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アロエ属(広義)が分割されて、アロエ(狭義, Aloe)、アロイデンドロン(Aloidendron)、アロイアンペロス(Aloiampelos)、クマラ(Kumara)、アリスタロエ(Aristaloe)、ゴニアロエ(Gonialoe)となりました。とは言うものの、そのほとんどの種はアロエ属(狭義)に含まれ、分割されて出来た新属は皆小さなグループです。
アロエと言えば非常に多くの種類があり、様々な種類がホームセンターや園芸店で販売されています。昔から知られるキダチアロエ(Aloe arborescens)やアロエ・ベラ(Aloe vera)だけではなく、割と珍しい種類も見かけます。また、アロエから分割されて出来た新属は、大抵は旧・学名で販売されています。ディコトマ(Aloe dichotoma=Aloidendron dichotomum)もたまに見かけますし、千代田錦(Aloe variegata=Gonialoe variegata)や綾錦(Aloe aristata=Aristaloe aristata)は古くから普及し、乙姫の舞扇(Aloe plicatilis=Kumara plicatilis)も最近は良く目にします。これらは、特に近年では入手が容易になってきています。
しかし、そんな中でもアロイアンペロス(Aloiampelos)だけは、何故かまったく見かけません。普及種もなく、情報も貧弱です。どのような多肉植物なのでしょうか?
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Aloiampelos striatula var. caesia

アロイアンペロスはヒョロヒョロと伸びて、ややだらしない感じがするアロエの仲間です。しかし、これは枝同士が絡まりながら長く伸びてブッシュを形成したり、あるいは低木に寄りかかるする育ち方をするからです。学名自体がAloe+ampelos(ツル植物)ですから、特徴をよく表しています。
アロイアンペロスは低地に育ち沿岸部付近に多いのですが、A. striatulaのように内陸部の標高の高い降雪地帯に生えるものもあります。
花には普通のアロエと同様に太陽鳥が訪れます。


アロイアンペロスは1825年に4種がアロエ属として命名されました。しかし、2013年には命Aloiampelos Klopper & Gideon F.Sm.と命名され、アロエ属から独立しました。アロイアンペロス属に含まれる種類を見てみましょう。

①Aloiampelos ciliaris
キリアリスの学名は、2013年に命名されたAloiampelos ciliaris (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。最初に命名されたのは1825年で学名はAloe ciliaris Haw.でした。また、キリアリスには4変種が知られています。
・Aloiampelos ciliaris var. ciliaris
異名として1903年に命名されたAloe ciliaris var. franaganii Schönlandが知られています。
・Aloiampelos ciliaris var. redacta (S.Carter) Klopper & Gideon F.Sm.
1990年に命名されたAloe ciliaris var. redacta S.Carterに由来します。
・Aloiampelos ciliaris var. tidmarshii (Schönland) Klopper & Gideon F.Sm.
1903年に命名されたAloe ciliaris var. tidmarshii Schönlandに由来します。1943年にはAloe tidmarshii (Schönland) F.S.Mull. ex R.A.Dyerと命名されました。
・Aloiampelos ciliaris nothovar. gigas (Resende) Gideon F.Sm. & Figueiredo 
1943年に命名されたAloe ciliaris nothof. gigas Resendeに由来します。

②Aloiampelos commixta
コミクスタの学名は、2013年に命名されたAloiampelos commixta (A.Berger) Klopper & Gideon F.Sm.です。1908年に命名されたAloe commixta A.Bergerに由来します。

③Aloiampelos decumbens
デクンベンスの学名は、2013年に命名されたAloiampelos decumbens (Reynolds) Klopper & Gideon F.Sm.です。1950年に命名されたAloe gracilis var. decumbens Reynoldsに由来します。2008年に命名されたAloe decumbens (Reynolds) van Jaarsv.もあります。

④Aloiampelos gracilis
グラシリスの学名は、2013年に命名されたAloiampelos gracilis (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。1825年に命名されたAloe gracilis Haw.に由来します。異名として、1906年に命名されたAloe laxiflora N.E.Br.が知られています。

⑤Aloiampelos juddii
ジュディイの学名は、2013年に命名されたAloiampelos juddii (van Jaarsv.) Klopper & Gideon F.Sm.です。2008年に命名されたAloe juddii van Jaarsv.に由来します。

⑥Aloiampelos striatula
ストリアツラの学名は、2013年に命名されたAloiampelos striatula (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。1825年に命名されたAloe striatula Haw.に由来します。ストリアツラには2変種が知られています。
・Aloiampelos striatula var. striatula
変種ストリアツラには、1869年に命名されたAloe subinermis Lem.、1880年に命名されたAloe macowanii、1892年に命名されたAloe aurantiaca Baker、1898年に命名されたAloe cascadensis Kuntzeという異名が知られています。
・Aloiampelos striatula var. caesia (Reynolds) Klopper & Gideon F.Sm.

1936年に命名されたAloe striatula var. caesia Reynoldsに由来します。

⑦Aloiampelos tenuior 
テヌイオルの学名は、2013年に命名されたAloiampelos tenuior (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。1825年に命名されたAloe tenuior Haw.に由来します。また、テヌイオルには5変種が命名されましたが、現在では認められておりません。一応記しておくと、1900年(publ. 1901)に命名されたAloe tenuior var. glaucescens Zahlbr.、1936年に命名されたAloe tenuior var. decidua Reynolds、1936年に命名されたAloe tenuior var. rubriflora Reynolds、1956年に命名されたAloe tenuior var. densiflora、2007年に命名されたAloe tenuior var. viridifolia van Jaarsv.です。

終わりに
アロイアンペロスは国内ではほとんど見かけないアロエの仲間です。鉢に植えられた苗は、何やら徒長してしまったアロエのように見えて、いまいち食指が動かないかもしれません。しかし、地植えをして地際から枝が沢山出て絡まるようにブッシュを形成させるのが本来の楽しみかたです。南アフリカではキリアリスやテヌイオルなどアロイアンペロスは園芸に広く使われています。テヌイオルは「庭師のアロエ(the gardener's aloe)」という名前で知られているくらいです。ストリアツラは生け垣として、特にレソトでは植栽されるようです。アロイアンペロスは、沢山の太陽鳥をはじめとした鳥を庭に引き付けることでも楽しませてくれます。とは言うものの、日本国内では庭に植えるわけにもいかないでしょうし、本来の姿を楽しむことは中々難しいかもしれませんね。


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アロエの仲間というかアロエと近縁な植物と言えば、ガステリア(Gasteria)、ハウォルチア(Haworthia)、アストロロバ(Astroloba)とされてきました。これは、主に花の構造から推察された分類でした。この分類は、近年の遺伝子解析の結果からも支持されており、まとめてアロエ類などと呼ばれています。しかし、意外なこともわかりました。ハウォルチア属(広義)は3分割され、Haworthia(狭義)、Haworthiopsis、Tulistaとなり、しかもそれぞれが特別近縁ではないということが分かりました。それはアロエ属(広義)も同様で、Aloe(狭義)、Aloidendron、Aloiampelos、Aristaloe、Gonialoe、Kumaraとなりました。この旧・アロエ属のうち、AristaloeとGonialoeはどうやら近縁である可能性が高いようです。

長い前置きとなりましたが、本日の主役はアロエ属から分離されたゴニアロエ属(Gonialoe)です。ゴニアロエは3種類しかありませんが、代表種はGonialoe variegata(千代田錦)です。G. variegataは昔から園芸店で販売されてきましたが、G. variegata以外のゴニアロエは園芸店には出回りません。そんな中、正月明けに五反田TOCで開催されたサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Gonialoe sladenianaを入手しました。良い機会ですから、ゴニアロエとは何者なのか調べみました。

Gonialoeの誕生
ゴニアロエの3種はすべて最初はアロエ属とされました。しかし、2014年にゴニアロエ属とされました。つまり、Gonialoe (Baker) Boatwr. & J.C.Manningです。ここで括弧の中のBakerとは何かという疑問が浮かびます。単純にBoatwr. & J.C.Manningが命名しただけではないことが分かります。調べてみると1880年にJohn Gilbert Bakerがアロエ属の内部の分類において、ゴニアロエ亜属(subgenus Gonialoe)を創設したということのようです。このゴニアロエ亜属を2014年にBoatwr. & J.C.Manningが亜属から新属に昇格させたということが事の経緯です。

①Gonialoe variegata
ゴニアロエで一番早く命名されたヴァリエガタの学名から見ていきましょう。ヴァリエガタの学名は2014年に命名されたGonialoe variegata (L.) Boatwr. & J.C.Manningです。はじめて命名されたのは1753年のAloe variegata L.で、ゴニアロエとなるまでこの学名でした。1753年に現在の二名式学名を考案したCarl von Linneの命名ですから、ヴァリエガタはアロエ属の初期メンバーということになりますね。
G. variegataには異名があり、1804年に命名されたAloe punctata Haw.や、1908年に命名された変種であるAloe variegata var. haworthii A.Bergerがありますが、現在では認められておりません。また、1928年にはAloe variegataのより大型で模様が美しいとされたAloe ausana Dinterも命名されますが、現在このタイプは確認されていないようです。

ヴァリエガタはナミビア南部から南アフリカのNorthen Cape、Western Cape、Eastern Cape西部から自由州西部まで広く分布します。粘土質、まれに花崗岩の崩壊した土壌で育ちます。生息地の冬は寒くなります。葉の長さは最大15cmです。
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Gonialoe variegata(千代田錦)

②Gonialoe sladeniana
スラデニアナもヴァリエガタと同様に2014年にGonialoe sladeniana (Pole-Evans) Boatwr. & J.C.Manningと命名されました。はじめてスラデニアナが命名されたのは1920年のAloe sladeniana Pole-Evansです。また、1938年には命名されたAloe carowii Reynoldsは異名とされています。
スラデニアナはナミビア中西部の断崖にのみ分布し、崩壊した花崗岩上で育ちます。生息地の冬は非常に寒いということです。葉の長さは最大9cmと小型です。
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Gonialoe sladeniana

③Gonialoe dinteri
ディンテリもヴァリエガタやスラデニアナと同様に、2014年にGonialoe dinteri (A.Berger) Boatwr. & J.C.Manningと命名されました。ディンテリがはじめて命名されたのは1914年のAloe dinteri A.Bergerです。
ディンテリはナミビア北西部とアンゴラ南西部に分布します。砂地あるいは岩場、石灰岩の割れ目、茂みに生えます。葉は長さ30cmとゴニアロエでは最大種です。

Tulista?
また、ゴニアロエ属が誕生した2014年に、G.D.Rowleyによりこの3種類はTulista Raf.とする意見もありました。G.D.Rowleyはツリスタ属を広くとり、現在のGonialoe、Aristaloe、Tulista、Astroloba、さらに一部のHaworthiopsisを含んだものでした。基本的にはGonialoe、Aristaloe、Tulista、Astrolobaは遺伝的にも近縁ですから、格別おかしな意見ではありません。これは、どの範囲で区切るかという尺度の問題です。それほどはっきりしたものでもないでしょう。ただ、Astrolobaなどは属内で非常によくまとまっており、アストロロバ属として独立していることに意味はあるのでしょう。ただ、HaworthiopsisはGasteriaと近縁で、Gonialoeとは近縁ではありません。

Aloe variegataの発見
オランダ東インド会社は1652年に現在のケープタウンに相当する場所に基地を設立しました。1679年にSimon van der Stelが司令官に任命され、1690年には総督に就任しました。1685年から1686年にかけて、van der Stelはナマクア族の土地で銅資源を探索する遠征を行いました。遠征隊は1685年の10月にCopper(=銅)山脈に到着しました。遠征隊に同行した画家のHendrik Claudiusにより、遠征中の地理、地質学、動物、植物、先住民の絵が描かれました。
また、遠征隊の日記が作成されましたが、van der StelもClaudiusも資料を出版しませんでした。これらの資料は1922年に、何故かアイルランドの首都ダブリンで発見されました。そして1932年にWaterhouseにより出版されました。
それによると、ヴァリエガタは1685年の10月16日、Springbok地域で記録されました。これが、ヴァリエガタの知られている限りの一番最初の記録です。


最後に
幾つかのサイト、主としてキュー王立植物園のデータベースや南アフリカ国立生物多様性研究所(South African National Biodiversity Institute)の資料を参考にしましたが、過去に論文等で知ったことも補足情報として追記しています。しかし、調べてみて分かりましたが、ゴニアロエは情報があまりありませんね。特別珍しくもなく、ヴァリエガタなどは普及種であるにも関わらずです。情報の質も良くありませんから、ゴニアロエについての良い論文が出てほしいものです。特にGonialoe sladenianaなどは、現在の個体数や環境情報がほとんどないような状況らしいので、将来的な保護のためにも科学的な調査が必要でしょう。


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昨日はメキシコ原産のソテツであるDioon eduleの情報についての記事を書きましたが、本日はD. eduleの論文をご紹介したいと思います。D. eduleはDioonの代表種であり、様々な角度から研究がなされています。非常に面白そうな論文が沢山あります。しかし、最近ではやや忙しく中々思ったように論文を読めていないのが悩みです。

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Dioon edule

そんな中、読んだ論文はAndrew P. Vovidesの1990年の論文、『Spatial Distribution, Survival, and Fecundity of Dioon edule (Zamiaceae) in a Tropical Deciduous Forest in Veracuruz, Mexico, with Notes on Its Habitat』です。

著者は野生のD. eduleが集中するメキシコのVeracuruz州中央の熱帯林で、その生長と繁殖に関するデータを4年間にわたり収集しました。
まずは実生の定着具合を見てみましょう。調査によると、高さ10cm以下の若い苗はほぼ枯れてしまうことが分かりました。やはり、小さな内は環境の変化や乾燥に耐えられないのでしょう。しかし、高さ40~50cmくらいに生長すると枯れてしまう個体は5%以下でした。ある程度生長できれば環境の変化にも対応出来るのでしょう。
次に樹齢を見てみましょう。調査した区域の139個体のD. eduleの中で最高齢は2001~2250歳と見られる個体が1本ありました。1501~2000歳の個体は0本、1251~1500歳の個体が1本、1001~1250歳の個体が2本、751~1000歳の個体が2本、501~750歳の個体が11本、251~500歳の個体が13本、0~250歳の個体が109本ありました。ここで分かることは、D. eduleは非常に寿命が長いということだけではありません。0~250歳の個体が109本ということは、この250年の間に生き残った実生は109本しかないということでもあります。この0~250歳の死亡率は88%にもなるようです。

種子を人工的に発芽させた場合、発芽率は98%と非常に高いことが分かりました。しかし、野生状態だとネズミ(Peromyscus mexicanus)に種子を食べられてしまうことが明らかとなっています。しかし、一般的にソテツには毒があり、ラットにD. eduleの種子を砕いて与えると24時間以内に死亡してしまいます。つまり、D. eduleの種子を食べるP. mexicanusはソテツの毒に耐性があるということです。
また、新しく葉は柔らかく、Eumaeus deboraという蝶の幼虫により食害されます。
実生が枯死する最大の要因は、おそらく極端な乾燥です。1983年の乾季には1~2歳のD. eduleはほぼ死滅しました。さらに、D. eduleの実生を人工的に2年間育てた後に2週間の乾燥させたことにより、20個体中18個体が枯死しました。やはり、若い個体にとって乾燥は大敵のようです。
D. eduleの生息地は山火事が起きやすく、大型の個体は耐えられますが、苗は耐えられないでしょう。しかし、山火事により一時期に土壌中に窒素が増加することにより、開花に寄与しているということです。結果的に種子の生産が増加するということです。


生育環境を見てみましょう。土壌の深さを測定すると、D. eduleの84%はたった6~20cmしかない浅い土壌に生えていることが分かりました。多くの場合、岩場に生えていました。土壌はカリウムとリン酸が貧弱であり、かなりの貧栄養のようです。pHは7.7でした。この岩場に育つことにより、種子が岩の隙間に入りネズミに食べられてしまう可能性は低くなるようです。
D. eduleには菌根が確認されているそうです。あまり知られていませんが、野生の樹木の根はキノコの菌糸で被われており、樹木とキノコの間で養分のやり取りがあり共生関係にあります。これを菌根と呼びます。菌根はまれな現象ではなく、森林には普遍的に存在し非常に重要な仕組みであることが分かってきました。D. eduleも共生している菌根から水分や栄養をもらい、乾燥し栄養の少ない過酷な環境に耐えているのでしょう。

以上が論文の簡単な要約となります。D. eduleが尋常ではない寿命を持つこと、あまりに過酷な環境ゆえに実生苗がほとんど死滅してしまうこと、そしてその過酷な環境に耐える仕組みがあることが分かりました。このような調査は単にD. eduleの科学的な知見が増えるだけではなく、将来保護を行うための基本的な下地にもなります。しかし、このような地味な研究には資金が中々出ない現状のため、多くの植物が調査すらされずに人知れず開発や違法採取で絶滅していることは大変悲しいことです。著者はD. eduleの繁殖にも関わっているようですから、そこら辺の活動についてもそのうち記事に出来たらと思っておりません。


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3年前くらい前のことですが、大型の園芸店にDioon eduleという海外のソテツの苗が販売されていることに気が付きました。冬だったこともあり葉が黄色く変色していたりして、購入を躊躇う状態でした。その後、2~3の園芸店やホームセンターで見かけましたが、基本的に状態は悪く入荷からそれなりに時間が経っていることがうかがえます。流石に復活可能かわからないので購入しませんでしたが、その後はDioon eduleを見かけることはありませんでした。おそらくは、Dioon eduleの種子をある程度の数輸入した一過性の実生苗だったようです。しかし、去年のクリスマスに千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、なんとDioon eduleを販売していたので購入しました。 ということで、Dioon eduleとは一体どのようなソテツなのでしょうか?

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Dioon edule

D. eduleの学名は、1843年に命名されたDioon edule Lindl.です。D. eduleはまあまあ異名が多いため、以下に年表で示しました。
1844年 Zamia maelenii Miq.
1845年 Platyzamia rigida Zucc.
1848年 Dioon imbricatum Miq.
1855年 Dioon aculeatum Lem.
1861年 Dioon edule f. imbricatum
                  (Miq.) Miq.
1863年 Dioon strobilaceum Lem.
1868年 Dioon edule var. imbricatum
                  (Miq.) Miq.
1884年 Macrozamia littoralis
                   Liebm. ex Dyer
              Macrozamia pectinata 
                   Liebm. ex Dyer
1899年 Dioon edule var. lanuginosum
                  (J.Schust.) Wittm.
1932年 Dioon edule f. lanuginosum
                   J.Schust.
              Zamia rigida Karw. ex J.Schust.

さらに、現在は独立種とされているDioon angustifoliumは、かつてDioon edule f. angustifolium、Dioon edule var. angustifolium、Dioon edule subsp. angustifoliumなどと呼ばれていました。幾つかのサイトでD. eduleの情報を収集しましたが、あるサイトではD. eduleはD. merolaeやD. holmgeniiと関連があるなどと書かれていましたが、遺伝子解析の結果ではD. eduleはD. angustifoliumと近縁です。分布が近い種は遺伝子も近縁な傾向があり、D. eduleとD. angustifoliumは分布が近いと言えます。
他にも現在は認められていないD. eduleの変種があります。Dioon edule var. latipinniumはDioon pectinatumに、Dioon edule var. sonorenseはDioon sonorenseとして現在ではそれぞれ独立種とされています。

さて、一般的なD. eduleの情報を探したところ、D. eduleはメキシコの海抜1500mにまで見られるということです。D. eduleは中型のソテツで、高さ1~1.5(~3)mで、直径は20~30cmになります。成熟した葉は15~20枚で、長さ0.7~1.6mとなり、小葉は片側120~160にもなります。Dioonの中でも小葉の縁にトゲがないことが、D. eduleの特徴とされているようです。D. eduleは乾燥した森林地帯に生え、浅い土壌の過酷な地域です。

Dioon eduleは大変美しいソテツで、育つほど葉は長くなり小葉の数も増えていきます。小葉は細長く隙間なく整然と並び、ある程度育ったD. eduleの葉は涼しげで非常に美しいものです。しかし、Dioon eduleは環境の悪化などにより個体数の減少が指摘されている貴重なソテツです。輸入種子由来の実生の流通が望ましく、違法採取株由来かもしれない現地球の販売はあまり望ましくありません。正規のルートで輸入された個体でも、違法採取株がファームを転々として日本に輸入された可能性も捨てきれません。
Dioon eduleはDioonの代表種です。異名が多くE. eduleから分離された種類があることからも、それはうかがえます。そのため、Dioonの中ではD. eduleは割と研究されており、論文も多少は出されています。明日はそんなD. eduleについて調査した論文をご紹介しましょう。


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近年、サンセヴィエリア属(Sansevieria、サンスベリア、サンセベリア)がドラカエナ属(Dracaena、ドラセナ)に吸収されてしまうという驚くべきニュースを目にしました。当該論文は公開されていないので、残念ながら読めていないのですが、その辺りの話は最近記事にしました。


その関連で少し興味が湧いたので、他にも何か論文はないかと調べてみたところ、Iris van Kleinweeらの2021年の論文、『Plastid phylogeny  of the Sansevieria clade (Dracaena ; Asparagaceae) resolves a rapid evolutionary radiation』を見つけました。ただし、この論文は全文を公開していないため、イントロと方法のみしか示されておりません。しかし、遺伝子解析結果は公開されていましたから、見てみましょう。

取り敢えず、サンセヴィエリアはドラカエナに吸収されてしまいましたが、ドラカエナの中でもサンセヴィエリアはまとまったグループのようです。このグループをSansevieria cladeと呼んでいるようです。しかし、Sansevieria cladeに含まれる種の分類はよく分かっていませんでした。どうやら、現存する旧・Sansevieriaたちは、新しい時代に急速に進化して様々な種類に分かれた可能性があるのです。
遺伝子解析はすべての遺伝子を調べているわけではなく、植物種の違いに関わらずよく使われる遺伝子があります。しかし、それらの遺伝子では、新しい時代に急速に進化した場合は上手く種を分離出来ないのです。ですから、この論文では実に7種類もの遺伝子を解析して、サンセヴィエリアの急速な進化に迫っています。
以下に示す分子系統では、A1、A2、B、C、D、Eの6グループに分かれています。このA~Eまではまとまりがあり、旧・Sansevieriaは近縁です。

                        ┏グループA1
                    ┏┫
                    ┃┗グループA2
                ┏┫
                ┃┗━グループB
            ┏┫
            ┃┃┏━グループC
            ┃┗┫
        ┏┫    ┗━グループD
        ┃┃
    ┏┫┗━━━D. angolensis
    ┃┃
    ┃┗━━━━グループE
┏┫
┃┃┏━━━━D. camerooniana
┃┗┫
┫    ┗━━━━D. sambiranensis
┃ 
┗━━━━━━D. aletriformis

グループA1
A1には、D. zeylanica、D. burmanica、D. roxburghianaが含まれます。インド亜大陸の原産です。
・D. zeylanicaはSansevieria zeylanicaのことです。Sansevieria ensifolia、Sansevieria grandicuspis、Sansevieria indica、Sansevieria pumilaと同種です。Cordyline zeylanicaと呼ばれたこともあります。
・D. burmanicaはSansevieria burmanicaのことです、Sansevieria maduraiensisと同種です。
・D. roxburghianaはSansevieria roxburghianaのことです。また、1805年にはSansevieria zeylanicaという学名もつけられましたが、これはD. zeylanica (Sansevieria zeylanica)とは別につけられたもののまったく同じ学名です。当然ながら認められていない学名です。

