雑も重なったせいか少々戸惑いました。今回はお馴染みのブースからは買わず、多分初めての2 つのブースから購入しました。
まずは、ユーフォルビアを始めとした塊茎・塊根植物の苗を並べているブースへ。安いユーフォルビア苗とフォウクィエリア苗を購入。

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フォークイエリア・プルプシー
Fouquieria purpusiiです。プルプシイの苗は初めて見ました。なんと、
Fouquieriaはこれで9種類目になります。あと2種でコンプリートですが、ネットでは買わずに今まで通りにイベントでの偶然の出会いに期待することにします。

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ユーフォルビア・ベハレンシス
Euphorbia beharensisです。挿し木苗なので塊根は出来ませんが、姿が面白いので購入。

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ユーフォルビア・ヘディオトイデス
Euphorbia hedyotoidesです。可愛らしい塊根植物です。

お次はDyckiaやケープバルブが並ぶブースへ。こちらでは小さなアロエ苗を購入。最近は柔らかいタイプの小型アロエが好みです。
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Aloe calcairophila
Guillauminiaとされたこともあるマダガスカル原産のアロエ。葉が回転せず2列性のまま育つのでしょうか?

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Aloe sandersiae
調べても出てこないと思ったらスペルミスがあり、正確にはA. saundersiaeでした。かつては、Leptaloeとされていたグラスアロエです。

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白磁盃 Aloe pratensis
有名種ですが初めて見たのでうっかり購入。高地性アロエなんでしょうかね?


さて、今回はいつも以上の混雑具合で、何やら疲れました。好みの多肉植物は少なかったため、いつもより購入は控えめです。また次がありますから、無理して買うこともありませんからね。これから涼しくなっていきますが、多肉植物のイベントはあるのでしょうか? 情報収集が下手なのでイベントに気付かない可能性もありますが、出来ればあちらこちら見て廻りたいものです。というわけで、9月のサボテン・多肉植物のビッグバザールでした。


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国際多肉植物協会(I. S. I. J)の主催するサボテンや多肉植物の販売イベント、「サボテン・多肉植物のビッグバザール」がいよいよ明日(2023年9月18日)開催されます。関東最大級の多肉植物系イベントです。普段目にしない珍しい植物に出会えるチャンスです。
TOCビルが解体される予定だったのですが、資材費高騰だったか色々あったようで延期されています。それでも今年度が最後でしょう。協会も例年よりビッグバザールの回数増やしてますね。しかし、TOCビルは五反田駅から近く非常に便利だったわけですが、来年の夏とかどうなるのか気になります。電車で行きやすい場所だったらいいんですけど。
さて、いつものように入場料500円は準備しといて下さいだとか、開場前にキープするなとか色々ありますか、今回は変わった部分もあります。いつもは、9時開場で8時20分から整理券を配布していました。しかし、今回は開場が10時と遅く、整理券の配布も9時20分からですからお気をつけ下さい。


さて、今回のビッグバザールは行けるか直前まで分かりませんでした。仕事が入る可能性があったのですが、なんとか仕事が日曜日になるように調整しました。良かった良かった。前回のビッグバザールは、風邪を引いてしまい体調不良でしたから1周ぐるりと回って帰りましたが、今回は体調も万全です。じっくり見てくるつもりです。
ここで、過去のビッグバザールの購入品がどれだけ育ったか、ちょっとだけ見てみましょう。上の画像が購入時で、下が現在の画像です。

冬のサボテン・多肉植物のビッグバザール
 (2021年11月)
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Gymnocalycium prochazkianum ssp. simile VoS 1417
大分育ちましたね。塊根性ですが、購入時はまだあまりちゃんと根が張っていないとのことでした。白い粉を吹くタイプなので、日照に強いだろうと思い、あまり遮光していません。

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Pachypodium makayense
非常に太りましたが、葉が茂りすぎて何だか分かりませんね。今年、初めて開花しました。



②春のサボテン・多肉植物のビッグバザール
   (2022年4月)
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女王錦 Aloe parvula
購入時は大分寒さに当たっていたようで、真っ赤でした。赤味が抜けるのに半年以上かかりました。現在は葉も増えて絶好調です。ちょうど、花茎が上がっています。

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Haworthiopsis koelmaniorum
時期的にあまりキレイではありませんが、かなり良い形に育ったように思えます。

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Agave multifilifera
おまけでいただいたアガヴェ。ようやくアガヴェ感が出て来ました。


③夏のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2022年6月)
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Euphorbia gymnocalycioides
平たい形に育っています。難物と言われていますが、今のところ問題ありません。


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Gasteria vlokii
ガステリアは生長が遅いのですが、葉が1回転しました。後は花が咲いてくれたら嬉しいのですが…


④秋のサボテン・多肉植物のビッグバザール
    (2023年9月)
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Haworthiopsis nigra IB 12484
ニグラは大分積み重なってきましたね。地下茎から出てきた子株もニグラの顔つきになってきました。


⑤冬のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2022年11月)
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Euphorbia moratii
とにかく葉の勢いがよく、見違えるように育ちました。根元はかなり太くなっていますから、来年の植え替えが非常に楽しみです。

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Euphorbia handiensis
カナリア諸島原産のユーフォルビアです。よく開花します。


⑥新年のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2023年1月)
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Fouquieria leonilae
よく育っていますね。とはいえ、まだ1年目なので太くはなっていません。これからです。

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Euphorbia greenwayi
タンザニア原産なので難しいかなと思いましたが、それほど気難しくありませんでした。



⑦春のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2023年3月)
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Euphorbia woodii
よく育っていますね。本体のサイズが明らかに変わりました。


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Fouquieria fasciculata
こちらも非常に勢いが良いです。伸びすぎた枝はいずれカットしますから、挿し木したくなりますが、太らせるために来年まで伸ばしっぱなしで行きます。



⑧6月のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2023年6月)
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Gymnocalycium ragonesei
まだ、入手してから3カ月なので目立った違いはありません。ただ、購入時は根があまり張っていませんでしたが、今は非常にしっかりと根を張りました。

さて、明日のビッグバザールでは、どんな多肉植物が見られるでしょうか? 今回は特にターゲットを決めずに行きます。何か面白いものが見られるでしょうか? 楽しみですね。


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最近、イベントや園芸店でウチワサボテンを以前より目にするようになりました。流通の兆しでしょうか? 思うにゲオメトリクスや武蔵野などのテフロカクタスが先鞭をつけたような気もします。しかし、ウチワサボテンの仲間はよく似ており、見分けるのは中々困難です。ただし、新しい枝を重ねる特徴から一目でウチワサボテンと分かります。
ウチワサボテンはOpuntia属とされてきましたが、やがていくつかの属が独立しました。しかし、ここいら辺の事情はよく分かりませんから、少しずつ調べてみることにしました。本日はウチワサボテンの分類について書かれた、Matias Kohlerらの2021年の論文、『"That's Opuntia, that was!", again: a new combination for an old and enigmatic Opuntia s. l. (Cactaceae)』をご紹介します。

Opuntia schickendantziiは、Catamarca & Tucumanの資料に基づいて1898年に記載された古くて謎めいた種で、Cylindropuntia亜属とされました。種の説明は、アルゼンチン北西部の山岳地帯とボリビアに沿って分布している、緑色で光沢のある枝、トゲのあるアレオーレ、エメラルドグリーンの柱頭を持つ黄色の花などの特徴で示されました。命名後は形態学的特徴から、Cylindropuntia属、Austrocylindropuntia属、Salmiopuntia属で暫定的に扱われました。しばしば、「地位が不確定(incertae sedis)」とされました。

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Opuntia schickendantzii
『The Cactaceae vol. 1』(1919年)より


2012年に遺伝子解析によりO. schickendantziiがBrasiliopuntiaのグループであることが示され、2014年にBrasiliopuntia schickendantziiが提案されました。しかし、地理的にO. schickendantziiとBrasiliopuntiaを結びつける形態学的特徴はありません。さらに、研究で使用された資料は、アリゾナのBoyce Thompson樹木園の「Lion's Tongue」と呼ばれる栽培された個体由来であることが判明しました。

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Brasiliopuntia brasiliensis
『The Cactaceae vol. 1』(1919年)より


著者らは2006年から2019年にかけて、南アメリカ南部の主要な生態地域を網羅するフィールドワークを実施しました。採取されたウチワサボテンの遺伝子を解析しました。解析結果を以下に示します。

               ┏━━━━Opuntia spp.
               ┃
           ┏┫        ┏━Tacinga spp.

           ┃┗━━┫

           ┃            ┗━Brasiliopuntia brasiliensis
           ┃
           ┃                ┏S. salminiana1
           ┃            ┏┫
           ┃            ┃┗S. salminiana2
           ┃        ┏┫
           ┃        ┃┗━S. salminiana3
           ┃       

           ┃    ┏┫┏━O. schickendantzii
           ┃   
┃┗┫
           ┃   
┃    ┗━S. salminiana4
           ┃
┏┫
       ┏┫┃┗━━━Tunilla spp.           
       ┃┗┫
       ┃    ┗━━━━Miquelliopuntia miquelii
   ┏┫
   ┃┗━━━━━━Consolea
   ┫ 
   ┗━━━━━━━Out group


※「spp.」とは複数種を含むという意味です。

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Salmiopuntia salminiana
『The Cactaceae vol. 1』(1919年)より

遺伝子解析の結果から分かったことは、O. schickendantziiはSalmiopuntiaに含まれるということです。さらに、4つの産地から採取したSalmiopuntia salminianaは3個体はまとまりがありましたが、1つの個体はO. schickendantziiと近縁でした。
ちなみに、2012年に解析された「Lion's Tongue」は、Brasiliopuntiaに含まれることが分かりました。このBoyce Thompson樹木園のウチワサボテンは野生のO. schickendantziiと比較した結果、特徴がまったく異なることが明らかになりました。このタイプのウチワサボテンは栽培されたものが世界中で野生化しており、オーストラリアやスペインなどでも誤ってO. schickendantziiの名前で報告されています。このウチワサボテンは「Lion's Tongue」という名前で市販されていますが、起源は不明であり交配種である可能性もあります。


以上が論文の簡単な要約です。
この論文は、あまり情報がないOpuntia schickendantziiがSalmiopuntiaに属するということを示したものです。このように、少しずつ研究は進んでいます。形態学的な分類から遺伝学的な分類に徐々に移行しつつあります。Opuntiaは分解され、現在のウチワサボテンはOpuntia sensu stricto(狭義のOpuntia)となっています。ウチワサボテンの仲間全体は今どうなっているのでしょうか? これからも、徐々に調べていくつもりです。



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常々、サボテンや多肉植物の原産地の環境を詳しく知ることができたら、栽培する上で何かしらの参考になるのではないかと考えたりもします。しかし、残念ながらサボテンや多肉植物の原産地の情報というものは、調べてもよくわからないものが多いように思われます。原産地の環境を再現出来るでもなし、試行錯誤するしかないと言われてしまえば、それまでかも知れませんけどね。まあ、純粋な興味からも知りたいとは思います。とは言うものの、よくよく考えたてみると、乾燥地が原産のサボテンや多肉植物が、まったく異なる環境の日本で育つというのも不思議な話です。サボテンや多肉植物は、どの程度の環境の違いならば許容出来るのでしょうか? その回答になるかは分かりませんが、メロカクタスの本来生える環境とは異なる土壌で栽培してその影響を調べた、Maxlene Maria Fernandes & Jefferson Rodrigues Macielの2023年の論文、『Adaptive potential of Melocactus violaceus Pffeiff (Cactaceae) to clay soils』をご紹介しましょう。

現在、地球温暖化による海面上昇が懸念されており、まず起こることとして海岸線の破壊が挙げられています。海岸線に近い沿岸地域の植物の生息地が短時間で減少してしまうかも知れません。例えば、ブラジル沿岸のrestingaと呼ばれる砂地の沿岸植物が危機にさらされる可能性があります。restingaの植物群落は、草本から森林まで、いくつかの植物相からなります。restingaは海との距離に大きく影響され、高い塩分、高温、強光、強風、栄養不足、貧者な水などに対処するために、植物は適応を示します。Melocactus violaceus Pffeiffは、restingaの絶滅危惧種の1つです。M. violaceusはrestingaと川の砂丘、つまりは砂地に生えるサボテンです。特定のタイプの土壌に適応した植物は、分散力が限られます。しかし、沿岸地域の都市化に伴い、砂地の環境を失った樹木が粘土質の土壌に進出していることが観察されています。同じrestingaの白い砂地に生えるM. violaceusはどうでしょうか?

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Melocactus violaceus
Cactus melocactoidesとして記載(1923年)。


著者らはM. violaceusの種子を採取し発芽させました。発芽180日後、3種類の土壌で育てました。1つ目は砂と堆肥を等量、2つ目は粘土と堆肥を等量、3つ目は砂が1/4と粘土が1/4と堆肥が1/2とした中間のものです。栽培は180日間行われ、苗のサイズが測定されました。
栽培の結果、M. violaceusの苗の生長は、砂≧砂+粘土>粘土でした。砂質土壌がM. violaceusの実生にどって理想であることが分かります。粘土質土壌でも定着する可能性はありますが、実生の初期生長に制限を課します。砂質土壌は一般的に栄養素に乏しく、生える植物は根系が特殊化しています。M. violaceusも砂粒に強く付着する非常に発達した根系を持っています。
このような根の特殊化はDiscocactus placentiformisなどの他の種類のサボテンでも見られ、根が砂粒との付着と吸収面積を増加させる物質の放出がおきる「砂結合」と呼ばれる機能を持ちます。砂結合という適応を示す植物は、リンの取り込みに不可欠なカルボキシラーゼやホスファターゼを大量に放出します。砂結合は窒素ではなく、砂質土壌ではリンの制限に適応しています。


以上が論文の簡単な要約です。
単に環境の違いだけではなく、根の特性が環境適応の結果として異なるのですから、土壌の違いはクリティカルに生長に響くというのは納得のいく話です。とはいえ、著者らの試験では粘土質土壌でもまったく育たないわけでもありませんでした。これは、環境破壊による生息地の減少に対し、M. violaceusの環境適応への可能性を示したという趣旨なのでしょう。しかし、残念ながらそう上手くは行かないかも知れません。M. violaceusが本来の砂質土壌から追い出されて、砂質土壌ではない地域への移動をしようとしたとしましょう。その場所には環境適応した生態系がすでに存在するはずですから、後から入り込むM. violaceusは元来環境適応した植物と競争しなければなりません。果たして、出来上がった生態系に入り込むことが出来るでしょうか? 



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サボテンに限らずですが、育てている鉢植えの植物の名前というものは、我々趣味家を悩ませるものです。札落ちで名前が分からないという悩みだけではなく、純血種か雑種かすら判別が難しいことがあります。ギムノカリキウムなどは、雑種が蔓延しすぎて国内の種や品種が信頼出来ない状況に陥ったこともあります。今でも、LB2178は雑種が盛んに作られ、それらがホームセンターで堂々と「LB2178」の名前で販売されてしまっています。もはや、国内のLB2178は信頼性が皆無な状態であり、趣味家が育てている個体が本物かどうかは誰にも分からないでしょう。
混乱の元は考えなしの雑な交配と、正しい名札をつける意識の薄さがあります。サボテンは原産地では希少なものが多く、ワシントン条約で国際取引が制限されています。サボテン栽培は希少植物の保存という意味もありますから、正しい名前も保存されなくては意味がありません。本日はそんな趣味家とサボテンの名前について考察したTristan J. Davisの論文、『Don't tell me, show me: the importance of maintaining data in cultivated plants』をご紹介します。

情報は大事
多くの科学的分野と異なり、サボテンと多肉植物の学術的進歩は愛好家に依存してきました。そのため、正確な情報が含まれたコレクションには、植物の分類学や保全にとって意味があります。しかし、サボテンや多肉植物の愛好家と話すと、所有する植物の情報を保存していない様々な言い訳をよく耳にします。植物の名前のような基本的な情報さえ、負担が重すぎると考える人もいます。このような考えは、植物を純粋に審美的なものとして育てたい人には受け入れられますが、それらの人が希少植物に手を出し始めると問題が生じます。個体数を減らしている希少植物に対しては、その情報を取得して保存することに責任を感じるべきです。

学名の変更
植物の学名は変わることがあるため、愛好家は分類学者を非難したりします。とはいえ、元来分類学は絶えず変化する可能性があるものです。しかし、名前が変わる度に最新の学名に名札を変更する必要はありません。なぜなら、分類学には変更の文書化がなされているためです。植物に適切な名前が書かれている限り、いつでもその後に変更された名前を知ることが出来ます。学名が変更される度に名札を変更することを好む人もいますが、必要ではありません。学名が変更される度に名札を書き換えるなら、元々の名前も併記するべきです。ある植物が亜種だとか変種とされたり、後に独立種となったりすることはよくあります。この時に、元の情報が失われるとその植物が本来何を指していたのか分からなくなってしまいます。

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Loxanthocereus(右下)

学名の誤り
そもそも名前に誤りがある場合もあります。例えば、Karel Knizeの種子コレクションではペルーのSamneから採取されたBorzicactus samnensis F. Ritterとされる植物が配布されてきました。B. samnensisは紫色の花を咲かせます。しかし、著者が育てたところ、赤橙色の花を咲かせました。特徴的にはLoxanthocereusです。産地情報から調べると、SamneからはLoxanthocereus parvitesselatus F. Ritterが分布していることが分かりました。Knizeは同じ地域から採取された他の植物とコレクションを混同した可能性があります。

入手経路とコミュニティ
どこで、いつ、誰から入手したのか、という情報はあまり評価されていません。しかし、これは最も簡単に入手可能な情報です。
また、愛好家同士のコミュニケーションの促進にも役立ちます。植物の情報は愛好家による植物に対する理解を高め、関心を持つ愛好家コミュニティによる教育にも役立ちます。


疑わしい名前
著者は誤った名前で販売されている珍しいサボテンを見つけました。Siccobacatus estevesii、Pilosocereus chrysostele、Spephanocereus leucostele、Browningia hertlingiana、Oroya peruvianaなどです。
さらに、一見して正しい種に見えたとしても、似たような特徴の別種があるのかも知れません。基本的に重要な特徴は花ですから、未開花個体を適切に識別出来たと確信することは出来ません。また、栽培環境は自然環境とは異なるため、姿が異なることもあります。

インターネット上の怪しい情報
ウェブ上の情報は不正確で誤解に満ちているため、役に立たず混乱を招くだけです。オンラインコミュニティで「専門家」とされるような人たちは、正当な理由もなく古い考えや反証された識別法に固執しています。

サボテン愛好家と研究者
情報の維持は保全にとっても重要です。正確な情報を持つ植物園の植物たちは貴重です。適切な産地情報がある植物は、植物の原産地への再導入の取り込みにも使用可能です。
また、愛好家の育てているサボテンを用いた研究もあります。例えば、Copiapoaの産地情報から気候変動にどのように反応するのかを評価する研究が知られています。
サボテン愛好家の育てている植物の情報の保存は、絶滅が危惧されている植物にとって明らかに重要です。また、資金不足に悩ませられている科学者たちにとっても、重要な研究対象となります。サボテンの大多数が気候変動、環境破壊、密猟により重大な危険にさらされていることを考えると、情報を維持する努力をするべきでしょう。


最後に
学名は常に変わる可能性があります。私のブログでは、学名の変遷を扱った記事がかなり多いのですが、経験上1種類の植物に数十もの異名があることは珍しくありません。情報が増えたり、新たに詳細な研究がなされれば、これからも学名は変更されるでしょう。我々趣味家からしたら、学名は外見上はとても不安定なものです。しかし、新基準の学名が提唱された場合、過去に命名された学名と同一でありそれらは異名である旨が記載されます。ですから、分類学者は学名がどう変更されようが、その情報に簡単にアクセス出来るため、我々趣味家のように惑わされることはないのです。
対して我々趣味家は、論文の情報を追跡するのは中々ハードルが高いように思われます。論文は公的な意味合いもあり基本的に無料で一般公開されているものがほとんどです。しかし、最近は有料の論文が多くなってしまっています。私も相当な数の論文を諦めました。しかも悪いことに、ウェブ上の情報は入り乱れており、誤りが目立ちます。信頼のおけるサイトを探すのも一苦労です。何か学名が気になる、分からない、最新情報にアップデートしたいと考えられている方も多いでしょう。

この論文では情報の重要性を語っていますが、私の管理方法は3つからなります。1 つはラベルです。ラベルには購入時に記載された学名と、あれば和名、さらに入手年月日を記入しています。2つ目はノートへの記録です。ノートにイベントや園芸店の名前と訪れた日、購入した植物の名札に記入された名前、現在認められている学名を記入します。3つ目はこのブログです。ラベルの日付を見れば、ブログやノートから入手したイベントが割り出せる仕組みとなっています。手っ取り早いのは、ブログで日付で検索したら簡単に情報が出て来ます。ブログは写真つきなので便利です。とはいえ、電子データは消えてしまう可能性がありますから、一応はノートも予備として記録しています。ご参考までに。



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マダガスカルと言えば、花キリンなどの固有のユーフォルビア、固有種のアロエ、パキポディウム、DidiereaやAlluaudia、着生ランなど、とにかく珍しい植物の宝庫というイメージです。しかし、一般的にマダガスカルと言えばキツネザルをイメージするかも知れません。私もDidierea-Alluaudia林に住むキツネザルは、果たしてあのトゲトゲの幹に掴まって平気なんだろうかと、余計な心配をしたりもしました。さて、そんな中、キツネザルと植物の関係について書かれた興味深い論文を見つけましたのでご紹介します。それは、Jen Tinsmanらの2017年の論文、『Scent marking preferences of ring-tailed lemurs (Lemur catta) in spiny forest at Berexty Reserve』です。

キツネザルのマーキング行動
キツネザルはすべての霊長類の中で、最も複雑なマーキング行動を行います。群れのナワバリや、配偶者へのアピール、同じ性別の中での順位など、様々な社会状況に香りを使用します。過去にワオキツネザルで実施された研究では、マーキングをする際の特定の植物に対する選好は見られませんでしたが、垂直な茎に対する強い選好が見られました。しかし、観察されたのは雨季の森林内で、樹上での行動でした。ワオキツネザルは乾季には、乾燥しトゲだらけのDidierea-Alluaudia林に移動します。乾季ではマーキングする植物に選好はあるのでしょうか? 

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ワオキツネザル  Lemur catta
『Histoire phyrique: naturelle et politique de Madagascar』(1890年)より


ワオキツネザルに好みあり
ワオキツネザルが出産する乾季に、Berenty保護区で観察されました。雌6頭、雄7頭、若い雄2頭の計15頭の群れを追跡しました。著者らはマーキングの跡の調査と、100例の実際のマーキング行動を観察しました。
調査では1534属の植物を確認しましたが、最も頻繁にマーキングしたのはUncarinaでした。Uncarinaは調査地域の植物の6%を占めるに過ぎませんが、マーキングされた植物の65%を占めました。Albizia、Azadiractha、Catharanthus、Celtis、Fernandoa、Moringaも、よりマーキングされました。逆に、Alluaudia、Commiphora、Euphorbiaは個体数に比較してマーキングされませんでした。

選ばれる理由・選ばれない理由
実際のマーキング行動の観察では、その65%が分岐した植物を選んでいました。Uncarinaの85%は二股に分岐しているため、ワオキツネザルに好まれているのかも知れません。
AlluaudiaやCommiphoraはトゲがあるため、避けているのかも知れません。また、ユーフォルビアはトゲがない滑らかな外見上はマーキングに適した植物でも、ワオキツネザルは避けました。ユーフォルビアの刺激のある乳液を嫌がっているのかも知れません。
興味深いことにUncarinaはの樹液は独特の臭気があります。Uncarinaの臭気がマーキングの効果に影響を与えている可能性もあります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
乾季のワオキツネザルは、マーキングする植物に好みがあることが明らかになりました。また、著者らは、ワオキツネザルが片手で枝を掴んでバランスを取りながらマーキングする行動を観察しており、それが二股の植物が選ばれる理由かも知れないと述べています。しかし、なぜUncarinaなのかは、化学的な研究と、ワオキツネザルに対する行動試験をして、確かめる必要がありそうです。



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サボテンは主に北米から南米まで広く分布しますが、その分布は均一ではなく、沢山の種類のサボテンが集まるホットスポットが存在します。メキシコにはホットスポットがありますが、南米にはサボテンと聞いてイメージするのとは異なる森林性サボテンのホットスポットが存在します。本日はそんな南米の森林性サボテンを調査した、Weverson Cavalcante Cardosaらの2018年の論文、『Anthropic pressure on the diversity of Cactaceae in a region of Atlantic Forest in Eastern Brazil』をご紹介しましょう。

Espirito Santo州はサボテンのホットスポットの1つで、13属41種のサボテンが自生します。これは、ブラジルのサボテンの31%を占めています。この41種類の在来種のうち約69%はブラジル大西洋岸森林の固有種です。さらに、その63%は着生植物であり、森林環境に依存しています。
この研究は、詳細な調査によりサボテンの分布を正確に把握し、人為的脅威が与える影響を分析することにあります。

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Brasiliopuntia brasiliensis(右上)
Opuntia brasiliensisとして記載(1919年)。


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Coelocephalocereus fluminensis
Cephalocereus melocactusとして記載(1890年)。


調査によりEspirito Santo州では、38種類のサボテンが確認されました。一部の地域では、予想よりもサボテンが減少していました。
生物多様性の優先地域であるForno Grande、Santa Lucia、Augusto Ruschi、Domingos Martins東部は、Espirito Santoの中央山岳地帯にあります。しかし、優先地域の約25%を占める山岳地帯は依然として過小評価されています。同じく優先度の高いGrande Vitoriaにある保護地域もサボテンの種類が豊富です。しかし、Espirito Santoの経済の中心地であるVitoria、Vila Velha、Serraの各自治体には大きな人為的圧力があり、森林は12%しか残っていません。

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Pilosocereus arrabidae(上)
Cephalocereus arrabidaeとして記載(1920年)。

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Melocactus violaceus(右下)
Cactus melocactoidesとして記載(1923年)。


Espirito Santoにおいては、サボテンに悪影響を与える様々な要因があります。第一に岩上性のサボテンは常に牛、山羊、馬の踏みつけに苦しんでおり、固有種の衰退に繋がっている可能性があります。さらに、Espirito Santoはブラジルの装飾用石材の主要な産地で、ブラジルの採掘のほぼ半分を占めています。Cachoeiro de ItapemirimやNova Veneciaは装飾用石材加工の中心地であり、サボテンの多様性の高いあるいは中程度の地域です。また、大規模なユーカリのプランテーションに加え、コーヒーやココア、果実など、単一栽培により、州から多くの植生が失われたました。Rhipsalisの多くは着生性で樹木に着生するため、悪影響が考えられます。さらに、鉄鉱石の輸出のための港湾ネットワークの拡大は、地上性のサボテンに圧力を加えます。生物多様性の優先地域や保護地域は違法な砂の採取が行われており、希少なブラジル固有種であるPilosocereus arrabidaeは大幅な生息地の喪失に見舞われています。

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Hatiora cylindrica(左上), 1923年
Hatiora salicornioides(右下)

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Lepismium houlletianum
Rhipsalis houlletianaとして記載(1923年)。


以上が論文の簡単な要因です。
特に解説することはありませんが、やはりと言うか、中々厳しい状況に置かれていることが分かります。開発との折り合いをどうつけるのかは、未だに解決し難い問題と言えます。
さて、せっかくですから、調査で見つかった38種類のサボテンを以下に示しましょう。

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Rhipsalis pachyptera(左), 1923年

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Rhipsalis lindbergiana(赤花), 1923年

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Peleskia grandiflora(中央), 1923年

低危険種(LC)
Brasiliopuntia brasiliensis(岩生性・地上性)
Cereus fernambucensis(岩生性・地上性)
Coleocephalocereus fluminensis(岩生性)
Epiphyllum phyllanthus(着生性)
Hatiora salicornioides(着生性)
Hylocereus setaceus(岩生性・着生性・地上性)
Lepismium cruciforme(岩生性)
Lepismium houlletianum(着生性)
Lepismium warmingianum(着生性)
Opuntia monacantha(岩生性・地上性)
Pereskia aculeata(岩生性・地上性)
Pereskia grandiflora(岩生性・着生性)
Pilosocereus brasiliensis(岩生性)
Rhipsalis elliptica(着生性)
Rhipsalis floccosa(着生性)
Rhipsalis juengeri(岩生性)
Rhipsalis lindbergiana(着生性)
Rhipsalis neves-armondii(着生性)
Rhipsalis pachyptera(着生性)
Rhipsalis paradoxa(着生性)
Rhipsalis pulchra(着生性)
Rhipsalis puniceodiscus(着生性)
Rhipsalis teres(着生性)

準絶滅危惧種(NT)
Pilosocereus arrabidae(岩生性・地上性)
Rhipsalis clavata(着生性)
Rhipsalis cereoides(着生性)

絶滅危惧II類(VU)
Melocactus violaceus(地上性)
Rhipsalis pilocarpa(着生性)
Rhipsalis russellii(着生性)

絶滅危惧IB類(EN)
Coelocephalocereus pluricostatus(岩生性)
Hatiora cylindrica(着生性)
Rhipsalis pacheco-leonis(着生性)
Schlumbergera kautskyi(着生性)

絶滅危惧IA類(CR)
Coelocephalocereus braunii(岩生性)
Coelocephalocereus diersianus(岩生性)

情報不足(DD)
Rhipsalis hoelleri(着生性)
Rhipsalis sulcata(着生性)

評価されていない(NE)
Coleocephalocereus decumbens(岩生性)


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まだまだ30℃以上の日が続きますが、多肉植物たちは盛んに生長を始めています。強すぎた日照も一段落といった感じでしょうか? 今年は日照が強すぎて、多肉植物たちにも思わぬダメージが結構あったので、ようやく一安心出来そうです。そんな、最近の多肉植物たちをご紹介しましょう。

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Zamia integrifolia(=Z. floridana)
ソテツの苗ですが、
葉の枚数が大分充実してきました。
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よく見ると、今年2度目のフラッシュです。
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しかし、葉の先端が齧られてしまいました。ソテツは有毒なので食べる動物はあまりいないような気がします。ソテツシジミではなさそうですが、対処しないとこれから伸びる新葉もやられてしまいます。やられ方がナメクジっぽいので、誘引剤を周囲に撒いておきます。

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Euphorbia longetuberclosa
日焼けしてしまい半日陰なや避難させていましたが、新しい枝が伸びてきました。しかし、左の枝はナメクジに舐められてしまいました。やはり、誘引剤を撒きました。


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Dioon spinulosum
世界最大のソテツの苗ですが、今年2回目のフラッシュ。


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Dioon edule
こちらは非常に生長が遅いことで知られるソテツですが、やはり今年2回目のフラッシュ。毛に覆われた新葉が美しいですね。


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Uncarina roeoesliana
腰水栽培したら雑草のように伸びました。多肉植物として育てるより、野菜の土でプランターとかに植えたらよく育ちそうですね。


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Haworthiopsis fasciata fa. vanstaadensis
ファスキアタの矮性種が開花。
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矮性種のためか花も小型というか、短い感じがします。

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Fouquieria diguetii
今年は非常によく育ちました。


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孔雀丸 Euphorbia flanaganii
根詰まりで枝がポロポロ取れてしまいましたが、ようやく生え揃って来ました。


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Euphorbia horrida var. noorsveldensis
非常に強いトゲが生えてきました。まだ小さいので普通のホリダとの違いがよくわかりません。


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閃光閣 Euphorbia knobelii
自家受粉したものの種子はあちこちに飛散してしまい、結局芽が出たのはこれだけです。しかし、その美しい模様がはっきりしてきました。


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瑠璃塔 Euphorbia cooperi
初めて枝が出ました。


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闘牛角 Euphorbia schoenlandii
闘牛角が開花しましたが、よく開花するので有難みはあまりありませんが。

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Euphorbia denisiana
傾いているのと鉢が小さいので、バランスが悪くてふらふらしています。

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棒で支えていますが、植え替えることにしました。
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少し角度を調整しました。鉢を大きくしましたが、根が張っていないため、しばらくは棒で支えておきます。


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Rhipsalisというサボテンがありますが、サボテンファンにはあまり人気がないかも知れません。Rhipsalisは熱帯性のサボテンで、多湿な環境で樹木に着生して垂れ下がるように育ったりします。栽培環境からすると、洋蘭や食虫植物の栽培と相性が良いかも知れません。私も沢山の種類があることくらいは知っていますが、イマイチ興味が持てないでいました。しかし、詳細不明であったRhipsalisの1種が近年再発見されたと知り、それ自体が大変喜ばしいことですから、ぜひご紹介したいと思った次第です。ご紹介したいのは、Weverson Cavalcante Cardosoらの2021年の論文、『Rediscovering Rhipsalis hoelleri (Cactaceae), a Critically Endangered species from Brazilian Atlantic Forest』です。

1995年に記載
Rhipsalis hoelleriはブラジルのEspirito Santo州に固有の着生サボテンです。カーマインの花により他のRhipsalisとは区別されます。R. hoelleriは1987年に採取され、ドイツのボン大学の植物園に収容された栽培標本に基づき1995年に記載されました。しかし、その正確な生息地などの情報は不明であり、保全状況は評価出来ませんでした。

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Rhipsalis

新しい分布地域
著者らの調査により、R. hoelleriの分布地域を拡大することが出来ました。観察されたのは、CasteloのForno Grande州立公園、Domingos MartinsのPedra Azul州立公園、Santana Maria de JetibaのPedra do Garrafao、Santa Lucia Biological Station、Augusto Ruschi生物保護区、Santa Teresaの私有地内の森林、Morro de Sao Carlos、Vergem Altaの保護されていない地域でした。

多様性
新種として記載された情報と、新しく発見された地域の個体を比較すると、ある程度のばらつきがあり多様性があることが分かりました。花の直径は10mmとされていましたが、観察された個体は8.5〜15mmでした。この変異は、他のRhipsalisでも確認されている一般的な特徴です。花色にも変化があり、カーマインから鮮紅色(Cerise)、深紅色まで様々でした。果実の色は濃いトマトレッドで不透明とされてきましたが、ピンク色で光沢のある果実も観察されました。また、栽培していると、トマトレッドからオレンジ色まで変化することが報告されており、果実の色では種の判別は出来ない可能性があります。

生態
R. hoelleriはブラジルの春である9月から11月の間に咲きます。ヨーロッパでも同じ季節に開花することが報告されています。また、夏にあたる2月下旬に稀に開花することもあるようです。果実は成熟に6ヶ月かかると言われています。

保全状況
R. hoelleriは多くの場合、inselberg(※)に関連する特異性の高い小さな亜集団からなります。発生範囲(EOO)は1578平方キロメートルと推定され、占有面積(AOO)は36平方キロメートルであり、どちらも絶滅危惧種の閾値を下回ります。亜集団は5〜7で個体数ら少なく、観察された個体数から250個体未満と推定されました。成熟個体は多くても10個体、多くは5個体未満で、集団がひどく断片化されてしまっています。IUCNレッドリストでは絶滅危惧IA(CR)に相当します。

(※) inselbergとは、地形の侵食により露出した花崗岩や片麻岩などでできた孤立した岩の丘のことです。

以上が論文の簡単な要約です。
このような分布が狭く個体数が少ない植物は、絶滅の可能性について評価される前に、開発などで絶滅してしまうことは珍しいことではありません。保全活動において、植物は動物と比べて軽視される傾向があり、保全状況や個体数などの基本的な情報すら不明なものが大半です。しかし、そのための資金も動物に偏っており、希少な植物の調査は難しい現状があります。動物並みに調査や保全が行われて欲しいところです。でもまあ、調査が実施されただけ良かったとは思います。



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乾燥地ではほとんど雨が降らない地域もありますが、地形や立地、風向きなどにより霧が発生する場合があります。例えば、山地や海に近い場合などです。霧が発生すると、植物や土壌表面には露がつきます。植物についた露は、植物を伝って根元に集められますから、乾燥地の植物にとっては大変貴重な水分となります。では、サボテンはどうでしょうか? サボテンは葉はありませんが、代わりにトゲがあります。トゲを伝って露を集めることは可能でしょうか? というわけで、本日はサボテンと露の関係を試験した、F. T. Malikらの2016年の論文、『Hierarchical structures of cactus spines that aid in the directional movement of dew droplets』をご紹介しましょう。

アタカマ砂漠は地球上で最も乾燥した場所です。アタカマ砂漠にはCopiapoa cinerea var. haseltoniana(=C. gigantea)が自生していますが、Copiapoaのトゲが露を集めることが観察されています。また、他の地域からも露を集めるサボテンの報告があり、報告されたMammillaria columbiana subsp. yucatanensisとParodia mammulosa、さらにC. cinerea var. haseltonianaの露とトゲの関係を詳しく調べました。また、そのトゲが露を集めないと言われるFerocactus wislizeniiを比較のためにともに調べました。

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Mammillaria columbiana subsp. yucatanensis
Neomammillaria yucatanensisとして記載(上)。
Neomammillaris graessnerianaとして記載(中)。

Neomammillaria woburnensisとして記載(下)。
『The Cactaceae vol. 4』(1923年)より

サボテンを野外に置き、夜露が発生する様子をタイムラプスで撮影しました。また、トゲで集められた露がどのように吸収されるかを知るために、蛍光剤を水に混ぜた蛍光標識水にトゲを浸しました。また、MRIで断面を撮影しました。さらに、トゲの表面の微細構造を電子顕微鏡で観察しました。

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Parodia mammulosus(左上)
Malacocarpus mammulosusとして記載。
『The Cactaceae vol. 3』(1922年)より


Copiapoaのトゲは、重力に逆らっても水滴は基部に向かうことが分かりました。また、蛍光標識水はアレオーレを通って吸収されたことが分かりました。
電子顕微鏡の観察では、CopiapoaとMammillaria、Parodiaではトゲの表面は繊維状の溝からなっていました。溝は先端と基部近くでは溝の深さや細かさが異なり、粗さの勾配により水を輸送している可能性があります。F. wislizeniiのトゲの表面は、大きな逆剥けのような突起に密に覆われており、水の輸送を妨げているようです。Copiapoaのトゲの表面にも突起は観察されましたが、小さく数も少ないため、水の輸送を妨げていないことが分かります。この突起はMammillariaとParodiaでもわずかに見られましたが、トゲの表面に水滴を形成する働きが予想されます。CopiapoaとMammillaria、Parodiaのトゲは親水性で濡れ性が高く、Ferocactusのトゲは疎水性で濡れ性が低いことが分かります。


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Ferocactus wislizenii(下)
『The Cactaceae vol. 3』(1922年)より

以上が論文の簡単な要約です。
乾燥地に生えるサボテンは、根からだけではなく、トゲを利用してアレオーレから水分を吸収する仕組みがあることが分かりました。サボテンが工学的な発想で研究されることは珍しく、非常に面白い論文でした。しかし、アレオーレからの吸水を知ってしまうと、その効果を試してみたくなります。どなたか、試してみたいという方はいらっしゃいませんかね? 


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「青菜に塩」という言葉があるように、植物は塩分に弱いというのが常識です。しかし、乾燥地の土壌は塩分濃度が高い傾向があります。砂漠などの乾燥地では、雨が降っても水分が川となり流れても海に注がず、途中で干上がってしまうことがあります。この時に、川は周囲の塩分を取り込みながら流れます。川が途中で干からびた場合、溶け込んだ大量の塩分が析出し、塩の結晶がキラキラ光って見えたりします。
例えば、中国の乾燥地に生える植物は耐塩性が高いものが多く、ギョリュウ(御柳、タマリクス、Tamarix chinensis)などは余分な塩分を葉から排出するため、葉に塩の結晶がついています。乾燥地は塩分濃度が高くなりがちですから、生える植物も塩分に耐えられるものが多いはずです。
当然ながら、乾燥地に生えるサボテンや多肉植物も、それなりに耐塩性があるのではないでしょうか? この問題に挑んだM. Derouicheらの2023年の論文、『The effect of salt stress on the growth and development of three Aloe species in eastern Morocco』をご紹介しましょう。


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Aloe vera
Aloe lazaeとして記載。
『Hortus botanicus panormitanus』(1889年)より


モロッコ東部では造園あるいは観賞用に何種類かのアロエが植栽されます。この地域は乾燥し地下水は高い濃度の塩分を含みます。そこで、アロエの耐塩性を調査しました。調査したアロエは、Aloe vera、Aloe brevifolia、Aloe arborescensの3種類です。ポットに植え、4種類の塩分濃度の水を4ヶ月与えました。塩分濃度は、3g/L、6g/L、9g/Lの3種類で、塩分を加えていない群も設定しました。一般的に塩分濃度が3g/L以下を非塩水とされています。

栽培4ヶ月後、アロエは枯れずに育ちました。アロエの葉の枚数を比較すると、塩分を加えていない群と比較して1〜2枚の差がありました。A. veraでは塩分なしと低濃度が11枚、中濃度と高濃度が10枚でした。A. brevifoliaは塩分なしと低濃度が29枚、中濃度が28枚、高濃度が26枚でした。A. arborescensは塩分なしが22枚で、低濃度が20枚、中濃度と高濃度が19枚でした。

次に葉の厚みについては、塩分濃度の影響が割と見られました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で86%、中濃度では65%、高濃度では58%でした。A. brevifoliaは低濃度では98%、中濃度と高濃度では85%でした。A. arborescensは低濃度では77%、中濃度で58%、高濃度で53%でした。

相対含水率では減少しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で90%、中濃度では77%、高濃度では75%でした。A. brevifoliaは低濃度では87%、中濃度で82%、高濃度で77%でした。A. arborescensは低濃度では78%、中濃度で70%、高濃度で81%でした。

クロロフィル含量はわずかに増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で106%、中濃度では99%、高濃度では128%でした。A. brevifoliaは低濃度では106%、中濃度で94%、高濃度で118%でした。A. arborescensは低濃度では85%、中濃度で106%、高濃度で105%でした。

ポリフェノール含量は増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で138%、中濃度では157%、高濃度では201%でした。A. brevifoliaは低濃度では109%、中濃度で156%、高濃度で224%でした。A. arborescensは低濃度では121%、中濃度で132%、高濃度で164%でした。

糖分含量は増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で100%、中濃度では119%、高濃度では126%でした。A. brevifoliaは低濃度では115%、中濃度で180%、高濃度で190%でした。A. arborescensは低濃度では116%、中濃度で164%、高濃度で194%でした。

多糖類含量は増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で94%、中濃度では107%、高濃度では115%でした。A. brevifoliaは低濃度では115%、中濃度で202%、高濃度で211%でした。A. arborescensは低濃度では114%、中濃度で169%、高濃度で203%でした。

以上が論文の簡単な要約です。
アロエはかなり高い塩分濃度にも耐えられることが明らかとなりました。4ヶ月の試験で枯れた個体はありませんでした。しかし、葉の枚数の減少は微妙ですが、葉の厚みは大幅に減少しています。含水率の低下とも関係があるのかも知れません。いずれにせよ、高濃度の塩分でも耐えられはするものの、生長は遅くなるのでしょう。糖分とポリフェノールが増加しましたが、糖分やポリフェノールは浸透圧調整に働き脱水を軽減するそうです。

3種類のアロエの中では、Aloe brevifoliaが最も耐塩性が高いことが分かりました。葉の含水率は低下しても、葉の厚みはそれほど減少していません。また、ポリフェノールや糖分の上昇が激しく、塩ストレスに対して活発に働いているようです。
読んでいて気になったのは、3種類のアロエのそれぞれの自生地の塩分濃度です。環境への適応という意味では、Aloe brevifoliaの自生地には塩分濃度が高い地域があるのではないでしょうか? 