グループA2
A2には、D. pinguicula、D. perrotii、D. powellii、D. hanningtonii、D. arborescensが含まれます。
立ち上がり茎が伸びるタイプで、主に東アフリカの原産です。
・D. pinguiculaはSansevieria pinguiculaのことです。
・D. perrotiiはSansevieria perrotiiのことです。Sansevieria robusta、Sansevieria ehrenbergiiと同種です。
・D. powelliiはSansevieria powelliiのことです。
・D. hanningtoniiはPleomele hanningtoniiのことです。Dracaena oldupai、Sansevieria rorida、Sansevieria ehrenbergii、Sansevieria roridaと同種です。ちなみに、D. powelliiの異名の1つにS. ehrenbergiiがあり、D. hanningtoniiとかぶりますが、D. powelliiの異名のS. ehrenbergiiは後から同じく学名を付けてしまったパターンです。
・D. arborescensはSansevieria arborescensのことです。Sansevieria zanzibaricaと同種です。

グループB
Bには、D. raffllii、D. testudinea、D. canaliculata、D. liberica、D. longiflora、D. scimitariformis、D. sinus-simiorum、D. stuckyi、D. subspicata、D. spathulata、D. aethiopica、D. halliiが含まれます。アフリカ南部中心に分布します。
D. raffllii、D. testudinea~D. liberica、D. longiflora~D. haliiの3グループに分けられます。
・D. rafflliiはSansevieria rafflliiのことです。
・D. testudineaはSansevieria brauniiのことです。種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena brauniiという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。
・D. canaliculataはSansevieria canaliculataのことです。Sansevieria schimperi、Sansevieria sulcataと同種です。
・D. libericaはSansevieria libericaのことです。Sansevieria chinensis、Sansevieria gentilisと同種です。
・D. longifloraはSansevieria longifloraと同種です。
・D. scimitariformisはSansevieria scimitariformisのことです。
・D. sinus-simiorumはSansevieria sinus-simiorumのことです。
・D. stuckyiはSansevieria stuckyiのことです。Sansevieria andradaeと同種です。
・D. subspicataはSansevieria subspicataのことです。
・D. spathulataはSansevieria cocinnaのことです。Sansevieria subspicata var. cocinnaは同種です。種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena cocinnaという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。
D. aethiopicaはSansevieria aethiopicaのことです。Sansevieria thunbergii、Sansevieria caespitosa、Sansevieria glauca、Sansevieria scabrifoliaは同種です。
D. halliiはSansevieria halliiのことです。

グループC
Cには、D. parva、D. singularis、D. phillipsiae、D. nilotica、D. dawei、D. bacularis、D. dooneri、D. trifasciata、D. francisii、D. sordida、D. suffruticosa、D. serpenta、D. newtoniana、D. conspicua、D. volkensis、D. hargeisana、D. forskalianaが含まれます。アフリカ大陸に広く分布します。
D. parva~D. trifasciata、D. francisii~D. serpenta、D. newtoniana~D. forskalianaの3グループに分けられます。
・D. parvaはSansevieria parvaのことです。Sansevieria bequaertiiは同種です。
・D. singularisはSansevieria singularisのことです。Sansevieria fischeriは同種です。
・D. phillipsiaeはSansevieria phillipsiaeのことです。
・D. niloticaはSansevieria niloticaのことです。Sansevieria massaeは同種です。
・D. daweiはSansevieria daweiのことです。
・D. bacularisはSansevieria bacularisのことです。
・D. dooneriはSansevieria dooneriのことです。
・D. trifasciataはSansevieria trifasciataのことです。Sansevieria aureovariegata、Sansevieria craigii、Sansevieria jacquinii、Sansevieria laurentii、Sansevieria trifasciata var. laurentii、Sansevieria zeylanica var. laurentiiは同種です。
・D. francisiiはSansevieria francisiiのことです。
・D. sordidaはDracaena variansの異名です。D. variansはSansevieria variansのことです。Sansevieria patens、Sansevieria sordida、Dracaena patensは同種です。
・D. suffruticosaはSansevieria suffruticosaのことです。
・D. serpentaはSansevieria gracilisのことです。種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena gracilisという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。とはいえ、このD. gracilisは問題のある学名で、1796年に命名されたD. gracilisはDracaena reflexa var. angustifoliaの異名で、1808年に命名されたD. gracilisはDracaena ellipticaの異名です。これだけ使い降るされた学名ですから、3回目の使用となれば混乱は必至でしょうから使われないのは当然です。
・D. newtonianaはSansevieria newtonianaのことです。
・D. conspicuaはSansevieria conspicuaのことです。
・D. volkensisはSansevieria volkensisのことです。Sansevieria intermedia、Sansevieria polyrhytis、Sansevieria quarriaは同種です。
・D. hargeisanaはSansevieria hargeisanaのことです。
・D. forskalianaはSansevieria forskalianaのことです。Sansevieria guineensis var. angustior、Sansevieria elliptica、Sansevieria abyssinica、Convallaria racemosaは同種です。

グループD
Dには、D. zebra、D. senegambica、D. petheraが含まれます。D. zebraとD. senegambicaは非常に近縁です。
・D. zebraはSansevieria metallicaのことです。
種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena metallicaという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。ただし、Dracaena metallicaはCordyline fruticosaの異名です。
・D. senegambicaはSansevieria senegambicaのことです。Sansevieria cornuiは同種です。
・D. petheraはSansevieria kirkiiのことです。
種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena kirkiiという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。

グループE
EにはD. kenyensis、D. dawnsii、D. caulescens、D. pearsoniiが含まれます
・D. kenyensisはデータベースに情報がありませんが、どうやらSansevieria bellaのことのようです。 Sansevieria bellaは現在ではDracaena neobellaとされています。
種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena bellaという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。ただし、このDracaena bellaはCordyline fruticosaの異名です。
・D. dawnsiiはSansevieria dawnsiiのことです。
・D. caulescensはSansevieria caulescensのことです。
・D. pearsoniiはSansevieria pearsoniiのことです。Sansevieria deserti、Sansevieria rhodesianaのことです。



A~Eのグループに入らない種類についてですが、D. angolensisはSansevieria内にありますが、A~Eのグループには入りません。
・D. angolensisはSansevieria angolensisのことです。Sansevieria cylindrica、Sansevieria livingstoniaeと同種です。
・D. cameroonianaはSansevieriaではなく、はじめからDracaenaでしたが、Sansevieriaと近縁のようです。
・D. sambiranensisはSansevieria sambiranensisのことです。他のSansevieriaとは系統が異なります。
・D. aletriformisはSansevieriaではありません。Yucca aletriformisという異名があります。

Sansevieriaの葉の形状は様々で、葉の厚みも様々です。これは、乾燥に対する適応を示しています。しかし、葉の形状はグループごとに似ているわけではないようです。多肉質な葉は近縁ではないあちこちに現れるようです。
また、タイトルにありますように、Sansevieriaは急速に進化して様々な種類に分化したようです。どうやら、Sansevieriaは約500万年前に登場したようです。非常に昔なような気がしますが、新生代新第三紀終盤の鮮新世ですから、歴史年代からすると最近です。しかも、現在の種類が分化し始めたのは、第四紀更新世以降ですから、日本では旧石器時代という新しさです。本当に新しく現れた多肉植物と言えますね。



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サボテンはギムノカリキウムを少しばかり育てています。何がいいのか自分でもはっきりしないのですが、不思議とギムノカリキウムに惹かれてしまうのです。昨年は池袋の鶴仙園を度々訪れましたが、秋に大型鬼胆丸というギムノカリキウム属のサボテンを購入しました。本日はそんな大型鬼胆丸についての話です。大型鬼胆丸は割と地味な部類の九紋竜系(Gymnocalycium gibbosum)ですが、ここら辺の学名も中々混乱していますから、まとめてみました。

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大型鬼胆丸 Gymnocalycium gibbosum var. nigrum
    =Gymnocalycium gibbosum subsp. gibbosum


一般的に大型鬼胆丸はGymnocalycium gibbosum var. nigrumとされており、というか変種ニグルムの中でも大型のタイプを大型鬼胆丸と呼んでいるらしいです。では、大型ではない鬼胆丸はというと、Gymnocalycium gibbosum var. brachypetalum、あるいはGymnocalycium brachypetalumと呼ばれます。ここまではネット上のブログや販売サイトの情報です。

さて、ではキュー王立植物園のデータベースでは、これらの九紋竜系はどう整理されているのでしょうか。
まずは、基本種であるGymnocalycium gibbosumから見ていきましょう。正式な学名は1844年に命名されたGymnocalycium gibbosum (Haw.) Pfeiff. ex Mittlerですが、はじめて命名されたのは1816年のCactus gibbosus Haw.でした。'gibbosum'ではなくて'gibbosus'となっていたようです。さて、その後は1828年に命名されたEchinocactus gibbosus (Haw.) DC.や、1905年に命名されたEchinocactus gibbosus var. typica Speg.もありました。

現在、ギボスムに認められている亜種は、亜種ボルティイのみです。また、亜種ボルティイが出来たことで、亜種ギボスム=Gymnocalycium gibbosum subsp. gibbosumが出来ました。これは、G. gibbosum=subsp. gibbosum + subsp. borthiiだからです。G. gibbosumとG. gibbosum subsp. gibbosumはイコールではありませんから、間違わないようにしなければなりません。というわけで、亜種は2005年に命名されたGymnocalycium gibbosum subsp. borthii (Kloop ex H.Till) G.J.Charlesです。亜種ボルティイはもともとは独立種で、1987年に命名されたGymnocalycium borthii Kloop ex H.Tillでした。G. borthiiには亜種と変種があり、2007年にGymnocalycium borthii var. viridis NeuhuberGymnocalycium borthii subsp. nogolensis NeuhuberGymnocalycium borthii subsp. kokori Halda & Miltが命名されましたが、現在は認められておりません。
DSC_2194
Gymnocalycium gibbosum subsp. borthii

さて、それでは亜種ギボスムはどうなっているのかというと、だいぶややこしいことになっています。亜種ボルティイはアルゼンチン北西部にのみ分布し、発見も遅かったため、あまり異名がありません。しかし、亜種ギボスムはG. borthiiが命名されてから、亜種ボルティイ以外の全ての異名は亜種ギボスムのものです。
亜種ギボスムの異名の年表を以下に示します。長くなるので覚悟して見て下さいね
1826年 Cereus gibbosus (Haw.) Sweet
1828年 Cereus reductus DC.
1830年 Echinocactus nobilis Haw., nom.illeg.

1831年 Echinocactus brachypetalus
                   (Speg.) Werderm.
1837年 Echinocactus mackieanus Hook.
1846年 Echinocactus gibbosa
                   P.Pfeiff. ex 
C.F.Först
1850年 Echinocactus gibbosus var. leucodictyus
                   Salm-Dyck
              Echinocactus leucodictyus Salm-Dyck

1885年 Echinocactus gibbosus var. celsianus
                   Labour. ex R
ümpler
              Echinocactus gibbosus var. pluricostatus
                   C.F.F
örst.
              Echinocactus reductus K.Schum.
1886年 Echinocactus gibbosus var. ferox
                   Labour. ex 
Rümpler
              Echinocactus gibbosus var. leucacanthus
                   Rümpler
              Echinocactus gibbosus var. schlumbergeri
                   Rümpler
1898年 Echinocactus gibbosus var. leonensis
                   Hildm. ex K.Schum
              Echinocactus gibbosus var. polygonus
                   K.Schum.

1899年 Echinocactus gibbosus var. cerebriformis
                   Speg.
              Echinocactus gibbosus var. fennellii
                   F.Haage
              Gymnocalycium gibbosum
                   var. cerebriformis Speg.
1902年 Echinocactus gibbosum var. chubutensis
                  (Speg.) Speg.
1903年 Echinocactus spegazzinii
                  F.A.C.Weber ex Speg.
1907年 Echinocactus gibbosus f. fennellii
                  (J.N.Haage) Schelle
              Echinocactus gibbosus f. ferox
                  (Labour. ex Rümpler) Schelle
              Echinocactus gibbosus f. leonensis
                  (Hildm. ex K.Schum.) Schum
              Echinocactus gibbosus f. leocacanthus
                  (Rümpler) Schelle
              Echinocactus gracilius f. leucodictyus
                  (Salm-Dyck) Schelle
              Echinocactus gibbosus f. schlumbergeri
                  (
Rümpler) Schelle
1925年 Gymnocalycium brachypetalum Speg.
              Gymnocalycium chubutense
                  (Speg.) Speg.
1959年 Gymnocalycium gibbosum
                  var. nigrum Backeb.
1995年 Gymnocalycium mackieanum
                  (Hook.) Metzing, Mereg. & R.Kiesling 
1996年 Gymnocalycium gibbosum
                  var. brachypetalum (Speg.) Papsch
              Gymnocalycium gibbosum
                  f. cerebriforme (Speg.) Papsch
              Gymnocalycium gibbosum
                  var. chubutense (Speg.) Papsch
              Gymnocalycium gibbosum subsp. ferox
                  (Labour. ex 
Rümpler) Papsch
1997年 Gymnocalycium reductum
                  var. leucodictyon (Salm-Dyck) Papsch
2002年 Gymnocalycium gibbosum
                   subsp. ferdinandii
                   Halda, Malina & Milt
              Gymnocalycium gibbosum
                  subsp. gastonii Halda & Milt
              Gymnocalycium gibbosum
                  subsp. radekii Halda & Milt
2006年 Gymnocalycium dubniorum Halda & Milt
              Gymnocalycium gibbosum
                  subsp. radovanii Halda & Milt
              Gymnocalycium striglianum
                  subsp. aeneum Mereg. & Gugliemone
2007年 Gymnocalycium striglianum
                  subsp. otmari Halda & Milt
2008年 Gymnocalycium chubutense
                  var. dubniorum (Halda & Milt) H.Till


大型鬼胆丸の学名であるG. gibbosum var. nigrumは1959年の命名、鬼胆丸の学名とされるG. brachypetalumは1925年、G. gibbosum var. brachypetalumは1996年の命名です。しかし、これらはG. gibbosum subsp. gibbosumの異名扱いです。

そういえば、属名も変遷がありますね。G. gibbosumははじめはCactus属でした。Cactus gibbosusは1816年の命名です。このCactus属(Cactus L.)は、1753年に学名のシステムを作ったCarl von Linneによりサボテン全般に付けられたものの現存しない学名です。ということで、Cactus gibbosusはCactus属としてはかなり遅い命名です。というのも、Cereusが誕生した翌年の1754年にはCereus Mill.も提唱されており、実際に1826年にはCereus gibbosusと命名されているわけですから、こちらもだいぶ遅い移行です。1827年にEchinocactus Link & Ottoが提唱されましたが、その翌年の1828年にはEchinocactus gibbosusが提唱されており、こちらは素早い対応でした。では、Gymnocalyciumはと言うと、1844年に命名されたGymnocalycium Pfeiff. ex Mittlerです。G. gibbosumの命名は1844年ですから、G. gibbosumはギムノカリキウム属の初期メンバーだったようです。とは言うものの、1907年までは普通にEchinocactusとして命名されていますね。1925年以降はGymnocalyciumとして命名されますが、それ以前はGymnocalyciumとする命名はほとんどありません。中々、ギムノカリキウム属は浸透しなかったようです。



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昨日に引き続き、ラフレシアリサーチさんで購入したギムノカリキウムのご紹介です。Gymnocalycium mihanovichiiとGymnocalycium friedrichiiはご紹介しましたが、本日はGymnocalycium damsii ssp. evae v. torulosumです。しかし、おかしな学名ですね。ダムシイ亜種エヴァエ変種トルロスムという、亜種なのか変種なのかよく分からない学名です。
ダムシイは一般的には「麗蛇丸」と呼ばれます。私が購入したのは、'VoS 03-040'という番号が付いたダムシイ系のギムノカリキウムです。


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Gymnocalycium damsii subsp. evae var. torulosum VoS 03-040

そもそも、G. damsiiとは何者かというと、1903年に命名されたEchinocactus damsii K.Schum.から始まります。1922年にはギムノカリキウム属とされ、Gymnocalycium damsii (K.Schum.) Britton & Roseとなりました。これが、現在園芸上において流通している学名でしょう。しかし、2005年にはダムシイはG. anisitsiiの亜種であるとするGymnocalycium anisitsii subsp. damsii (K.Schum.) G.J.Charlesとなりました。これが、現在認められている正式な学名です。
では、subsp. evaeだとかvar. torulosumはどうなるのかと言うと、G. anisitsii subsp. damsiiの異名扱いのようです。亜種エヴァエは2004年に命名されたGymnocalycium damsii subsp. evae Halda、変種トルロスムは1963年に命名されたGymnocalycium damsii var. torulosum Backeb.から来ているようです。また、2004年にはGymnocalycium damsii var. torulosum Backeb. ex H.Till & Amerhとなっています。ちなみに、ダムシイ系の亜種や変種は、G. damsiiかG. anisitsii subsp. damsiiとなったことからすべて存在しないことになりました。
ちなみにG. anisitsii (K. Schum.) Britton & Roseは1922年の命名ですが、はじめて命名されたのは1900年のEchinocactus anisitsii K.Schum.でした。

最後にフィールドナンバーを調べてみます。私の所有するG. mihanovichiiもG. friedrichiiも、やはり
Volker Schädlichの採取でした。それだけではなく、採取日も同じですから、Schädlichがパラグアイを移動しながら採取したことが分かりますね。購入時にラベルを見てぎょっとしましたが、おかしな学名はフィールドナンバーの記載事項だったんですね。
Field number : VoS 03-04
Collector : Volker Schädlich
Species : Gymnocalycium damsii ssp. evae v. torulosum
Locality : Paraguay, Santa Cruz (east of San Jose 309m)
Date : 01/01/2007

 さて、ここ3回に分けてVoSナンバーの付いたギムノカリキウムをご紹介してきました。お気づきのように学名がかなり変わってしまっています。あまり馴染みがない名前ばかりかもしれません。どうやら、近年のギムノカリキウム属の分類は、亜種や変種はまとめる傾向があるようです。とは言うものの、これで一件落着とは言えないでしょう。おそらくはギムノカリキウム属は見かけの分類は非常に困難です。ギムノカリキウムの分類はかなりの高難度ですから、近縁種を集めて詳細な遺伝子解析でもしないと、いつまで経っても仮の分類にしかならないような気もします。それまでは、学名もコロコロ変わるでしょう。まあ、取り敢えずは、フィールドナンバーの記載された学名をラベルに書いておくことにしておきます。


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昨日に引き続き、ラフレシアリサーチさんで購入したギムノカリキウムのご紹介です。昨日はGymnocalycium mihanovichiiでしたが、本日はGymnocalycium friedrichiiです。
フリエドリチイ(フリードリッヒ)は一般的には「牡丹玉」と呼ばれます。私が購入したのは、'VoS 01-017/a'という番号が付いたフリエドリチイです。


DSC_2192
Gymnocalycium friedrichii VoS 01-017/a

フリエドリチイの学名は、はじめて命名されたのは1936年のGymnocalycium mihanovichii var. friedrichii Werderm.でした。つまりは、ミハノヴィチイの変種とされたのです。1979年には独立種となり、Gymnocalycium friedrichii (Werderm.) Pazout ex Sch
ützとなりました。一般的にはこの学名が流通していますが、どうやら問題のある学名のようです。G. friedrichiiには'not validly publ.'という表記が追加されています。つまりは、有効な公開ではないということです。学名は命名規約に乗っ取って記載する必要があり、不備があれば無効となる可能性もあります。この場合、G. friedrichiiを命名した論文を読まないと、どこに問題があったのかは分かりません。一応、今後調べてみます。しかし、命名者が'Pazout ex Schütz'となっていますから、そもそもG. friedrichiiはPazoutが記載したものの何らかの不備があり、そのPazoutをSchützが引用して改めて記載したという意味ですが、さらにその論文にも不備があったということになります。
では、現在認められている学名はというと、1979年に命名された、Gymnocalycium stenopleurum F.Ritterです。一般にG. stenopleurumは大型のG. friedrichiiと言われたりしますが、2016年にはGymnocalycium friedrichii subsp. stenopleurum (F.Ritter) Schädlichも提唱されています。
昨日はミハノヴィチイ(G. mihanovichii)をご紹介しましたが、ミハノヴィチイの4つの変種は、実はG. stenopleurumの異名とされています。上で出てきたG. mihanovichii var. friedrichii以外では、
1951年に命名されたGymnocalycium mihanovichii var. piraretaense Pazout1962 年に命名されたGymnocalycium mihanovichii var.  angustostriatum Pazout1963年に命名された Gymnocalycium mihanovichii var. albiflorum Pazoutです。

また、1958年に命名されたGymnocalycium eytianum Cardenasは、2008年にはGymnocalycium friedrichii subsp. eytianum (Cardenas) H.Hill & Amerh.とする意見もありましたが、これは'not validly publ.'ということですから、有効な公開ではないようです。ちなみに、G. eytianumはGymnocalycium marsoneri subsp. matoenseの異名とされているようです。

最後にフィールドナンバーを調べてみます。昨日のG. mihanovichiiと同じくVolker Schädlichが2007年の正月にパラグアイで採取しています。
Field number : VoS 01-017/a
Collector : Volker Schädlich
Species : Gymnocalycium friedrichii
Locality : Paraguay, Boqueron (north of Americo Pico 195m)
Date : 01/01/2007

フィールドナンバーの学名が、G. stenopleurumではなくG. friedrichiiになっていますが、これは採取された時点での学名だからです。学名が変更になってもフィールドナンバーの情報は更新されませんから、フィールドナンバーとして登録された学名と現在の学名が異なることは当然の話です。
ちなみに、有名なLB 2178は暗い地に白い肋が鮮烈ですが、このVoS 01-017/aのように採取地点により特徴が異なります。LBは採取したLudwig Berchtの略ですが、Berchtが採取したG. friedrichiiはLB 2178だけではありません。LB 2211やLB 2218、LB 3054などもBerchtにより採取されたG. friedrichiiです。他にもSTO 95-995/1、HU 311、RCB 360、HT 373、LAU 373など、様々な採取人により沢山の個体が採取されています。どれも個性的ですから、集めたくなってしまいますね。


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五反田TOCのビッグバザールでもお馴染みのラフレシアリサーチさんは、毎度フィールドナンバー付きのサボテンを並べています。フィールドナンバーとは、野生の植物が採取された時の情報が記載されたものです。フィールドナンバーが付いているということは、交配種や園芸種ではなく、野生個体由来の植物を増やしたものということになります。
ラフレシアリサーチさんからは私も度々購入していますが、たまたまよく似た3種類のギムノカリキウムを入手しました。これから3回に分けて、3種類のギムノカリキウム、G. mihanovichii、G. friedrichii、G. damsii ssp. evae v. torulosumをご紹介します。
今日はミハノヴィチイ(ミハノビッチ)です。ミハノヴィチイは一般的には「瑞雲丸」と呼ばれます。私が購入したのは、'VoS 01-007'という番号が付いたミハノヴィチイです。

DSC_2188
Gymnocalycium mihanovichii VoS 01-007

ミハノヴィチイは、はじめて命名されたのは1905年のことで、Echinocactus mihanovichii Frič & Gürkeと命名されました。しかし、1922年にはギムノカリキウム属に移され、Gymnocalycium mihanovichii (Frič Gürke) Britton & Roseとなりこれが現在認められている学名です。また、1966年にはGymnocalycium mihanovichii var. filadelfiense Backeb.という変種が主張されましたが、現在では変種としては認められずG. mihanovichiiと同種とされています。 

さて、ミハノヴィチイには他にも4つの変種がありましたが、現在ではそのすべてが認められていません。しかも、その4種はG. mihanovichiiとは関係がなく、すべてがGymnocalycium stenopleurumと同種とされているようです。一応、その4種を以下に示します。
1936年 G. mihanovichii var. friedrichii
1951年 G. mihanovichii var. piraretaense
1962年 G. mihanovichii var. angustostriatum
1963年 G. mihanovichii var. albiflorum