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ユーフォルビアは世界中に分布し、雑草だったり樹木だったり、あるいは多肉植物や塊根植物だったりと非常に多様性があります。しかし、傷つけると乳液が出るという特徴は共通します。さて、ユーフォルビアの乳液は大なり小なり毒性がありますが、その高い生理活性を薬として利用出来ないかという試みは、近年でも盛んに行われています。ヨーロッパ原産の草本種が使われることが多いのですが、日本ではミドリサンゴあるいはミルクブッシュと呼ばれるEuphorbia tirucalliもよく使われます。これは、E. tirucalliが世界中で帰化しており、各地で実際に利用されていることも関係があるのでしょう。しかし、さらに調べると、意外にもEuphorbia neriifoliaという多肉植物について、その利用が様々に研究されていることに気が付きました。ちょうど、E. neriifoliaについて整理した論文を見つけましたので、ご紹介しましょう。それは、Chinmayi Upadhyaya & Sathish Sの2017年の論文、『A Review on Euphorbia neriifolia Plant』です。

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『Species Plantarum』(1753年)の表紙
植物の学名の歴史はここから始まりました。この書籍においてEuphorbia neriifolia L.が記載されました。つまり、最初に現在の命名システムを適応して命名された最初のユーフォルビアの1つがE. neriifoliaなのです。


Euphorbia neriifoliaの特徴
Euphorbia neriifoliaは南アジア原産の多肉植物で、インドトウダイグサの木(Indian spurge tree)などと呼ばれます。インドのデカン半島全体に見られ、乾燥した岩の多い丘陵地帯で良く見かけます。現在はインド、スリランカ、ミャンマー、バングラディシュ、タイ、ボルネオを除くマレーシア地域で地元住民により栽培され帰化しています。
E. neriifoliaは直立したトゲのある多肉植物です。枝分かれした低木で、高さ2〜6m、あるいはそれ以上に育つこともあります。モンスーンの時期を除いて、1年の大半は葉がありませんが、葉は通常10〜18cmと大きく30cmに達することもあります。

一般的にユーフォルビアの乳液は有毒であり、皮膚に水疱を引き起こしたり、目に入ると重度の浮腫を引き起こす可能性があります。また、ユーフォルビアの葉や根は漁に魚毒としつ利用されることもあります。乳液が付いてしまったら、流水で洗い流すことが有効です。

伝統的な用途
古代のvaidhya(アーユルヴェーダの医師)は、E. neriifoliaの乳液を利用しました。耳痛、肝臓、脾臓、梅毒、水疱瘡、ハンセン病などに使用されました。
E. neriifoliaの乳液はアーユルヴェーダにおいて喘息の薬とされており、乳液と蜂蜜の混合液は喘息薬として家庭薬として利用されています。また、ギー(バターオイルの1種)と乳液を混ぜ、梅毒、内臓閉塞、長期間続く熱帯による脾臓と肝臓の肥大に対して与えられます。バターとともに使えば、潰瘍や疥癬、腺腫脹の化膿防止になります。マルゴサ油(インドセンダンからとれる油)と混合したものはリウマチに使用されます。
黒胡椒と混ぜた根はサソリ刺されや蛇咬傷に、内外から使用されます。茎は灰で焼かれ、蜂蜜とホウ砂を含む飲み物は去痰に使用されます。

薬学的な用途
下剤や駆風剤(ガス抜き)として使用し、食欲を改善し、腹部のトラブル、気管支炎、腫瘍、白斑、痔、炎症、脾臓の肥大、貧血、潰瘍、発熱、慢性呼吸疾患に有用です。
ある研究ではE. neriifoliaの葉の抽出物は、免疫を刺激し、強力な鎮痛剤、抗炎症剤、軽度をCNS(中枢神経)抑制剤、創傷治癒活性があることが分かりました。
乳液は関節炎に対する経口の有効性と安全性を確認しました。
E. neriifolia抽出物をモルモットの創傷治癒活性について評価したところ、コラーゲンおよびDNA量の増加を示し、上皮および血管の増加を示しました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
E. neriifoliaはインドでは伝統的にアーユルヴェーダで利用されてきたようです。近年では薬理学的な研究も行われています。しかし、E. neriifoliaはインド以外でも広く南アジア周辺でも栽培されていると言います。単純にインドのアーユルヴェーダの知識が伝わっただけなのか、それぞれの場所により固有の利用方法が発達したのか気になります。
また、論文中の毒性の話はあくまでユーフォルビア全般の話であり、E. neriifoliaの毒性ではないことも気になります。書かれている毒性は、アフリカ原産の柱サボテン状のユーフォルビアについての症状だろうとは思います。様々に利用されていた経緯から、その毒性についても知りたいところです。
E. neriifoliaは伝統医学により利用されて来ましたが、科学的な研究はそれほど進んでいないような印象は受けます。将来的には薬学的作用も詳しく解析されるでしょう。


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なんでも、スペインには野生化したアロエが生えているそうです。当然、外来種ということになります。今まではAloe feroxであると言われてきたそうですが、実は違うのではないかという話があります。それはPere Aymerich & Jordi Lopez-Pujolの2023年の論文、『On the presence of Aloe × caesia Salm-Dyck and A. ferox Mill. in the eartern Iberian Peninsula』です。早速、内容を見てみましょう。

野良アロエの報告
スペインのイベリア半島東部にAloe feroxと思われるアロエが野生化しています。著者らはこのアロエがAloe × caesiaではないかと考えています。Aloe ×caesiaとは、A. feroxとA. arborescensの自然交雑種で、分布が重なる地域で自然発生します。外観はかなり多様性があるようです。A. ×caesiaは地中海地域では園芸用に使用されてきましたが、地中海地域で栽培されるのはA. feroxによく似た姿のものです。ただし、A. feroxのように単幹ではなく、A. arborescensのように複数のロゼットからなります。そのため、密集した集団を作ります。A. × caesiaの花はクリーム-オレンジ色/赤色の2色からなり、A. feroxのようなオレンジ/赤色の単色ではありません。

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Aloe × caesia
Aloe fulgensとして記載。
『Hortus botanicus panormitanus』(1889年)より


地中海地域のアロエ
A. × caesiaは、サルデーニャ島では長い間外来植物として知られ、シチリア島では帰化植物と見なされています。南フランスの地中海沿岸のフレンチ・リヴィエラでは、庭から逸出したA. × caesiaが比較的一般的になっています。データベースではA. × caesiaが地中海諸国の大部分で「導入された」としていますが、これは明らかに栽培植物のことを指しています。「Flora iberica Gremes」(2013)では、「Flora Europaea」(1980)でイベリア北東部からの報告があるものの、それが本当に庭からの逸出であるかを疑っています。「Flora Europaea」では、南東フランスまたは北スペインの海岸沿いにA. × caesia、A. spectabilis、A. maculataが見つかると書いています。しかし、この記述は北東イベリアではなく、プロヴァンスで知られていたアロエに由来しているだけかも知れません。
イベリア半島のA. × caesiaの確実な最初のデータは、2017年にAlacant/Alicanteで確認された繁殖個体です。これは、実際にこの区画の所有者により投棄された植物が由来であることが確認されています。他にも確認されていますが、投棄あるいは古い庭の跡地かも知れません。

Aloe × caesia vs. Aloe ferox
A. × caesiaは報告は数年前ですが、以前から見つかっていましたが、誤ってA. feroxとして識別された可能性があります。イベリア半島ではA. feroxの報告は、バルセロナ(2008)、Vinaros(2017)、Reus(2019)だけです。しかし、これらが本当にA. feroxであるか確認されておらず、逆にA. × caesiaである可能性を示唆する証拠があります。
Vinarosの個体は2つのロゼットが接近して育っているため、複数のロゼットからなる1個体である可能性があります。しかし、花序は13〜14本の枝からなり、A. × caesiaにもA. feroxにも該当しない特徴です。また、残念ながら他の2つの報告は画像がないため、詳細を調査しました。
2000年以降、バルセロナの都市部にあるMontjuicの丘では、小さな半帰化集団があります。これは、多くのアロエを含む多肉植物のコレクションがある市立庭園に由来しているようです。一見してA. feroxを彷彿とさせます。ロゼットの密集する傾向がありますが、孤立したものもあります。しかし、著者らはおそらく、これらはA. × caesiaであろうとしています。Montjuicの丘のアロエは急斜面に生えるため、はっきりと確認出来ませんでした。また、A. feroxは自家受粉しないため、種子繁殖している可能性があるMontjuicの丘のアロエには該当しません。また、A. feroxはタイヨウチョウにより受粉する鳥媒花であり、地中海では受粉しません。ただし、ミツバチにより受粉する可能性はあります。また、多くのアーチ型の葉には辺縁歯がありますが、これはA. × caesiaでは一般的がA. feroxでは見られません。
ReusのA. feroxについては2014年に撮影された画像がありましたが、葉はA. × caesiaの特徴である下向きのアーチ型の葉が見られます。この集団は2023年ではなくなっていました。
現在までの情報からはAloe feroxは確認されず、Aloe × caesiaである可能性が高いと言えます。


以上が論文の簡単な要約です。
どうやら地中海地域では、A. × caesiaは園芸的に一般的なようです。ですから、園芸植物の逸出が帰化したアロエが由来なのは共通しているようですね。
日本ではAloe arborescensが昔から好まれていて、一部は逸出して野生化していますが、大抵は種子繁殖しているものは見たことがありません。それは、1個体のみの逸出ばかりで、付近に受粉可能な個体がないからでしょう。まあ、適切な花粉媒介者がいないような気もしますから、個体が複数でも難しく思えます。何と言っても、開花は主に冬ですから、昆虫もいません。沖縄などの暖地ではどうなのか分かりませんが…


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Harrisia属は森林性サボテンで、細長く紐状に伸び月下美人のように大きな花を咲かせます。そのうちの1種であるHarrisia adscendensの名前には、何やら一悶着あった模様です。ということで、本日はAlan R. Franckの2015年の論文、『Proposal to conserve the name Cereus adscendens (Harrisia adscendens) against C. platygonus (Cactaceae)』をご紹介しましょう。

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Harrisia adscendens
『The Cactaceae descriptia and illustration of plant of cactus family』(1920年)より


Cereus platygonusはBerlin Garden由来の出所不明資料に記述があります。しかし、その標本は見つかっていません。タイプ標本がベルリンにあった場合、第二次世界大戦により1943年に破壊された可能性があります。また、C. platygonusは栽培されている植物から記載された場合、標本は作られなかった可能性もあります。著者はC. platygonusの元資料と一致するのは、Harrisia adscendensとして知られるブラジルのCaatinga原産のサボテンであるとしています。

SchumannはCleistocactus属とされるいくつかの種とともに、C. platygonusを広義のCereus属series Graciles(列)に分類しました。CleistocactusとHarrisiaは、どちらもTrichocereus亜属とされますが、これらの関係は曖昧です。SchumannはC. platygonusは12〜15本の剛棘があるとし、Riccobono(1909)は幼時生長と解釈しました。剛棘はHarrisiaなどの多くのサボテンの幼時の茎に見られます。

RiccobonoはC. platygonusをEriocereus属としましたが、後にBritton & RoseはHarrisia属としました。学名はHarrisia platygonaとなりました。Britton & RoseはH. platygonaは、H. adscendensの丸みを帯びた目立つ稜(ribs)と比較して、平らで幅広い稜を持つとして区別しました。Britton & Roseは、ニューヨーク植物園でH. platygonaの小さな生きた植物を研究することについて言及しました。現在、C. platygonusとされるニューヨーク植物園の3つの標本は、H. adscendenrsと特徴が一致します。標本のうち1つはBritton & Roseの言及したものに由来する可能性があります。これは、「1901年、パリのSimonの植物」というラベルがあり、おそらく園芸家のCharles Simonから購入したものです。Britton & RoseはC. Simonのカタログに対し言及があります。2つ目は、Alwin Berger多肉植物ハーバリウムの「K. Sch. 99」とラベルがあり、Schumannの試料由来である可能性があります。

Harrisia platygonaがHarrisia adscendensと同種であった場合、優先される名前はH. platygonaです。しかし、H. platygonaという名前は、現在H. adscendensと呼ばれる植物とリンクした文献はありません。H. platygonaという名前はBritton & Roseの後は放棄され、2012年のFranckにより最近コメントされただけです。H. adscendensという名前を使用した文献は豊富にあり、レクトタイプ化されています。論文でもH. platygonaは参照されず、H. adscendensの名前が長く使用されています。ICN14.2条に従い、Cereus adscendensはCereus platygonusに対して保存されることを提案します。

以上が論文の簡単な要約です。
何やら長々と説明されましたが、要するにC. platygonusは割と起源があやふやですが、記述された特徴からはH. adscendensと思われるも、長く使われてきたH. adscendensを使用しましょうというだけの話です。しかし、最後の提案はCereusになっていますが、これは元の名前の命名年が早い方に優先権があるため重要だからです。分かりやすく年表にしてみましょう。

1850年 Cereus platygonus
1908年 Cereus adscendens
1909年 Eriocereus platygonus
1920年 Harrisia adscendens
              Harrisia platygona

以上のように、命名が一番早いのはC. platygonusです。ですから、このC. platygonusを受け継いだH. platygonaが規約上は正しい名前ということになります。しかし、著者はC. platygonusではなくC. adscendensを正式な名前とすることを提案しているのです。2023年現在、Harrisia adscendensが正式な学名となっており、Harrisia platygonaあるいはCereus platygonusは異名とされています。この提案は認められているようです。


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いくつかやらなきゃと思っていたことがあるのですが、何だかんだで後回しになっていました。正直、すっかり忘れていたのですが、1つ気付いたので一気に片付けてしまいます。

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Gasteria disticha
花茎から芽が出ました。胡蝶蘭ではたまにありますが、ガステリアでは初めてみました。冬に開花してから、いつか外そうと思いつつ忘れていました。今日外します。

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玉鱗宝 Euphorbia globosa
やはり花茎の先に芽が出ました。そこからさらに花茎が伸びて開花したりしてましたね。こちらも外します。


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闘牛角 Euphorbia schoenlandii
短い枝はやがて枯れて残りますが、長い枝はどうやら脇芽みたいです。3本外しました。


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こんな感じです。

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赤玉単用で挿し木。こちらはガステリア。

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同じく赤玉に挿し木。こちらは玉鱗宝。

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こちらは闘牛角。

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Euphorbia furticosa
フルティコサは日差しにはかなり強い方ですが、今年は少々異常でしたね。日焼けして腐ってきてしまいました。

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腐った部分と駄目そうな子は外しました。しかし、全体的に黄色くなってしまい、今後が少々危ぶまれますね。

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兜丸 Astrophytum astesias
何だかんだで20年くらいの付き合いのある兜丸です。環境が度々変わってダメージのあるサボテンが多かったにも関わらず、まったく変わりありません。生長が遅いのが逆に良かったのかも知れません。今日は何年ぶりか分かりませんが、本当に久しぶりに植え替え。

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根はギチギチでしたね。根が弱いって書いてあるサイトもありますが、そんな感じはしませんね。
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雨が吹き込むせいか、白点はほとんど取れてしまいました。アストロフィツムの中では育てにくいようなことも言われますが、非常に丈夫です。育つのは遅いのは確かですが。まあ、冬は霜に当ててしまっているので、余計に生長が遅いのかも知れません。

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鸞鳳玉 Astrophytum myriostigma
先週、親から外した子です。切断面が乾いたので植え付けました。動かないように針金で固定しております。


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士童 Frailea castanea
平鉢に半野良状態で勝手に増えたり死んだりして更新していましたが、面白い株を鉢上げしました。

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実はこれで1個体で全部繋がっています。根元は塊根のように肥大化しています。直径は4cmくらいですが、本来はどのくらい大きくなるんでしょうか? 冬に霜やら雪にやられて枯れがちなので、あまり大きくなったのは見たことがなかったりします。


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サボテンやアガヴェと言えば砂漠に生えているイメージですが、砂漠と言ってもサラサラした砂が舞う砂丘ばかりではありません。サボテンに限らず乾燥地に生える多肉植物が生えるのは、実際には硬く締まった土砂漠だったりします。乾燥の具合も様々で、うっすら草が生えるサバンナ/ステップ気候も見られます。そのため、砂漠では火災が発生することがあります。最近、Euphorbia mlanjeanaという多肉植物が沢山輸入されていますが、巨大なゴツゴツした塊から枝を伸ばす奇妙な姿をしています。これは度重なる火災で焼かれながらも、その都度再生して生き延びてきた証です。しかし、サボテンの自生地でも火災は発生するはずですが、サボテンを始めとした砂漠植物たちはどのように火災を対処しているのでしょうか? ということで、本日はDante Arturo Rodriguez-Trejoらの2019年の論文、『Plant responses to fire in a Mexican arid shrubland』をご紹介しましょう。

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Echinocactus platycanthus
Echinocactus visnagaとして記載。
『Curtis's botanical magazine』(1851)より


研究はメキシコのPuebla州とOaxaca州にあるTehuacan-Cuicatlan生物圏保護区において行われました。保護区の低木林のうち最大面積はDasylirion lucidumを含むバラ色低木林て、調査地はこの中で行われました。斜面にはEchinocactus platyacanthusやAgave potatorumが生え、平野部には針葉樹(ビャクシン)であるJuniperus deppeanaが生えます。
保護区では火災はそれほど頻繁ではなく、2013年から2016年の間に報告されただけで26件の森林火災がありました。

調査地域で最も豊富なのはDasylirion lucidumで、100メートル四方に286本もありました。火災によりすべての個体が焦げており、すべての葉は焼けています。ロゼットの低い部分は平均0.6メートルでした。しかし、その生存率は97.7%に達しました。大きな個体ほど新しい葉をよく出しました。火事のあとでもよく開花し、火事に見舞われなかった個体との差はありませんでした。
Dasylirionの葉は可燃性は高いものの、早く燃え尽きるため火力は弱くなり、生長点は守られます。また、Dasylirionの茎はは肥厚環と呼ばれる形成層を有し、断熱作用があります。


調査地域では少ないJuniperus deppeanaは、100メートル四方に1.8本しかありませんでした。しかし、調査地域で最も背が高い植物でした。最大5.8メートルに達します。火災後、その25.5%が枯死しました。生き残った木のうち、55.2%は根元から新芽を出しました。
Juniperusの厚い樹皮は耐火性がありますが、乾燥により樹皮の生産は減少し薄くなります。


調査地域ではあまり見られないEchinocactus platyacanthusは、100メートル四方に2.1本ありました。しかし、調査地域で最も直径のある植物でした。最大の個体は高さ1.3メートルでした。火災後、4.8%が枯死しました。しかし生き残っているサボテンも活力はありませんでした。サボテンの高さの平均89.1%が壊死しました。
サボテンは水分が多く火に抵抗性があります。しかし、他の調査では、Ferocactus wislizeniiでは火災により棘が失われると、昆虫やネズミ、ウサギや家畜により食害され枯死することが知られています。また、棘は過度の過熱や霜害から生長点を保護する働きがあります。サボテンは棘の喪失がその後の生存率を左右します。


Agave potatorumは割と豊富で、100メートル四方に17.6本ありました。火災後、10%が枯死しました。生き残っているAgaveはすべて発芽し、新しい葉を出しました。
Agaveの葉の多肉質でクチクラ層が非常に厚いなどの特徴は、可燃性を低下させ耐火性を高めます。また、Agaveの古い葉は、火災から受ける熱から本体を守ります。


以上が論文の簡単な要約です。
乾燥地では火災が起きやすく、自生する植物も火災に適応した生態系を持ちます。Tehuacan-Cuicatlan生物圏保護区では、異なる分類群の4種類の植物を調査しましたが、すべてである程度火災に適応していることが分かりました。調査地ではDasylirionが優勢なのは、火災に対する強さも関係があるのかも知れませんね。
しかし、サボテンは割とダメージが強いようですが、これはサボテンの形も関係するような気もします。球状の玉サボテンではいくら大きくても、光合成する表面積の大半を焼かれてしまいます。枝を出すタイプでもありませんから、復活は中々難しそうです。これが柱サボテンならば、根元は木質化していきますから上部が無事ならば問題なさそうです。また、ウチワサボテンならば、茎が焼かれても新しい芽が沢山吹いて直ぐに復活可能かも知れません。サボテンの形状による耐火性の違いも気になります。何か良い論文がないか調べてみるつもりです。


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植物は様々な環境に適応して分布しています。一地点にしか生えない植物ばかりではなく、大抵の植物はある程度の広さの地理的分布を持っています。しかし、必ずしも分布域が均一な環境とは限りません。当然ながら、植物はそれぞれの環境にある程度は適応していることが想定されます。本日はサボテンの環境適応の一端を調査した、Karen Baukらの2016年の論文、『Germination characteristic of Gymnocalycium monvillei (Cactaceae) along its entire altitudinal range』をご紹介しましょう。

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Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium multiflorumとして記載。
『Adissonia』(1918年)より


Gymnocalycium monvilleiは、アルゼンチンのCordoba山脈に固有のサボテンで、非常に広い高度分布を持ちます。過去に低地のG. monvilleiが調査され、発芽率は40%と低く、発芽にあまり光やは必要としていないようです。しかし、G. monvilleiは標高1900m付近に多く、それより高い(〜2200m)やより低い(〜800m)では減少していきます。高度により日照、温度、土壌の水分量などに重大な違いがあり、種子の発芽に影響を与える可能性があります。
G. monviするの自生地の平均温度は高高度で10.3℃、低高度で16.5℃でした。暖かい月の平均気温は、高高度で15℃、低高度で24℃でした。標高1900mを超えると雪が降ります。
G. monvilleiは1〜7個の果実をつけ、200〜4000個の種子を作ります。著者らは5つの標高に生える同じサイズ(10cm)のG. monvilleiから種子を採取しました。各高度から20個体を選びました。
種子は採取から1年後に播種されました。温度は25℃と32℃で試験しました。また、種子の発芽に光が必要かも確認しました。

種子は32℃よりも25℃でより発芽率が高いことが、すべての高度で確認されました。熱阻害を受けている可能性があります。
25℃の発芽率は、最も標高が高い2230mが80%を超え非常に高く、1940mで70%以上、1555mで60%以上、1250mで約20%でした。しかし、878mでは50%以上でした。著者らは、より寒い場所では種子の熟成が遅く、長い熟成期間が種子の品質にプラスの影響を与えた可能性があるということです。
種子の発芽には光が必要であることが分かりました。1250〜2230mではほぼ同じ結果でしたが、878mだけは発芽率が低下しました。


以上が論文の簡単な要約です。
最もG. monvilleiが多い標高1900m付近から採取された種子のポテンシャルが高いことが期待されましたが、結果は異なりました。意外にも最も標高が高い地点の種子が高かったのです。実際の自生地では冬の寒さなどの、論文では試験していないパラメーターの影響もあるのかも知れません。ただ、高い標高の種子ほど発芽率が高いのは、種子の品質に関係があるのかも知れません。また、不思議なことに最も標高が低い878m地点の種子だけは、全体の傾向に従っていません。これは、種子の品質ではなく、G. monviが低地に適応して進化したからかも知れません。もしかしたら、G. monvilleiは低地の集団と1250m以上の集団の2つが、遺伝的に隔離されているのかも知れません。種子の光に対する発芽率も低地だけは異なります。これは、何やら気になりますね。


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以前、サボテンの地理的二分法仮説をご紹介しました。地理的二分法仮説とは、熱帯のサボテンはサボテンの花を専門とする特定の少ない種類の花粉媒介者により受粉し、温帯のサボテンは様々な花を訪れる沢山の種類の花粉媒介者により受粉するというものでした。その関連で、亜熱帯アンデス山脈に分布するオレオケレウスの受粉について調査した論文がありましたから、ご紹介しましょう。それは、Daniel M. Larrea-Alcazar & Ramiro P. Lopezの2011年の論文、『Pollination biology of Oreocereus celsianus (Cactaceae), a columnar cactus inhabiting the high subtropical Andes』です。

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Oreocereus celsianus
Pilocereus brunnowiiとして記載。
『The illustrated dictionary of gardening』(1895年)より


柱サボテンのコウモリ媒花
一般的に熱帯域に生える柱サボテンは、蜜食のコウモリによるコウモリ媒花であるとされています。コウモリ媒花の特徴は、夜間に咲き、蜜が多く、開いたカップ状の形、強い香りが挙げられています。温帯の柱サボテンは、夜行性のコウモリや蛾、昼行性のミツバチやハチドリの両方で受粉していることが示されています。しかし、熱帯アンデスに分布するOreocereus celsianusの自生地は標高が高く、コウモリが分布しない可能性があります。O. celsianusの花粉媒介者はどのような動物なのでしょうか。

調査地点
調査はアンデス山脈中部のPrepunaで実施されました。Prepunaの標高は2000〜3300mです。平均気温は高度に応じて約12〜19℃の範囲でした。冬は寒くマイナス10℃になります。調査地点はボリビアの3140mにあるPrepunaで、O. celsianusの大きな集団があります。調査は夏の開花期に行われました。
O. celsianusは、ボリビア、ペルー、アルゼンチン北部の高地アンデス山脈に育ちます。枝分かれした円柱状のサボテンで、高さ6mになります。Trichocereus tacaquirensisやTrichocereus werdermannianusと混じって育ちます。O. celsianusは白い毛とトゲに覆われます。


花の訪問者たち
O. celsianusの花は約3日間咲きます。初日は日没(16〜18時)に咲き、4日目の正午に閉じました。花は漏斗型で紫がかるピンク色、弱いニオイを発します。O. celsianusは雌雄同体で、自家受粉もするサボテンです。しかし、他家受粉の方が受粉率は高いようです。また、夜間および昼間の花粉媒介者を制限した場合、夜間の訪問者よる受粉は少なく、昼間の訪問者による受粉が多いことが分かりました。
O. celsianusの最も重要な花への訪問者は、ハチドリでした。ハチドリは日中に花を訪れました。花を訪れた3種類のハチドリの中でも、ジャイアントハチドリ(Patagona gigas)の訪問頻度が高いことが分かりました。
また、2種類のミツバチと1種類のスズメバチも日中に訪問しました。しかし、ミツバチやスズメバチは柱頭に触れないため、ただの花粉泥棒として活動していることが分かりました。また、2種類のアリがスズメバチが開けた穴から花に侵入し、蜜泥棒として活動していました。夜間には2種類の蛾が花を訪れただけでした。

調査では開花し始めた16時〜18時のハチドリの訪問が、受粉にとって重要であることが分かりました。また、調査地であるPrepunaではP. gigasが広く分布し、OreoceusだけではなくTrichocereusの花にも訪れます。P. gigasがO. celsianusの最も重要な花粉媒介者と考えられます。

以上が論文の簡単な要約です。
Oreocereus celsianusは標高の高い地域に生えるサボテンで、熱帯性とは言えません。しかし、標高を無視すれば地理的には熱帯域と言えます。O. celsianusは主にP. gigasにより受粉することから、地理的二分法仮説を肯定する結果と言えます。様々な花粉媒介者が訪問することはないのです。
O. celsianusはコウモリがいない環境で、ハチドリ媒花に適応したサボテンのようです。しかし、P. gigasの好みは分かりませんが、一般的にハチドリ媒花は赤く細長い花が多いように思われます。また、O. celsianusのかすかな香りは、コウモリ媒花だった時代の名残りでしょうか。これは、O. celsianusの進化の過程に関わる重大な問題かも知れませんね。


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種子を作るのは植物にとって体力を消費する行為です。植物が小さいうちは沢山の種子は作れませんが、大きくなれば養分を種子生産により多く割り当てることが可能になります。しかし、その種子の品質はどうでしょうか? 植物が大きくなると、種子あたりに注ぎ込める養分も増えますが、そのようなことはあり得るのでしょうか?
本日はサボテンのサイズと種子の品質の関係を追った、C. Ceballosらの2022年の論文、『Do large plants produce more and better seeds and seedlings? Testing the hypothesis in a globose cactus, Wigginsia sessiliflora』をご紹介しましょう。

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Parodia erinaceus
=Wigginsia sessiliflora
Echinocactus erinaceus Lem.として記載。
『Gesamtbeschreribung der Kakteen』(1908年)より


研究はアルゼンチンのCordoba州のSan Pedro Norte townの近くで行われました。Wigginsia sessilifloraを185個体の果実を調査し、直径と種子の関係を調べました。W. sessilifloraは11月の短期間に咲くため、果実は同時期に熟します。種子を洗浄し3ヶ月保管してから発芽試験を実施しました。

調査したW. sessilifloraのサイズは14〜130mmでしたが、うち54%(97個体)は果実を作りませんでした。果実を生産した個体のサイズは、44〜120mmでした。分析すると、中型個体が最も多くの果実を生産していました。同様に中型個体の種子数と種子重量も最大でした。しかし、種子の発芽率はサイズと関係がありませんでした。発芽した実生は、親植物のサイズが大きいほど背が高いことが明らかとなりました。

意外にも、種子数は小型個体では少なく、中型個体では多く、大型個体では減少しました。これは、例えば樹木は幹の内部組織は生きていませんが、サボテンは大きくなるにつれて光合成しない組織の割合が増えてます。そのため、非光合成組織の維持に消費されるコストが増えてしまい、種子生産に割けるリソースが少なくなる可能性があります。

実生のサイズと形は、発芽後の苗の定着率に関係するかも知れません。大きな親から生まれた種子は、発芽させると、背が高くなり円柱状になります。背が高いと光を得やすくなる可能性があります。また、表面体積比が高くより生長率が高くなる可能性があります。その場合、大きなW. sessilifloraは種子の生産は少なくなるものの、実生の生存率が高くなるのかも知れません。

生殖可能なサイズのW. sessilifloraの50%以上は観察期間中に果実をつけませんでした。資源の節約のため、毎年繁殖するわけではなく、十分な準備が出来るまで回復させていると考えられます。

以上が論文の簡単な要約です。
植物が小さければ少量の種子、大きければ沢山の種子を作るというのは分かりやすい話です。しかし、その品質も変化するという驚きの結果でした。考察が正しいものとして内容をまとめると、小さな植物は種子数も少なく種子生存率も低い、中型の植物は種子数は多く種子生存率は普通、大きな植物は種子数は少なく種子生存率は高いということになります。生長期のサボテンはとにかく種子を沢山生産することを目指し、いわゆる数撃ちゃ当たる方式ですが、大型になり熟成した個体は個々の種子の品質を高めて生存率を高くしているのでしょう。
ただし、これはすべての種子植物がそうであるかは分かりませんから、様々な植物で追試する必要があります。果たして、W. sessiliflora特有の特徴なのか、サボテン科の特徴なのか、乾燥地の植物の特徴なのか、あるいはすべての植物の特徴なのか、現時点では分かりません。
ちなみに、論文ではWigginsia sessilifloraという名前ですが、現在ではParodia erinaceusの異名となっているようです。これはWigginsia erinaceusとも呼ばれていましたね。Wigginsia属はParodia属に吸収されて消滅したため、旧・Wigginsia属は名前がすべて変更されているので、注意が必要です。


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烏羽玉(Lophophora williamsii)は幻覚作用を持つアルカロイドを含み、その成分は法律で禁止されている国が多いようです。一般的にペヨーテ(Peyote)と呼ばれていますから、ここではペヨーテと呼ぶことにします。ところで、歴史的にその幻覚作用が宗教的に利用されてきた経緯から、アメリカ合衆国ではペヨーテの宗教的利用が許可されています。アメリカ合衆国でもペヨーテの幻覚成分は規制物質ですが、宗教的に許可されたその経緯とはどのようなものでしょうか。本日は、その経緯を辿ったMartin Terry & Keeper Troutの2017年の論文、『Regulation of Peyote (Lophophora williamsii: Cactaceae) in the U.S.A.: A historical victory of region and politics over science and medicine』をご紹介します。

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Lophophora williamsii
Anhalonium williamsiiとして記載。
『Gartenflora』(1888年)より


ペヨーテはメキシコとテキサス州の国境地帯のチワワ砂漠とTamaulipan Thornscrub地域に自生します。少なくとも6000年前に人が利用したとされます。現在、アメリカ先住民教会(NAC)におけるペヨーテの利用が行われています。
アメリカ合衆国では、アメリカインディアンによるペヨーテの使用は部族以外にはほとんど知られていませんでしたが、1人のインディアン局の職員により1912年に公表され、デモナイズ(悪しき者として、demonize)されました。それは、大麻が1930年代と1940年代に単独の個人により激しくデモナイズされた時と同じ方法でした。1954年にAldous Huxleyが『The Doors of Perception(知覚の扉)』を出版し、1955年にBeat GenerationはPeyoteの主要なアルカロイドであるメスカリンの精神活性効果を発見しました。

1960年代、1970年代に、ヒッピーを含む新しいカウンターカルチャーがあらわれました。古い価値観とは異なる若者たちの主張で、音楽や文学でも表現されました。カウンターカルチャーでは向精神薬なども利用されました。1960年代にペヨーテの規制に力がかかるようになりました。当時の状況を整理すると、まずカウンターカルチャーによる薬物に対する開放性や、ベトナム戦争における米兵の間での大麻や阿片の使用により、一般的に薬物使用が増加しました。次にペヨーテがアメリカ先住民以外に侵略され始めました。1990年代には、好ましいサイズのペヨーテの不足が気付かれ始めました。このペヨーテの不足は、NAC以外の人を式典に招待することが難しくなりました。米国麻薬取締局(DEA)による、許可されたペヨーテの使用の定義を狭める可能性があるという発表により、それはより悪化しました。

薬物による幻覚作用について、主流文化とカウンターカルチャーの間のギャップが拡大しました。1970年の規制物質法(CSA)は、薬物問題の主流文化側からの解決策でした。しかし、CSAはペヨーテを規制物質としてしまいました。米国議会は薬物問題の解決に関心があり、先住民の使用の正当性を認証せずにペヨーテを幻覚剤としました。
NACが1918年に設立されて以来、ペヨーテを合法的に使用して来ました。しかし、20世紀初頭にはペヨーテ宗教に対する禁止主義者や宗教的反対者により、激しいロビー活動が行われていました。先住民は何年にも渡りいくつか議会で主張を繰り返し、1944年のアメリカインディアン宗教自由法改正(AIRFAA)によりペヨーテの使用を禁止すべきではないということになりました。
しかし、議会は長い間、ペヨーテを中毒性が高いと見なしていました。しかし、ペヨーテに中毒性があるという主張は科学的に立証されていません。現実的には、ペヨーテを使用する儀式は連続して行われません。ペヨーテの使用頻度は多くて週1回、ほとんどのNACのメンバーは月1回かそれ以下です。このようにペヨーテの使用頻度は低く、日常的に繰り返して使用される中毒性薬物とは異なります。また、ペヨーテを
用いて定期的に儀式を行っているNACのメンバーに対する研究が行われ、神経毒性や認知障害は引き起こされていないことが確認されました。また、ペヨーテ中毒者の治療は行われたことはありません。

米国社会では、大麻はペヨーテよりはるかに良く知られており、広く使用されています。アメリカ人の49%が大麻を経験していますが、ペヨーテは約2%に過ぎません。大麻と異なり、ペヨーテは海外輸出用の観賞用植物として小規模に栽培されているだけです。ペヨーテは種子の播種から収穫まで約10年かかり、商業的な利益は少なく、ペヨーテの安全性や医学的用途のための研究は不足しています。メキシコではリウマチの痛み止めとして、局所チンキや軟膏が広く使用されています。

以上が論文の簡単な要約です。
宗教的な文脈とはいえ、幻覚成分を含むペヨーテの合法性を擁護する論文です。しかし、著者らが指摘するように、ペヨーテは大量生産が難しく時間がかかり、金にならないため、流行することはなさそうです。ペヨーテの幻覚成分はある程度のサイズにならないと蓄積しないため、効率が非常に悪いと言えます。
さて、日本ではペヨーテは規制されておりませんが、その成分は規制の対象です。つまり、ペヨーテから成分を抽出したら違法となります。とはいえ、日本にはペヨーテを利用する習慣はありませんから、特に問題にほならないのでしょう。こういうものは、基本的に文化に根ざしたものです。例えば酒は日本でも非常に長い歴史があり、日本特有の文化と文脈があります。しかし、例えば大麻などは日本に大麻文化がないため、その合法化は難しいかも知れません。それを利用するに際してのTPOがまったく存在しないため、濫用されるだろうことは想像に難くありません。慣習は文化が規定するため、文化がなければ社会の一部にはなりません。現在の日本の大麻解禁に関する話は文化を無視しており、他人への理解を求めるようなものではありません。現状の攻撃的で個人主義的な主張からは、とても大麻解禁を求める声が多数派になることは考えにくいことでしょう。


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非常に沢山の稜があるサボテンとして、縮玉や千波万波などを含むEchinofossulocactusが有名です。しかし、いつの頃からかStenocactusと呼ぶようになりました。少し気になって軽く学名を検索したところ、非常に面倒くさい話であることを察したため、その時は見なかったことにしました。しかし、そこら辺の面倒くさい話についてまとめた論文を見つけてしまい、何とはなしに読み始めたところ、やはり非常に面倒くさい話でした。説明するのも面倒くさいのですが、読んでしまった以上は記事にします。それは、L. Zahoraらの2020年の論文、『Echinofossulocactus or Stenocactus』です。ただ読むだけで忍耐力を試されますから、ご注意下さい。

始めはEchinocactusから
1841年以前、Echinofossulocactus Lawr.はEchinocactusに含まれていました。医師のLudovico Pfeifferは、1837年に出版した本でEchinocactusの中のEchinofossulocactusに相当するグループについて、波打ち圧縮された稜という形態を説明しました。

Echinofossulocactusの始まり
1841年にイギリスのガーデナーのGeorge Lawrenceは、London' s Gardeners' Magazineに、雇用主のTheodore Williams牧師のコレクションからサボテンのカタログを発表しました。その中でEchinofossulocactusが初めて登場しました。しかし、この時のEchinofossulocactusはあまりにも広い概念であり、それが後に問題となります。LawrenceはEchinofossulocactusを3つに分けており、1つ目が「Gladiatores」とラベルされた現在のEchinofossulocactus、2つ目が現在のFerocactus、3つ目はEchinocactusやFerocactus、Thelocactus、Astrophytum、Strombocactusが含まれていました。Echinofossulocactusの由来は、小さな溝や水路を表した「fossula」に由来しますが、この特徴はEchinofossulocactusだけの特徴ではないため、判別するための名前としては微妙かも知れません。また、Lawrenceはタイプ標本を指定しなかったことも問題です。

Stenocactusの登場
1898年に最も偉大なサボテンの権威の1人であるKarl Moritz Schumannは、Echinocactusの中にStenocactus亜属を確立しました。「stenos」はギリシャ語の「狭い」に由来し、特徴を表しています。

混乱の始まり
1922年にアメリカの植物学者Nathaniel Lord Britton & Joseph Nelson RoseはLawrenceの命名した「Gladiatores」ではなく、正式にEchinofossulocactus属を命名し直しました。タイプ標本はLawrenceが最初にリスト化したE. coptonogonusを選びました。
翌1923年にCarlos SpegazziniはEchinofossulocactusはハイブリッドであり、非常に長い名前のため、これは非合法名であり拒否されるべきであると提案しました。そして、Brittonrosea Speg.を提唱しました。
1926年にはC. OrcuttはSpegazziniの命名を知らなかったようで、Efossusを提案しました。タイプ標本はBritton & Roseに従いE. coptonogonusを指定しました。

Stenocactusの拡散
SchumannはおそらくEchinofossulocactusの命名を知らずにStenocactusを命名しましたが、これは亜属としての命名でした。これを属として使用したのは1929年のA. Bergerです。しかし、Bergerは属と亜属を厳密に区別していませんでした。属名としてStenocactusを使用したのは1935年のW. Marshall & F. M. Knuthでした。1937年にはHelia Bravo & J. Borgが続き、1941年にはアマチュア・コレクター向けに出版された「Cactaceae」にW. Marshall & T. M. BockがStenocactusを使用しました。

Echinofossulocactusの復権
しかし、国際命名規約が重視されるようになり、Stenocactusの正しい使用についても見直されました。1961年のBackebergなどの著者によりEchinofossulocactus Britton & Roseという名前が受け入れられ、翌年にはF. Buxbaumにも受け入れられました。

Echinofossulocactusを埋葬せよ
1980年にDavid Richard Huntは「Echinofossulocactusの正しい再埋葬」と銘打ち、Stenocactusを復活させようと、Nigel Taylorと共に出版した雑誌で主張しました。Huntによれば、Lawrenceの簡単な説明、「fossula」はE. helophorusに対応しているとしています。HuntはE. coptonogonusのレクトタイプを置き換えました。E. helophorusはEchinocactus platycanthus Link & Ottoの異名です。Echinofossulocactusを無効としました。Brittonrosea Spegazziniは受け入れられなかったので、Stenocactusを正当化する提案をしました。TaylorはHuntの考え方を支持し、1980年にE. coptonogonusとFerocactusの類似を指摘してEchinofossulocactusとFerocactusの統合を主張しました。

Stenocactusの正当化
1981年にHuntはEchinofossulocactusの最も古い有効な学名はBrittonroseaであったと過りを認めました。しかし、HuntはStenocactusを正当化しました。その提案は当時の国際植物命名法(1978年版)の第63.1条を見落としていました。また、HuntはTaylorにより指定されたレクトタイプはEchinocactus crispatus DC.であるとしました。
1982年にW. L. Tjadenは、植物委員会にStenocactusという名前を保存するための提案を提出しました。Tjadenによると、植物法第34.1条ならびに第34.3条の下で、Echinofossulocactusに対する無効性を示しました。Lawrenceの属の広すぎる概念や、SectionあるいはSubsectionの分割、スペルミスなどの正確性を指摘しました。Tjadenによれば、Lawrenceの名前は無効であり、Stenocactusが便利であることから正当化されるということです。

植物委員会の判断
TjadenのStenocactusは保存するための提案は、1987年に植物委員会で議論されました。委員会は1841年のLawrenceによるEchinofossulocactusは無効であるなどの意見に同意しませんでした。特にHuntによる再レクトタイプ化に関して、いくつかの命名法上の問題を提起しました。
Echinofossulocactusのタイプは1841年にLawrenceにより命名されて以来E. helophorusであり、1922年にBritton & Roseが新しくEchinofossulocactus Britton & Roseと命名し直した時にE. coptonogonusを指定しました。これは、1923年のBrittonrosea SpegazziniがBritton & Roseの代わりに出版され、E. helophorusが除外された時に合法となります。
植物委員会のメンバーは、7人がStenocactus、1人がBrittonrosea、3人がEchinofossulocactusが正しいと考えました。委員会のBrummittはEchinofossulocactusが正しいとしても、それはE. helophorusはEchinocactusの異名となってしまうため、Stenocactusを使用するべきであると結論付けました。

Heathの批判
P. V. Heath(1989年)は、Huntの恣意的な傾向のある議論の不正確さを説明しました。①Brittonの選択が不十分であったことを示す。②有効なレクトタイプを作成する。③Huntの選択がより優れていることを示す。④現在の使用法を維持する。という4つが必要としていますが、Huntはすべてで失敗していると言います。Heathによると、「Huntは意図的に公然と現在の使用法を歪めた」としています。そして、Echinofossulocactusは正しい名前であり、Brittonrosea、Efossus、Stenocactusは異名としました。

以上が論文の簡単な要約です。
タイプの話は分かりにくいので、少し解説します。Echinofossulocactusのタイプは、Echinofossulocactus helophorusでした。しかし、現在ではE. helophorusはEchinocactus platyacanthusの異名とされています。つまり、Echinofossulocactusの代表を事もあろうにEchinocactusを選択してしまったのです。
著者らはStenocactusではなくEchinofossulocactusを正当な学名と考えています。しかし、タイプのミスは致命的な誤りに見えます。Heathの批判や著者らの考えにも関わらず、現在の学名はすべてStenocactusとなっており、EchinofossulocactusはEchinocactusの異名とされています。Huntの考え方が認められている形です。
しかし、植物委員会の判断は意外にもばらつきました。植物委員会もいくつか問題を提起しているように、完全決着ではないのかも知れません。しかし、現状ではEchinofossulocactusはEchinocactusの異名に過ぎず、使用されない名前です。完全に終わってしまったのでしょうか? 今後、再び議論される可能性はどのくらいあるのでしょうか? 