最後に、フィールドナンバーを調べてみます。2007年の正月にパラグアイで採取されたようです。
Field number : VoS 01-007
Collector : Volker Schädlich
Species : Gymnocalycium mihanovichii
Locality : Paraguay, Boqueron (West of Mariscal, Ruta Trans-Chaco towards Fn. Nueva Asunsion 205m)
Date : 01/01/2007


以上がミハノヴィチイについての情報でした。明日はG. friedrichiiをご紹介します。G. friedrichiiと言えばLB 2178が有名ですね。このLBはフィールドナンバーですが、当然ながらLB 2178以外のフィールドナンバーも存在します。私の購入したG. friedrichiiはVoSナンバーです。しかし、少し調べるとG. friedrichiiの学名については多少のいわくがあるようです。


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昨年の秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、「ユーフォルビア・ペディラントイデス」という名前の花キリンを入手しました。調べてみましたが、海外や論文を含めたいした情報はありませんでした。仕方がないので、学名について調べてみました。

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Euphorbia pedilanthoides

ペディラントイデスの学名は、1921年に命名されたEuphorbia pedilanthoides Denisです。しかし、実は最初に命名されたのは1887年で、Pedilanthus lycioides Bakerでした。Pedilanthusはユーフォルビア属と同じトウダイグサ科の植物で、すぼまった形のほとんど開かない花が咲きます。代表的な種類は「ダイギンリュウ」の名前で知られています。ペディラントイデスは最初Pedilanthusとされたのは、特徴的な花の形状がよく似ているからでしょう。しかし、それ以下の特徴はあまりにも花キリンです。
ここで一つ疑問がわきます。Pedilanthus lycioidesがユーフォルビア属に移動したならば、学名はEuphorbia lycioidesとなるのが通常でしょう。しかし、何故かEuphorbia pedilanthoidesとされているのです。もしやと思って、試しにEuphorbia lycioidesを調べてみたら、なんとEuphorbia lycioides Boiss.というブラジル原産のユーフォルビアが出てきました。ペディラントイデスは花キリンですから、当然ながらマダガスカル原産です。つまりはまったくの別種です。しかも、このEuphorbia lycioidesは1860年の命名で、なんとPedilanthus lycioidesよりも命名が早いのです。命名が早い方が優先されますから、Euphorbia lycioidesを使うわけにはいかなかったのです。というわけで、ユーフォルビアとなるにあたり新たに命名し直したということなのでしょう。ちなみに、種小名の'pedilanthoides'とは、「Pedilanthusに似た」という意味ですね。

ペディラントイデスには「痩花キリン」という名前もあります。枝が細い所から来ているのでしょうか。読み方ですが、幾つかのサイトでは「ソウカキリン」とありました。しかし、「痩せた」+「花キリン」でしょうから、「痩花+キリン」は読み方としては少しおかしな気もしますが、まあ所詮は園芸名なので問題がないと言えば問題がないのでしょう。
そういえば、根元の幹が少し太ってやや塊茎状となるようですが、小さく目立ちませんね。本来は枝が枝分かれして長く伸び灌木状になりますから、盆栽のような枝を切り詰めながら育てればコーデックスとして扱えるかもしれません。

ペディラントイデスは花キリンですが、花キリンはユーフォルビア属ユーフォルビア亜属Old world  Clade IIのSection Goniostemaに所属します。花キリンにも幾つかのグループがありますが、ペディラントイデスはE. horombensis、E. didiereoides、E. croizatii、E. lophogona、E. milliiなどと近縁です。

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新年のサボテン・多肉植物のビッグバザールに行きました。ラフレシアリサーチさんが様々な多肉植物の種子を販売していましたが、Operculicarya pachypusの種子を3粒購入しました。まだ寒いので種をまく適期ではないでしょうけど、お試し用に1粒まいてみました。ちなみに、先人の知恵は無視して、適当にやってしまいました。一応は持てるだけの科学知識を動員してはみましたが…
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今回はこんな道具を使用。今回は30mLサイズの三角フラスコに種をまきます。

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オーソサイドは種子の殺菌にも使用されます。

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オーソサイドを適当に溶かしました。ピンセットの殺菌用なので、規定の倍率にする必要はありません。

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オペルクリカリア・パキプスの種子を使用。今回はお試し用に1粒だけ。果肉には発芽を抑制するアブシジン酸が含まれていますから、果肉は取り去る必要があります。自然では鳥などの動物に食べられて果肉は消化されます。

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しばらく水に浸け込んで、果肉をふやかします。

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しかし、思うように水を吸いません。果肉も固く中々取れません。

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果肉を取っては水に浸けてふやかしてを繰り返しました。まあ、ティッシュペーパーで擦ってだいたい果肉は落ちましたかね。

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しばらく水に浸けておきます。直ぐに沈んだので、しいな(不捻種子)ではなさそうです。10時間ほど吸水。

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赤玉土と燻炭を混ぜたものです。赤玉土は細粒が良いのでしょうけど、なかったので中粒で代用。熱湯で簡単に消毒。本当は圧力鍋で高温湿圧滅菌した方がベストですが、食品以外で圧力鍋は使いたくありませんからね。

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殺菌剤水溶液にピンセットを浸け込んでおきます。まあ、火炎滅菌の方が手っ取り早くて確実ではあります。ライターの弱い火でも800~900度、火で炙れば完全に滅菌可能ですからね。しかし、ピンセットが酸化して汚くなるので今回はなしの方向です。専用のピンセットが必要でしたか。

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種子はよく水に溶かした滅菌剤に浸けたりしますが、今回は種子に直に殺菌剤をまぶします。殺菌剤の説明書に書かれた希釈倍率は、果実に使った時に残留しないようにするためのものです。ですから、種子粉衣と言って、直に殺菌剤をまぶした方が簡単で効果が期待出来ます。まあ、モヤシやカイワレ大根なんかは、発芽前の種子に殺菌剤をまぶすと、高濃度の殺菌剤を口にすることになりますから止めた方が無難ですけどね。

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種子には発芽に光が必要な明発芽種子と、光があると発芽しない暗発芽種子とがあります。例えば、乾燥地の植物の種子は、光が当たっている環境だと発芽しても暑さや乾燥で枯れてしまうのではないでしょうか。種子が確実に地中に埋まっている時に発芽した方が生き残る可能性が高いでしょう。ですから、多肉植物は暗発芽種子が多いような気もします。というわけで、種子は暗くしておきます。

さて、勢いだけで適当にやってしまいましたが、どうなることやらといった感じです。上手くいけばいいのですが、部屋が普通に10℃以下になるので中々厳しいかもしれませんね。まあ、試しです。種子もかなり安かったので、失敗しても大して懐が痛むわけでもありません。
まあ、とはいえ今回やってみたものの、少しカビに対して神経質過ぎたかなあとは思いました。極端なことを言えば、普通に殺菌せずに種をまいて、カビが生えたら殺菌剤まけばそれで解決なんですよね。今さらですが、ただの徒労だったかもしれません。次回はもっと適当にやってみます。



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硬葉系ハウォルチア(Haworthiopsis)は人気がなく、昔から国内で流通しているにも関わらずあまり見かけません。私もちまちま集めていますが、中々集まりません。去年の10月に神奈川県川崎市のタナベフラワーで多肉植物のイベントががあり訪れましたが、珍しいことに硬葉系ハウォルチアがけっこうあり、Haworthiopsis venosaを購入しました。
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Haworthiopsis venosa

ハウォルチアは南アフリカ原産ですが、H. venosaは南アフリカだけではなくナミビアにも分布する可能性があり、非常に広範囲に分布します。厳しい環境ですが、茂みの中や岩の隙間などの陰に生えます。自生地にはEuphorbia aggregata、Crassula obvallata、Cotyledon toxicarina、Mesembrhanthemum saxicolum、Stapelia flavirostrisなどが生えます。

さて、H. venosaが最初に命名されたのは1783年のことで、実に200年以上前のことです。この時はアロエ属とされており、Aloe venosa Lam.でした。ハウォルチア属が創設されたのは1809年ですから、1809年より前に命名されたハウォルチアはすべてアロエ属でした。1821年にはHaworthia venosa (Lam.) Haw.とされました。この学名が一番良く使用されており、国内では園芸的にも未だにこの名前で販売されています。その後、1891年にCatevala venosa (Lam.) Kuntzeも提唱されましたが、このカテバラ属自体が現在は存在しない属ですから認められていません。2013年には硬葉系ハウォルチアがHaworthiopsisとされましたが、H. venosaもハウォルチア属からハウォルチオプシス属とされました。つまり、Haworthiopsis venosa (Lam.) G.D.Rowleyです。残念ながら国内ではハウォルチオプシスの使用は少ないのが現状です。しかし、遺伝子解析の結果からも、ハウォルチア属とハウォルチオプシス属の分離はまず間違いがないでしょう。H. venosaには他にも異名がありますから年表で示します。

1804年 Aloe anomala Haw.
              Aloe recurva Haw.
              Aloe tricolor Haw.
1811年 Apicra anomala (Haw.) Willd.
              Apicra recurva (Haw.) Willd.
              Apicra tricolor (Haw.) Willd.
1812年 Haworthia recurva (Willd.) Haw.
1876年 Haworthia distincta N.E.Br.
1891年 Catevala recurva (Willd.) Kuntze
1943年 Haworthia venosa var. oertendahlii Hjelmq.

1976年 venosa subsp. recurva (Haw.) M.B.Bayer

H. venosaはよく見ると、葉の上面は透き通っています。ハウォルチオプシス属ではこのような「窓」があるものはあまりありませんが、しかも窓に葉脈のような模様が入るのは、H. venosa、H. tessellata、H. woolleyi、H. granulataくらいです。これらの共通する特徴を持つハウォルチオプシスは、H. venosaの亜種あるいは変種とされたこともあります。H. venosaとの関連だけをピックアップして見てみましょう。          DSC_1797
Haworthiopsis woolleyi
              (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia woolleyi Poelln., 1937
→Haworthia venosa subsp. woolleyi
                     (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthiopsis venosa var. woolleyi
                    (Poelln.) Breuer, 2016


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Haworthiopsis tessellata
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia tessellata Haw., 1824
→Aloe tessellata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Haworthia venosa subsp. tessellata
                                 (Haw.) M.B.Bayer, 1982
→Haworthia venosa var. tessellata
                                        (Haw.) Halda, 1997


Haworthiopsis granulata
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia granulata Marloth, 1912
→Haworthia venosa subsp. granulata
                     (Marloth) M.B.Bayer, 1976


ちなみに、何故か共通した特徴のないように見えるニグラもH. venosaの亜種とされたことがあるようです。一応、情報を記載します。
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Haworthiopsis nigra
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Apicra nigra Haw., 1824
→Aloe nigra (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829 
→Haworthia nigra (Haw.) Baker, 1880
→Haworthia venosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1997




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今年の正月明けに五反田TOCで開催された、新年のサボテン・多肉植物のビッグバザールへ行って来ました。今回のビッグバザールは、アロエがいつもより多く珍しいものも沢山ありました。悩みましたが、マダガスカル原産の小型アロエであるバケリ(Aloe bakeri)を購入しました。バケリはアロエにしては葉は薄くて非常に硬く、まるでディッキア(Dyckia)のようです。

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Aloe bakeri

バケリは園芸店では見かけないアロエですが、どのような多肉植物なのでしょうか? 少し調べてみました。取り敢えず論文を当たってみましたが、2019年のColin C. Walkerの論文、『Aloe bakeri - a critically endangered highly localized Madagascan endemic』が見つかりました。早速内容を見ていきましょう。

イギリスの植物学者であるGeorge Francis Scott-Elliotは1888年から1890年にかけてマダガスカルを訪れました。マダガスカル最南東にあるFort Dauphin (Taolagnaro, Tolanaro, Tolagnaro)での採取で、Aloe bakeriは発見されました。Scott-Elliotはキュー王立植物園のアロエの専門家であるJohn Gilbert Bakerに対する献名として、1891年にマダガスカルで採取した新しいアロエにAloe bakeri Scott-Elliotと命名しました。
 
1994年にA. bakeriをGuillauminiaとする、つまりはGuillauminia bakeri (Scott-Elliot) P.V.Heathがありました。このGuillauminiaは、Guillauminia albiflora(Aloe albiflora)のために、1956年にBertrandにより提唱された属です。Heathは1種類しかなかったGuillauminiaを拡大し、マダガスカルの矮性アロエであるA. bakeri、A. bellatula、A. calcairophylla、A. descoingsii、A. rauhiiを含ませましたが、それまではGuillauminiaが注目を浴びることはなく無視されてきました。しかし、アロエの権威であったReynoldsはGuillauminiaを採用しないなど、浸透したとは言いがたいようです。しかも、1995年にGideon F. Smithらにより発表された『The taxonomy of Aloinella, Guillauminia and Lemeea (Aloacaea)』ではGuillauminiaを詳細に分析し、アロエ属とは異なりGuillauminiaのみに共通する特徴がないことなどが指摘され、Guillauminiaは明確に否定されています。さらに、近年の遺伝子解析の結果では、Guillauminiaの所属種同士が必ずしも近縁ではなく、アロエ属の中に埋没してしまうことが明らかとなりました。よって、現在Guillauminiaは認められておりません。
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Aloe albiflora

次に自生地を調査した植物学者たちの報告を見てみましょう。Gilberd Reynoldsは1955年の6月から10月まで、マダガスカルでアロエを探して、自動車で4000マイル(6437km)以上の距離を運転しました。ReynoldsはFort Dauphinの近くでAloe bakeriを大量に見つけました。それは、50から100の密集したグループで生長していました。
次いで、Werner Rauhはマダガスカルに9回旅行しました。Rauhの1964年の報告では、Fort Dauphin付近でA. bakeriを観察しています。A. bakeriはTolanaro北西にあるVinanibe付近のまばらな花崗岩の露頭の腐植土が溜まった岩の亀裂で育つとしています。

CormanとMaysは2008年の報告で、去年(2007年)にマダガスカル南部を訪れたNorbert RebmannとPhilippe Cormanは、Euphorbia millii var. imperataeとともに生育するFort Dauphin付近のA. bakeriを見つけました。しかし、近くの港の開発に必要な石材採取のために、A. bakeriの生息地が破壊されていました。CormanはかつてRauhが観察した岩場で、A. bakeriは4個体しか見つかりませんでした。A. bakeriを発見したScott-Elliotは砂丘にも生息するとしていましたが、RebmannもCormanも砂丘ではA. bakeriを見つけることは出来ませんでした。
Castillon & Castillonは2010年の報告で、Taolagnaro付近の岩だらけの丘は、商業港と都市部の産業開発のため2年前に消滅したため、野生のA. bakeriは絶滅してしまったとしています。


以上が論文の簡単な要約となります。そういえば、1902年に命名されたAloe bakeri Hook.f. ex Bakerというアロエもありますが、こちらはAloe percrassa Tod.の異名です。A. percrassaは大型アロエですから、まったく似ていませんから間違いようはありませんね。
著者は絶滅したかは断言していませんが、キュー王立植物園のデータベースではA. bakeriは「絶滅」と表記されています。栽培は難しくないようですから、栽培品の維持はされています。しかし、自然環境に自生する多肉植物は非常に美しいものですから、大変悲しいことです。これ以上、多肉植物が絶滅してしまうことが起きてほしくありません。


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寒い日はありますが、今年の1月は割と暖かい気もします。関東では雪が降るかも知れないと言いますから、冬本番はこれからかもしれませんね。

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幻蝶カズラ Adenia glauca
寒さに弱い幻蝶カズラは、冬は毎年葉を落とします。しかし、今年は枝をカットした後に、冬だというのに新しい葉が出て来て枯れません。

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Haworthia mucronata var. mucronata JDV90-111
ムクロナタは夏は葉先が枯れたりしますが、冬は瑞々しくて一番綺麗な時期ですね。


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Haworthia arachnoidea
禾が美しいアラクノイデアも、葉の枚数が増えてだいぶ見られるようになりました。

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Gasteria disticha
ディスティカの花は丸みがあり、ガステリア=胃と命名された理由がよく分かります。


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Gasteria baylissiana
小型ガステリアのバイリシアナも花芽が出来てきました。

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Gasteria carinata
カリナタの花は細長くて、ガステリア=胃というほど似ていませんね。

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千代田錦 Gonialoe variegata
千代田錦も花芽が見えて来ました。

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Euphorbia moratii
塊根性花キリンのモラティイにも花芽が出てきました。去年のビッグバザールで購入したばかりですから、はじめての花です。


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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia
鉄甲丸も花が咲きました。育てにくい割にちょくちょく開花します。


最後に気になる情報を一つ。鶴仙園さんのブログを見ていたら、なにやらイベントが開催されるみたいですね。今回は「ZawaFes ReUNION」という茨城県のつくばで開催される多肉植物の即売会です。先行入場チケット抽選をやってるみたいですから気になる方はお早めに。しかし、つくばは完全に車社会で公共交通機関だときついことが多いのですが、会場の「つくばカピオ」はつくばエクスプレスのつくば駅の近くですから、立地は良さそうです。主宰は四国造園さんという茨城県では有名な多肉植物の聖地とされる園芸店だそうです。おらいさん、優木園さんなどという名前が並びますから、どうやらエケベリアがメインとなりそうです。まあ、エケベリアはずっと人気がありますからね。しかし、開催は3月12日ということで、春のサボテン・多肉植物のビッグバザールと同じ日なんですよ。まあ、ビッグバザールは開催日が変わることがありますが、しかし開催日が被るとは。ZawaFesの会場のつくばカピオは中々予約が取れないので、抽選でこの日になったみたいですから偶然なんでしょうけど困りましたね。


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ガステリアは実に面白い多肉植物ですが、何故か人気がありません。どうしても、マニアックな印象がつきまといます。もしかしたら、臥牛が古典植物のように扱われ、微妙な姿の違いを観賞する傾向があるからかもしれません。ということですから、あまり人気がないのであまり販売されていません。ガステリア自体は昔から国内に流通していますから、レアとは言えない種類も多いはずですけどね。私も極々稀に販売されていたりしますから、機を逃さずにチマチマ集めて記事を書いてきました。また、現在、学術的に認められているガステリア属を異名を含めまとめた記事があります。
本日ご紹介するのはGasteria distichaです。「青竜刀」あるいは「無憂華」という名前もあるようですが、ネットの販売サイトでしか見たことがない名前です。実際に使われているのかは不明です。

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Gasteria disticha

G. distichaの学名は、1827年に命名されたGasteria disticha (L.) Haw.ですが、これは1753年にCarl von Linneが命名したAloe disticha L.から来ています。ガステリア属は1809年にGasteria Duvalが創設されるまではアロエ属とされていました。実はG. distichaは最初に命名されたガステリアです。また、1866年にはPtyas disticha (L.) Salib. not validly publ.も知られます。末尾に''not validly publ.とありますが、これは有効な公表ではないということですから、正式なものとは認められていないのでしょう。

G. distichaには変種が認められています。2007年にGasteria disticha var. robusta van Jaarsv.Gasteria disticha var. langebergensis van Jaarsv.が命名されたことに従い、基本種はGasteria disticha var. distichaとなりました。この内、変種ランゲベルゲンシスは独立種とされ、2019年にGasteria langebergensis (van Jaarsv.) van Jaarsv.となり、Gasteria distichaではなくなりました。さらに、2022年にはGasteria disticha var. marxiiがE. J. van JaarsveldとD. V. Tribbleにより提唱されていますが、まだ審議中といったところでしょうか。データベース上ではvar. marxiiの名前はまだ確認出来ません。


さて、ここからは異名を見ていきましょう。ガステリアは「分類学者の悪夢」と言われるくらい分類が混乱していた経緯があり、19世紀にはやたらめったらに学名が命名されました。そのため、うんざりする程に異名が沢山あります。というわけで、変種ディスティカの異名を命名年順に列挙します。

1768 Aloe linguiformis Mill.
1789 Aloe lingua var. angustifolia Aiton
          Aloe lingua var. crassifolia Aiton
1804 Aloe lingua var. latifolia Haw.
          Aloe lingua var. longifolia Haw.
          Aloe nigricans Haw.
          Aloe obliqua Jacq., nom. illeg.    
1809 Gasteria angustifolia (Aiton) Duval
          Gasteria longifolia (Haw.) Duval
          Gasteria nigricans (Haw.) Duval

1811 Aloe obscura Willd., nom. illeg.
1812 Aloe longifolia (Haw.) Haw., nom. illeg.
          Gasteria latifolia (Haw.) Haw.
1817 Aloe nigricans var. crassifolia Salm-Dyck
1819 Gasteria denticulata Haw.
1821 Aloe angustifolia
                     (Aiton) Salm-Dyck, nom. illeg.
          Aloe conspurcata Salm-Dyck
          Aloe obtusifolia Salm-Dyck, nom. illeg.
          Gasteria mollis Haw.
          Gasteria nigricans var. crassifolia
                            (Aiton) Haw.
1827 Gasteria conspurcata (Salm-Dyck) Haw.
          Gasteria crassifolia (Salm-Dyck) Haw.
          Gasteria disticha var. major Haw.
          Gasteria disticha var. minor Haw.
          Gasteria obtusifolia Haw.
1829 Aloe crassifolia
                         (Salm-Dyck) Schult. & Schult.f.
          Aloe mollis (Haw.) Schult. & Schult.f.
1840 Aloe retusifolia Haw. ex Steud.
1880 Gasteria disticha var. angustifolia Baker
          Gasteria disticha var. conspurcata
                                         (Salm-Dyck) Baker
          Gasteria platyphylla Baker

アロエだったりガステリアだったりしますが、とにかく様々な名前が付けられてきました。しかも、所々に'nom. illeg.'、つまりは非合法名が見受けられます。
そういえば、G. distichaははじめて命名されたガステリアだと述べましたが、ヨーロッパにはじめてもたらされたガステリアでもあります。G. distichaはCarl von LinneがAloe distichaと命名する前から知られていました。1689年にケープタウンの東でHendrik Oldenlandが採取し、'Aloe africana flore rubro folia maculis ab utraque parte albicantibus notata'という特徴の羅列で表記されました。その後、Carl von Linneにより、Aloe distichaと命名されましたが、この'disticha'とは葉が左右に分かれる二列性の特徴から、分配を意味するラテン語由来の種小名です。

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さて、タイトルにあります通り、Gasteria distichaにはじめて花が咲きました。Gasteriaはgaster=胃からきた名前ですが、名前の如く胃袋のような形の花を咲かせます。ガステリアの花には細長いタイプと短いタイプかありますが、G. distichaの花は短いタイプですね。丸みがあってかわいらしい花です。


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昨年末に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、低木状のユーフォルビアであるバルサミフェラ(Euphorbia balsamifera)を購入しました。バルサミフェラはあまり見かけないユーフォルビアでしたが、最近のイベントではポツポツ見かけるようになりました。国内ではあまり流通していませんから、割と高価です。しかし、私のバルサミフェラは現在室内栽培しているとは言うものの、明け方はかなり冷え込むにも関わらず新しい葉を盛んに出しています。思ったより丈夫みたいですから、値段も徐々に落ち着いていくでしょうね。

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Euphorbia balsamifera

そんなバルサミフェラですが、非常に分布が広く生息域が分断されて距離があることが知られています。そのため、伝統的にアフリカ北部に広く分布するE. balsamifera subsp. balsamiferaと、アフリカの角~アラビア半島原産のE. balsamifera subsp. adenensisに分けられてきました。しかし、実際にはsubsp. adenensisは種として独立し、Euphorbia adenensisとなりました。

実はここからが本題です。どうやら、バルサミフェラにはまだ謎が隠されているようなのです。というわけで、本日ご紹介するのはRichard Riinaの2020年の論文、『Three sweet tabaibas instead of one : splitting former Euphorbia balsamifera s. l. and resurrecting the forgotten Euphorbia sepium』です。
論文のタイトルの後半は、「広義のEuphorbia balsamiferaを分割し、忘れられたEuphorbia sepiumを復活させる」ということですから、バルサミフェラからE. sepiumを分離するということです。さて、この「広義(s.l.=sensu lato)のバルサミフェラ」とは何かですが、ここではE. adenensisやE. sepiumを含んだバルサミフェラを示しています。逆にE. adenensisやE. sepiumを含まないバルサミフェラは「狭義(s.s.=sensu stricto)のバルサミフェラ」と呼んでいます。

一度述べていますが、広義のバルサミフェラはアフリカの角~アラビア半島はアフリカ北西部~西部などの個体群と分布に距離がありました。そのため、広義のバルサミフェラについて、各地からサンプリングして遺伝子を解析しました。その結果を示します。

┏━━━━E. sepium

┃            ┏E. adenensis
┗━━━┫
                ┗E. balsamifera s.s.