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少々忙しく記事を書く時間が中々取れません。ネタはまだあるのですが…。昨日は天気雨で降ったり止んだりでよくわからない天気でした。夕方に隙をついてサボテンの植え替えをしました。サボテンは割と放置気味でしたから、かなり荒れてましたね。

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日の出丸 Ferocactus latispinus
たぶん10年くらい前にオザキフラワーパークで購入した日の出丸。ワンコインで買ったミニサボテンでした。ほとんど植え替えしていないので、鉢が小さすぎますね。

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根は大分きつきつです。ちょっと老化気味。
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根は健康そうです。

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Gymnocalycium pungens
最近、鶴仙園で入手したばかりのサボテンです。現在はG. schickendantzii subsp. schickendantziiの異名になっていますね。

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根が少ないですが、たまにこういうことがあります。化粧砂の下に、かなり重い湿っぽい用土がありました。気付かないと加湿になりこうなっちゃいます。

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縮玉 Stenocactus multicostatus
種子がこぼれて実生が生えてきたので植えましたが、1株だけ生き残りました。そう言えば、縮玉の学名ははっきりしませんね。Echinofossulocactus multicostatusとか、Echinofossulocactus zacatecasensisとか呼ばれています。まあ、とはいえEchinofossulocactusは現在Stenocactusとされています。実はEchinofossulocactusはEchinocactusの異名扱いになってしまいました。そのあたりの話は実にややこしいので、出来れば明日記事にします。

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根の張りは非常に良いですね。

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大中小の鉢に植え替え。

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鸞鳳玉の成長点が潰れて雪だるま状態となったので、外しました。引っ越したり、まあ色々あってサボテンは大分枯らしました。残っているものも大分荒れているので、少しずつ仕立て直す予定です。


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植物にとって花は繁殖のために重要です。それは、サボテンや多肉植物も同様です。そのため、最近はサボテンの受粉に関する論文をいくつかご紹介して来ました。しかし、繁殖のためには受粉して終わりではなく、種子を作りばら撒かなくてはなりません。せっかく出来た種子がただ親植物の根元に落ちるだけでは、あまり意味はありません。あまりにも近いと、親植物と光や養分の競争をしなくてはならないからです。また、繁殖は個体を増やす目的があります。ですから、ある程度は離れた場所に運ばれて、分布を拡大出来れば最良です。ですから、種子に綿毛をつけて風で飛ばされたり、細かいトゲや毛を生やして動物の毛に付着して遠くに運ばれたりします。しかし、種子がどれだけ発芽可能な場所に運ばれるかも重要です。例えば、エライオソーム(Elaiosome)という養分をつけた種子は、蟻により種子が蟻の巣に運ばれます。蟻の巣の中は湿っているため、種子が発芽しやすい環境です。乾燥地に生えるサボテンは、種子が地下に運ばれるということは非常に意味があるでしょう。しかし、エライオソームがないサボテンもあります。種子の散布はどのように行われているのでしょうか? エライオソームがないサボテンの種子散布はどのように行われているのでしょうか? 本日はKatielle Silva Brito-Kateivas & Michele Martins Correaの2012年の論文、『Ants interacting with fruits of Melocactus conoideus Buining & Brederoo (Cactaceae) in southwestern Bahia, Brazil』をご紹介します。

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Melocactus intortus
Melocactus communisとして記載。
M. conoideusの良い図譜がなかったので、代わりにM. intortusを示しました。発達した花座に注目。
『Verhandlungen des Vereins zur Beforderung des Gartenbaues in den Koniglich Preussischen Staaten』(1827年)より


Melocactus conoideusは、石英砂利で出来たわずか10キロ平方メートルの面積に生えます。しかし、土木工事用に砂利が採掘されているため、数を減らしています。M. conoideusは絶滅危惧種に指定されていますが、その生態は詳しく調査されておりません。著者らはM. conoideusの種子の分散を調査することが、今後の種の保全のための計画において有用な情報を提供することが期待されます。
研究はブラジルのBahia州Vitoria da ConquistaにあるSerra do Periperi公園で実施されました。6月〜10月は乾燥し、11月〜3月に雨が降ります。植生は季節性の森林とステップ状サバンナの混合からなります。

M. conoideusは長さ17〜21mmの果実を一年中生産し、4月が生産のピークです。果実は多肉質で赤〜ピンクで、花座(cephalium)内で発達します。果実は熟すと花座から露出します。果実には黒い小さな種子があり、おそらくはトカゲや蟻により分散されると考えられています。
調査らはお互いに最低10m以上離れた同程度のサイズの30個体のサボテンを観察しました。M. conoideusの花座から落ちた果実に対し、7種類の蟻が集まりました。花座から落ちた果実のうち、60個の果実にをマーキングして追跡しました。60個のうち23個が蟻に来ました。蟻のうち3種類は種類散布に適した行動を示しました。

以上が論文の簡単な要約となります。
蟻による種子の散布は、エライオソームが関与します。しかし、エライオソームを持たない種子も蟻により種子が分散されることが分かります。種子ではなく、蟻が運搬出来る小さな果実も意味があるようです。


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フェロカクタス(Ferocactus)はそのトゲの強さから強棘類などと呼ばれていますが、始めはエキノカクタス(Echinocactus)に含まれていました。エキノカクタスも強棘類に含まれて呼ばれたりしますが、実際にフェロカクタスとエキノカクタスは近縁な仲間です。
何とはなしにフェロカクタスについてデータベースを漁っていたところ、Ferocactus acanthodesはFerocactus viridescensの異名とありました。おそらくですが、F. viridescensは「竜眼」のことですよね。しかし、F. acanthodesとは何者なんでしょうか。普通はF. cylindraceusを「鯱頭」と呼ぶわけですが、「鯱頭」をFerocactus acanthodesとしているサイトもあるようです。このF. acanthodesは命名が1922年のようです。引用された元の名前があり、1839年に命名されたEchinocactus acanthodesがあります。さて、ここで現在正式な学名とされるF. viridescensの命名年はと言うと1922年でした。これは、F. acanthodesと同じですが、共に命名者であるBritton & RoseがEchinocactusからFerocactusに移動させたからです。しかし、F. viridescensの由来となった引用元の学名は、1840年に命名されたEchinocactus viridescensです。おやおや、何やらおかしいのではないでしょうか? 命名年は早い方が優先されますから、命名年が早いE. acanthodesを引用したF. acanthodesが正しい学名ではないのでしょうか? そうなっていない以上は、何かがあったと言うことでしょう。調べてみました。結果として出てきたのは、Wendy Hodgsonらの2011の論文、『Proposal to reject the name Echinocactus acanthodes (Cactaceae)』です。何が問題だったのでしょう。

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Ferocactus viridescens
Echinocactus orcuttii Englem. ex Orcuttとして記載

「The West-American scientist」(1886年)より

事の起こり
Echinocactus acanthodes Lem.は、ガーデナーであるJames CourantがLemaireに贈った乾燥標本に基づいています。採取は「カリフォルニア」とありますが、カリフォルニア州なのかバハ・カリフォルニアのことなのかは分かりません。
1898年にWeberはカリフォルニア南東部とバハ・カリフォルニア北部、ネバダ州南部の内陸種に、以前から知られていたEchinocactus cylindraceusを当てました。Weberは「1846年にMonvilleで開花しました。Celsに保管されている乾燥標本を見ましたが、Engelmannが1852年にE. cylindraceusとして記述したものと完全に同一です」と述べました。

Taylorの議論
Taylor(1979年)は、WeberのMonvilleのコレクションと標本の比較に対して、Monville標本がCourantによりLemaireに贈られた乾燥標本と同種であると信じる理由はないと言う説得力のある議論を提示しました。南カリフォルニアの乾燥した砂漠の山岳地帯の内陸部で標本を収集することは、Courantの標本の1830年代でも、Monvilleの標本の1840年代でも困難だったはずです。Taylorは、むしろCourantの標本は未知の収集家により太平洋岸で入手したもので、F. viridescens、F. fordii、F. chrysacanthusなどのフェロカクタスの沿岸種の1つを示しているのではないかと言います。さらに、Monvilleの収集家が内陸部を旅したとしても、Courantのサボテンと同じ起源であるという証拠はないことを指摘しました。よってTaylorは、E. acanthodesと言う名前が、1979年にF. acanthodesとされたサボテンに適応された可能性は低いと結論付けました。従ってTaylorは、E. acanthodesは曖昧な名前とみなすことを提案しました。しかし、F. acanthodesの名前の使用は継続され、1982年にこの名前を取り上げたLyman Bensonに強く影響されたに違いありません。

名前を拒否する提案
アメリカの系統学的文献では、F. cylindraceusの使用はBensonがTaylorを取り上げたにも関わらず、徐々にF. acanthodesから移行しました。多くの著者は、E. acanthodesが「reject」されたと言う見解を維持し続けました。しかし、E. acanthodesを拒否する正式な提案はされていません。
「Intermountain Flora」の最終巻のサボテン科について検討された時に、この問題が再浮上しました。Lemaireの曖昧な決定とTaylorの議論を踏まえると、E. acanthodesをネオタイプ化(※)するか、名前を拒否する必要があります。F. cylindraceusが1979年以来、系統学的、園芸的、民族植物学的、さらには一般的な文献で使用されています。ICBN第56条に基づく却下が最善であると思われるため、この提案を検討のために提出します。この提案が受け入れられない場合、E. acanthodesはネオタイプ化する必要が生じます。また、F. cylindraceusの継続的な使用に影響を与えない可能性は高いが、沿岸部のフェロカクタスの1種の命名に悪影響を与える可能性があります。それは、「acanthodes」の名前が常に内陸種に使用されてきたため、命名の安定性をさらに破壊する可能性があります。


(※) ネオタイプ : 最初に命名された時に指定された模式標本(ホロタイプ、シンタイプ、パラタイプ)が失われた時に、原記載をもとに新たに補充した標本。新基準標本。

以上が論文の簡単な要約です。
ややこしい話のようですが、要はE. acanthodesは実際は何だったのかよくわからないから、使わないようにしましょうというだけのことです。ただ、ちゃんと名前を廃棄しておかないと、Taylorの言うところではF. cylindraceus、F. fordii、F. chrysacanthusあたりのいずれかに相当する可能性があります。そうなると、著者によってはそれらと混同してしまう可能性も出てきます。その都度訂正するよりも、ちゃんと議論して正式に名前を廃棄しておいた方が、後の混乱のもとを断つという意味においては有効でしょう。
そう言えば、フェロカクタスやエキノカクタスは、現在ややごたついていますね。いわゆる金鯱(Echinocactus grusonii)がEchinocactusから独立し
Kroenleiniaになりましたが、後の論文では遺伝子解析により、金鯱はなんとFerocactusに入ることが分かりました。また、現在は綾波(Homalocephala texensis)はEchinocactusとなっていますが、やはり遺伝子解析の結果ではEchinocactusではないようです。これらの遺伝子解析の結果はまだ反映されておらず、データベースでは金鯱はKroenleiniaで、綾波はEchinocactusのままです。しかし、いずれ訂正されるのかも知れません。今は遺伝子解析が進行中ですから、過渡期と言えます。ある意味、ダイナミックに変動する面白い時期に我々は生きているのかも知れませんね。

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進化とは基本的には効率化する傾向があります。その特徴が有利にも不利にもならないならば、不要に思えるものも残りますが、そうでないならば有利な方向へ進化します。それは多肉植物も同じで、砂漠などの乾燥地に進出したものは、環境に最適化する傾向があります。乾燥地への適応において、サボテンとユーフォルビアは最も多様化したグループでしょう。サボテンとユーフォルビアが乾燥地に対して最も最適化されているとは限りませんが、水分を貯蔵するために多肉質となり、蒸散を最低限とするために葉を無くしたり夜間に二酸化炭素を吸収したり(CAM植物)と、共通する特徴があり収斂進化の教科書的なお手本のようです。
さて、ユーフォルビアは非常に小さく地味な花を咲かせますが、サボテンは割と大きく派手な花を咲かせます。花を作るにはサイズに見合ったコストがかかりますし、貴重な水分を浪費し花からの蒸散も起こります。一般論としては、乾燥地の植物ほどコストが高い大きな花は短命になることが予想されます。乾燥地に最適化した進化として、短命な花が選択されるのではないでしょうか?
前置きが長くなりましたが、本日はサボテンの花の開花寿命を調査した、Marbela Cuartas-Dominguezらの2022年の論文、『Large flowers can be short-lived: Insights from a high Andean cactus』をご紹介しましょう。著者らはチリ中部の標高2200mのアンデス山脈の乾燥地帯で、Eriosyce curvispinaを調査しました。


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Eriosyce curvispina
Echinocactus horridus Guyとして記載
「Historia fisica y politica de Chile segun documentos adquiridos en esta republicada durante doce anos de residencia en ella y publicada bajo los auspicios del supremo gobierno」(1848年)より


まず、著者らは乾燥地の花の特性として、気温の上昇と、受粉が花の寿命に影響を与える可能性を考えました。あまり高温だと花からの水分喪失が多くなるため、開花は短い方が良いようにも思えます。しかし、実際には気温は花の寿命に関係はありませんでした。
次に受粉についてです。受粉した後も花を咲かせ続けるのは、如何にも非効率です。アルストロメリアなどいくつかの植物でこの受粉誘発性花の老化は確認されています。E. curvispinaは基本的に自家受粉しない自家不和合性ですから、他家受粉したら花を閉じればいいだけです。しかし、受粉も花の寿命には関係がないようです。サボテン科では受粉誘発性花は未確認で、Mammillaria glochidiataやM. grahamiiでもやはり受粉と花の寿命は関係がないことが確認されています。

Primack(1985)は大きな花は大量の資源が費やされているため、小さな花より長持ちするはずであると主張しました。実際に熱帯雨林に生えるラン科のPaphiopedilumでは、花の寿命は花の重量と相関がありました。しかし、水資源が乏しい乾燥地の植物は、水資源を消費するため花は短命であると予想されます。E. curvispinaは40枚以上の花弁花被片を持ち、調査地域で最も高い花の資源量があります。花が全開となった時間は約10時間でした。E. curvispinaが完全に開花した時間は、チリ中央アンデスの山地に自生する24種類の花で記録された平均花寿命4.2日よりも45%短くなっています。

以上が論文の簡単な要約です。
少し解説します。花と気温の関係を気にするのは、花が蒸散しやすいからかも知れません。サボテンは体表から水分が逃げないように表皮を厚くするなどの仕組みがありますが、花は薄くそのような仕組みがありませんから、水分は逃げやすくなります。気温が高ければ、花自体の水分はあっという間に失われ萎れてしまいますが、実際にはサボテン本体から水分が供給され続けるため簡単には萎れないのです。
次に花の寿命についてですが、あまり開花時間が短いと受粉に悪影響があるような気がします。自家受粉する花ならば問題にはなりませんが、E. curvispinaは他家受粉する花です。著者らはE. curvispinaの花を訪れる花粉媒介者を記録しました。複数種類のミツバチと大型のハチドリが訪れましたが、2種類のミツバチで98.9%の割合に達しました。E. curvispinaの1つの花あたりの花粉媒介者の訪問数は平均16回でした。非常に短い開花時間にも関わらず、結実率は62.2%と高いものでした。高コストの花を咲かせるのは、非常に目立ち花粉媒介者を呼び寄せるのに最適な花と言えます。コストを最小限とするために開花時間を短くして、短時間で受粉すると言う戦略なのでしょう。


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植物と昆虫は非常に複雑かつ密接な関係を結んでいます。蝶や蛾の幼虫は植物を食害しますが、成虫は受粉に重要な役目を果たしたりもします。植物との関係においては、蟻に勝る高度な関係性はあまりないかも知れません。ということで、本日の議題は植物と蟻の関係についてです。
蟻は植物を食害する昆虫を捕えたりするため、植物に対してポジティブに働くこともあります。中にはアリ植物という、蟻に住処やエサを与える植物も存在し、蟻は他の昆虫を積極的に攻撃します。しかし、アブラムシから蜜を得るために、蟻がアブラムシを保護してしまうこともあります。ちょうど、サボテンと蟻の関係性について調査した論文があったのでご紹介します。それは、Katherine E. LeVanらの2014年の論文、『Floral visitation by the Argentine ant reduces pollinator visitation and seed set in the coast barrel cactus, Ferocactus viridescens』です。


植物の蟻を利用する戦略として花外蜜腺があります。花以外に蜜腺を持つ植物は、蜜を求めて訪れる蟻により害虫などが排除されます。しかし、花外蜜腺に蟻が沢山集まれば、蟻が花に来てしまうかも知れません。蟻が花にいると花粉媒介者は蟻を嫌がり近づきません。この、蟻を巡る2つ出来事はトレード・オフの関係にあります。
南カリフォルニア沿岸に自生するFerocactus viridescensは花外蜜腺を持ちます。F. viridescensを訪れる在来種の蟻(Crematogaster californica)と、外来種で侵略性のアルゼンチンアリ(Linepithema humile)を比較しました。なお、1個体のサボテンには1種類の蟻が集まります。

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(→)日の出丸の花外蜜腺

F. viridescensを最も多く訪れた花粉媒介者は、Diadasia属のミツバチでした。全体の60.4%を占めています。観察では、在来アリが占有するサボテンでは、アルゼンチンアリが占有するサボテンよりミツバチの訪問時間が62%長くなりました。さらに、アルゼンチンアリが集まるサボテンでは、果実の種子数は6〜33%減少しました。
F. viridescensはその受粉をミツバチ(Diadasia)に依存しており、アルゼンチンアリは受粉に悪影響を与えています。著者らはアルゼンチンアリが訪れたミツバチを攻撃することを観察しました。


以上が論文の簡単な要約です。
ここで言われていることは、サボテンと蟻が長い時間をかけて築いてきた共生関係を、外来種が撹乱しているということです。在来アリは花外蜜腺に引き寄せられても、受粉には影響を与えません。アリは花外蜜腺より蜜を得ることができ、サボテンはアリにより害虫を排除出来るのです。しかし、外来種であるアルゼンチンアリはサボテンとの付き合い方が分からないため、花外蜜腺だけではなく花も独占してしまいます。サボテンにとっては、害虫からは守られますが、受粉効率が低下してしまいます。アルゼンチンアリは数を増やしているということですから、将来的にはサボテンの花外蜜腺はアルゼンチンアリに占有されてしまい、サボテンは数を減らしていく可能性もあります。外来種が思わぬ影響を及ぼしかねないという実例が示された、非常に優れた論文でした。



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キダチアロエ(Aloe arborescent)は昔から普及しているアロエです。今でこそ健康食品として破竹の勢いのAloe veraに押されていますが、キダチアロエは「医者いらず」などと呼ばれ、丈夫なこともありあちこちで見かけたものです。さて、このような普及種でも、原産地では野生個体は少ないということは珍しくありません。キダチアロエの場合はどうでしょうか? 調べてみると、CITES(いわゆるワシントン条約)に関わるキダチアロエの話があるようです。それは、Gideon F. Smithの2008年の論文、『Aloe arborescens (Asphodelaceae: Alooideae) and CITES』です。早速、見ていきましょう。

CITESのための評価
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)は1975年に設立されました。CITESの附属書Iは国際取引により絶滅の危機に瀕している種、附属書IIは国際取引により脅かされる可能性のある種のためのものです。
著者はCITESの要請により、CITESでの分類のためにAloe arborescensを評価しました。これは、南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)の絶滅危惧プログラム(TPS)の活動の一環として、南アフリカのレッドデータを再評価する機会にもなります。
アロエは1994年にCITESから削除されたAloe vera以外の550種類以上がCITESに記載されています。うち、22種類は附属書Iに、残りは附属書IIに記載されています(2008年)。

類似種と分布
A. arborescensに近縁とされるのは、A. hardyiやA. pluridens、A. mutabilis、A. vanbaleniiです。Glen & Hardy(2000)によると、A. mutabilisをA. arborescensの異名とする考えを示しました。これらの5種類のうち、成熟した植物でA. arborescensと間違える可能性があるのはA. mutabilisだけです。
A. arborescensは、アロエの中でも非常に広い地理的分布を持ちます。南アフリカのケープ半島から、海岸沿いに東に向かいモザンビークに達し、そこから内陸部の山地を迂回しマラウイに向かいます。2004年のGlen & Smithによると、南アフリカでは西ケープ州、東ケープ州、自由州、KwaZulu-Natal州、Mpumalanga州、リンポポ州からA. arborescensは記録されています。しかし、Kesting(2003)やMoll & Scott(1981)は、ケープ半島のA. arborescensは人為的に導入されたものであると主張しています。

判別困難と虚偽取引
さて、Aloe arborescensは分布域が広く個体数は非常に豊富です。しかし、地域によっては開発などにより減少しています。しかし、IUCNを適応すると低危険種(LC)とされており、絶滅の危機にある訳ではありません。
多くのアロエは生長後ならば互いに見分けるのは簡単です。しかし、小さな苗のうちは二葉性(distichous)であり、判別が難しくなります。税関職員が利用出来るCITESの植物ガイドでは、未成熟な苗の識別は出来ません。そのため、偽名で取引される可能性があるため、Aloe arborescensもCITESの附属書IIの記載が保持されるべきであると提案します。

以上が論文の簡単な要約です。
キダチアロエ自体は特に絶滅の危機に瀕している訳ではありません。しかし、もしキダチアロエがCITESの附属書から削除され国際取引きが解禁された場合、絶滅危惧種の小さな苗をキダチアロエと偽って密輸出来てしまう可能性があるのです。ですから、CITESの附属書に記載され国際取引を制限するべきであるという提案でした。
実は薬用植物としてはAloe feroxの方が有名で、非常に古くから利用されてきたようです。日本でも法律で薬用成分が記載されているのはAloe feroxだけです。しかし、日本では暖地では露地栽培が可能なことなどにより、キダチアロエが研究されてきました。日本でキダチアロエの成分の有効性について、非常に沢山の論文が出ているようです。そのためか、論文ではアロエの違法取引は日本が想定されると言います。これはおそらくキダチアロエを指しているのでしょう。キダチアロエの抽出物を利用した製品は、日本では昔から沢山ありますが国際的には珍しいのかも知れません。
現在では、Aloe veraが非常に注目を浴びており、製品化につながるせいか、成分の有効性についての論文が世界中から出されています。Aloe veraは世界中で栽培されていますから、1994年にCITESの附属書から除外されました。このことによる苗の虚偽取引については、どの程度の影響があったかは評価されていないということです。



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ナース植物(nurse plants)と言う言葉があります。砂漠などの乾燥地では、何も遮るものがない場所ではなく、他の植物の陰で実生や小型の植物は育つのではないかという考え方です。日陰を提供する植物を看護する植物=ナース植物と呼ぶ訳です。この、ナース植物と言う言葉自体は、いくつかの論文では主題ではありませんでしたが見かけていました。ですから、ナース植物について調べた論文を探してみました。と言う訳で、本日はそんなナース植物とサボテンの関係を調査した、Enrique Juradoらの2013年の論文、『Are nurse plants always necessary for succulent plants? Observation in northeastern Mexico, including endangered and threatened species』をご紹介します。

メキシコ北東部のTamaulipas州BurgosのTamaulipan thornscrub(米国南部とメキシコ北東部の砂漠と低木林からなる地域)で、4種類のサボテン、Ariocarpus retusus、Astrophytum asterias、Mammillaria heyderi、Sclerocactus scheeriと、リュウゼツラン科植物のManfreda longifloraを調査しました。さらに、細長い円筒形の枝を支えるために物理的にナース植物を必要としている可能性があるCylindropuntia leptocaulisと、ナース植物を必要としていないように見えるEchinocactus texensisも調査しました。
主な植生は、Cordia boissieri、Forestiera angustifolia、Guaiacum angustifolium、Bernardia myricaefolia、Karwainskia humboldtiana、Prosopis laevigata、Sideroxylon lanuginosum、Acasia farnesianaなどの低木が生えます。

結果として、ナース植物の下でより頻繁に見られたのはManfledaだけでした。EchinocactusとSclerocactusはナース植物の下以外でよく見られました。他のサボテンはナース植物の下でもそれ以外でも見られました。Manfledaは100個体のうちAcasia rigidulaの下に49個体、Cordia boissieriの下に48個体、残り3個体も他のナース植物の下で見つかりました。A. rigidulaは植生の5%、C. boissieriは14%を占めるに過ぎないため、Manfledaとの強い関係性を疑わせます。

さて、以上の結果からは、サボテンは必ずしもナース植物を必要としていないことが分かります。リュウゼツラン科のAgaveでは、ナース植物が非常に重要であることがすでに判明しています。ですから、Manfledaもまたナース植物を必要としています(※)。
しかし、DurangoのCanon de Fernandez州立公園における過去の調査ではProsopis(マメ科の樹木)の下で3種類のサボテンが生育していることが分かっています。州立公園の降水量は著者らの調査地の1/3でした。著者らはより厳しい環境において、ナース植物が有効に働くと考えました。このProsopisは一般的なナース植物ですが、著者らの調査地でも自生するにも限らず、ナース植物ではありませんでした。

(※) Manfledaは現在ではAgaveに吸収されました。つまり、Manfleda longiflora=Agave longiflora。


以上が論文の簡単な要約です。
一般的にナース植物は、遮光したり温度を低下させたり、土壌の水分の蒸発を緩やかにしたり、草食動物から保護します。この論文の場合は、砂漠の中では水分が多い環境であることから、ナース植物の役割は遮光かも知れません。しかし、サボテンはナース植物の保護がなくても問題はないようです。しかし、Manfledaはサボテンよりも多肉植物として高度化しておらず、より乾燥に敏感な様子が受け取れます。また、より乾燥が厳しい環境ではサボテンでもナース植物が必要なようです。そもそも、砂漠では実生が育てるほどの水分が、サボテンがある程度育って自立出来るまで続く環境ばかりではないことは、なんとなく分かります。また、柱サボテンや大型玉サボテンなどでは、育つにつれ小型のナース植物をやがて圧迫して枯らしてしまうかも知れません。その場合、ナース植物があったかどうかは分からないでしょう。このように、ナース植物の研究は、まだまだ発展途上なようです。他にも良い論文があればまたご紹介したいと思います。


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気付けばサボテンや多肉植物の論文を随分と読み、また随分な数を記事にしました。中にはストーリー性のある実に読ませる論文もあります。本日は過去の記事の中から、ストーリー性のあるものをいくつかピックアップしてみました。興味がある記事がありましたら、リンクをクリックしてみて下さい。

①Euphorbia robecchiiでバナナを運んだ話(1954)
アフリカの植民地時代、イタリアのバナナ・プランテーションがありました。その輸送にユーフォルビアが使われたというのです。どのようにして利用したのでしょうか?


②Aloidendron dichotomumの発見(2021)
Aloidendronは巨大なアロエです。17世紀にオランダ東インド会社が南アフリカに基地を設置し、資源探査に乗り出しました。ここから、Aloidendronの歴史は始まります。それ以来、沢山の西洋人がアフリカを訪れ、Aloidendronに興味を惹かれました。


③ウンカリーナと巨鳥(2009)
Uncarinaはマダガスカル原産の塊根植物ですが、そのトゲトゲの実を運ぶ動物は不明でした。果実は丈夫で自然と種子が出てこないため、ウンカリーナの種子をばらまく役目の動物はすでに絶滅している可能性が高いのです。では、その動物とは何でしょうか?


④Dioon spinulosumを探して(1909)
この論文は、Dioon spinulosumという世界最大のソテツを探す旅の様子が描かれています。1908年に著者はメキシコを訪れ、馬に乗り巨大ソテツの自生地を探しました。その巨大さと葉の優美さは著者を感嘆させます。


⑤Gasteria baylissianaの前日譚(1999)
Gasteria baylissianaは1960年にアマチュアのTruterにより採取されましたが、1965年にbayliss大佐の採取した個体から命名されました。ガステリア属は「分類学者の悪夢」と呼ばれるほど分類が混乱していましたが、1992年にvan Jaasveldにより整理されました。van JaasveldはTruterの協力のもと野生のG. baylissianaを採取し、bayliss大佐の増やした個体と交配し、減少した自生地に移植しました。


⑥Aloe thompsoniaeは誰に献じられたのか?(2011)
Aloe thopsoniaeは1936年にGroenewaldにより命名されましたが、この「thompsoniae」とは明らかに人名から来ていますが、誰に対する献名なのでしょうか? 


⑦サボテンの違法取引について(2022)
サボテンは希少なものが多く、そのほとんどが国際的な取引はワシントン条約により規制されています。しかし、オンライン取引の普及により、違法売買が気安く行われている現状があります。著者らは違法取引に関するアンケートを実施し、我々のような趣味家の意識を調査しました。


⑧韓国におけるDudleyaの違法取引の背景(2020)
韓国の業者によるDudleyaの違法採取が近年自生地で起きていますが、その背景を探っています。その理由を正しく理解しないと、効果的な保全活動は難しいことが分かります。



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Weberbauerocereusはペルーとボリビア原産の中型の柱サボテンです。なにやら、このWeberbauerocereusはHaageocereusの異名であるという意見もあるそうです。しかし、その意見に対して反対し、Weberbauerocereusの名前を保存する提案が提出されています。それは、Paul Hoxey & Nigel Taylorの2020年の論文、『Proposal to conserve the name Weberbauerocereus (Cactaceae) with a conserved type』です。一体、どのような経緯があるのでしょうか?

ただし、論文は基本情報を知っている前提で書かれているようで、説明がないので非常に分かりにくくなっています。私が情報を追加しつつ解説します。
Weberbauerocereus Backeb.は1942年にBackebergにより命名されました。その時にBackebergが記載した種が、Weberbauerocereus fascicularis (Meyen) Backeb.でした。 問題はここからです。
1980年にE. Ritterは、W. fascicularisの前身である、1833年に命名されたCereus fascicularis Meyen、あるいは1934年に命名されたCactus fascicularis (Meyen) Meyenについて、これはWeberbauerocereusではなくHaageocereusを指していたのではないかという指摘をしました。つまり、Haageocereus Backeb.は1933年の命名でありWeberbauerocereusより命名が早いため、Weberbauerocereusという属自体が無効となってしまいます。W. fascicularisも使えないということになります。
著者のうちHoxeyは2020年に、Meyenのペルーでの足取りを追い、Ritterと同じ結論に達しました。Cereus fascicularisとはHaageocereusを指しています。F. Ritterは1981年にCereus fascicularisをHaageocereus fascicularis (Meyen) F. Ritterと命名しました。ただ、Meyenの説明には混同が見られ、幼体のBrowningia candelaris (Meyen) Britton & Roseを含んでいるようです。
さて、
Cereus fascicularis Meyenをタイプとして利用することは出来ません。そのため、Weberbauerocereusを説明するためには使用出来なくなりました。しかし、Weberbauerocereus Backeb.は過去70年間に渡りサボテンに関する文献で一貫して使用されており、サボテン愛好家や植物園のラベルや植物標本のデータベース、サボテン業者のカタログなどでも使われて来ました。もし、Weberbauerocereusが保存されない場合、新しい名前をつける必要があります。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、相当に噛み砕いて情報を加味しましたが、それでも分かりにくい内容です。簡単にまとめると、Weberbauerocereusは始めて命名された時にHaageocereusをタイプ標本として説明してしまったため正当性がなくなり、Haageocereusの異名となってしまう可能性があったということです。そこで、著者らはWeberbauero属をこのまま存続させて使用することを提案しているのです。現在では、Weberbauerocereusは著者らの提案通り存続しており、Haageocereusとは別属として独立しています。

さらに情報を追加すると、Weberbauerocereusの新しいタイプは、1956年(publ. 1957)に命名されたWeberbauerocereus weberbaueri (K. Schum. ex Vaupel) Backeb.です。これは、1913年に命名されたCereus weberbaueri K. Schum. ex Vaupelから来ているようです。1987年にはHaageocereus weberbaueri (K. Schum. ex Vaupel) D. R. Huntも命名されていますが、認められておりません。ちなみに、1879年にはCereus fascicularis K. Schum.という命名もありましたが、これはMeyenの命名したC. fascicularisと同名なため除外された学名です。

最後に現在認められているWeberbauerocereus属8種類と、Weberbauerocereus属の名前がつけられたことがある異名を記して終わります。

Weberbauerocereus Backeb.
①W. albus
②W. cephalomacrostibas
③W. churinensis
④W. cuzcoensis
⑤W. madidiensis
⑥W. rauhii
⑦W. weberbaueri
⑧W. winterianus

異名(→現在の学名)
①W. fascicularis
 →Haageocereus fascicularis
②W. horridispinus
    →W. weberbaueri
③W. johnsonii
    →W. winterianus
④W. longicomus
 →W. albus
⑤W. seyboldianus
 →W. weberbaueri
⑥W. torataensis
 →W. weberbaueri


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先日、ここ10年ちょいくらいの、サボテンの新種についての記事を書きました。サボテンは巨大なグループで分布も広く、新種が見つかる余地はまだまだありそうです。その他の多肉植物では、何と言ってもアロエは新種が見つかる可能性が高いと言えます。アロエの新種を説明した論文を探してみたので、少し見てみましょう。まあ、サボテンの時と同じく、すべての新種を調べた訳ではなく、簡単に調べて出てきたものだけです。一応、アロエと近縁なAstrolobaやHaworthia、Gasteriaと、旧・アロエ属についても一部の情報を追加しました。

2010年
・モザンビークから南アフリカのKwaZulu-Natalにかけての地域より、新種のAloe tongaensisが記載されました。しかし、2013年にAloidendron属に移され、Aloidendron tongaensisとなりました。

2011年
・エチオピアから4種類の新種のアロエが記載されました。Aloe benishangulanaAloe ghibensisAloe weloensisAloe welmelensisです。

2012年
・北ソマリアから新種のAloe nugalensisが記載されました。
・マダガスカルから新種の3種類のアロエが記載されました。Aloe beankaensisAloe ivakoanyensisAloe analavelonensisです。
・ナミビアのBaynes山から新種のAloe huntleyanaが記載されました。
・南アフリカのMpumalngaから新種のAloe condyaeが記載されました。
・アンゴラ南西部のナミブ砂漠から新種のAloe mocamedensisが記載されました。


2014年
・マダガスカル北部から新種のAloe gautieriが記載されました。
・南アフリカのMpumalangaから新種のAloe andersoniiが記載されました。
・南アフリカの東ケープ州から新種のAloe liliputanaが記載されました。
・南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria loedolffiaeが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州新種のからGasteria barbaeが記載されました。

2015年
・ウガンダから新種のAloe lukeanaが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州から新種のAstroloba cremnophilaが記載されました。

2017年
・マダガスカル北西部から新種のAloe belitsakensisが記載されました。
・マダガスカルから新種のLomatophyllum類である、Aloe maningoryensisAloe alaotrensisが記載されました。
・ケニアから新種のAloe zygorabaiensisAloe uncinataが記載されました。
・南アフリカから新種のAstroloba tenaxAstroloba robustaが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州から新種のHaworthia grenieriが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州から新種のGasteria koelniiが記載されました。

2018年
・南アフリカのCape Provから新種のHaworthia duraHaworthia ernstiiHaworthia vitrisが記載されました。

2019年
・ソマリランドから新種のAloe sanguinalisが記載されました。

2020年
・マダガスカル東部の湿潤林から新種のAloe vatovavensisAloe rakotonasoloiが記載されました。
・インドの砂漠から新種のAloe ngutwaensisが記載されました。
・南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria visseriiGasteria camillaeが記載されました。


2021年
・アンゴラ北西部から新種のAloe ugiensis が記載されました。

2022年
・南アフリカ北部から新種のLeptaloe類であるAloe hankeyiが記載されました。

2023年
・アンゴラ南部からの新種としてGonialoe borealisが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。

と言う訳で、近年のアロエ類の新種でした。基本的に調べたのは名前だけで、画像検索はしていないため、園芸的な重要度は分かりません。しかし、個人的にはゴニアロエの新種が気になります。ゴニアロエは3種類しかありませんから、新種の発見は大変な驚きです。とはいえ、論文が出たばかりですから、正式な学名として認められるかどうかはこれからでしょう。また、Aloe tongaensisは巨大なAloidendronの新種と言うことで、このような目立つ植物が今まで記載されていなかったのは不思議です。あと、Aloe ngutwaensisはインドからの新種と言うことですが、アロエの自然分布がインドまであることに驚きました。アロエの私の持つイメージでは、アフリカ大陸とマダガスカル、アラビア半島に少しあるくらいなものでした。まあ、これは勝手な思い込みで、調べれば簡単に分かることでしたね。


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マダガスカルは様々な動植物の宝庫で、非常に多くの固有種が知られています。特にユーフォルビア属の多様性には目を見張るものがあり、非常に沢山の種類の花キリンはマダガスカル原産のユーフォルビアの代表です。しかし、マダガスカルには花キリン以外のユーフォルビアも沢山ありますが、森林地帯に生える樹木型のユーフォルビアはあまり知名度がなく育てている人もあまりいないでしょう。本日はそんな非多肉植物のユーフォルビアの分類を提案したThomas Haevermansの2006年の論文、『Taxnomy of the Euphorbia pyrifolia clade』をご紹介します。

Euphorbia L.は2 番目に大きな属であり、約2000種類が知られています。しかし、1862年のBoisser以降は世界的な改訂はなく、それ以降は園芸的に重要な多肉植物のグループを扱ったものばかりです。非多肉植物あるいは半多肉植物は、「ユーフォルビア学者」(Euphorbiologists)からは無視されており、Euphorbia hedyotoidesに近い分類群の大部分もそうです。E. hedyotoidesの仲間は非公式な「Euphorbia pyrifolia group」を形成し、コレクションされる有名な種類もごくわずかです。このグループはマスカレン諸島とマダガスカルに固有です。このグループの多くは記載されておらず、この論文は命名上の知識と問題を整理するよい機会です。

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Euphorbia bongolavensis

このグループは、新しく芽の根元には葉がないかほとんどなく、葉は枝の先端に集まります。翌年、節間が極端に減少した短枝になり花を咲かせます。新しい芽は脇芽によります。このグループの生長を、Rauh(1992)は「hedyotoides型分岐」と呼んでいます。
葉は通常は落葉性で、E. elliotii以外の葉は多肉質ではありません。花は様々な形態を取ります。
このグループは、狭義のsection Denisophorbiaで、花キリン仲間(section Denisophorbia)の姉妹群です。

最後にpyrifoliaグループの一覧を示します。
1, E. abotii Baker, 1894
2, E. ankaranae Leandri, 1945
3, E. aprica Baill., 1886
4, E. betacea Baill., 1886
5, E. boivinii Boiss., 1849
 ・E. boivinii v. boivinii
 ・E. boivinii v. minor Leandri, 1945
 ・E. boivinii v. oreades Leandri, 1945
6, E. bongolavensis Rauh, 1993
7, E. elliotii Leandri, 1945
8, E. erythroxyloides Baker, 1883
9, E. hedyotoides N. E. Br., 1911
  =E. decaryiana Croizat., 1934
10, E. mahabobokensis Rauh, nom inv., 1995
11, E. mangorensis Leandri, 1945
12, E. martinae Rauh, 1999
13, E. physoclada Boiss., 1860
14, E. pyrifolia Lam., 1796
  =E. gracilipes Baill., 1861
15, E. rangovalensis Leandri, 1945
  =E. castillonii Lavranos, 2002
16, E. umbraculiformis Rauh, nom nud., 1994
17, E. zakamenae Leandri, 1945

以上が論文の簡単な要約です。
このpyrifoliaグループはsection Denisophorbiaの一部をなすようですが、section Denisophorbia自体は遺伝子解析によりsection Deuterocalliに近縁であることが判明しています。section Deuterocalliは、E. alluaudiiやE. cedrorumなどを含む、緑色の棒状のユーフォルビアです。そして、section Denisophorbiaとsection Deuterocalliは、花キリンの仲間であるsection Goniostemaに近縁です。3つのグループは外見こそまったく異なりますが、マダガスカル原産であり起源が同じ植物であることが分かります。
しかし、このタイプのユーフォルビアは、基本的に見かけませんし、しかも分類や命名は遅れているようです。この仲間は、現在どうなっているのでしょうか? おそらくは種類は増えていそうですが、簡単には確認出来なさそうです。なにか、まとめてくれている良い論文が出てくれていると助かるのですが…