まずは、広義のバルサミフェラが3つに分割できるということが分かります。狭義のバルサミフェラはモロッコ、西サハラ、カナリア諸島の原産です。驚くべきことに、アフリカ北西部に分布する狭義のバルサミフェラに近縁なのは、分布の離れたE. adenensisでした。しかし、最大の驚きは狭義のバルサミフェラやアデネンシスと遺伝的に距離がある種があったのです。論文ではこの種を、昔命名されたものの忘れ去られていたE. sepiumを適用しました。実はこのセピウムは、アルジェリア、ベニン、ブルキナファソ、中央アフリカ、チャド、コンゴ、ガンビア、ガーナ、ギニア、リベリア、マリ、モーリタニア、ニジェール、セネガル、トーゴ、西サハラと非常に分布が広く、かつて広義のバルサミフェラの分布の大半を占めています。

ここで疑問が浮かびます。広義のバルサミフェラは三分割されたとは言うものの、非常に近縁であることは間違いありません。では、どのような道筋で進化したのでしょうか。通常ならば、狭義のバルサミフェラ→セピウム→アデネンシスか、アデネンシス→セピウム→狭義のバルサミフェラが一番分かりやすいでしょう。または、広義のバルサミフェラの広い分布域から、徐々に3種類に分かれたというシナリオもあるでしょう。しかし、予想外にも狭義のバルサミフェラとアデネンシスが近縁ですから、上のシナリオはすべてご破算です。例えば、昔は狭義のバルサミフェラあるいはアデネンシスの分布が今より広く隣接していたとか、狭義のバルサミフェラとアデネンシスの間の空白に絶滅した未知の種が存在したとか、考えられるシナリオは沢山あります。

バルサミフェラの学名についてまとめましょう。
バルサミフェラは、1789年にEuphorbia balsamifera Aitonと命名されました。1887年に命名されたEuphorbia adenensis Deflersは、1965年にはEuphorbia balsamifera subsp. adenensis (Deflers) P.R.O.Bally、つまりはバルサミフェラの亜種とされましたが、地理的な隔離などによりやがて独立種により戻されました。また、1911年に命名されたEuphorbia rogeri N.E.Br.は、1938年にEuphorbia balsamifera var. rogeri (N.E.Br.) Maire1948年にはEuphorbia balsamifera subsp. rogeri (N.E.Br.) Guinea とする意見もありましたが、E. rogeriはE. balsamiferaと同種とされています。しかし、1911年に命名されたEuphorbia sapium N.E.Br.は、1938年にEuphorbia balsamifera subsp. sepium (N.E.Br.) Maireとされてきましたが、再びEuphorbia sepiumに戻り、広義のバルサミフェラは3種類に分割されることになったのです。


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Fouquieriaは観峰玉(F. columnaris)やF. fasciculataが有名で、現地球が多肉ブームというかコーデックス・ブームに乗っかり高額で売買されました。しかし、最近では実生苗も販売されるようになり、イベントでは様々な種類が見られるようになりました。私もなんだかんだで実生苗をポツポツと購入しているうちに6種類集まりました。ちなみにFouquieriaは現在11種が認められています。一応ですがその11種類のFouquieriaの命名年を以下に示しましょう。

1823年 Fouquieria formosa
1848年 Fouquieria splendens
1885年 Fouquieria columnaris(観峰玉)
1903年 Fouquieria fasciculata
              Fouquieria macdougalii
1909年 Fouquieria purpusii
1911年 Fouquieria burragei
1925年 Fouquieria diguetii
1939年 Fouquieria shrevei
1942年 Fouquieria ochoterenae
1961年 Fouquieria leonilae

簡単に補足説明すると、観峰玉はIdria属とされることもありますが、現在ではFouquieria属です。また、BronniaやPhiletaeriaも、Fouquieriaの異名とされています。

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Fouquieria ochoterenae

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Fouquieria leonilae

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Fouquieria diguetii

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Fouquieria macdougalii

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Fouquieria formosa

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Fouquieria columnaris

さて、そんなFouquieriaですが、2018年に発表された『Recent radiation and  dispersal of an ancient lineage : The case of Fouquieria (Fouquiericeae, Ericales) in American deserts』という論文では、現在のFouquieriaが分岐した年代を、遺伝子解析から推測しています。論文によると、Fouquieriaの出現は白亜紀後期にまで遡るそうです。白亜紀は中生代末期ですから、まだ恐竜が闊歩していた時代にFouquieriaは生まれたということになります。中生代の次は新生代が始まり、新生代は第3紀と第4紀に分けられます。第3紀は古第3紀と新第3紀に分けられ、現在のFouquieriaの種類はこの新第3紀に分岐したようです。新第3紀は2303万年~258万年前の期間です。新第3紀は人類誕生の頃ですから、現在のFouquieriaたちは割と新しい種類ということになります。しかも、ただ1種類から始まり、新第3紀に急速に10種類(※)に進化したのです。
※F. burrageiはこの論文では取り扱
っていないため不明です。

                            ┏━━F. ochoterenae
                        ┏┫
                        ┃┗━━F. leonilae
                    ┏┫
                    ┃┗━━━F. diguetii
                    ┃
                ┏┫        ┏━F. splendens
                ┃┃┏━┫
                ┃┗┫    ┗━F. shrevei
    ┏━━┫    ┃
    ┃        ┃    ┗━━━F. macdougalii
    ┃        ┃
┏┫        ┗━━━━━F. formosa
┃┃
┃┗━━━━━━━━F. columnaris

┃                            ┏━F. purpusii
┃                        ┏┫
┗━━━━━━┫┗━F. fasciculata 1
                            ┃
                            ┗━━F. fasciculata 2


遺伝子解析の結果からは、Fouquieriaは2つのグループに分けられます。F. purpusiiとF. fasciculataは現生のFouquieriaの中では古い時代に他の種類と分岐しました。次にF. columnarisだけは他の種類から孤立しています。F. ochoterenae、F. leonilae、F. diguetiiは姉妹群で、F. splendens、F. shrevei、F. macdougaliiの群と非常に近縁です。F. formosaはこれらの6種類と近縁です。


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昨年末に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、Euphorbia ellenbeckiiという名前のユーフォルビアを入手しました。どのような多肉植物なのでしょうか? 少し調べてみました。

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Euphorbia ellenbeckii

Monadenium ellenbeckii
取り敢えず「エレンベッキー」で検索すると、出てくるのはMonadenium ellenbeckiiですね。正直、これは中々面白いことになったと感じました。というのも、遺伝子解析の結果からモナデニウムはユーフォルビアに吸収されてしまいました。ということは、Monadenium ellenbeckiiはEuphorbia ellenbeckiiになるのかというと、おそらくは違うでしょう。何故なら、すでにユーフォルビアには同じ種小名のEuphorbia ellenbeckiiがいるからです。データベースを見てみると、M. ellenbeckiiは2006年にEuphorbia bisellenbeckiiに変更されました。やはり、同姓同名は許されないということです。新しい種小名は、ellenbeckiiに'bis'を追加しただけではあります。この'bis'は「2回」とか「2度」という意味ですから、すでに存在するEuphorbia ellenbeckiiに2を追加した「エレンベッキー2」みたいな割と安直な名前です。
しかし、海外のサイトではすでにこのE. bisellenbeckiiは普通に使われていますが、日本国内ではほぼ流通していない名前です。以前から思っていましたが、日本は情報が遅いですよね。こういう部分でもガラパゴス化しているのは困ったものです。私の弱小ブログではじめて日本で紹介された情報がかなりあるということに、若干うんざりしてしまいます。


Euphorbia ellenbeckii
愚痴はほどほどにして、E. ellenbeckiiを見てみましょう。エレンベッキーは1903年に命名されたEuphorbia ellenbeckii Paxです。特に異名などはないみたいです。原産地はエチオピア、ケニア、ソマリアですから、ちょうどアフリカの角にあたる部分ですね。
E. ellenbeckiiがはじめて記載された論文はPax in A. Engler, Botanische Jahrbücher für Systematik, Pflanzengeschichte und Pflanzengeographie 33 : 285 (1903)ということです。古いので探してもないでしょうけど、一応は探してみます。ごく稀に、古い論文を画像データとして公開されていることもあるからです。
どうやら、E. ellenbeckiiは根元から叢生するタイプみたいですが、枝は再分岐せずに15cmくらいになるようです。トゲは螺旋状につき、最大1.5cmくらいでサイズは様々ということです。花は黄色がかったピンク。ソマリアやタンザニアの原産と聞いて高地産と思いましたが、標高150mに分布するといいますからそれほど育て方に難はないかもしれませんね。


さて、現在得られる情報はこの程度です。正直、情報不足は否めません。日本国内の情報はほぼゼロに近いのですが、海外の情報もどうにも今一つですね。ヒットするのは販売サイトばかりです。育て方もよくわかりませんが、取り敢えず分布が近いソマリア原産のEuphorbia phillipsioidesを参照にして育てるつもりです。E. phillipsioidesはソマリアものですが暑さにも強く、強光にも割と耐えます。もし、日焼けの徴候があれば遮光を強目にすれば良いだけです。間延びした姿にはしたくありませんから、なるべく日に当てて水も絞って詰まった株に育てたいものです。


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サンスベリア、あるいはサンセベリアと呼ばれる植物があります。ラテン語読みなら「サンセヴィエリア」ですかね。まあ、昔からある斑入りのSansevieria trifasciataがすっかり普及しましたが、最近では様々な種類が販売されているようです。そんなサンスベリアですが、私自身はそれほど興味はありません。しかし、ダシリリオンを調べていた時に、また余計な情報を得てしまいました。なんと、サンスベリア属は現在では存在せず、ドラセナ属(Dracaena、ラテン語読みでドラカエナ)に統一されてしまったというのです。その論文では詳細がわかりませんから、その理由を探ってみました。

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ボウチトセランの花

イギリスのキュー王立植物園のデータベースを見てみたところ、サンセヴィエリアはドラカエナの異名とありました。その根拠として、2021年に出された『New nomenclatural and taxonomic adjustments in Dracaena (Asparagaceae)』という論文が指定されていました。しかし、この論文は一般に公開されていませんから概要しかわかりません。しかし、概要を読むと、遺伝子解析の結果から、サンセヴィエリアはドラカエナに含まれてしまうということです。実際の分子系統図を見れないのは残念ですが仕形ありません。
とりあえず、データベースでサンセヴィエリア属の情報を検索してみます。サンセヴィエリア属はCarl von Linneの弟子で鎖国下の日本の出島にも滞在したこともあるCarl Peter Thunbergが1794年に命名したSansevieria Thunb. nom. cons.です。属名は[属名]+[命名者]ですが、通常は命名者を省略して属名だけですが、論文(特に分類学)だと命名者もセットで記入されます。ここでは[属名]+[命名者]+[nom. cons.]となっています。このnom. cons.とは、保存名(保留名)のことです。保存名とは命名規約を厳密に適用すると、今まで使用されてきた学名から変更しなくてはならず、混乱する場合などに維持される学名です。


ただし、サンセヴィエリア属の項目には、'This name is a synonym of Dracaena'とあり、要するにサンセヴィエリアは異名でドラカエナになったということです。実際に最も一般的なサンセヴィエリアであるSansevieria trifasciataを調べてみると、詳細な情報はなくなっており学名はDracaena trifasciataになったからそちらを見るようにとあります。変更後のDracaena trifasciataを見ると、こちらには様々な情報が記載されていました。こちらにはnom. cons.の表記もありませんし、完全にサンセヴィエリアはドラカエナに吸収されてしまったようです。

とりあえず、サンセヴィエリアの有名な種類であるアツバチトセラン、ボウチトセラン、ツツチトセランの3種類について現状がどうなっているのか調べてみました。

①アツバチトセラン
まずは、代表的なサンセヴィエリアであるアツバチトセランです。アツバチトセランは、1903年にSansevieria trifasciata Prain
命名されましたが、2017年にDracaena trifasciata (Prain) Mabb.が提案され現在はこの学名が認められています。また、アツバチトセランには亜種があり、D. trifasciata subsp. trifasciataとD. trifasciata subsp. sikawaeがあり、それぞれに異名があります。

subsp. trifasciataには、1904年に命名されたSansevieria laurentii De Wild.、1911年に命名されたSansevieria jaquinii N.E.Br.、1912年に命名されたSansevieria craigii Anon.、1915年に命名されたSansevieria trifasciata var. laurentii (De wild.) N.E.Br.という異名があります。

subsp. laurentiiは2019年にSansevieria trifasciata var. laurentii R.H.Wbb & Yingerと命名されましたが、2021年にDracaena trifasciata subsp. sikawae (R.H.Wbb & Yinger) Takaw.-Ny. & Thiedeとなりました。


②ボウチトセラン
ボウチトセランは、1859年にSansevieria cylindrica Bojar ex Hook.と命名され、この学名が最も普及しています。しかし、実際には1861年に命名された Sansevieria angolensis Welw. ex Carriereの系統が正しい学名とされているようです。通常は先に命名された学名が優先ですから、S. cylindricaが優先されるはずです。しかし、実際にはS. angolensisが正しいとされる理由は不明です。詳しく調べる必要がありそうです。S. angolensisは命名者がWelw. ex Carriereとなっていますが、これはWelw.が命名したものの正式な命名の要件を満たしていなかったため、1861年にCarriereがWelw.を引用して記載し直したということでしょう。つまりは、Welw.の命名は1861年よりも前ということになりますが、このことがS. angolensisを優先する理由となっているかはわかりません。

さて、ボウチトセランの学名は1861年に命名されたSansevieria angolensis Welw. ex Carriereでしたが、2018年にDracaena angolensis (Welw. ex Carriere) Byng & Christenh.となりました。ボウチトセランには1932年に命名されたSansevieria livingstoniae Rendleという異名もあります。また、異名であるS. cylindricaには、1891年にAcyntha cylindrica (Bojar ex Hook.) Kuntze、1923年に命名されたCordyline cylindrica (Bojar ex Hook.) Brittonなどサンセヴィエリア属ではないという意見もありました。1915年にはSansevieria cylindrica var. patulaという変種も提唱されましたが、現在では認められておりません。

③ツツチトセラン
ツツチトセランは、1903年にSansevieria stuckyi God.-Leb.と命名されましたが、2018年にDracaena stuckyi (God.-Leb.) Byng. & Christenh.となりました。D. stuckyiは、1932年にAcyntha stuckyi (God.-Leb.) Chiov.とする意見もありました。また、S. stuckyiの命名年である1903年に同じ命名者により、Sansevieria andradae God.-Leb.が命名されていますが、現在ではD. stuckyiと同種とされています。ちなみに、この時の記載に問題があったようで、同じく1903年にSansevieria andradae God.-Leb. ex Geromeとなっています。

最後に
さて、このようにサンセヴィエリアについて多少調べてみましたが、サンセヴィエリア属からドラカエナ属に移動するに際して種小名が変わっているものも結構あるみたいです。
それはそうと、今回はキュー王立植物園のデータベースを参照としましたが、それ意外のすべてのデータベースがサンセヴィエリアをドラカエナに変更していないようです。
サンセヴィエリア属はそれなりに種類があるため、かなり大幅な変更でしょうから現在は移行期間中といった感じなのかもしれません。しかし、サンセヴィエリアの名前を残す残さない関係なく、サンセヴィエリアはドラカエナの一部であるであることは覆しようがありません。サンセヴィエリアからドラカエナへの変更の流れは止められないでしょう。


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昨日、世田谷で開催されたボロ市を覗いてきました。伝統ある行事らしく、例年だと出店が700店舗くらい出るらしいです。新型コロナで開催が中止されていましたが、ようやく再開の運びとなりました。まあ、私は初めて来たわけですけどね。
骨董品もありますが、植物も結構あるみたいです。はじめは多肉植物の屋台も出るから少し情報収集してみましたが、いわゆるお祭りですから他にも色々と楽しめそうです。
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世田谷駅には9時半くらいに到着しましたが、まあまあの混み具合でした。取り敢えず、出店をチラチラ見ながらゆっくり進みます。というか、立ち止まる人がいるので、ゆっくりとしか進めません。一番先まで行って戻ってきましたが、ちょうど代官屋敷のあたりで代官行列が始まるタイミングで、うっかり巻き込まれて完全に身動きが取れなくなってしまいました。仕方がないので、代官行列が始まる前のくす玉が割るイベントをかなり近くから見たりしました。その予定はなかったのですがね。
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レトロ感が出るように、インスタントのフィルターで撮影しました。ちょうど、くす玉が割れた瞬間です。

しかし、往路で気になったものがあっても他も見てからにしようと考えて先に進みましたが、復路ではどこだったかわからなくなりました。というのも、混在の度合いはどんどん増しますし、左側通行ですからいちいち反対側の人混みを掻き分けるのも大変。また、往路を行く気力もなく、諦めました。気になったら直ぐに買うべきでしたね。とにかく、何でもありなので、骨董品から食べ物の屋台、物産品から園芸関係まで色々です。着物関係もかなりありました。
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世田谷区のボロ市の紹介ページでは、混雑するからペットは連れてこないで下さいとありましたが、犬を連れた人もまあまあいました。大抵は足の踏み場もない雑踏ですから、抱き抱えざる得ない感じでしたが、小型犬を抱き抱えない人もいて文字通りの踏んだり蹴ったり状態でとても可哀想でした。

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ということで、戦利品としてはこちらのレトロなグラス。実はというか今回はグラスを買いに来ました。家にはホームセンターで買った無個性なものとウイスキーについてきたオマケのグラスしかないので、ちょっと変わったものがあればいいなぁといった感じです。他にも色々ありましたが、上記の理由で諦めました。

あと、名物だという代官餅はありましたが、凄まじい行列でした。私は並びませんでしたが、過去のボロ市では普通に1時間待ちとかみたいですね。あと、屋台のげんこつ揚げが有名みたいですが、やはり行列がありました。私は焼きそばと饅頭くらいしか買いませんでしたが。あと、何故かシャーピンにとんでもない行列…。別にここでしか食べられないものではないでしょうに。
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ボロ市饅頭
白い方は白あんでした。


上町天祖神社の敷地内で、植物を色々売っていました。盆栽や山野草など様々です。多肉植物の専門店はボロ市通りに2店舗でしたが、他にも多肉植物も少し並べているお店は幾つかありましたね。神社では、新潟から来られた中越植物園さんは色々な山野草を並べていましたが、少しだけアロエなんかがありました。ちょうど気になっていた雪女王があったので購入。
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雪女王 Aloe albiflora
マダガスカル原産の小型アロエ。最近では一時期ですが、ある程度園芸店に流通していたみたいです。しかし、何故か巡り合わせが悪く入手出来ず終いでした。ビッグバザールでも何故か見かけないため、良いタイミングでした。旧・Guillauminia。アロエでは珍しい白い花を咲かせます。

そういえば、多肉植物の屋台の片方はお祭り価格なのかやたらに高価で、万単位が当たり前みたいな感じでした。ビッグバザールなら半額以下だよなぁなどと思いながら、じっくり見るだけ見ました。
もう1つの専門店は、正月明けに開催された新春のサボテン・多肉植物のビッグバザールにも出店していたSucculent Connectionさんです。こちらは適正価格。先のビッグバザールでは、荷物がいっぱいでそれ以上買えませんでしたが、実はちょっと気になる多肉植物があったのですが、なんとちょうど売っているじゃあないですか! 早速購入。十二の巻系は(人気がなく育てるのが簡単なので)基本的にお安いので、懐が痛まない良い買い物となりました。
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スーパーゼブラ
Haworthiopsis fasciataの名前でしたが、いわゆるアテヌアタの白いバンドが強いタイプ。アテヌアタの園芸品種が「十二の巻」です。ちなみに、硬葉系ハウォルチアは、ハウォルチアからハウォルチオプシスとなりました。一般的にHaworthiopsis fasciata系品種とされますが、実はHaworthiopsis attenuata系品種です。というよりも、国内で本物のH. fasciataはほとんど販売していません。H. fasciataは私もビッグバザールでしか見たことがありません。園芸店で名札にはH. fasciataと書いてあっても、よくよく観察するとアテヌアタ系ですから注意が必要でしょう。見分け方は、葉の内側に白いイボがあればアテヌアタ系、白いイボがなくツルツルしていればファスキアタ系です。
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ご覧の通り葉の内側に白いイボがありますから、やはりアテヌアタ系ですね。

あまり人気がない十二の巻ですが、個人的には面白い多肉植物だと思っていて、アテヌアタ系、ファスキアタ系は集めています。せっかくですから、手持ちと比べて見ましょう。
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十二の巻
葉の内側には白いイボがあります。H. attenuata系です。


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H. アテヌアタ 特アルバ
葉の内側にも白いイボがあり、H. attenuata系です。特アルバはアテヌアタとして販売されていますが、葉の質感などスーパーゼブラそっくりです。


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Haworthiopsis fasciata
ご覧のようにファスキアタは葉の内側にイボはありません。


というわけで、世田谷ボロ市を散策してきました。新型コロナ始まって以来はじめての人混みでしたが、なんとも疲れました。結局、ボロ市を往復するだけで2時間半かかりました。基本的に行列には並びませんでしたから、見るだけでそれくらいかかるのです。その他にも食器だの味噌汁用の木の器だのを狙っていましたが、混雑に翻弄されてしまいグラスを選ぶだけでほうほうの体で退散する羽目になりました。次回はいつ開催されるのかわかりませんが、次こそは上手く目的のものを入手したいですね。


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私はユーフォルビア好きで、まあそのほとんどが普及種ですが育てています。ただ、ユーフォルビアには毒があり、扱いには多少なりとも気を付ける必要があります。しかし、やはり毒があるパキポディウムについては、なぜか語られることはありません。パキポディウムに毒? と思った方もおられるかも知れませんが、パキポディウムはキョウチクトウの仲間ですから、毒があることは意外とまではいかないのです。ただし、パキポディウムは別に毒が滲み出ているわけではありませんから、葉を毟って食べたりしない限りは特に害はありません。
日本ではパキポディウムと言ったらマダガスカル原産種が圧倒的で、P. rorulatum系(gracilius, cactipesなど)やP. brevicaule、P. horombense、P. densiflorum、P. windsoliiが主流です。これらのマダガスカル原産種は枝を剪定することは基本的にありませんから、毒があったとしてもそれほど注意が必要なわけでもありません。また、アフリカ大陸原産種のP. bispinosumやP. succulentumあたりは枝を剪定しながら育てますが、ユーフォルビアのように、切り口から乳液があふれ出るわけでもないため、それほど神経質にならなくても問題なさそうです。