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厳しい環境に暮らすサボテンと言えども、その繁殖のためには花を咲かせ、昆虫などの花粉媒介者を呼び寄せ種子を作る必要があります。受粉と花粉媒介者の関係について、このブログでは度々記事にしています。例えば、カップ型の白い花を咲かせる柱サボテンはコウモリにより受粉するコウモリ媒花が多く、小型の花を咲かせるFerocactusはサボテンミツバチによる受粉、夜間に開花するLophocereus scottiiは蛾媒花、管状の赤い花を咲かせるOreocereus、Cleistocactus、Matucana、Denmozaなどはハチドリにより受粉する鳥媒花だったりと、サボテンは花粉媒介者も多様です。
私は個人的に受粉生物学には多大な興味があります。サボテンの種類により様々ですから、なるべく沢山の種類について知りたいところです。とはいえ、すべてのサボテンでこのような研究がなされている訳ではありませんが、少しずつ学んで行ければと考えましたおります。
と言う訳で、調べていたら鸞鳳玉(Astrophytum myriostigma)の受粉について調査した論文が見つかりました。それは、Cristian A. Martinez-Adrianoらによる2015年の論文、『Floral visitor of Astrophytum myriostigma in La Sierra El Sarnoso, Durango, Mexico』です。早速、内容を見ていきましょう。

花への訪問者の構成と豊富さは、受粉システムの理解や生態学的にも重要です。効果的な花粉媒介者の特定は希少種の保全にとっても価値が高い研究です。サボテンの多くは自家受粉しない自家不和合性です。しかし、花を訪れる動物の全てが効率的な花粉媒介者であるとは限りません。
著者らはメキシコのDurango州、Sierra El Sarnosoにおいて、鸞鳳玉の花に来た昆虫を撮影し、どのような種類が花のどこに触れたかを記録しました。この時、花の外側に来た昆虫はカウントはされましたが、花粉媒介者とは見なされません。重要なのは、蜜が目的の採蜜者、花粉を食べる採餌者、雄しべに触れた者、花の内側に来た者です。
鸞鳳玉の花に最も多く来た昆虫は、Anamboderia属の甲虫でした。タマムシの仲間のようです。花を訪れた昆虫165匹中122匹と圧倒的な数です。そのうち112匹は花粉と蜜を食べ、6匹は蜜だけを食べました。次に多いのがミツバチの仲間で21匹です。ミツバチはDiadasia olivaceaが16匹、Ancyloscelis apiformisが3匹、Augochloropsis metallicaが2匹でしたが、すべて採蜜者でした。他にもPhaedrotettixと言うトゲバッタが19匹も訪れましたが、どうやら花そのものを食べに来たようです。また、2種類のハエも計3匹来ましたが、受粉に関与していないようです。
著者らはDiadasiaと言うミツバチが鸞鳳玉の主たる花粉媒介者であると考えているようです。一般的にDiadasiaの中にはサボテンミツバチと呼ばれる種類もおり、サボテンをよく訪れるミツバチです。ちなみに、サボテンミツバチ(Diadasia rinconis)は兜丸(Astrophytum astesias)の主要な花粉媒介者とされています。


以上が論文の簡単な要約です。
論文では訪花昆虫の行動別に重要度を分けています。著者らはミツバチの採蜜行動を評価しているようです。しかし、一般的に花粉媒介者を調べる時は、受粉したかを確認することが普通です。それは昆虫と鳥、昆虫とコウモリなどネットなどを用いサイズで花を訪れることが出来ないようにしたりして、受粉率を比較します。ただ、今回はサイズで分けることが出来ません。実験室でそれぞれの昆虫を鸞鳳玉の花と同じケージなどに入れ、花を訪れた後に柱頭についた花粉を数えるなどの確認が必要かも知れませんね。


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我々趣味家にとって、サボテンは育てるものであり、ある意味では観葉植物と言えます。しかし、世界では観賞用だけではなく、様々な用途に利用しています。例えば、ウチワサボテンを家畜の餌にしたり、色素をとるためにコチニールカイガラムシを育てたりします。また、ドラゴンフルーツの実は日本でも販売していることがあり、食べたことがある人もいるでしょう。しかし、それらのほとんどは近代以降のグローバル化が進んだ後の話で、まだ文化と呼べるものではないでしょう。考えてみれば、サボテンの自生地には大昔から人が暮らしており、身近な植物を利用して来ました。当然ながらサボテンも活用してきたはずです。簡潔にまとめられた論文を見つけましたので、ご紹介します。それは、Kamila Marques Pedrosaらの2018年の論文、『Traditional Techniques for the Management of Cactaceae in the Americas: The Relationship between Use and Conservation』です。

サボテンは季節的な干ばつの間に、人間の食糧、家畜の飼料、および薬として、管理の下で使用されます。サボテンは長い干ばつ期間中に人間が利用可能な数少ない水源の1つです。例えば、ブラジル北東部の内陸部にあるCaatingaサボテンの種類と個体数が最も豊富で、19属62種類が確認されています。Pilosocereus pachycladusやCereus jamacaru、Pilosocereus gounelleiは地元の人々に最も利用されているサボテンです。ブラジルの半乾燥地域の農村は家畜の飼育を主な生活手段としています。年間を通じて牧草が手に入らないので、サボテンが家畜の飼料として利用されています。

Tehuacan-Cuicatlan渓谷では、1400年前の柱サボテンの食糧としての記録があります。さらに、幻覚作用のあるメスカリンを含むPeyote(Lophophora williamsii)やSan Pedroサボテン(Trichocereus pachanoi)は非常に古くから儀式に使用されてきました。San Pedroサボテンは3000年以上に渡りアンデス山脈で宗教的な占いなどに使用されており、初期のChavin文化(紀元前900年頃)には驚くほどリアルなサボテンの絵が残されています。

サボテンのいくつかの種は伝統的に使用され、挿し木により維持できる種類が選択され、管理を受けている可能性があります。好ましい特性を意図的に選択することは、選抜されて野生型とは異なる姿になっているかも知れません。このように、地元住民が望む果実の大きさや甘さ、肉質などは選抜され、有用ではないサボテンは排除されてきたようです。
サボテンの管理は、目的の個体を保護し害虫などを排除し、有用なサボテンが拡大します。また、肥料や剪定などにより、個体数の増加を促進します。種子の播種や移植も行われています。


ブラジルでは、地域の経済や文化におけるサボテンの重要性から、サボテンの管理に関する研究が行われています。伝統的な管理技術が遺伝的変異とどう関係するのか、あるいはCereus jamacaruの栽培植物としての側面を理解しようとしています。C. jamacaruはブラジル半乾燥地域の地元住民により集中的に使用されるサボテンです。しかし、現在のサボテンの乱獲と、再生プロセスの欠如が環境問題を引き起こし、個体数の減少につながる可能性があることが指摘されています。

以上が論文の簡単な要約です。
意外と実例が少なく総論的な内容でした。しかし、論文にある伝統的なサボテン管理は重要な概念かも知れません。なぜなら、資源を管理し維持出来ると言うことは、再生可能ということだからです。人口が増えて人が外部から流入するようになると、伝統的な管理による資源では足りなくなり、焼畑や伐採による牧場化が行われ、やがて伝統的な管理方法は衰退し忘れ去られていきます。ところが、これらの開発では再生力がないため、次々と新しい土地を開拓し続ける必要があります。当然ながらそこには絶滅危惧種の希少なサボテンも沢山自生していますから、大変な脅威と言えるでしょう。ですから、人口規模を考慮した伝統的な管理方法が求められるのです。伝統的な管理方法ではすぐに規模を急拡大出来ないため、人口の爆発的な増加には適応は難しかったのでしょう。しかし、計画的に時間をかければ準備は可能なはずです。サボテンの未来のためにも、このような研究が発展することを望みます。


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1753年にCarl von LinneがサボテンをCactus属と命名した時には、すでにヨーロッパでもサボテンが栽培されていました。それから、沢山のサボテンが命名されてきましたが、未だに新種のサボテンが見つかっています。最近見つかったサボテンはなんだろうかと思って、少し調べてみました。と言っても、すべての新種を調べた訳ではなく、検索してすぐに出てきたものだけです。しかし、それでも2010年以降に限っても、それなりの種類は見つかりました。主に論文のAbstractだけをサラッと読んだだけですから、あまり詳しい内容は分かりません。ですから、簡単に見ていきましょう。

2012年
アルゼンチンのブエノスアイレス州からウチワサボテンの新種、Opuntia ventanensisが記載されました。しかし、現在ではOpuntia fragilisの異名とされています。

2013年
・ペルー南部からボルジカクタスの新種、Borzicactus hoxeyiが記載されました。しかし、2014年にLoxanthocereus属になり、Loxanthocereus hoxeyiとなりました。

2014年
・ペルー北部からエスポストアの新種、Espostoa cremnophilaが記載されました。
・メキシコのオアハカ州からウェベロケレウスの新種、
Weberocereus alliodorusが記載されました。
・メキシコのタマウリパス州からマミラリアの新種、
Mammillaria huntianaが記載されました。しかし、現在ではM. roseoalbaの異名とされています。

2015年
・アルゼンチンのコルドバ州からギムノカリキウムの新種、Gymnocalycium campestreが記載されました。
・メキシコ中央部でツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus heliaeが記載されました。 しかし、2021年にKadenicarpus属になり、Kadenicarpus heliaeとされています。

2017年
・エルサルバドルでディソカクタスの新種、Disocactus salvadorensisが記載されました。
・メキシコのCoahuila州からウチワサボテンの新種、
Corynopuntia deinacanthaCorynopuntia halophilaが記載されました。しかし、2018年に2種類ともGrusonia属になり、Grusonia deinacanthaGrusonia halophilaとされています。実は、Corynopuntia属は消滅し、すべてGrusonia属となっています。

2018年
・メソアメリカ地域からデアミアの新種、Deamia montalvoaeが記載されました。
・メキシコのオアハカ州からテロカクタスの新種、
Thelocactus tepelmemensisが記載されました。

2019年
・メキシコ南部からケファロケレウスの新種、Cephalocereus parvispinusが記載されました。
・メキシコのヌエボレオン州からツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus boedekerianusが記載されました。

2020年
・ペルーからリマンベンソニアの新種、Lymanbensonia choquequiraensisが記載されました。
・メキシコのハリスコ州からアカントケレウスの新種、
Acanthocereus paradoxusが記載されました。
・メキシコのシナロアからコケミエアの新種、
Cochemiea thomasiiが記載されました。
・メキシコからマミラリアの新種、
Mammillaria breviplumosaが記載されました。しかし、現在ではM. sanchez-mejoradae subsp. breviplumosaの異名とされています。
・分類が曖昧だったEchinocereus pulchellus複合体が整理され、
Echinocereus acanthosetusEchinocereus sharpiiが新種として分離されました。

2021年
・メキシコのハリスコ州南部からアカントケレウスの新種、Acanthocereus atropurpureusが記載されました。
・メキシコのバハ・カリフォルニア半島からウチワサボテンの新種、Opuntia sierralagunensisOpuntia caboensisが記載されました。
・ガラパゴス諸島のイスパニョーラ島に自生するPilosocereusはP. polygonusとされてきましたが、新種のPilosocereus brevispinusPilosocereus excelsusPilosocereus samanensisに分解されました。

2022年
・ニカラグアからデアミアの新種、Deamia funisが記載されました。
・メキシコのサン・ルイス・ポトシ州からマミラリアの新種、Mammillaria morentinianaが説明されました。しかし、キュー王立植物園のデータベースにはまだ記載がありません。新種であるか否か、正式に審査されるのはこれからのようです。
・分類が曖昧だったMammillaria fittkaui複合体を分析し、ハリスコ州原産のMammillaria arreolaeを新種として説明しました。しかし、こちらもまだキュー王立植物園に記載はありません。

2023年
2023年に記載された新種は、まだキュー王立植物園のデータベースには記載がありません。
・ペルーからウチワサボテンの新種、Cumulopuntia mollispinaが説明されました。
・ブラジルからパロディアの新種、Parodia flavaが説明されました。
・ブラジルのリオグランデ・ド・スル州西部からパロディアの新種、Parodia hofackerianaが説明されました。

以上が調べた限りの最近の新種です。しかし、よく考えたら新種が書かれたサイトとかありそうですね。海外ではそういうデータを集めたようなサイトも多いですし。まあ、でも論文から直に名前を抽出して、データベースと照合して、自分で確かめた内容ですから、勉強になったと思うことにしました。今年に発表された種は、これから検証されて、将来的に正式にデータベースに記載されていく可能性があります。せっかく調べたのですから、これからは注視していきたいですね。


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異様な暑さが続きます。しかし、もう8月も半ばに差し掛かり、多肉植物たちもあとひと踏ん張りといったところでしょうか。サボテンたちは概ね調子が良さそうですが、ユーフォルビアは種類によっては辛そうです。

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臥牛 Gasteria armstrongii
まだ小さいのに早くも開花。時期外れなような気もしますがどうなんでしょうか? G. nitidaの変種とされていますが、遺伝子解析の結果ではG. nitidaとは近縁ではないようです。

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花は「gaster=胃」と言うガステリア属の命名とは異なり、細長い形です。

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Aloe somaliensis
去年は焦がしましたが、今年は遮光もバッチリしています。しかし、暑すぎるせいか下葉が枯れてしまいました。

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Aloe bakeri
暑くなるにつれ葉の艶がイマイチです。根にダメージがあるのかも知れません。バケリの原産地は工事用石材の採取のために爆破され更地になりました。野生絶滅種。


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女王錦 Aloe parviflora
青い小型アロエです。夏は赤味が増して紫色になりますが元気です。

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士童 Frailea castanea
10年以上植えっぱなしで、自然に個体が更新されて維持されてきました。冬でも一切保護していないので、霜に当たっても雪が積もっても割と平気みたいです。そのかわり、成長点が潰れて多頭になりやすいみたいです。


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斑入り花キリン Euphorbia imperatae cv.
花キリンは鮮やかで綺麗ですね。インペラタエは2021年にE. miliiから独立したばかりです。


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Euphorbia tulearensis 
よく日に当てると葉か小さくなり、厚みが増して強く縮れます。暑さにも乾燥にも非常に強く、地味な花が乱れ咲きしています。


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Euphorbia mlanjeana
ようやく動き始めました。現地球ではないため、あの独特の姿ではありせん。あの灰色の塊茎のようなものは山火事により焼けて出来る、原産地に特異的なものです。


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Euphorbia griseola
初めての開花です。まあ地味ですけど。

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Euphorbia venefica
E. venenificaはどうやら書き損じで、E. veneficaが正しい学名です。猛毒三兄弟はE. poissonii、E. venefica、E. unispinaですが、E. unispinaはE. veneficaと同種とする意見があります。もしそうなったら、E. sapiniiを昇格させたいところです。


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Euphorbia sapinii
猛毒三兄弟に昇格するのでしょうか?

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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia
鉄甲丸は新しい葉が伸展中に水が切れると、葉先が枯れ込んでしまいます。今年は割と気をつけたので、葉の枚数がかなり増えました。鉄甲丸は夏に弱いと言われますが、むしろ7月8月によく葉が出てしばしば開花しました。単に夏に乾燥しすぎるだけかも知れませんね。


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天荒竜 Euphorbia caput-medusae
まだ若い苗ですが開花しました。始めは枝すらない大豆くらいのサイズでしたから、よく育っています。おそらくは、遮光を強くすると枝がもっと伸びるのかも知れません。


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金輪際 Euphorbia gorgonis
金輪際はあまり使われない名前で、ゴルゴニスの方が通りがいいですね。毎年、よく花を咲かせます。


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ソテツキリン
ちょっと手に負えない感じになってきたソテツキリンです。どう仕立てるか悩んでいるうちにどんどん巨大化してしまいました。さて、どうしたものやら…



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先月は何やら体調を崩したりして、イベントもパスして大人しくしていました。しかし、最近は体調は良くなったものの、あまりの猛暑に出かける気力が湧きません。基本的に通勤と、帰宅時に駅中のスーパーによるくらいしかしていません。仕事以外では外出せず、ほぼ引きこもり状態でした。しかし、たまーにある都内での仕事がこのクソ暑い最中に入ってしまい、いやいやながら行ってきました。都内での仕事は半日でしたから、西武池袋の鶴仙園に少し顔を出してきました。以前来たのは5月のことで、やっぱり仕事の帰りでしたね。最近は鶴仙園だけを目的に出かけることもあまりなくなりました。何故か正月明けは毎年行ってますが。

さて、台風が来ている影響で曇時々雨と予報されていましたが、どういう訳か晴れ渡り非常に暑くなりました。汗を拭きながら鶴仙園を見てきました。今日は店主の鶴岡秀明さんもいらっしゃいましたね。
店前にはAloidendron dicotomumとPachypodium
geayiが沢山並んでいました。入ってすぐ左にはAgaveがありましたが、詳しくないのでよく分かりません。エケベリアも並んでいましたが、オフィシャルブログで入荷した量からすると大分少なく見えました。売れていて回転が早いみたいですね。塊根性のモナデニウムもいくつか並んでいて、まあ当たり前ですがお高いので見るだけです。私の好きなユーフォルビアはほぼ普及種、硬葉系ハウォルチアはH. glaucaとH. nigraくらいでしょうか。軟葉系ハウォルチアは相変わらず沢山ありました。サボテンは相変わらずギムノカリキウムしか見ませんでしたが、結構種類が豊富でしたね。色々気になって結構悩みました。アチラセンセの変種が気になりましたが、今回は購入せず、プンゲンスを購入。オフィシャルブログに入荷情報があった花キリンもゲットしました。


本日の購入品はこちら。
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Euphorbia ankarensis
花キリンの仲間です。E. viguieriと関連付けて説明されますが、実はE. neohumbertiiに近縁です。現在ではE. ankarensisはE. denisianaの変種とされています。
さて、オフィシャルブログの入荷情報を見ていたら、E. 
denisianaっぽいユーフォルビアが入ったみたいなので気になっていました。E. denisiana var. ankarensisの苗はすでに入手済みですから、比べて見たかった訳です。しかし、名札は変種アンカレンシスでした。ところが、アンカレンシスの特徴である葉の産毛がありません。E. denisianaのような気がします。
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葉には産毛がありません。
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こちらはvar. ankarensis。葉裏に沢山の毛があり、葉の表側にも短い毛がまばらにあります。

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プンゲンス
ギムノカリキウムはトゲが張り付くようなタイプばかり集めていましたが、今日は少し変わったところをチョイス。プンゲンスとはGymnocalycium pungensのことですが、現在はG. schickendantzii subsp. schickendantziiの異名となっているようです。しかし、「pungens」とは「刺すような」と言う意味ですが、本当にトゲが鋭いですね。トレーから鉢をとる時に指に刺さりまくりでした。
2鉢とも鉢が小さいので植え替えたいところですが、時期的によろしくないですかね。


そう言えば、西武池袋の屋上に、いつの間にか池が出来ていて、スイレンが咲いていました。
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サボテンに限らず生物は突然変異をおこして、場合によっては姿が大きく変化します。しかし、もとより環境に適応した姿が変わってしまうため、あるべき特徴がない場合、環境適応が出来ない一過性の突然変異であることが多いように思われます。死亡率がノーマルタイプより高いため子孫には広がっていかず、普通は消滅してしまいます。動物なら目立ってしまい、捕食率が高くなってしまうアルビノが有名です。サボテンでもトゲがなかったりする変異はたまにあり、園芸的には珍重されます。なにか良い論文はないか調べたところ、Richard R. Montanucci & Klaus-Peter Kleszewskiの2020年の論文、『A TAXONOMIC EVALUATION OF ASTROPHYTUM MYRIOSTIGMA VAR. NUDUM (CACTACEAE)』を見つけました。鸞鳳玉の白点がないタイプを調査した論文です。
鸞鳳玉(Astrophytum myriostigma)は、メキシコ原産の白点に覆われた美しいサボテンです。しかし、自生する鸞鳳玉の中にも、白点があまりないか、あるいはまったくないタイプも存在すると言います。サボテン図鑑では、Astrophytum myriostigma "nuda"などと表記されますが、一体どのような存在なのでしょうか? 