パキポディウムの毒に関する論文
さて、そんな毒があるパキポディウムですが、どのような毒かは私も知りませんでした。しかし、調べてみるとパキポディウムの毒性について調べた論文を見つけました。それは、Anurag A. Agrawal, Aliya Ali, M. Daisy Johnson, Amy P. Hastings, Dylan Burge & Marjorie G. Weberの2017年の論文、『Toxicity of the spiny thick-foot Pachypodium』です。
この論文は意外性のある内容で、面白い試験をしています。というのも、例えば毒性のある乳液を出すユーフォルビアについて調べると、乳液の成分を分析した化学式や構造式が淡々と並ぶ論文が沢山あります。当然ながらこれらは科学的には重要で意味があるのでしょうけど、私には妙に味気無く感じてしまいます。それらに比べると、この論文はパキポディウムの種類によって毒性の強さに違いがあるのかとか、葉を食べるイモムシに対する毒性を見たりと中々変わったことをしています。というわけで、早速内容に移りましょう。

強心配糖体
ここで最初に用語の説明をします。パキポディウムの毒性を調べるために使用しているのがNa+/K+-ATPaseという酵素に対する反応です。このNa+/K+-ATPaseは、細胞の内外のナトリウムとカリウムの濃度を調整している酵素です。基本的に動物の細胞内にはカリウムが多く、細胞外の血液などにはナトリウムが多くなっています。この濃度の違い(濃度勾配)により、細胞外から細胞内へ、あるいは細胞内から細胞外への物質の輸送が行われます。つまり、このNa+/K+-ATPaseの働きを阻害してしまうことにより、動物に対して毒性が出るのです。具体的には強心配糖体と言って心臓にダメージが来る危険な毒です。

試験① パキポディウムの種類と毒の強さ
さて、このNa+/K+-ATPase(豚由来)に対する阻害を試験した結果、その毒性を5段階評価しています。この場合は数字が大きいほど、毒性が高いことになります。並びは遺伝子解析によるものです。

            ┏P. namaquanum
        ┏┫
        ┃┗P. bispinosum
    ┏┫ 
    ┃┃┏P. lealii
    ┃┗┫
    ┃    ┗P. saundersii
┏┫
┃┃    ┏P. ambongensis
┃┃┏┫
┃┃┃┃┏P. lamerei
┃┃┃┗┫
┃┗┫    ┗P. geayi
┃    ┃
┃    ┃┏P. rutenbergianum
┫    ┗┫
┃        ┗P. decaryi

┃    ┏P. windsorii
┃┏┫
┃┃┗P. baronii
┃┃
┗┫┏P. rosulatum 
    ┃┃       
ssp. rosulatum
    ┃┃        ┏P. inopinatum
    ┗┫    ┏┫
        ┃    ┃┗P. rosulatum ssp. bicolor
        ┃┏┫
        ┃┃┃┏P. horombense
        ┃┃┗┫
        ┗┫    ┃┏P. eburneum
            ┃    ┗┫
            ┃        ┗P. densiflorum
            ┃
            ┗P. rosulatum ssp. cactipes

以上の結果は中々面白いものです。上の4種類、P.namaquanum、P. bispinosum、P. lealii、P. saundersiiはアフリカ大陸の原産で毒性は高い傾向があります。次の5種類はマダガスカル島原産ですが、背が高くなるものが多くアフリカ大陸原産種に近縁です。これらはやはり毒性は高い傾向があります。赤い花を咲かせるP. baroniiとP. windsoriiは毒性が高い傾向があります。下の7種類はマダガスカル島原産で、背が低く幹が太ります。興味深いのは、分岐の根元に近いロスラツムやカクチペスは毒性が弱いのに、分岐先の1つであるイノピナツムは毒性が高まっていることです。一度弱毒となり再び強毒に進化するという奇妙なものですが、このような進化を誘うような要因が何かあるのでしょうか?

試験② オオカバマダラの幼虫の生長を阻害するか?
次に、オオカバマダラの幼虫にパキポディウムの葉の抽出物を食べさせる試験です。なんでこんなことをするのかを説明する前に、まずは背景をお話しましょう。
オオカバマダラは渡り鳥ならぬ渡りをする蝶として有名です。しかも、このオオカバマダラには毒があり、鳥ですら襲わない毒鳥です。オオカバマダラの幼虫は毒のあるトウワタ(Asclepias)の葉を食べて育ちます。そのため、オオカバマダラの体にはトウワタ由来の毒が蓄積しており、その毒でオオカバマダラは身を守っているのです。しかし、よく考えれば、オオカバマダラに毒があるのは、オオカバマダラにはトウワタの毒が効かないからでしょう。実はこのトウワタの毒はパキポディウムと同じくNa+/K+-ATPaseを阻害する強心配糖体です。もしかしたら、オオカバマダラにはパキポディウムの毒は効かないかもしれないのです。

結果として、オオカバマダラの幼虫はパキポディウムの葉(実際にはトウワタの葉に塗ったパキポディウムの葉の抽出物)を食べた量が多いほど、生長が阻害されることがわかりました。オオカバマダラにパキポディウムの毒が効いているように思えます。

試験③ オオカバマダラの酵素を阻害するか?
では、実際にどの程度、毒が効いているのか見てみましょう。最初の試験では使用したNa+/K+-ATPaseは豚由来でした。しかし、同時にオオカバマダラのNa+/K+-ATPaseの働きを阻害するのかも試験したのです。

さて、結果ですが、なんとオオカバマダラの
Na+/K+-ATPaseは、豚由来のNa+/K+-ATPaseと比べると約100倍もトウワタの毒に対して耐性があることがわかりました。オオカバマダラは酵素からしてトウワタの毒が効かなくなっているのです。では、パキポディウムの毒ではどうかというと、オオカバマダラのNa+/K+-ATPaseも豚由来のNa+/K+-ATPaseも、効果に差がありませんでした。つまりは、オオカバマダラはパキポディウムの毒には耐性がないということになります。

最後に
読めばお分かりのように、同じ強心配糖体とはいえ、トウワタとパキポディウムでは毒の成分は異なるのでしょう。とするなら、オオカバマダラにパキポディウムの毒が効くのは当たり前の話でしょう。一口にNa+/K+-ATPaseの働きを阻害すると言っても、どのように阻害するかは物質により異なる可能性が大です。さらに言えば、実際にパキポディウムの葉を食べるイモムシもいるということですから、一概にトウワタよりもパキポディウムの方が毒性が高いとも断言出来ません。パキポディウムの葉を食べるイモムシにトウワタの葉を食べさせたら、結構毒が効いてしまうかもしれません。
というように、非常に面白い研究ではありますが、結果ははっきりしないものでした。しかし、パキポディウムには強烈な毒性があることと、Na+/K+-ATPaseの阻害作用が明らかになりました。しかも、パキポディウムの種類により毒性も異なるのです。しかし、この差は何が原因でしょうか? 非常に気になります。


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 昨日に引き続きエケベリアの遺伝子を解析した論文の紹介です。本日が最後です。

エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。

┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②

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Clade IV-②はエケベリアのみからなるグループです。series Gibbiflorae、つまりはエケベリア属ギビフロラエ列です。ギビフロラエ列は2つのグループに大別されます。

                            ┏━E. gibbiflora 1
┏━━━━━━┫
┃                        ┃┏E. fulgens 
┃                        ┗┫    v. obtusifolia
┃                            ┗E. gibbiflora 2

┫┏━━━━━━━E. purhepecha
┃┃
┃┃                        ┏E. roseiflora
┃┃                    ┏┫
┃┃                    ┃┗E. nayaritensis
┗┫┏━━━━┫
    ┃┃                ┃┏E. munizii
    ┃┃                ┗┫
    ┃┃                    ┗E. rufiana
    ┃┃
    ┃┃    ┏━━━━E. dactylifera
    ┃┃┏┫
    ┗┫┃┃┏━━━E. michihuacana 1
        ┃┃┗┫
        ┃┃    ┃        ┏E. michihuacana 2
        ┃┃    ┃┏━┫
        ┃┃    ┃┃    ┗E. michihuacana 3
        ┃┃    ┗┫
        ┃┃        ┃┏━E. michihuacana 4
        ┗┫        ┗┫
            ┃            ┃┏E. michihuacana 5
            ┃            ┗┫
            ┃                ┗E. michihuacana 6
            ┃
            ┃┏━━━━E. cante
            ┃┃
            ┃┃        ┏━E. subrigida
            ┗┫┏━┫
                ┃┃    ┃┏E. novogaliciana
                ┃┃    ┗┫
                ┗┫        ┗E. perezcalixii
                    ┃
                    ┃┏━━E. cerrograndensis
                    ┗┫
                        ┃┏━E. sp.
                        ┗┫
                            ┃┏E. marianae
                            ┗┫
                                ┗E. patriotica

                        ┏E. uxorium
┏━━━━━┫
┃                    ┗E. acutifolia

┃                    ┏E. fulgens v. fulgens
┃┏━━━━┫
┃┃                ┗E. guerrerensis
┫┃
┃┃            ┏━E. aff. acutifolia 1
┃┃┏━━┫
┃┃┃        ┃┏E. aff. gigantea
┃┃┃        ┗┫
┗┫┃            ┗E. aff. acutifolia 2
    ┃┃
    ┃┣━━━━E. fulgens
    ┃┃
    ┃┣━━━━E. aff. gibbiflora
    ┃┃
    ┗┫            ┏E. fimbriata 1
        ┣━━━┫
        ┃            ┗E. fimbriata 2
        ┃
        ┣━━━━E. rubromarginata 1
        ┃
        ┃┏━━━E. sp.
        ┃┃
        ┃┃        ┏E. triquiana
        ┃┃┏━┫
        ┃┃┃    ┗E. gigantea
        ┗┫┃
            ┃┣━━E. longiflora
            ┃┃
            ┃┃    ┏E. aff. fulgens 1
            ┃┣━┫
            ┗┫    ┗E. grisea
                ┃
                ┣━━E. crenulata
                ┃
                ┣━━E. rubromarginata 2
                ┃
                ┃┏━E. aff. gibbifor
                ┗┫
                    ┃┏E. prunina
                    ┗┫
                        ┗E. aff. fulgens 2

この4日間に渡る記事の総括は、エケベリア属は単系統ではないということです。複数の系統が入り交じる雑多な寄せ集めと言えます。この状態の解決策は2つあります。1つは、すべてをセダム属としてしまうことです。エケベリアもグラプトペタルムもクレムノフィラもトンプソネラも廃止してしまうのです。おそらく、これが最も簡単かつ分類学的に正しい方法です。もう1つは、グラプトペタルムやクレムノフィラなどを廃止してエケベリアに含んでしまうというものです。この場合、エケベリアは遺伝的には広義セダムの一部ですから、エケベリアを残したい場合にはセダムを細かく分割する必要性が生じてしまいます。あまり現実的ではない提案でしょう。とは言うものの、まだ公的なデータベース上においては旧来の分類方法のままです。どうも、ここ十年くらいでセダムやエケベリアを含むベンケイソウ科植物の遺伝子解析が急激に進行しています。分類体系の再検討はこれからでしょう。かなりホットな話題ですから、これからのことの推移を注視していきたいと思います。


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昨日に引き続きエケベリアの遺伝子を解析した論文の紹介です。Clade I、Clade II、Clade IIIの詳細をお示ししました。本日はClade IV-①です。

エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。

┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②

_20230109_223219
Clade IVは調査された種類が多いため、2つに分けます。Clade IV-①はEcheveria、Graptopetalum、Sedum、Cremnophila、Reidmorania、Tacitusを含む雑多なクレードです。便宜上、4つのグループに分けました。

┏━━━━①Graptopetalum-1

┃┏━━━②Graptopetalum-2
┃┃
┗┫┏━━③Cremnophila
    ┃┃
    ┗┫┏━④Echeveria
        ┗┫
            ┗━Clade IV-②

①Graptopetalum-1
エケベリアとグラプトペタルムが混雑しており、グラプトペタルムはまとまりのあるグループではないことがわかります。これらは将来的に吸収されて消滅するでしょう。ちなみに、現在G. mendozaeとG. craigiiはセダムとされています。現在、Reidmoraniaはエケベリアに、Tacitusはグラプトペタルムに吸収されてしまいました。

┏━━━━G. mendozae

┣━━━━G. amethystinum

┃        ┏━G. craigii
┣━━┫
┃        ┃┏E. craigiana
┃        ┗┫
┃            ┗E. affinis

┃        ┏━G. grande
┣━━┫
┃        ┃┏G. paraguayense
┃        ┗┫
┃            ┗G. bernalense

┃            ┏R. occidentalis
┃┏━━┫
┃┃        ┗G. pachyphyllum
┃┃
┃┃    ┏━G. bartramii
┣┫┏┫
┃┃┃┃┏G. suaveolens
┃┃┃┗┫
┃┃┃    ┗T. bellus
┃┗┫
┃    ┃    ┏E. valvata
┃    ┃┏┫
┃    ┃┃┗E. calycosa
┃    ┗┫
┃        ┃┏G. saxifragoides
┃        ┗┫
┃            ┗G. pusillum

┃            ┏E. amoena
┣━━━┫
┃            ┗E. microcalyx

┃┏━━━②Graptopetalum-2
┃┃
┗┫┏━━③Cremnophila
    ┃┃
    ┗┫┏━④Echeveria
        ┗┫
            ┗━Clade IV-②


②Graptopetalum-2
③Cremnophila
ここではグラマトペタルムはまとまったグループとなっていますが、セダムが混入しています。クレムノフィラはよくまとまったグループですが、やはりエケベリアやセダムと入れ子状となっています。

┏━━━━━①Graptopetalum-1

┃                ┏G. fruticosum
┃    ┏━━┫
┃    ┃        ┗G. marginatum
┃    ┃
┃    ┃        ┏G. rusbyi
┃    ┣━━┫
┃    ┃        ┗G. filiferum
┃    ┃
┫┏┫        ┏G. macdougallii
┃┃┣━━┫
┃┃┃        ┗S. clavatum
┃┃┃
┃┃┃        ┏G. glassii
┃┃┃    ┏┫
┃┃┃    ┃┗G. pentandrum
┃┃┗━┫
┃┃        ┃┏G. superbum 1
┃┃        ┗┫
┃┃            ┗G. superbum 2
┗┫

    ┃        ┏━C. linguifolia 1
    ┃    ┏┫
    ┃    ┃┃┏C. linguifolia 2
    ┃    ┃┗┫
    ┃    ┃    ┗C. linguifolia 3
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━C. nutans 1
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┃┏C. nutans 2
    ┃┃    ┗┫
    ┗┫        ┗C. nutans 3
        ┃

        ┃        ┏E. humilis
        ┃┏━┫
        ┃┃    ┗E. xichuensis
        ┗┫
            ┃┏━E. trianthina
            ┗┫
                ┃┏④Echeveria
                ┗┫
                    ┗Clade IV-②


④Echeveria
ここではエケベリアがまとまっています。

┏━━━━━━━━━━━E. peacockii

┃┏━━━━━━━━━━E. subalpina
┗┫
    ┃┏━━━━━━━━━E. laui
    ┗┫
        ┃                                ┏E. semivestita 
        ┃                            ┏┫ v. semivestita
        ┃                            ┃┗E. semivestita 
        ┃┏━━━━━━┫     v. floresiana
        ┃┃                        ┃┏E. tamaulipana
        ┃┃                        ┗┫
        ┃┃                            ┗E. runyonii
        ┗┫
            ┃                            ┏E. aff. secunda 1
            ┃┏━━━━━━┫
            ┃┃                        ┗E. aff. secunda 2
            ┃┃
            ┃┃                    ┏━E. minima
            ┗┫┏━━━━┫
                ┃┃                ┃┏E. secunda
                ┃┃                ┗┫
                ┃┃                    ┗E. aff. secunda 3
                ┗┫
                    ┃┏━━━━━E. strictiflora
                    ┃┃
                    ┃┣━━━━━E. shaviana 1
                    ┃┃
                    ┗┫                ┏E. calderoniae
                        ┣━━━━┫
                        ┃                ┗E. shaviana 2
                        ┃
                        ┃┏━━━━E. lutea
                        ┗┫
                            ┃┏━━━E. bifida
                            ┗┫
                                ┃┏━━E. lyonsii
                                ┗┫
                                    ┃┏━E. bifurcata
                                    ┗┫
                                        ┃┏E. rodolfi
                                        ┗┫
                                            ┗E. aff. rodolfi


Clade IV-①は、エケベリア、グラマトペタルム、クレムノフィラ、セダムを含みます。グラマトペタルムはまったくまとまりがありません。Graptopetalum-2はよくまとまっていますが、セダムを含んでいます。Graptopetalum-1はエケベリアが混在しており、グラプトペタルム属の存在自体に疑問符がつきます。
明日に続きます。


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昨日から引き続きまして、エケベリアの遺伝子解析による分類をお示ししています。昨日はClade IとClade IIの詳細をお示ししました。本日はClade IIIです。

エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。


┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②

_20230109_222553
Clade IIIはThompsonellaを含みます。4つのグループに分けられます。それぞれのグループの詳細を見ると、①Echeveria-1と④Echeveria-4はエケベリアのみからなります。しかし、③Thompsonellaはエケベリアとトンプソネラが混じっています。トンプソネラと近縁なエケベリアをトンプソネラに含めてしまうか、トンプソネラを廃止してエケベリアに含めてしまうか、あるいはエケベリアもトンプソネラも廃止してしまいすべてセダムにするか、3つの選択肢があります。また、②Echeveria-2にはPachyphytum cuicatecanumが含まれます。これは流石にパキフィツムから除外すべきでしょう。

┏━①Echeveria-1

┫┏②Echeveria-2
┃┃
┗╋③Thompsonella
    ┃
    ┗④Echeveria-3


①Echeveria-1

                            ┏E. corynephyllum
┏━━━━━━┫
┃                        ┗E. rosea

┫                        ┏E. chiapensis
┃┏━━━━━┫
┃┃                    ┗E. nuda
┗┫
    ┃┏━━━━━E. nebularum
    ┗┫
        ┃┏━━━━E. globulosa
        ┗┫
            ┃┏━━━E. subcorymbosa
            ┗┫
                ┃┏━━E. megacalyx
                ┗┫
                    ┃┏━E. mondragoniana
                    ┗┫
                        ┃┏E. chazaroi
                        ┗┫
                            ┗E. helmutiana

②Echeveria-2

                            ┏E. rorzaniana
┏━━━━━━┫
┃                        ┗E. carminea

┃    ┏━━━━━E. racemosa
┃    ┃
┃    ┃                ┏E. pinetorum
┃    ┣━━━━┫
┃┏┫                ┗E. mucronata
┃┃┃
┃┃┣━━━━━E. olivacea
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━E. penduliflora
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏━━━P. cuicatecanum
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏━━E. alata
┃┃        ┗┫
┗┫            ┃┏━E. viridissima
    ┃            ┗┫
    ┃                ┃┏E. globuliflora
    ┃                ┗┫
    ┃                    ┗E. macdougalii
    ┃
    ┃        ┏━━━E. lurida
    ┃┏━┫
    ┃┃    ┃┏━━E. diffractens
    ┃┃    ┗┫
    ┃┃        ┃┏━E. carnicolor
    ┃┃        ┗┫
    ┃┃            ┃┏E. tencho
    ┃┃            ┗┫
    ┃┃                ┗E. canaliculata
    ┗┫
        ┃        ┏━━E. goldmanii
        ┃┏━┫
        ┃┃    ┃┏━E. aff. bella
        ┃┃    ┗┫
        ┃┃        ┃┏E. bella aff. major
        ┗┫        ┗┫
            ┃            ┗E. sessiliflora
            ┃
            ┃┏━━━E. heterosepata
            ┗┫
                ┃┏━━E. crassicaulis
                ┗┫
                    ┃┏━E. platyphylla
                    ┗┫
                        ┃┏E. longipes
                        ┗┫
                            ┗E. paniculata
                                     v. maculata

③Thompsonella

                    ┏━E. moranii
┏━━━━┫
┃                ┃┏E. pringlei v. parva
┃                ┗┫
┃                    ┗E. pringlei

┃                    ┏T. mixtecana 1
┃┏━━━━┫
┃┃                ┗T. mixtecana 2
┗┫
    ┃            ┏━T. minutiflora 1
    ┃┏━━┫
    ┃┃        ┃┏T. xochipalensis
    ┃┃        ┗┫
    ┃┃            ┗T. minutiflora 2
    ┗┫
        ┃┏━━━T. platyphylla
        ┗┫
            ┃┏━━T. colliculosa
            ┗┫
                ┃┏━T. garcia-mendozae
                ┗┫
                    ┃┏T. spathulata 1
                    ┗┫
                        ┗T. spathulata 2

④Echeveria-3

                    ┏E. setosa v. ciliata
┏━━━━┫
┃                ┃┏E. coccinea 1
┃                ┗┫
┃                    ┗E. coccinea 2

┃                    ┏E. montana
┃    ┏━━━┫
┃    ┃            ┗E. aff. longissima
┫┏┫
┃┃┃┏━━━E. chapalensis
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏━━E. derenbergii
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏━E. gracilis
┃┃        ┗┫
┃┃            ┃┏E. pulvinata 1
┗┫            ┗┫
    ┃                ┗E. pulvinata 2
    ┃
    ┃            ┏━E. amphoralis
    ┃        ┏┫
    ┃        ┃┗━E. sp.
    ┣━━┫
    ┃        ┃┏━E. uhlii
    ┃        ┗┫
    ┃            ┃┏E. setosa v. deminuta
    ┃            ┗┫
    ┃                ┗E. setosa
    ┃
    ┃┏━━━━E. multicaulis
    ┗┫
        ┃┏━━━E. brachetii
        ┗┫
            ┃┏━━E. aff. setosa
            ┗┫
                ┃┏━E. purpusorum
                ┗┫
                    ┃┏E. longissima 
                    ┗┫     v. aztatlensis
                        ┗E. longissima
                                 v. brachyantha


エケベリアの中に埋もれているPachyphytum corynephyllumは、初めはエケベリアとして命名されました。現在はパキフィツムですが、エケベリアとした方が正しいのでしょう。また、Thompsonellaは未だに現在です。Thompsonellaには妥当性がないように思われます。ここいらへんも、将来整理されるかもしれません。
明日に続きます。



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かつて、というか去年の12月初めに珍しくエケベリアについての記事を書きました。実はエケベリアについて調べていたわけではなく、庭に野良セダムが生えてきたのでセダムSedumについて調べていたのです。しかし、見つけた論文のタイトルは"Linnaeus's folly"、「リンネの愚かさ」という大胆なもので、内容もエケベリアがセダムに吸収されてしまうという衝撃的なものでした。その論文の紹介記事はこちらをご一読下さい。
さて、とは言うものの、論文はセダムを広く解析したもので、エケベリアは少し調べただけでした。そこで、エケベリアについてもっと詳細に調べた論文はないかと調べていたところ、参考になりそうな論文を見つけました。2019年の論文、『Phylogenetics relationships of Echeveria (Crassulaceae) and related genera from Mexico, based on DNA barcoding loci』です。非常に長い論文で、詳細を書いていると大変な長さになりますから、実際の遺伝子解析結果のみを示します。
まずは、エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。VilladiaがSedumに含まれてしまうなど、以前ご紹介した論文と傾向は同じです。そして、Clade IIとClade IIIの間に
Sedum corynephyllumが入るなど、エケベリアにはまとまりがありません。

┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②


_20230109_221046
では、各クレードの詳細を見ていきましょう。Clade Iはパキフィツム(Pachyphytum)です。詳しくはわかりませんが、この論文ではパキフィツムはエケベリアの一部をなすと考えているようです。パキフィツムは非常にまとまりのあるグループですが、残念ながらこの論文では分離が悪く、種同士の関係性は不明です。横並びの18種類は、本来なら遠近があるはずですが、解析が上手くいかなかったようです。

    ┏P. fittkaui
┏┫
┃┗P. kimnachii

┃┏P. compactum
┃┣P. brevifolium
┫┣P. viride
┃┣P. brachetii
┃┣P. glutinicaule
┃┣P. sp.
┃┣P. rzedowskii
┃┣P. viride
┗╋P. hookeri
    ┣P. oviferum
    ┣P. bracteosum
    ┣P. longifolium
    ┣P. caesium
    ┣P. werdermannii
    ┣P. machucae
    ┣P. contrerasii
    ┣P. saltense
    ┗P. garciae

_20230109_222317
次はClade IIです。Clade IIはすべてエケベリアからなります。Series Urbiniaeとありますが、属の下の分類でウルビニア列です。著者はこのウルビニア列をエケベリアからの独立を提案しているようです。しかし、やはりセダムが入れ子状に混じりますから、中々難しいところです。解決策は非常に細分化して新しい属を作りまくるか、すべてをセダムとしてしまうかです。

        ┏━━━E. cuspidata var. cuspidata
    ┏┫
    ┃┗━━━E. cuspidata var. zaragozae
┏┫
┃┃┏━━━E. chihuahuensis
┃┗┫
┃    ┃┏━━E. lilacina
┃    ┗┫
┃        ┗━━E. unguiculata

┃    ┏━━━E. pulidonis
┃┏┫
┫┃┃┏━━E. elegans
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏━E. potosina
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏E. halbingeri var. halbingeri
┃┃        ┗┫
┃┃            ┗E. simulns
┗┫
    ┃    ┏━━E. juliana
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━E. tobarensis
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗━E. turgida
    ┗┫
        ┃┏━━E. tolimanensis
        ┗┫
            ┃┏━E. agavoides
            ┗┫
                ┃┏E. colorata f. colorata
                ┗┫
                    ┗E. colorata


現在の学術的なデータベースではどうなっているでしょうか? イギリスのキュー王立植物園のデータベースでは、Villadia、Pachyphytumはまだ健在です。立ち位置の怪しいSedum corynephyllumもそのままです。ただし、Urbiniaeはエケベリアの異名扱いで正式に認められた属ではありません。今後、このあたりはダイナミックに変わる可能性があります。
続きます。


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以前から思っていたこととして、ノリナ属(Nolina)、カリバヌス属(Calibanus)、トックリラン属(Beaucarnea)はよく似ているということです。この3属の関係はどうなっているのでしょうか? というのも、ネットで調べるとNolina(=Beaucarnea)などと書かれており、何が正しいのか良くわからなくなったからです。
わからなくなら調べれば良いということで早速調べてみたところ、ちょうど良い論文が見つかりました。Vanessa Rojas-Pina, Mark E. Olson, Leonardo O. Alvarado-Cardenas & Luis E. Eguiarteの2014年の論文、『Molecular phylogenetics and morphology of Beaucarnea (Ruscaceae) as distinct from Nolina, and the submersion of Calibanus into Beaucarnea』です。

実は学術的にもトックリラン属Beaucarneaはあいまいな存在です。研究者によってはBeaucarneaはNolinaの異名とみなしています。しかし、まったく別の属であるとも言われます。さらに、BeaucarneaとCalibanusの関係もはっきりとはしていませんでした。
Beaucarneaは7種のメキシコ固有種があり、その他の3種は中央アメリカまで分布します(※2014年当時)。Beaucarneaは園芸用として19世紀半ばにヨーロッパへ導入されました。現在では世界中で栽培されています。しかし、園芸用途の長い歴史にも関わらず、系統関係の研究はなされていません。

以下に遺伝子解析による分子系統を示します。①~⑥のクレードがBeaucarneaです。ここでは6グループに分けられることを示しています。このBeaucarneaとDasylirionは姉妹群です。ご覧の通りNolinaはBeaucarneaと近縁ではあっても、BeaucarneaがNolinaに含まれるという考え方は否定されます。

                        ┏①recurvata clade
                    ┏┫
                    ┃┗②gracilis clade
                ┏┫
                ┃┗③calibanus clade
            ┏┫
            ┃┗④purpusii clade
        ┏┫
        ┃┗⑤stricta clade
    ┏┫
    ┃┗⑥southern clade
    ┃
┏┫┏━Dasylirion acrotriche
┃┃┃
┃┃┣━━Dasylirion serratifolium
┃┗┫
┃    ┃┏━Dasylirion berlandieri
┃    ┃┃
┃    ┗╋━Dasylirion longissimum
┃        ┃
┃        ┗Dasylirion glaucophyllum

┃    ┏━━Nolina parviflora
┃    ┃
┃┏┫    ┏━━Nolina longifolia
┃┃┗━┫
┃┃        ┗Nolina cespitifera
┗┫
    ┃                    ┏━━Nolina duranguensis
    ┃    ┏━━━┫
    ┃    ┃            ┗Nolina juncea
    ┗━┫
            ┗━━━Nolina lindheimeriana


では、次にBeaucarneaの①~③の3つのクレードを見てみましょう。驚くべきことにCalibanusはBeaucarneaと区別することが出来ません。Calibanus glassianusはBeaucarnea compactaと非常に近縁です。しかも、③Calibanusは①+②と④のBeaucarneaに挟まれてしまっています。このように入れ子状ではCalibanusを独立した属とみなすことは困難です。もし、Calibanusを維持しようとするならば、Beaucarneaの他の5つのクレードもそれぞれ別の属として独立させる必要があります。しかし、一番簡単なのは、CalibanusをBeaucarneaに含めてしまうことです。

                  ①recurvata clade
        ┏━━Beaucarnea recurvata
    ┏┫
    ┃┃┏Beaucarnea sp1
    ┃┗┫
    ┃    ┗Beaucarnea sanctomariana
    ┃         ②gracilis clade
    ┃    ┏Beaucarnea gracilis 1
┏┫    ┃
┃┃    ┣Beaucarnea gracilis 2
┃┃┏┫
┃┃┃┗Beaucarnea gracilis 3
┃┗┫
┃    ┗Beaucarnea gracilis 4
            ③ calibanus clade
┃    ┏Beaucarnea compacta 1
┫    ┃
┃    ┣Beaucarnea compacta 2
┃    ┃
┃    ┣Beaucarnea compacta 3
┃┏┫
┃┃┣Calibanus glassianus 1
┃┃┃
┃┃┣Calibanus glassianus 2
┗┫┃
    ┃┗Calibanus glassianus 3
    ┃
    ┃┏━Calibanus hookeri 1
    ┗┫
        ┃┏Calibanus hookeri 2
        ┗┫
            ┗Calibanus hookeri 3

次に④~⑥のクレードです。非常に綺麗に分かれています。著者のBeaucarneaを6つのグループに分ける提案は正しいでしょう。また、B. purpusiiはB. strictaの異名とする意見も幾つかの植物のデータベースでは見られますが、クレードレベルで異なることが明らかになりました。つまりは、B. purpusiiは独立種であり、B. strictaとは別種です。

                ┏①recurvata clade
            ┏┫
            ┃┗②gracilis clade
        ┏┫
        ┃┗③calibanus clade
        ┃
        ┃        ④purpusii clade
        ┃    ┏Beaucarnea sp2
    ┏┫┏┫
    ┃┃┃┗Beaucarnea sp2
    ┃┃┃
    ┃┗┫            ┏Beaucarnea hiriartiae 1
    ┃    ┃    ┏━┫
    ┃    ┃    ┃    ┗Beaucarnea hiriartiae 2
┏┫    ┗━┫
┃┃            ┃┏Beaucarnea purpusii 1
┃┃            ┗┫
┃┃                ┗Beaucarnea purpusii 2
┃┃             ⑤stricta clade
┃┃┏Beaucarnea stricta 1
┃┗┫
┃    ┃┏━Beaucarnea stricta 2
┃    ┗┫
┃        ┗Beaucarnea stricta 3
┃                ⑥southern clade
┃                    ┏Beaucarnea goldmanii 1
┃                ┏┫
┃                ┃┗Beaucarnea goldmanii 2
┃            ┏┫
┃            ┃┃┏Beaucarnea guatemalensis
┃            ┃┗┫
┗━━━┫    ┗Beaucarnea pliabilis
                ┃
                ┗Beaucarnea goldmanii 3


Beaucarneaは乾燥地域に分布するものと湿潤地域に分布するものがあります。①recurvata cladeと⑥southern cladeは割と湿潤な環境に自生します。この2つのクレードは遺伝的には近縁ではありませんが、形態学的特徴は共有しています。これは、環境に適応するために収斂した可能性があります。例えば、細い茎と枝、滑らかな樹皮、葉の形、浅く沈んだ気孔、無毛の葉などがあげられます。残りの4クレードは、乾生低木林や熱帯落葉樹林などの乾燥地に生えます。4つのクレードの共通する特徴は、丈夫な茎と枝、厚くタイル状の樹皮、ほぼまっすぐな光沢のある葉、深く沈んだ気孔などです。これらの特徴は、長い乾季の間に水分損失を減らすためと考えられます。

以上が論文の簡単な要約となります。著者はCalibanusはBeaucarneaに含まれるとし、Calibanus glassianusをBeaucarnea glassianaに、Calibanus hookeriをBeaucarnea hookeriとすることを提案しています。しかし、なぜBeaucarneaをCalibanusにではなく、CalibanusをBeaucarneaになのでしょうか? これは、別にCalibanusがBeaucarneaに囲まれているからとか、Beaucarneaの方が種類が多いからではありません。国際命名規約にある、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」に従っているだけです。Beaucarnea属とCalibanus属の創設年は以外の通りです。
1861年 Beaucarnea Lem.
1906年 Calibanus Rose
Beaucarneaの方が40年以上前に命名されていますね。この事実によりCalibanusがBeaucarneaに吸収されるのです。ちなみに、現在キュー王立植物園のデータベースではCalibanusはBeaucarneaの異名とされており、日本でも昔から使用されてきたCalibanus属は消滅したことになります。


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正月明け早々に多肉植物というのもどうかと思いましたが、良く考えたら去年は正月明けに池袋の鶴仙園に行っていたわけで、やっていることは一緒ですよね。12月24日に木更津Cactus & Succulentフェアに行ってきたばかりですから、年度を越したとはいえ正月明けそうそうイベントに行ってしまう自分にも呆れてしまいます。
それはそうと、今朝は大変寒く外出したくなくなりつつありましたが、何とか起きました。最近のビッグバザールは開場前に並んでいましたが、今回は開場時間くらいの到着です。

さて、正月明け一発目の多肉植物のイベントは、どえらい混み具合でした。廊下に並ぶのではなく、久しぶりに待機用の部屋があったくらいです。会場もかなり込み合っていて、たにっくん工房さんなんかは人だかりでまったく中に入れない始末です。
DSC_2142
今回の入場証にはサボテンの判子が押してありましたね。以前のビッグバザールの入場証で入ろうとした人がいたとかいう話も聞きますから、その対策でしょうか?

多肉植物の傾向は冬型のオトンナ、メセン類もありましたが、やはりアガヴェが優勢でした。今回はエケベリアもあちこちにあり、冬型球根は前回のビッグバザールよりだいぶ減っていました。何故かはわかりませんが、今まで見たことのない珍しい多肉植物が今回はかなり目につきました。置場所と資金に限りがありますから見るだけでしたが、こんなものがと驚かされました。良い目の保養です。あと、不思議と珍しいアロエがあちこちにありましたね。

というわけで、今回の購入品は以外の通りです。例によって名前はついていたラベルのままです。
最初に向かったのは毎度お馴染みのラフレシアリサーチさんへ。今回は珍しいことに多肉植物の種子を販売していたので購入しました。普段、実生はやらないのですが、少し面白そうな感じがしますからチャレンジしてみます。今回のラフレシアリサーチさんは、コピアポアが沢山並んでいましたね。
DSC_2133
A. striatula v. caesia 実生
Aloe striatulaは2013年にアロエ属から独立してアロイアンペロス属となりました。それに従い変種カエシアも同じく2013年にAloiampelos striatula var. caesiaとなりました。

DSC_2134
レオニエラ Fouquieria Leonielae 実生
Fouquieria leonilaeですが、多肉植物というより例によって灌木状の種類。F. leonilaeは初めて見ました。Fouquieriaは11種類ありますが、これで6種類目です。一番新しく発見されたFouquieriaです。

DSC_2135
上 : サイカス・ノンスタチアエ
下 : オペルクリカリア・パキプス
上はソテツの種子。Cycas nongnoochiae。タイのレアソテツと書いてありましたね。高さ5mになるようです。
下は説明不要、Operculicarya pachypusです。自分で種子を取り寄せると安いものの、ある程度の数を買わなくちゃならないこともあります。置場所がない上に、手続きが面倒で今後もやる気はありません。


DSC_2136
Euphorbia clandestina
これはオマケのユーフォルビア。


お次は鮮やかな筒アナナスや珍しいアロエが並ぶBabyLeaf plantsさんへ。大阪からの出店なんだそうです。私はお初ですかね。興味のあるあたりではロマトフィルムやグラスアロエなど珍種も盛り沢山でした。だいぶ目移りしましたが、今回は小型アロエを購入しました。
DSC_2139
Aloe bakei Scott-Elliot 1891 Madagascar
ラベルには命名者・命名年・原産地が記入されていました。マダガスカル原産の小型アロエ。旧・Guillauminia。残念ながらマダガスカルでは絶滅しており、栽培品のみで維持されています。


DSC_2140
Euphorbia decaryi
手持ちは挿し木苗でしたが、今回初めて実生苗を見たので購入。学名の混乱で、実はE. boiteauiなんでしたっけ? 忘れました。マダガスカルはフランスの植民地だったせいか、論文がフランス語なんですよね。そのせいでまだ論文を読めていません。非常に面倒臭い。

お次は入り口の左のブースへ。前回、Aristaloeを購入したブースです。相変わらず根のない珍しいアロエが無造作に置かれていました。
DSC_2137
Aloe sladeniana
現在はアロエではなくGonialoe sladenianaになりました。私はアロエというか広義のアロエを集めていますから、アロエから分離したGonialoeも気になります。しかし、ゴニアロエは千代田錦G. variegataくらいしか見かけませんから、G. sladenianaは割と珍しいですね。ちなみにゴニアロエは3種類あります。

DSC_2138
Euphorbia greenwayi
美しい模様のユーフォルビアです。タンザニア原産ですから、もしかしたら育てにくいタイプかもしれません。ソマリアものと同じように育てますかね?

最後に国際多肉植物協会へ。何かと立派な多肉植物が並び勝ちですからいつもは見るだけですが、今回はユーフォルビア苗があったので購入しました。
DSC_2132
ユーフォルビア グロエネワルディ
Euphorbia groenewaldii。南アフリカからモザンビークの原産です。

今回は秋と冬のビッグバザールでユーフォルビアを購入したブースはあまりユーフォルビアがありませんでした。あと、Ruchiaさんは年末にあった木更津Cactus & Succulentフェアと似た内容でしたから今回はパスしました。また、気になっている硬葉系ハウォルチア(Haworthiopsis)やGasteria、Astrolobaは今回も不調でした。今回はアロエが意外と目についたため、購入品はアロエがメインでしたね。エリナケアが苗ですがかなり安価であちこちにありました。私は2年くらい前に苗をサイズからするとそれなりのお値段で購入しましたから、随分と安くなったものです。
そういえば、春のビッグバザールが3月にあるみたいですね。春が来るまでしばらくは大人しくしています。


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パキポディウムの苗を幾つか育てていますが、秋が深まるにつれて葉がパラパラと落ち始めました。しかし、その葉の落ち具合はバラバラでした。その違いは種類によるものなのか、生育の良し悪しによるものなのか、あるいはその両方かはわかりません。私がパキポディウムを室内に取り込んだのは去年の10月29日のことでしたが、古い葉が紅葉/黄葉し始めているタイミングでした。なんとなく、葉は少しずつ落ちていくイメージでしたが、年末になるまで意外と暖かかったためか、あまり葉は落ちませんでした。そんな冬のパキポディウムについてご紹介しましょう。

①Section Gymnopus
Section Gymnopusはマダガスカル原産のパキポディウムの主流派です。
DSC_2115
Pachypodium rorulatum subsp. rorulatum
ロスラツム系の基本。植物用ランプが強すぎるようで、少し葉が焼け気味です。葉は半分くらい落ちました。subsp. rorulatumに近縁なのはP. rorulatum subsp. bemarahenseです。

DSC_2116
Pachypodium rorulatum var. drakei
ドラケイは現在ではロスラツムと同種とされています。枝や葉が細長いタイプです。葉はまったく落ちませんでした。

DSC_2118
魔界玉 Pachypodium makayence
P. rorulatum subsp. makayenceが正式名称ですが、遺伝子解析の結果からは言うほどロスラツムに近縁ではありませんでした。ロスラツム系の中では、マカイエンセ、カクチペス、グラキリウスが近縁です。葉が繁りすぎて塊茎が見えません。葉もあまり落ちませんでした。

DSC_2117
Pachypodium cactipes
P. rorulatum subsp. cactipesが正式名称です。マカイエンセと同じくロスラツムにそれほど近縁ではありません。今年は生長がいまいちでしたから、もともと葉が少なかったので葉がほとんどなくなってしまいました。

DSC_2131
象牙宮 Pachypodium gracilius
正式名称はP. rorulatum subsp. graciliusです。非常に小さな実生苗。やはり、ロスラツムとはあまり近縁ではありません。葉はすべて落ちました。

DSC_2120
Pachypodium brevicalyx
ブレビカリクスは始めP. densiflorum var. brevicalyxでしたが、その後にP. brevicalyxとして独立しましたが、最終的にデンシフロラムと同一種とされています。ただし、遺伝的な遠近は良くわかりません。なんとなく全体的に粗雑な感じがしますが、葉はまったく落ちませんでした。

DSC_2129
Pachypodium densiflorum
デンシフロラムは分布ごとに遺伝子が異なることがわかっており、複数種からなっているのかもしれません。大型なため寒さに強いのでかなり遅くまで外に置いていました。そのせいか葉がほとんど落ちました。


DSC_2130
なぜか落ちない葉もあります。

DSC_2121
Pachypodium enigmaticum
デンシフロラムから分離されたエニグマティクムですが花が大型です。まだ開花しませんが。葉は落ちませんでした。

DSC_2127
Pachypodium eburneum
P. rorulatum var. eburneumとされたこともあります。デンシフロラム系です。夏の暑さで一度弱りましたが復活しました。復活してから葉は増えませんが、冬でも葉は落ちません。

DSC_2119
Pachypodium horombense
ホロンベンセもP. rorulatum var. horombenseとされたこともあります。ロスラツム系よりもトゲが強いですね。どちらかといえばデンシフロラム系です。葉は少し落ちました。


DSC_2123
恵比寿笑い Pachypodium brevicaule subsp. brevicaule
ブレビカウレは平たく育ちます。デンシフロラムと近縁です。葉は半分くらい落ちました。


DSC_2125
白花恵比寿笑い Pachypodium  brevicaule subsp. leucoxanthum
レウコキサンツムはブレビカウレの白花の亜種とされますが、遺伝子解析の結果ではブレビカウレとあまり近縁ではありません。同じ白花のP. inopinatumと近縁です。葉はほとんど落ちました。

②Section Porphyropodium
マダガスカル原産で赤花のパキポディウム。
DSC_2122
Pachypodium windsorii
P. baronii var. windsoriiとされたこともあります。まだ花は咲きません。葉はパラパラ落ちますが、少し残りました。

③Section African
アフリカ大陸原産のパキポディウムです。
DSC_2124
Pachypodium succulentum
ビスピノスムやナマクアヌムと近縁です。去年の冬は塊根が鉢底に当たってしまい緑色のまま葉が落ちてしまいました。植え替えたので今年は調子が良さそうです。葉はまったく落ちませんでした。

DSC_2126
Pachypodium bispinosum
葉が落ち始めましたが、塊根が伸びて鉢底に当たっていないか不安です。今年は深い鉢に植え替えます。


DSC_2128
Pachypodium saundersii
サウンデルシイはアフリカ大陸原産種の中でもP. lealiiと近縁です。寒くなってから葉色は良くありませんが、葉はあまり落ちませんね。

なんだかんだでパキポディウムも増えてしまいました。しかし、遺伝子解析の結果からパキポディウムは4つのグループに分けられますが、何故かSection Leucopodiumは1種類も持っていません。Section LeucopodiumではP. lamereiやP. geayiがあります。見かけたことはありますが、あまり好みではないため購入しませんでした。しかし、P. decaryiは少し気になりますから見かけたら購入してしまうかもしれません。
それはそうと、今年は葉を落とさないパキポディウムが多いみたいですが、流石に春までは持たないかもしれません。丈夫なP. succulentum、P. brevicalyx、P. rorulatum var. drakeiあたりは葉が落ちないかもしれませんが。まあ、いずれにせよ、来年は植え替えて生長にブーストをかけたいところです。


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亀甲竜は南アフリカ原産のヤマノイモの仲間です。ヤマノイモ?と思うかもしれませんが、亀甲竜の学名はDioscorea elephantipesで日本のヤマノイモはDioscorea  japonica、ナガイモはDioscorea D. polystachya(異名Dioscorea batatas)と同じヤマノイモ属です。みな、同じように蔓を伸ばし、非常に良く似た葉をつけます。違いは芋にコルク層が出来るか否かでしょう。さて、アフリカには亀甲竜以外のDioscoreaも分布しますが、それらの遺伝子を解析した論文を見つけました。Olivier Maurin, A. Muthama Muasya, Pilar Catalan, Eugene Z. Shongwe, Juan Viruel, Paul Wilkin & Michelle van der Bankの2016年の論文、『Diversification into novel habitats in the Africa clade of Dioscorea (Dioscoreaceae) : erect habit and elephant's foot tubers』です。

Dioscoreaは熱帯域を中心に世界中に分布し、600種類以上あるとされています。Dioscoreaは芋(根茎・塊茎、perennating organs)を持ち、茎はツル性です。そのほとんどは雌雄異株で翼のある種子があります。単位面積あたりの種の多様性が高い地域は、ブラジル南部、メキシコの一部、大アンティル諸島、マダガスカル西部、中国南部からタイまでです。
過去の知見によると、Dioscoreaは10の主要cladeに分けられることが明らかになっています。この10の主要cladeのうち、3cladeはサハラ以南のアフリカに分布します。African cladeはアフリカでのみ多様化しており、13種類が知られています。そのうち、9種類が南アフリカの固有種です。
African cladeの特徴はその「象の足」のようなコルク層が発達した芋にあります。論文では"pachycaul"と表現しています。この"pachycaul"とはラテン語で"pachy + caulis"、つまりは「ずんぐりした + 茎」という意味の合成語です。要するに塊根・塊茎植物(caudex)のことを示しています。このpachycaul構造はメキシコ亀甲竜Dioscorea mexicanaなど新大陸でも希に見られます。

以下に世界各地の28種類のDioscoreaの遺伝子を解析した分子系統を示します。Stenophora cladeはヒマラヤからネパール、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア原産のD. prazeri、New World clade IIはアルゼンチン、チリ原産のD. brachybotrya、New World clade IIはメキシコ原産のD. galeottiana、Mediterranean cladeはヨーロッパ、北アフリカ、トルコからイラン原産のD. communis、レバノン、シリア原産のD. orientalis、スペイン原産のD. chouardii、フランス、スペイン原産のD. pyrenaicaを調べています。Tamus edulisはD. communisとD. orientalisと近縁で、独立したTamus属ではなくDioscorea属に含まれることがわかりました。現在ではT. edulisはD. communisと同種とされており、Tamus属自体がDioscorea属に吸収されて存在しない属になりました。また、D. tentaculigeraは中国からタイに分布します。それ以外はアフリカ原産種です。