鸞鳳玉の分類
その前に、鸞鳳玉の現在の分類について軽く触れておきます。鸞鳳玉の学名は、1839年に命名されたAstrophytum myriostigma Lem.です。亜種はsubsp. myriostigmaと、1932年に命名されたsubsp. quadricostatum (H. Moeller) K. Kayserの2つだけが認められています。var. strongylogonumが有名ですが、命名者のBackebergはタイプ標本を指定しなかったため、現在ではA. myriostigma subsp. myriostigmaの異名とされています。というより、Backebergの説明は我々がイメージする丸みを帯びたタイプとは異なるため、そもそも別のものを指しているのかも知れません。また、var. potosinum、あるいはsubsp. potosinumはsubsp. myriostigmaの異名に、var. tamaulipense、あるいはsubsp. tamaulipenseはsubsp. quadricostatumの異名とされています。白点がないタイプは1925年にvar. nudumとされましたが、現在では認められておりません。ちなみに、var. coahuilense、あるいはsubsp. coahuilenseは、Astrophytum coahuilenseとして独立種となりました。

2つの"nuda"タイプ
白点がないヌード植物は、メキシコの中央高原とJaumave渓谷北部で発生します。Hoockの1993年のSan Luis Potosiでの観察では、ヌード植物とまばらに白点があるセミヌード植物は互いに近接して育っていました。ヌード植物とセミヌード植物は、低木の陰になる場所に優先的に自生していました。さらに、著者らによる2019年のJaumave渓谷北部の観察では、やはり同様の環境が見られ、逆に白点のあるタイプは完全に太陽光にさらされていました。
中央高原とJaumave渓谷では遺伝的交流はなく、まったく個別にヌードタイプが発生したと考えられます。中央高原の鸞鳳玉はsubsp. myriostigmaで、Jaumave渓谷の鸞鳳玉はsubsp. quadricostatumと推定されています。

標高が上がるとよりヌードに
2004年のHoock & Kleszewskiの観察によると、ヌード植物の集団は、標高1700m以上の高地でのみ発生すると言います。しかも、標高が上がるにつれヌード植物が増加する傾向が見られました。また、太陽光を浴びる場所に生えたヌード植物は、しばしば淡い黄色で部分的に赤味を帯びていました。著者らはアントシアニンによるものと考えましたが、アントシアニンはサボテンには存在しません。サボテンの作る赤色の色素はベタシアニンです。

ヌード植物は日照に弱い
光合成色素のクロロフィルは過度な太陽光線により変性しやすく、ヌード植物の色はクロロフィル変性によるストレスにさらされていることが分かります。鸞鳳玉の白点は日照を和らげる働きがあり、白点がないヌード植物はアガヴェなどの陰で育ちます。また、完全な日照にさらされたまだ小さなヌード植物は、今後の生長は難しいと見られました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
他にも論点はありましたが、はっきりしない感じがあり割愛させていただきました。さて、どうやら、いわゆる"nuda"タイプの鸞鳳玉は、亜種と言えるほど独立してはいないようです。過去に観察されたvar. nudumアレオーレが赤味を帯びるだとか言われていました。しかし、自生地のヌード植物を観察すると、アレオーレが赤味があるものも灰色のものもあり、ヌード植物特有の共通した特徴とは言えないようです。
しかし、鸞鳳玉の白点の効果を考えれば、ヌード植物は通常の日照では枯れてしまうはずです。ですから、ヌード植物は偶発的に発生してもやがて消滅するはずですが、意外にも他の植物の陰で上手く生き残っているところが非常に面白いですね。サボテンも思いの外、強かに環境に適応しているのです。


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2日続けて烏羽玉ネタで記事を書きましたが、何と今日も烏羽玉ネタです。本日は烏羽玉の学名である、Lophophora williamsiiに関するお話しです。本日、ご紹介するのはAnton Hoferの2021年の論文、『Proposal to conserve the name Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyck (Lophophora williamsii) against E. williamsianum Lem. (Cactaceae)』です。
論文はほぼ解説はないため、最初に簡単に烏羽玉の学名についてお話しします。烏羽玉の学名は、1894年に命名されたLophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coult.ですが、初めて命名された時はEchinocactusでした。と言うより、L. williamsiiが命名された時にLophophora属が誕生したのです。現在の学名の元になったのは、1845年に命名されたEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckです。学名は「属名+種小名」が基本ですが、その後に命名者(正式に記載した人)がついたほうが正式な形です。この場合、Lem.とかSalm-Dyckは命名者の略された名前です。Lem.はLemaireのことですが、E. williamsiiは始めLemaireが命名したものの、内容に不足があったのかSalm-DyckがLemaireを引用して詳しく説明したので、Lem. ex Salm-Dyckとなったのでしょう。最終的には、J. M. CoultがE. williamsiiをLophophora属としたため、Lophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coultとなったのです。属名が変わると引用される前の学名の命名者を( )で表します。前置きが長くなりましたが、内容を見てみましょう。


Prince Joseph Salm-Reifferscheidt-Dyckは、1845年にEchinocactus williamsiiについて説明しました。Salm-Dyckはフランスのサボテン業者と非常に良好な関係を築いており、Freres Cels社からE. williamsiiを購入したようです。Celsによる種の説明がない場合、Salm-Dyckはラテン語とドイツ語の完全な説明でE. williamsiiを有効に公開しました。1894年にJohn M. CoulterはEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckをオリジナルとして引用し、Lophophora J. M. Coultを樹立しました。この学名は科学者やアマチュアまで、世界中で受け入れられています。Lophophoraにはアルカロイドを含むため、Lophophora williamsiiの名前は世界中の薬物法に記載されています。

しかし、Salm-Dyckの命名の2年前にEchinocactus williamsianum Lem.が1843年に公表されています。しかし、後のLemaireはSalm-Dyckの公開したE. williamsiiを使用しています。E. williamsianumの名前は170年に渡り見過ごされてきており、キュー王立植物園のデータベースにも記載がありません(2021年当時)。
ここでは、Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckを、国際命名規約のArt14.2に従い、Echinocactus williamsianum Lem.に対して保存することを提案します。提案が受け入れられない時は、一般的に流通した名前を、これまで知られていなかった名前に変える必要があり、世界中の薬物法の記載された名前も変えなくてはなりません。

以上が論文の簡単な要約です。
少し分かりにくい話ですが、命名が早い名前が優先されると言う「先取権の原理」に関する話です。内容は知られていなかったE. williamsianumと言う学名が存在していたため、E. williamsiiが廃棄されてしまうのを防ごうと言う提案でした。まだLophophoraではなくEchinocactusとなっていますから、現在の学名には関係がないように思われるかも知れませんが、実は関係があるのです。なぜなら、属名を変更する場合、どの学名を変更するのかを明らかにするために、旧・学名と記載年などを引用する必要があるからです。E. williamsiiが廃棄されてしまうと、E. williamsiiを引用して命名されたL. williamsiiも自動的に廃棄されてしまうのです。ですから、著者はまったく使用されてこなかった、と言うか知られてすらいなかった名前は廃棄して、今まで使用されてきた名前を保存しましょうと提案したのです。我々趣味家もこの提案には賛成でしょう。やはり、私も親しみのある名前が良いような気がします。


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昨日は日本で入手した烏羽玉(Lophophora williamsii)の遺伝子と幻覚成分を分析した論文をご紹介しました。本日は烏羽玉の原産地における、烏羽玉と兜丸との意外な逸話をご紹介します。それは、Martin Terryらの2007年の論文、『A Tale of Two Cacti-The Complex Relationship between Peyote (Lophophora williamsii) and Endangered Star Cactus (Astrophytum asterias).』です。

兜丸は絶滅危惧種
一般に兜丸(Astrophytum asterias)はStar cactusと呼ばれ、米国テキサス州南部やメキシコのタマウリパス州に固有の絶滅危惧種のサボテンで、テキサス州では3つの個体群で4000個体未満しか自生していません。兜丸はコレクターに大変な人気があり、個体数が少なく採取の脅威が高いことから、米国では1993年に絶滅危惧種とされています。また、CITESの附属書Iに記載されており国際取引は禁止されています。しかし、種子から容易に育てられるにも関わらず、野生植物の採取が行われています。
さて、烏羽玉(Lophophora williamsii)と希少な兜丸の分布はテキサス州南部のリオグランデ川下流域とタマウリパス州北部で重複します。このことが、思わぬ問題を引き起こしていると言うのです。

ペヨーテの利用
烏羽玉は原産地ではペヨーテと呼ばれていますが、一般的にペヨーテは麻薬取締局およびテキサス州公安局により規制されています。しかし、ペヨーテ信仰を持つアメリカ先住民教会(NAC)に対してはその利用を許可しており、認可された業者のみがペヨーテを扱うことができます。伝統的なペヨーテの採取方法は、地際から切断し根を残します。このことにより、地上部分が復活する可能性があります。

兜丸の混入
認可された業者は事業所のペヨーテ・ガーデンでペヨーテを栽培していますが、どういう訳か兜丸も混じっており、ペヨーテを購入した客にお土産として配られています。客は兜丸を栽培しますが、採取時に根が痛むことからいずれ枯れてしまいます。認可業者が兜丸を積極的に集めることはなく、地元の人たちが採取したペヨーテを買い取りますが、その時に混入するようです。1年に採取されるペヨーテが200万個体とされていますが、もしそのうちの0.1%が混入した兜丸だった場合、年間2000個体の兜丸が失われることになります。非常に個体数を減らしている兜丸には大変なダメージです。

以上が論文の簡単な要約です。
栽培される兜丸は烏羽玉にあまり似ていませんが、野生個体は少し似ている場合もあるようです。自生地の烏羽玉や兜丸は地面に半分埋まっており、頭だけが見えていたりします。また、栽培される兜丸は園芸的に選抜されていますが、野生の兜丸は白点も少なく土埃で汚れており、一見して見間違います。論文に示された自生地の写真では中々見分け辛い場合もあることが分かります。採取時にはわかりそうなものですが、いちいち仕分けたりはしないのでしょう。
さて、このように意外なことで兜丸が、ある意味とばっちりを受けてしまっていることが分かりました。しかし、宗教的儀式が関係し、しかも混入が原因ですから、これは中々解決が難しい問題かも知れません。



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烏羽玉(Lophopiora williamsii)はトゲがなく、何やらモチモチしている柔らかいサボテンで、様々な姿をとるサボテンの中でもかなり変わった部類でしょう。特筆すべきは、烏羽玉には幻覚作用のあるメスカリンと言う物質が含まれており、大昔から呪術師に使われて来たと言うことです。現地ではペヨーテと呼ばれています。しかし、この幻覚作用は日本で栽培されているものには、ほとんど含まれていないと言われています。原産地の烏羽玉は生長に時間がかかり、見た目よりも長く生きているため、メスカリンを沢山蓄積しているのだなどと言われたりしますが、本当かどうかは分かりません。ただ、鉢栽培した烏羽玉はただひたすらに苦いだけだそうです。そのためか、日本では法律で規制されておりません。そこら辺の事情を知りたかったのですが、中々見当たらないので、代わりに烏羽玉に関する面白そうな論文を見つけました。それは、Masako Araganeらの2011年の論文、『Peyote identification on the basis of differences in morphology, mescaline content, and trnL/trnF sequence between Lophophora williamsii and L. diffusa』です。日本発の論文です。
内容に入る前に、現在のLophophoraの分類を見てみましょう。キュー王立植物園のデータベースによると、現在認められているLophophoraは4種類あり、変種や亜種は認められておりません。1つ目は、1894年に命名されたL. williamsiiです。日本では烏羽玉と呼ばれ、タイプによって大型烏羽玉や仔吹き烏羽玉が園芸上では区別されています。また、銀冠玉はL. williamsii var. decipiensとする人もいるようです。L. decipiensと書かれたサイトもありましたが、おそらくは学術的に記載された学名ではないと思います。いずれにせよ、
現在ではL. williamsiiと同種とされています。2つ目は1967年に命名されたL. diffusa、翠冠玉と呼ばれています。3つ目は1975年に命名されたL. fricii、最後は2008年に命名されたL. alberto-vojtechiiです。ちなみに、現在はL. friciiを銀冠玉としているようです。ただし、この論文ではLophophoraは、L. williamsiiとL. diffusaの2種類があると言う立場のようです。CITESなどの情報からそう判断したようですが、2011年当時は4種類とも命名されていましたが、命名されただけでまだ認められていなかったのかも知れません。

L. williamsiiはメスカリンを含み、L. diffusaは含まないという報告があります。L. williamsiiは原産地ではペヨーテと呼ばれ、伝統医学や宗教的儀式で広く使用されます。著者らは日本国内ではL. williamsiiが規制されていないため、規制する必要があると言います。その場合、メスカリンを含有したL. williamsiiを確実に見分けられなければなりません。そのため、著者らは日本国内で入手したL. williamsiiおよびL. diffusaの遺伝子とメスカリン濃度を測定しました。

結果として過去の報告通り、調べた4個体のL. diffusaからはメスカリンは検出されませんでした。対して10個体のL. williamsiiからは22.2〜48.3mg/gのメスカリンが検出されました。また、大型烏羽玉と呼ばれる2個体からも12.7mg/gと35.4mg/gのメスカリンを、1個体の仔吹き烏羽玉からも25.0mg/gのメスカリンを検出しました。さて、問題はかつて銀冠玉と呼ばれたタイプで、何とメスカリンは検出されませんでした。メスカリン以外の特徴も見てみましょう。
花色は烏羽玉と大型烏羽玉はパールピンク、銀冠玉はピンクか深いピンク、L. diffusaは白花です。電子顕微鏡で表面の構造を見た場合、表面の微小突起が烏羽玉と大型烏羽玉、仔吹き烏羽玉は小さく、銀冠玉は大きく、L. diffusaは中間くらいでした。遺伝子のタイプは4つに分かれており、烏羽玉はAタイプ、大型烏羽玉はAタイプおよびBタイプ、仔吹き烏羽玉はAタイプ、銀冠玉はCタイプ、L. diffusaはDタイプでした。

以上が論文の簡単な要約となります。
しかし、その特徴を見ると、かつて烏羽玉と呼ばれていた種は2つに分離出来ます。このメスカリンを含まないタイプは要するにE. friciiにあたる種類のことなのでしょう。様々な特徴が異なるため、別種とするのが妥当と言えます。
しかし、この論文では栽培された烏羽玉からもメスカリンは検出されています。すべてが現地球とも思えませんから、栽培品でも幻覚成分は含まれていることが分かります。まあ、それが麻薬として使用できる濃度のメスカリンが含まれているかは別問題でしょう。この検出量が多いのか少ないのか分かりませんが、あるいは問題にならない量かも知れません。いずれにせよ、日本にはペヨーテの利用方法に関する知識や習慣が皆無なので、安くもない烏羽玉を齧ろうとする人はいないとは思いますけどね。まあ、日本の烏羽玉は殺ダニ剤をタップリ吸っているでしょうから、違う意味で食べるのは危険な感じがします。
始めに書きましたが、栽培個体と野生個体でメスカリン含有量が異なるのか興味があり、無駄にアレコレと烏羽玉を調べてしまったので、ネタはもう少しだけあります。せっかくですから明日も烏羽玉の記事を書く予定です。



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テキーラはアルコール度数の高いお酒として有名ですが、これはAgaveの絞り汁を発酵させて作られます。しかし、Agaveに近縁でメキシコなど分布も似ているDasylirionを利用したsotolと言うお酒があるらしいと知り、少し調べてみました。本日はJuan Manuel Madrid-Solorzanoらの2021年の論文、『La produccion de sotol: revision de literatura sistematica』を少し見てみましょう。

sotolはメキシコ北部で生産される伝統的な飲み物です。年間約52万リットルのsotolが生産されていると推定されます。sotolは年平均5%の割合で成長しています。原材料はsotol=Dasylirionですが、22種類のうち高い炭水化物含有量を持ち発酵に適した6種類があり、そのうち3種類はsotolの味や香りに適したD. cedrosanum、D. leiophyllum、D. duranguesisがあり、他にD. wheelei、D. texanum、D. serekeがあります。
利用されるDasylirionはメキシコ北部の米国と国境を接するチワワ州に生え、乾性低木と草原が優勢で州の面積の約65%を占めます。また、州の面積の75%は年間降水量300〜500mmの半乾燥あるいは乾燥気候からなります。

sotolはNOM-159-SCFI-2004と言う生産を規制する基準があり、チワワ州、コアウイラ州、デュランゴ州で共有されています。sotolの生産とマーケティング認証、および規制機関となることを目指す2つの協会があります。2006年に設立されたCMSと、2018年に設立されたCCSです。
CMSの推定によると3州には250の生産者がおり、52年リットルのsotolを生産しています。


論文では、sotolに関する過去に公開された論文や公文書などを調査しています。いくつかの論点があります。
①苗床
醸造のために野生のDasylirionを伐採することは、生態系に悪影響を与えます。かと言って、植林は水分不足や牛の放牧などのために、苗の生存率が低く上手くいきません。ですから、農業生産は重要です。しかし、実験室レベルでの薬品による発芽前処理なの関する発芽試験などはありましたが、実際の生産農家に適した方法や、苗の育成などについての研究はありませんでした。商業的な育成方法の確立と、野生のDasylirionの再生方法を研究する必要があります。
②農業
発芽前処理の進歩は商業プランテーションの創設につながる可能性があります。また、D. cedrosanumの種子から作られる小麦粉は、非常に栄養価が高いことが知られています。また、Dasylirionはフルクタン(水溶性食物繊維)含有量が多く、食品および製薬原料として使用出来ます。

以上が論点の簡単な要約です。
Agaveのみならず、Dasylirionでもお酒が作られており驚かされました。ただ、sotolはまだ個人の経験により作られている部分が大きく、工程や発酵に関わる微生物についての理解も進んでいません。産業化と言う面ではまだまだなのでしょう。Agaveほど研究も進んでいないようですから、Dasylirion特有の有効成分が見つかるかも知れませんね。



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サボテンや多肉植物の自生地での減少や、違法取引について度々記事にしていますが、論文を調べる中で「plant bindness」なる用語に出会いました。直訳すると「植物失明」ですが、これでは意味がわからないので「植物盲目症」と意訳しました。この用語に出会った文脈としては、希少な絶滅危惧種であっても動物と植物とでは、関心の高さも、保護活動のための資金もまったく異なると言うことです。要するに、「植物盲目症」とは、動物と比較すると植物は非常に軽視される傾向があり、存在するはずなのに見えていないかのように扱われると言う現実を表現した言葉です。本日は、そんな「植物盲目症」が違法な野生生物取引(IWT)を助長しているのではないかと言う疑いを検証した、Jered D. Marguliesらの2019年の論文、『Illegal Wildlife trade and the persistence of "plant bindness"』をご紹介します。

植物盲目症の実害
違法な野生生物取引(IWT)に対する政策は近年重視されており、国際的な会議や法令の制定、世界銀行の計画と1億3100万米ドルの予算など、様々なプログラムがあります。しかし、これらの取り組みは「植物盲目症」であり、その政策と研究は植物を無視しています。
生物学的な保全に関して、「植物盲目症」は依然として進行中の問題です。その資金の獲得に関しても重大な偏見があり、特に大型の動物はその危機に対する評価でも資金面に関しても過大評価されています。植物はその危機に関しても資金面でも過小評価されています。しかし、植物は生態学的には非常に重要で、過大評価されている動物の生存を支える働きがあります。
学問的にも植物学は動物学と比較すると、数十年に渡り衰退をし続けています。植物の絶滅を評価する努力は非常に遅れており、脊椎動物は68%が評価されているのに対し、植物はわずか8%しか評価されていません。
保全のための資金や法律にも不均等があります。例えば、米国の絶滅危惧種法に記載されている種の57%は植物ですが、絶滅危惧種保護のための連邦資金の4%未満しか植物に対して下りていません。

米国における保護活動と植物盲目症
保全科学における「植物盲目症」は動物に特権を与えており、米国連邦野生生物保護法の最も古い部分の1つであるLacey法でも確認出来ます。つまり、米国の最も初期の連邦野生生物保護法に「植物盲目症」が組み込まれており、動物保護の特権化を暗黙のうちに強化することになりました。Lacey法は植物を無視しており、象牙などの動物由来の輸入品には適応されましたが、海外の熱帯から採取された蘭などの絶滅危惧種の輸入品には適応されませんでした。Lacey法は1900年に制定されましたが、ここに植物が組み込まれたのは2008年のことでした。ただし、これは木材の資源としての取引に関するものでしかありません。
米国の最も重要な野生生物法の1つは、植物は「野生生物」には含まれないと主張しています。実際には植物は連邦野生生物法の下で保護されていますが、連邦法の定義では植物は野生生物とは見なされません。これらのことにより、植物保護のための資金と保護のための優先事項に影響を及ぼしています。


IWT対策は人気のある動物に集中
2018年に開催された野生生物の違法に関するロンドン会議では、象やサイ、大型ネコ科動物にスポットライトが当てられ、植物に関しては木材の商取引についての話題があっただけでした。国際的なメディアも、注目するのは大型の哺乳類だけです。
植物の違法取引の脅威にも関わらず、CITES(ワシントン条約)の交渉の占める割合は非常に小さいものです。また、違法な植物取引を研究するための資金は不十分です。米国や英国の野生生物保護のための基金は、人気のある一部の動物に偏り、植物と不人気の動物には与えられません。これらのIWT対策・野生生物保護のための基金は、始めから植物を除外していることが多く、野生植物の研究や保護に関するNGO活動などを難しくしています。

無視される植物のIWT
特定の植物分類群は過去数十年に渡り違法に取引されてきましたが、これらの植物に対する研究は不足しています。ソテツは地球上で最も絶滅の危機に瀕している分類群の1つですが、IWTに関する文献ではほとんど注目されていません。同様にサボテンはIWTが非常に強力な脅威であるにも関わらず注目されていません。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
法制上、植物が野生生物から除外されている現実は、保護活動や認知バイアスに強い影響を与えていることは間違いないのでしょう。しかし、それだけではなく、動物を特別視する傾向は我々も社会習慣的にバイアスが思考に染み付いています。これは、何も植物に限ったことではなく、動物でも可愛かったり美しいものは注目を集め重視され、可愛くなかったり美しくないものは無視されます。結局は人間の好みにより野生生物はその生存権を左右され、人気がないものは絶滅しても心は傷まないのです。人間は身勝手な理由で野生生物を滅ぼして来ましたが、人気種に対してだけ保護活動をするのですから、その身勝手な本質はあまり変わってはいないのでしょう。


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