                ┏━━━African clade
                ┃
                ┃        ┏Compound Leaved clade
                ┃    ┏┫
            ┏┫    ┃┗Dioscorea sansibarensis
            ┃┃┏┫
            ┃┃┃┗━Enantiophyllum clade
            ┃┗┫
            ┃    ┗━━Dioscorea tentaculigera
        ┏┫
        ┃┗━━━━Mediterranean clade
    ┏┫
    ┃┗━━━━━New World clade II
┏┫
┃┗━━━━━━New World clade I

┗━━━━━━━Stenophora clade

①African clade
African cladeは4つのサブクレードに分けられます。
        ┏━Pachycaul subclade
    ┏┫
    ┃┗━Cape subclade
┏┫
┃┗━━East Africa subclade

┗━━━D. buchananii subclade

・Pachycaul subclade
このサブクレードは、5種類13個体を調べています。名前の通り、"pachycaul"構造を持つ主に南アフリカ原産のグループです。代表種は亀甲竜D. elephantipesで、非常に肥厚したコルク層がある芋があり、ひび割れてゴツゴツした姿になります。芋は形よく育ち、観賞用によく栽培されます。D. sylvaticaは葉裏が白く、表面が滑らかな芋があり観賞用に栽培されます。南アフリカからモザンビーク、スワジランド、ザンビア、ジンバブエ原産です。D. hemicryptaは表面がガサガサした不定形の芋があります。D. strydomianaは非常に肌が荒れたゴツゴツした芋があり、やや立ち上がって育ち樹木の幹のように見えます。
遺伝子を調べると、外見上は似ていて同種とされていたものの実は近縁ではないとか、外見上は違いがあり別種とされていたものの実は同種というパターンも珍しくありませんが、Dioscoreaは従来区分の種によるまとまりがあります。D. elephantipesとD. sylvatica、D. hemicryptaとD. strydomianaはそれぞれ姉妹群です。

                    ┏━D. elephantipes 1
            ┏━┫
            ┃    ┗━D. elephantipes 2
        ┏┫
        ┃┗━━━D. elephantipes 3
        ┃
    ┏┫        ┏━D. sylvatica 1
    ┃┃┏━┫
    ┃┃┃    ┗━D. sylvatica 2
    ┃┗┫
    ┃    ┗━━━D. sylvatica 3
    ┃
    ┃            ┏━D. hemicrypta 1
┏┫        ┏┫
┃┃        ┃┗━D. hemicrypta 2
┃┃    ┏┫
┃┃    ┃┗━━D. hemicrypta 3
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━D. hemicrypta 4
┫┗┫
┃    ┃        ┏━D. strydomiana 1
┃    ┗━━┫
┃                ┗━D. strydomiana 2

┗━━━━━━D. brownii

・Cape subclade
このサブクレードは南アフリカ原産です。D. burchelliiは2つの個体でやや遺伝的に距離があるようです。

            ┏━D. stipulosa 1
    ┏━┫
    ┃    ┗━D. stipulosa 2
    ┃
┏┫    ┏━D. mundii 1
┃┣━┫
┃┃    ┗━D. mundii 2
┫┃
┃┗━━━D. burchellii 1

┗━━━━D. burchellii 2

・East Africa subclade
このサブクレードは東アフリカ原産です。D. gillettiiはエチオピア、ケニア原産、D. kituiensisはケニア原産です。

        ┏━D. gillettii 1
┏━┫
┃    ┗━D. gillettii 2

┗━━━D. kituiensis

・D. burchellii subclade
このサブクレードは主に南アフリカ原産です。D. rupicolaは不定形の芋を持ちます。D. buchananiiは分布が広く、南アフリカ、アンゴラ、マラウイ、モザンビーク、タンザニア、ザンビア、ザイール、ジンバブエ原産です。"Bitter Yam"と呼ばれ食用とされます。

        ┏━D. multiloba
┏━┫
┃    ┗━D. rupicola

┗━━━D. burchellii


②Compound Leaves clade
このクレードは熱帯アフリカ原産のものと、アジア~オーストラリア原産のものがあります。D. dregeanaは南アフリカ、モザンビーク、スワジランド原産、D. dumetorumはチャド、コンゴ、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガーナ、アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、ギニア、ギニアビサウ原産です。D. bulbiferaはニガカシュウの名前で知られています。アフリカからアジア、オーストラリアまで広く分布します。

                ┏━D. dregeana 1
            ┏┫
            ┃┗━D. dregeana 2
        ┏┫
        ┃┗━━D. dregeana 3
    ┏┫
    ┃┗━━━D. dregeana 4
┏┫
┃┃        ┏━D. dumetorum 1
┫┗━━┫
┃            ┗━D. dumetorum 2

┗━━━━━D. bulbifera

③Enantiophyllum clade
このクレードはアフリカ原産です。D. cotinifoliaは南アフリカ、モザンビーク、スワジランド原産で、不定形な滑らかな表面を持つ芋があります。D. schimperianaはアフリカ大陸に広く分布します。

        ┏━D. cotinifolia 1
        ┃
┏━╋━D. cotinifolia 2
┃    ┃
┃    ┗━D. cotinifolia 3

┃    ┏━D. schimperiana 1
┗━┫
        ┗━D. schimperiana 2

African cladeは始新世に始まった旧世界のクレードの一部をなしています。漸新世の間、アフリカは湿潤で密な森林に覆われており、多年草の塊茎とわずかに翼があり滑空する種子が特徴です。中新世の気候変動により、アフリカ東部の草原と南アフリカの地中海性気候、及びケープ植物相が出現しました。乾燥した草原でおきる火事への適応で、コルク質の樹皮が発達したと考えられています。東アフリカでは種子に翼がなく、エライオソームがあることからアリにより運ばれる可能性があります。エライオソームとはアリに運んでもらうための種子についている栄養分で、アリはエライオソームがついた種子ごと巣穴に持ち込みます。アリの巣は地表より湿っていて涼しいので発芽に適しています。しかし、なぜ東アフリカでは風による種子の拡散ではなくなったのかは不明です。ただし、アリによる拡散は他の地域でもおきていることから、割とおきやすい変異なのかもしれません。

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亀甲竜 Dioscorea elephantipes

以上が論文の簡単な要約です。この論文は遺伝子解析結果から種の分岐年代を推定しています。ですから、アフリカにおけるDioscoreaの進化をかつての環境の変動と照らし合わせて、どのように進化したのかを推察しているのです。実は論文の内容は盛り沢山なのですが、様々な議論がされているため要約しきれませんでした。記事があまりにも長くなるためかなり割愛しています。内容が気になる方は、実際の論文を読んだ方が面白いかもしれませんね。


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アロイデンドロンは樹木状となるアロエの仲間です。代表種はかつてアロエ・ディコトマ(Aloe dichotoma)と呼ばれていたAloidendron dichotomumです。アロイデンドロン属は近年の遺伝子解析の結果によりアロエ属から分離されました。現在アロイデンドロン属は7種類あるとされています。その点についてはかつて記事にしたことがあります。ご参照下さい。
アロエ属とアロイデンドロン属の関係は遺伝子解析により判明していますが、アロイデンドロン属内の分類はわかっていませんでした。そんな中、アロイデンドロン属の遺伝子を解析して近縁関係を解明した論文を見つけました。Panagiota Malakasi, Sidonie Bellot, Richard Dee & Olwen Graceの2019年の論文、『Museomics Clarifies the Classification of Aloidendron (Asphodelaceae), the Iconic African Tree Aloe』です。

アロイデンドロン属はアフリカ南部の砂漠を象徴する植物です。しかし、アロイデンドロン属内の進化関係は不明でした。そこで、アロイデンドロン属を遺伝子解析することにより、属内の系統関係を類推しています。ここでは、Aloestrela suzannaeというアロエ類が出てきますが、お恥ずかしい話ですが私はこのアロエストレラ属の存在を知りませんでした。アロエストレラ属は2019年に創設されましたが、Aloestrela suzannaeだけの1属1種の属です。しかし、新種というわけではなく、1921年に命名されたAloe suzannaeが2019年にAloestrela suzannaeとなりました。

アロイデンドロン属の分子系統
┏━━━━━━Aloe
┃     (Aloidendron sabaeumを含む)


┃    ┏━━━━Aloidendron ramossimum
┃    ┃
┃┏┫         ┏━Aloidendron dichotomum 1
┃┃┃     ┏┫
┃┃┃     ┃┗━Aloidendron dichotomum 2
┃┃┃┏ ┫
┃┃┃┃ ┗━━Aloidendron pillansii 1
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━Aloidendron pillansii 2
┃┃
┗┫            ┏━Aloidendron barberae 1
    ┃        ┏┫
    ┃        ┃┗━Aloidendron barberae 2
    ┃   ? ┫
    ┃        ┗━━Aloidendron barberae 3
    ┃
    ┃    ┏━━━Aloestrela suzannae 1
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━━Aloestrela suzannae 2
    ┗┫
        ┃┏━━━Aloidendron eminens 1
        ┗┫
            ┗━━━Aloidendron eminens 2


アロイデンドロン属の系統関係は、Aloidendron sabaeum以外はまとまりのあるグループでした。しかし、論文ではA. barberaeが、A. ramossimum系統なのかA. eminens系統なのかは不明瞭でした。さらに、Aloestrela suzannaeは独立したアロエストレラ属ではなくA. eminensと近縁であり完全にアロイデンドロン属に含まれてしまうことがわかりました。また、驚くべきことにA. sabaeumはアロエ属に含まれてしまい、アロイデンドロン属とは近縁ではないことが明らかとなりました。よって、今後アロエストレラ属は消滅してアロイデンドロン属となり、A. sabaeumはアロエ属に復帰するかもしれません。しかし、論文ではAloidendron tongaensisが調べられていないようです。今後の研究が待たれます。また、A. pillansiiは2個体調べていますが、この2個体は近縁ではあるもののやや遺伝的に距離があるようです。この点も注視していく必要がありそうです。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、私が知らない間に創設されたアロエストレラ属を知らない間に否定する論文が出ていたということで、己の無知を思い知るとともにアロエ類の研究が盛んに行われていることを嬉しく思います。また、A. sabaeumの遺伝子解析の結果からは、アロエが樹木状となること=アロイデンドロンではないということを示唆しています。アロエ属であっても環境に対する適応により樹木状の形態をとる可能性があるのでしょう。そうなると、樹木状とならないというか草本に回帰したアロイデンドロン属も存在するかもしれませんね。今後の研究結果が非常に楽しみになります。


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ダシリリオンの小さな実生苗を育てていますが、一体なんの仲間なのか以前から気になっていました。まあ、おそらくはリュウゼツランだのトックリランだのに近いのだろうとは感じていました。そこで、論文を調べてみたところ幾つか出てきたのですか、割と新しい論文がありましたので本日はそれをご紹介したいと思います。なぜ、新しい方が良いかというと、過去の知見を踏まえて試験されているということ以外にも理由があります。遺伝子を解析する分子生物学は新しい科学ですから、近年急激に進歩しています。90年代後半や2000年代前半くらいの論文は、精度が悪く信頼性が高くありません。というわけで、Ran Meng, Li-Ying Luo, Ji-Yuan Zhang, Dai-Gui Zhang, Ze-Long Nie & Ying Mengの2021年の論文、『The Deep Evolutionary Relationships of the Morphologically Heterogeneous Nolinoideae (Asparagaceae) Revealed by Transcriptome Data』をご紹介します。名前を見るに中国の研究者でしょうか? もしそうならば、今まで読んだ多肉植物の論文の中では、はじめてですね。なんだかんだで、多肉植物の論文は多肉植物先進国のヨーロッパとアメリカ、多肉植物の原産国であるメキシコや南アフリカあたりがほとんどのような気がします。

さて、現在の分類体系でキジカクシ科Asparagaceaeスズラン亜科Nolinoideaeに所属する植物は、形態学的に非常に不均一なグループで、かつては様々な科に分けられていました。あまりにも異なる見た目と、遺伝子解析の難しさから中々正しく理解されてきませんでした。この論文では調べた種類は少ないものの、逆に2126個もの遺伝子を調べることにより精度と解像度を上げることに成功しています。
このスズラン亜科の分類はかなり複雑な経緯をたどってきたようです。スズラン亜科は以前はRuscaceae sensu lato(広義)またはConvallariaceae sensu lato(広義)として知られていました。スズラン亜科は伝統的にEriospermaceae、Polygonateae、Ophiopogoneae、Convallarieae、Ruscaceae sensu stricto(狭義)、Dracaenaceae及びNolinaceaeとして知られる7つの異種系統で構成される複雑なグループでした。遺伝子解析の結果を以外に示します。

スズラン亜科の分子系統

                                    ┏Polygonatum
                                ┏┫      sibiricum
                                ┃┗Polygonatum
                            ┏┫       cyrtonema
                            ┃┗━Polygonatum
                        ┏┫        zanlanscianense
                        ┃┗━━Disporopsis
                    ┏┫               aspera
                    ┃┗━━━Maianthemum
                ┏┫                 japonicum
                ┃┃┏━━━Aspidistra
                ┃┗┫              fenghuangensis
                ┃    ┗━━━Tupistra chinensis
            ┏┫
            ┃┃┏━━━━Theropogon
            ┃┗┫                     pallidus
            ┃    ┗━━━Liriope platyphylla
        ┏┫
        ┃┃┏━━━Beaucarnea recurvata
        ┃┗┫
        ┃    ┗━━Dasylirion longissimum
    ┏┫
    ┃┗━━━━━━━Ruscus aculeatus
┏┫
┃┃┏━━━━━━Dracaena angustifolia
┃┗┫
┫    ┗━━━━━━━Sansevieria trifasciata

┗━Eriospermum lancifolium

遺伝子解析の結果から、6グループに分けられました。Eriospermumは比較のための外群です。
①Polygonateae
Polygonatum、Disporopsis、Mainthemumは近縁なグループです。Polygonatumとはいわゆるアマドコロ属で、ナルコユリが有名です。Mainthemumはマイヅルソウ属です。
Polygonataeは単系統でよくまとまった分類群ですが、Mainthemumはやや距離があるようです。

②Convallarieae
AspidistraとTupistraは姉妹群です。Aspidistraとはハラン属のことです。代表的なのはConvallaria、つまりはスズラン属です。
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ドイツスズラン Convallaria majalis var. majalis

③Theropogon + Liriope
次にTheropogonとLiriopeは姉妹群です。Theropogonは東アジアに分布するスズラン様の草本です。Liriopeはいわゆるヤブラン属です。
Ophiopogoneae(ジャノヒゲ類)はConvallarieaeに含まれていましたが、実際の系統関係は不明でした。この論文ではTheropogonとLiriopeがOphiopogoneaeを代表しています。そして、遺伝子解析の結果では、OphiopogoneaeはPolygonateae + Convallarieaeに近縁であることが示されました。
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ヤブラン Liriope muscari

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ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus

④nolinoides
BeaucarneaとDasylirionは姉妹群です。Beaucarneaはトックリラン属のことです。
nolinoidesは伝統的にはユリ科でしたが、その後ドラセナ科やトックリラン科とされました。Nolina、Dracaena、Yuccaは繊維状の葉と木質化する幹からリュウゼツラン科Agavaceaeとする考え方もあります。その花や果実や種子の特徴からは、Convallarieaeと近縁とされていました。しかし、遺伝子解析の計算方法の違いにより、Convallarieae-Dracaenaceae-Ruscaceae、あるいはAspidistreae-Convallarieaeに近縁とする2つの結果が得られています。この論文では、nolinoidesはruscoidsやdracaenoidsのような木質化するグループより、草本のConvallarieaeに近縁としています。
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トックリラン Beaucarnea recurvata

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ダシリリオン

⑤ruscoids
Ruscusとはナギイカダ属のことです。
ruscoidsは伝統的にキジカクシ科と近縁と考えられてきましたが、遺伝子解析ではConvallarieaeと近縁でした。

⑥dracaenoids
DracaneaとSansevieriaは姉妹群です。実はSansevieriaはDracaenaに含まれるとする考え方が主流のようで、Sansevieria属は学術的には存在しません。どうも、2017~2018年頃に変更されたみたいです。論文が見つかれば記事にしたいですね。
dracaenoidsはユリ科、リュウゼツラン科、ドラセナ科、ナギイカダ科、スズラン科などに含まれたこともあり、系統関係はあやふやでした。しかし、特徴からはnolinoidesと近縁である可能性がありましたが、実際にはruscoidsと近縁でした。
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ボウチトセラン Dracaena angolensis
                         (=Sansevieria cylindrica)


この論文の主眼は遺伝子解析の精度を高めることです。というのも、通常は2つの遺伝子を解析して系統関係を類推することが多いのですが、どうもスズラン亜科の過去の研究ではあまり高い精度を達成できていないみたいです。一応関係性は示されますが、精度が低いと信頼性も低いということになります。ですから、この論文では信頼性を高めることに成功したということです。しかし、dracaenoids、ruscoids、nolinoidesという木質化する各グループが、近縁であっても一つのグループにまとまっていないことがわかりました。さらなる詳細な研究が待たれます。

以上が論文の簡単な要約です。
この論文によりわかったこと、分類体系の確実性を増したことは確かでしょう。しかし、それは欠けたピースを少し埋めただけとも言えます。むしろこれからです。将来的な研究結果を楽しみにしています。


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国際多肉植物協会のHPを見ていたら、おやおやまあまあなんと新年早々にビッグバザールを開催するとあるじゃないですか。今までは、1月は新年会みたいなものをやっていたような記憶がありますが、春夏秋冬に加え新春までイベントとは驚きました。と思ったら去年も開催したみたいですね。これは失念。国際多肉植物協会のリンクはこちら。
しかし、去年はとにかくイベント優先の一年でした。特に一年の後半はイベントだらけでした。この一年の多肉植物のイベントを振り返りましょう。

イベントはまず3月のザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションで開催された多肉植物BIG即売会から始まりました。Pachypodium rorulatum var. drakeiをはじめて見ました。

4月には春のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。難物のEuphorbia columnarisや、非常に美しい白雲巒岳Euphorbia confinalis subsp. rhodesica、高額なHaworthiopsis koelmaniorumをお安く、またあまり売っていないアストロロバを2種類購入。非常に満足度が高いイベントでした。

5月に神代植物公園で多肉植物展が開催されました。良く育ったサボテンや多肉植物を見ることが出来ました。また、大温室では様々な熱帯植物や多肉植物を見ることが出来ました。植物園も悪くないですから、今年は近隣で行けそうな植物を探してみようと思いました。

6月には夏のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。Euphorbia gymnocalycioidesを購入するつもりでしたが予定通りに購入しました。予想外にガステリア2種類を入手。


7月にザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会、今年2回目の開催。珍しいEuphorbia clivicolaを入手。

9月には秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。ユーフォルビアが5種類も入手出来ました。また、Haworthiopsis sordidaとHaworthiopsis nigraも入手しました。

秋のビッグバザールの後直ぐに鶴仙園でPlant's Workさんとのコラボイベントがありました。沢山のハウォルチアが西武池袋の屋上に集まりました。Haworthiopsis woolleyiを入手。

10月にはタナベフラワーさんでSucculent Station宮崎台が開催されました。春鶯囀Gasteria batesianaを入手できてラッキーでした。


11月には冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。Gasteria distichaやEuphorbia handiensisといった珍しい多肉植物を入手。

12月には木更津Cactus & Succulentフェアが開催されました。Aloidendron ramossimumやDioon eduleを超安価で入手出来ました。

こうして見るとイベントばかりに行っていますね。今年もイベントづくしの1年になりそうです。


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新年、明けましておめでとうございます。今年も我が弱小多肉植物ブログである『ユーフォルビア・オベサ・ドットコム』をご贔屓にしてくださると嬉しく思います。
いよいよ2022年も終わり2023年となりましたが、今年も多肉植物漬けの一年を過ごすことになるのでしょうか? むしろ、新型コロナによる自粛が解禁になってきて、今年の方が多肉植物のイベントは盛んになるかもしれませんね。
去年の年末から急激に寒くなりましたが、室内に取り込んだ多肉植物たちはポツリポツリと花芽があがってきたり開花したりしています。そんな正月の多肉植物たちをご紹介しましょう。
まずは未だに外にある多肉植物たちから。
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Haworthia cooperi
屋外にありますが寒さはへっちゃらです。むしろ、光線が柔らかいから冬が一番綺麗な季節です。


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Haworthia cooperi
単体で植えてみましたが、まだ花が咲いています。


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花はこれが最後みたいです。

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竜鱗 Haworthiopsis tessellata
毎年屋外栽培の竜鱗ですが平気です。


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オブツーサ系のハウォルチアも毎年屋外栽培しています。

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蘇鉄キリンあるいは怪魔玉
ユーフォルビアの交配種。頭が重くて直立できなくなって来ました。


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毎年屋外栽培ですが、まったく平気です。去年の冬は試しに室内に入れましたが徒長してしまったので、今年の冬は屋外栽培に戻しました。

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ガステリア交配種
屋外栽培の由来不明交配種。


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この寒さの中、花芽があがってきました。

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Gasteria carinata
室内に取り込んだカリナタは花芽がかなり伸びて来ました。残念ながら開花は正月に間に合いませんでした。


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ガステリアはgaster=胃から来ていますが、カリナタはそれほど膨らみませんね。まだ開花していませんからこれから膨らむのでしょうか? 

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2つ目の花芽もあがってきました。

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Gasteria disticha
こちらも花芽があがってきました。カリナタより遅いですね。

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Euphorbia phillipsioides
こちらは花盛りです。花色は地味ですが固まって咲きます。


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Aloe haworthioides
ハウォルチオイデスも開花中です。



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今年一年は主に仕事でいつも忙しく、常に疲れている感じでした。どうにも、忙しければ忙しいほど多肉植物のイベントに行ってしまいます。最近は疲れが抜けにくいというのに、イベントなんかに行くから余計に疲れるわけですが、ストレス発散の一つの手段と化しているのかも知れませんね。というわけで、止められません。まったく困ったことです。
私の育てている多肉植物は、そのほとんどが室内管理ですから霜除けなどの寒さ対策はしなくていいわけです。しかし、室内は最低気温があまり下がらないため、日照が弱い冬だというのに生長を始めてしまうウッカリ者も出てくるわけです。まあそうなるとヒョロヒョロとモヤシのように育ってしまうわけで、何かしらの対策は必要となります。水を切るのも一つの手ですが、ユーフォルビアなどは冬の間完全に断水すると根をやられてしまったりしますから、中々難しいところです。そんなこんなで、仕方がないので植物用ランプを使っています。植物用ランプは弱いという意見もあるようですが、ホリダが間延びしないのですから私にはそういう印象はありませんね。むしろ、タコものユーフォルビアなどは日焼けしてしまうものもあるくらいです。実は植物用ランプの光の強さは距離に依存します。近くでつかえば強く、全体を照らそうと離して設置すれば弱くなります。

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部屋は植物用ランプでとんでもない色になります。

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ホリダ系はランプの真下に置きます。

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花キリン Euphorbia millii cv.
矮性白花品種。枝は柔らかいので伸びると垂れます。室内に取り込むのに邪魔なので伸びた枝をカットしました。しかし、枝を切ると新しい枝が増えてどんどん混んでいきます。


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花キリンは一年中花を咲かせます。

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Haworthiopsis koelmaniorum
日に当たると透き通った窓が美しいのですが、光線が柔らかく葉色が緑色になる冬がコエルマニオルムの最も美しい季節です。


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噴煙竜 Euphorbia neohumbertii
幹の模様が面白い噴煙竜ですが、葉の落ちた跡が由来です。強光には少し弱い感じがあります。


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噴火竜 Euphorbia viguieri
噴火竜の紅葉した葉が美しいですね。噴煙竜と似ていますが、見た目ほど近縁ではありません。同じ花キリン類ですけどね。強光が大好きです。


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Euphorbia bongolavensis
寒さに弱いのか、ボンゴラベンシスは葉を落としました。遮光を強めにして水を切らさないで育てないと、葉を落としてしまいます。


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帝王錦 Aloe humilis
帝王錦という厳めしい名前をもらっている割に、トゲも柔らかい小型アロエです。気持ち遮光強めの方がきれいに作れます。強光に当てると古い外側の葉が枯れて、貧相になりがちです。


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Euphorbia polygona var. anoplia
アノプリアは急激に稜が増えました。少し不自然な増え方ですが…


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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia
今年も鉄甲丸は無事に夏を越しました。新しい葉が出てきたようです。

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Euphorbia guillauminiana
元は半額処分品でしたが、復活して良く育ちました。当時はまだ珍しいユーフォルビアでしたね。しかし、最近でE. guillauminianaは実生苗がある程度出回ったため、大分価格も安くなりました。


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Astroloba foliolosa
フォリオロサも大分生長しました。アストロロバは面白いのですが、昔からまったく人気がありませんね。昔からあるのに人気がないから売っていないパターンです。

最近は多肉植物に関係する論文ばかり読んでいます。今年は71本の論文を読みブログの記事にしました。まあ、知らないことを知ることが出来ますから楽しくはありますが、それはそれで少し疲れました。というわけで、12月31日から翌1月2日までブログもお休みします。年始も仕事がありますから、せめて年末はゆっくりすることにしました。来年はなにやら1月からイベントがある様子です。懲りずに見に行く予定です。
では皆様、良いお年を。


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実はというほどのことではありませんが、植物に関する本をポツポツと読んだりしています。まあ、植物に関係ない本の方が多いのですけどね。しかし、読書感想文は苦手ですから、あまりブックレビューは書きません。しかし、年末だけはこの1年を振り返るために、今年のベスト10をご紹介します。
今年は131冊の本を読みました。今年は何かと忙しくこれでも例年より少ない方です。読んだのはほんどが新書です。読む分野は、生物学、社会学、西洋哲学、歴史学、考古学、文化人類学、宗教学、民俗学といったあたりが中心です。とは言うものの、新刊が良く出るのはやはり歴史でしょう。新書では日本史がやはり多く、中国史や西洋史も割とあります。哲学はあまり出ませんが、講談社現代新書が『今を生きる思想』というシリーズを出し始めたことは嬉しく思います。
さて、今年一番面白かった本は以下の通りでした。

①『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』, 秦正樹/著, 中公新書 
新型コロナウイルスの流行以来、関係する様々な陰謀論がネット空間やSNSを騒がせました。SARS-CoV-2の出自をめぐる陰謀論や、ワクチンに関する一連の陰謀論もありました。一応断っておきますが、この本は別に新型コロナ関連の陰謀論を中心に扱っているわけではありません。しかし、陰謀論そのもののメカニズムと危険性がよくわかります。時節をとらえた時事ネタではありますが、ある種の普遍性を持つ内容ですから新型コロナ以外の話題でもなお有効です。

②『「笛吹き男」の正体 東方植民のデモーニッシュな系譜』, 浜本隆志/著, 筑摩選書
いわゆる「ハーメルンの笛吹き男」に関する論考です。単なるおとぎ話の類いかと思いきや、実は実際におきていた事件であるというのです。事件そのものはオカルト的なものではなく、ドイツ騎士団の活躍により獲得した土地に、人口増によりあぶれた農民を集めて送り込むという当時のシステムが関係しているというのです。話が謎解きのように進行するので、大変楽しい時間を過ごせました。

③『曾国潘 「英雄」と中国史』, 岡本隆司/著, 岩波新書
中国史は好きですが、最後はすべてを灰塵に帰して終わりますから、何とも言えない諸行無常を感じます。本作は主に太平天国に対峙する曾国潘が話の中心です。2020年に出版された同じ岩波新書の『太平天国』も読みましたが、合わせて読むとより無情感を感じることが出来ます。中国史はエピソードがいちいち物語として優秀で、劇を見ているような気持ちになります。

④『謎の海洋王国ディルムン メソポタミア文明を支えた交易国家の勃興と崩壊』, 安倍雅史/著, 中公叢書
本を読んでいると、いやはや知らないことは幾らでもある、というより知らないことの方が多いという事実に打ちのめさせられます。己がいかに無知かを知ることは謙虚を知る契機でしょう。本作は正にそれで、メソポタミア文明を知ってはいても、ペルシャ湾の小島に数えきれないくらいのメソポタミア時代の遺跡があるという事実に驚かされます。基本的に知らないことばかり書いてあり、本にかぶり付きで読みました。

⑤『サボテンはすごい! 過酷な環境を生き抜く驚きのしくみ』, 堀部貴紀/著, ベレ出版
この本はすでに新刊が出た時に記事にしていますから、詳しくは書きませんが一つだけ。最近では学者の書くサボテンや多肉植物の本がありませんでしたから、日本にサボテン学者が生まれたこと自体、祝福すべきことですよね。
以前のブックレビューした記事はこちら。


⑥『スピノザ -読む人の肖像』, 國分功一郎/著, 岩波新書
スピノザに関しては過去に何冊か解説書を読んでいますが、まあそれほど本は出ていません。だから、今年は『スピノザ 人間の自由の哲学』(講談社現代新書)も出版されれたこともあり、スピノザを学ぶ良い機会となっています。特に本書は内容の濃い労作ですから、流し読むようなことはせずに、じっくり時間をかけて読みたい本です。年末年始に哲学はいかがでしょうか?

⑦『ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く』, 梅田孝太/著, 講談社現代新書
講談社現代新書の新しいシリーズ「今を生きる思想」の一冊。このシリーズは全体の紹介ではなく、ある一点に重点を置くような解説が特徴です。シリーズはどれも面白かったのですが、個人的にショーペンハウアーを贔屓にしているので、選ばせていただきました。まあ、ショーペンハウアー自体、解説本が出ませんから、入門書と言えど貴重ではあります。私はかつて読んだ「生の嘆き ショーペンハウアー倫理学入門」(法政大学)に非常に衝撃を受けた口なので、ショーペンハウアーというだけでやや前のめりになってしまいます。

⑧『日本の高山植物 どうやって生きているの?』, 工藤岳/著, 光文社新書
高山植物には縁がありませんが、その生態には興味があります。本州の高山植物は氷河期に分布を拡大した北方系の植物の生き残りです。受粉と受粉媒介者との関係もそうですが、植物学の知識を色々学ぶことが出来ました。実際のところ、私が学術論文を読む際の最大のネックは専門知識の欠如でした。というのも、論文は基礎知識を知っている前提で書かれがちです。正直、わからないことだらけです。私も少しずつですが、このような良書を参考に勉強しながら記事を書いていきたいものです。

⑨『ソ連核開発前史』, 市川浩/著, ちくま新書
ロシアによるウクライナ侵攻は世界に衝撃を与えました。戦争が長引くにつれロシアが核兵器を使用するのではないかという懸念もされるようになりました。このロシアの核技術はソ連時代から引き継いだものです。ソ連崩壊は世界情勢がガラリと変わる出来事で、1990年前後に大量の研究書やルポルタージュが世に出されました。私も世界史の転換点として学ぶ必要性を感じ、ここ10年くらい少しずつ本を集めています。しかし、核開発は機密中の機密ですから、核技術に重点を置いた本ははじめて読みました。独裁国は現実ではなく方針に沿った発言しか許されないため、安全性に対する懸念と権威的体制は相性が悪く非常に危険です。ソ連はロシアに生まれ変わりましたが、プーチンの事実上の独裁状態ですから、ソ連時代からの危うさまで引き継いでしまいました。

⑩『南洋の日本人町』, 太田尚樹/著, 平凡社新書
ヨーロッパが香辛料を求めて大航海時代が訪れました。しかし、実際にはヨーロッパは交易に関しては完全に後進国であり、中国から東南アジア、インド、ペルシャ、アフリカ東岸まで含む超巨大交易圏がすでに発展していました。この辺りの話には非常に興味があり、過去に出た本を含め割と読んでいるほうだと思います。しかし、交易圏の日本人の存在は他の著作でも記載はありましたが、話の中心にはならず詳しくはわかりませんでした。しかし、本書を読んでみて思いの外、巨大交易圏に日本人がいたことに驚きます。

若い頃はジャンルを選ばず主に小説を読んできましたが、ここ十年ちょいは小説はまったく読まなくなりました。今は代わりに新書を中心に読んでいます。しかし、2019年から始まったSARS-CoV-2の流行は私の読書生活にも打撃を与えました。だいたい一年に150冊以上読みますから、新刊だけだと興味のある分野のものはそんなに出版されませんから、どうしても足りなくなります。ですから、春と秋の神田神保町古本祭りで毎年古本を100冊以上購入していましたが、SARS-CoV-2により古本祭りは中止が続いていました。そのせいで、私の古本在庫はついにほとんどなくなってしまいました。今年の秋の古本祭りは開催されましたが、残念ながら予定が合わず行けませんでした。というわけ、今年の読書は新刊の比率が高くなっています。毎年、60~80冊の新刊を購入しますが、いずれにせよ来年は新刊だけでは足りないでしょうから、なんとかしなければ…


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我が弱小ブログは、開設から1年経つものの閲覧者はいっこうに増えません。まあ、内容が学名の話か論文の紹介ですから、そりゃそうだといった感じです。それはそうと、ブログを始めてからGoogle Search Consoleを活用すると良いという話を聞き及んで、ダウンロードしてみました。しかし、活用法がよく分からないというか、解説されても難しくて駄目ですね。放置状態です。しかし、適当にいじっていたら、閲覧者の国籍が分かる機能があることがわかりました。とはいえ詳細はわからず、単に閲覧者数の一覧表が出てくるだけです。
面白いことに、日本人が日本語で書いたブログなんだから、見るのも日本人だろうと思ってしまいますが、意外にも閲覧者は多国籍でした。一年間の閲覧者ランキング国ベスト10は以下の通り。

1位   48427 日本
2位   553 米国
3位   282 ロシア
4位   178 インド
5位   135 台湾
6位   128 ブラジル
7位   106 イギリス
8位   84 ドイツ
9位   61 トルコ
10位   60 インドネシア

日本はともかくとして、要するにこれが多肉植物好きな国々ということなのでしょうね。イギリスやドイツ、アメリカは論文も昔からよく出ていますし、園芸情報も豊富ですからね。ここら辺は良くわかります。しかし、ロシア、インド、ブラジル、インドネシアは意外ですが、多肉植物が流行っているのでしょうか? 人口も多いので、巨大な多肉植物の市場ですね。台湾がありますが、お隣ですから日本語が分かる方ももしかしたらいらっしゃるのかも知れませんね。あと、トルコにも多肉植物好きが! 

さて、ここからは地域別に見ていきましょう。というものの、各地域の区分けは何種類もあるようで、微妙に違いがあるみたいです。私の区分けはWikipediaから引っ張ってきただけですから、苦情はWikipediaにお願いしますね。あと、国名はGoogleによる国と地域ですから、実際については知りません。

先ずは、多肉植物先進国のヨーロッパから。38カ国が私のブログを閲覧した模様。やはり、多肉植物の研究は、アフリカを植民地としていたヨーロッパに歴史があります。イギリスやドイツがかなりの多肉植物好きです。しかし、寒いロシアやラトビアが強いのは不思議です。かなりしっかりした温室が必要そうですが…
ヨーロッパは閲覧数が10以上の順位を掲載します。
1位   ロシア 282
2位   イギリス 106
3位   ドイツ 84
4位   ウクライナ 57
5位   ラトビア 52
6位   フランス 39
7位   イタリア 37
8位   オランダ 34
9位   スペイン 30
10位 スウェーデン 29
11位 ポーランド 23
12位 リトアニア 19
13位 アンドラ 18
14位 チェコ 12
15位 ブルガリア 11
他 : デンマーク、フィンランド、ノルウェー、エストニア、アイスランド、オーストリア、ベルギー、スイス、ベラルーシ、スロベニア、ハンガリー、アルバニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロ、ルーマニア、モルドバ、ギリシャ、マルタ、ポルトガル、セルビア

お次はアメリカ大陸です。カリブ海地域も含めています。27カ国が私のブログを閲覧しました。やはりアメリカ合衆国は強いですね。アメリカ大陸はサボテンの宝庫ですし、中米から北米にかけてはアガヴェやソテツ類が豊富です。Fouquieriaもアメリカ大陸原産でしたね。
1位   アメリカ合衆国 553
2位   ブラジル 128
3位   カナダ 51
4位   アルゼンチン 39
5位   メキシコ 26
6位   コロンビア 23
7位   ペルー 12
8位   エクアドル 10
9位   トリニダード・トバゴ 7
10位 ベネズエラ 6
他 : ベリーズ、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ、バミューダ、バハマ、タークスカイコス諸島、キューバ、アンティグア・バーブーダ、バルバドス、ドミニカ、グレナダ、パラグアイ、ウルグアイ、チリ

お次はアフリカです。アフリカは25カ国が私のブログを閲覧しました。多肉植物の本場ですが、閲覧数は振るわず。しかし、思ったより沢山の国の人たちが見てくれたようです。
1位   エジプト 34
2位   南アフリカ 26
3位   アルジェリア 7
4位   モロッコ 6
5位   マダガスカル 4
6位   ケニア, モザンビーク, ウガンダ 3
9位   ジンバブエ, エチオピア, マラウイ, ルワンダ, セーシェル, モーリシャス, ナイジェリア 2
他 : ザンビア、ジブチ、タンザニア、カメルーン、リビア、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、セネガル、トーゴ

最後にアジアですが、オセアニアがオーストラリアとニュージーランドしか閲覧者がいないため、アジアに含めてしまいます。日本は省いています。アジアは38カ国、オセアニアは2カ国が私のブログを閲覧しました。しかし、アジアは盛り上がってますね。タイや韓国から多肉植物が日本にも輸入されているのは知っていましたが、もはやヨーロッパと変わらないですね。
1位   インド 178
2位   台湾 135
3位   トルコ 61
4位   インドネシア 60      
5位    韓国 58
6位   フィリピン 53
7位   タイ, ベトナム 36
9位   シンガポール, オーストラリア 32
11位 マレーシア 30
12位 パキスタン 28
13位 バングラデシュ 27
14位 中国 25
15位 香港 21
16位 カザフスタン 19
17位 サウジアラビア 13
18位 イラク 10
他 : カンボジア、ラオス、ミャンマー、ブータン、ネパール、スリランカ、イラン、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、イエメン、レバノン、シリア、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア、キルギス、ウズベキスタン

なんだかんだで、この一年間で実に132カ国の人が私のブログを訪れたようです。ただ、私のブログを訪れた人たちがちゃんと読めているのか正直不安です。自動翻訳は割といい加減ですから、正しく訳せていない可能性が高かったりします。私のブログは学名がやたらに登場しますから、学名を検索してたまたま私のブログがヒットしただけかもしれません。開いてみたものの読めないから閉じて他を探しているのかもしれないと思うと、何だか申し訳ない気分になります。あと、何故か不明の地域というのがあります。Googleの区分で一体どこのことを言っているのか気になります。


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ザミア・フルフラケア(Zamia furfuracea)はメキシコ原産のソテツの仲間です。日本でザミア・プミラ(Zamia pumila)の名前で販売されているのは、基本的にフルフラケアです。プミラとフルフラケアが混同されているのはおそらく日本だけで、海外の園芸サイトでは明確に別種とされています。まあ、実際のところそれほど似ているわけではないので、実際に見て間違うことはないでしょう。
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Zamia furfuracea(神代植物公園)
①葉の幅が広い、②葉の先端が丸い、③葉は皮質でぶ厚い、④黄色~褐色の短い毛がある、という特徴があればフルフラケアです。逆を言えば、プミラは葉の幅が狭く、葉の先端が尖り、葉は薄く、毛はないということになります。見分け方は簡単ですね。
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毛に被われたフルフラケアの新葉

さて、そんなフルフラケアですが、原産地のメキシコでは個体数の減少により絶滅が危惧されているそうです。そのあたりについて詳しく調べた2022年の論文、『Genetic diversity and differentiation in Zamia furfuracea (Zamiaceae) : an endangered, endemic and restricted Mexican Cycad』を本日はご紹介します。
Z. furfuraceaはメキシコ南東部の沿岸に固有のソテツで、生態的および園芸的に非常に重要です。主に牧畜地の拡大、都市開発、環境の悪化などにより減少しています。論文では6つの集団の遺伝子の多様性を確認しました。

Z. furfuraceaは世界の園芸市場で2番目に多く取引されているソテツです。そのため、違法採取にさらされてきました。さらに、開発なども影響し、過去40年で35%の減少を引き起こしました。なぜこのような調査を行う必要があるのかを説明しましょう。自生地の環境や個体数の調査は保護のための最低限の情報ですが、遺伝的多様性の調査は将来を見据えた研究と言えます。なぜなら、個体数の減少と個体群の分断が合わさると、遺伝的多様性が減少し様々な弊害が引き起こされる可能性があるからです。遺伝的多様性が失われると、やがて個体群の遺伝子が均一化してしまい、近親交配に近い状態となります。実際に野生のフルフラケアの実生の発芽率が低下している地域もあるという報告があります。
論文には述べられていませんでしたが、遺伝子が均一化してしまうと、その個体群が特定の病気に対して抵抗力がない場合、絶滅してしまいます。遺伝的多様性が豊富であれば、ある個体は病気に弱くても他の個体は抵抗性があれば問題はないわけです。実際に遺伝的に均一であったことで、危機に陥った有名な植物があります。それは、バナナです。種子ではなくて親株から出てくる子株で増やしているバナナは、遺伝的にクローンですから過去に病気の流行により壊滅的なダメージを受けてしまいました。現在我々が食べているバナナはその病気に対して耐性のある品種で、実は昔と異なる品種です。現在のバナナの品種は耐病性と輸送中の傷みにくさにより選ばれたため、以前と比べたら味や食感はあまり良くないとされているようです。とはいえ、現在のバナナもクローンで増やされていますから、やはり新たな病原菌の登場により最近では壊滅的なダメージを受ける農園も出てきてしまいました。現在、新たな耐病性品種を見つけることに躍起になっているそうです。

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Zamia furfuracea

脱線してしまったので、話を戻しましょう。
もともとフルフラケアは他のソテツと比較して遺伝子の多様性が高いとされています。しかし、都市開発などにより自生地も侵食され個体数も減少し、各個体群は孤立してしまいました。個体数は1つの個体群に100個体程度とされているようです。実際に創始者効果(※)やボトルネック効果(※※)が遺伝子解析により判明しており、遺伝的多様性は低下しています。個体群により遺伝的多様性は異なり、遺伝的多様性が高い群と低い群がありました。著者は遺伝的多様性の高い群をまずは重点的に保護すべきではないかと主張しています。

※創始者効果 : 祖先となった少数個体の遺伝子頻度の偏りに影響を受けること。
※※ボトルネック効果 : 個体数の激減により遺伝的多様性の低い集団が出来ること。


以上が論文の簡単な要約となります。
最近ではそれほど珍しくないフルフラケアですが、自生地では絶滅が危惧される希少種となってしまっています。大変悲しいことです。
しかし、研究者もなんとかしようと行動しています。例えば、Zamia integrifolia(異名Z. floridana)やZ. furfuraceaをモデルとして用いて、その繁殖効率を高めることを目的とした研究がなされています。これは、野生個体の違法採取を防ぐために、人工繁殖を確立して実生が流通してしまえは良いという考え方です。現実問題として違法採取を取り締まるだけでは効果が薄いということもあり、考えだされた現実的な方法です。このように研究者もソテツの保護に貢献していますが、自生地の破壊に対しては対策のしようがない状態です。とはいえ、保護のための情報を得るための研究は、保護活動を開始するための根拠となりますから、このような研究が行われることは非常に有用です。フルフラケアが絶滅しないことを切に願っております。

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フルフラケアの花。小さな実生苗から育てていますが、ようやく花が咲きました。


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今年の秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールでは、ラフレシアリサーチさんのブースでGymnocalycium berchtiiを購入しました。毎度、ラフレシアリサーチさんはオマケ苗をくれますが、この時のオマケはアガヴェでした。今はなんと言ってもアガヴェ・ブームですからね。しかし、オマケまでアガヴェとは驚きます。
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あくまでもオマケなので、ラベルは付いてきません。撮影許可を得てから、ラベルを撮影させていただきました。まあ、撮影しとかないと何だったか直ぐに忘れちゃいますからね。

この時のオマケ苗のラベルには、"Agave leopordii"とありました。私はアガヴェには詳しくないため、ふーんと言った感じで特に感慨も湧きませんでした。しかし、このAgave leopordiiは調べてみるとよく分からないことが次々と出てきました。今日はそんな謎を秘めたアガヴェのお話です。

「滝の白糸」?
現在、"leopordii"と言った場合、学術的に有効な学名を検索すると、Agave × leopordii W.Watsonが出てきます。画像検索するとどうやら細長い葉からフィラメントを沢山出す種類のようです。日本では「滝の白糸」という名前もあるようです。これで一見落着と思いきや、なにやら気になる論文を見つけてしまいました。それは、Figueiredo & Smithの2013年の論文、『Proposal to conserve the name Agave leopordii W.Watson against A. leopordii Rafarin (Agavaceae / Asparagaceae).』です。タイトルは「Agava leopordii Rafarinに対してAgave leopordii W.Watsonを保存する提案」と言ったところでしょうか? おやおや、なんとAgave leopordii Rafarinなる学名が存在するようです。論文の内容が気になります。しかし、残念ながら公開していない論文のようで私も読めませんから内容はご紹介できないのですが、この形式の論文は過去に幾つか読んだ経験があります。大抵は命名規約についての話でしょうから、おおよその内容の検討はつきます。
それは、
おそらくはこういうことです。命名規約では先に命名された名前が優先されます。しかし、最初に命名された名前ではない学名が流通している場合もあり、後でそのことが発覚しても学名の安定のため、あるいは混乱を避けるために流通している学名を正式な学名とした方が好ましい、ということです。実際に現在の学名を調査してみましょう。

Agave × leopordii W.Watson
まず、Agave leopordii W.Watsonからです。キュー王立植物園のデータベースでは、Agave × leopordii W.Watson  nom. cons.となっています。まず、「×」が入っていますね。これは、自然交雑種であることを示しています。交配親はAgave filifera × Agave schidigeraということです。A. filiferaは「乱れ雪」、A. schidigeraは「白糸の王妃」と呼ばれているみたいです。
次に「nom. cons.」ですがこれは保存名(保留名)と言って、命名規約を厳密に適応すると使われてきた学名を変更しなければならなくなり不都合が生じたり、学名の安定性のために学名を維持することになったという意味です。どうやら思った通りのようです。

Agave leopordii Rafarin
では、Agave leopordii Rafarinとは何者でしょうか? データベースでは、Agave leopordii Rafarin nom. rej.となっています。やはり異なる人物が同じAgave leopordiiという学名をつけていたようです。しかし、こちらは「nom.rej.」とあり、これは「廃棄名」のことです。保存名がある場合に廃棄される名前ということです。
ちなみに、このAgave leopordii Rafarinは、「滝の白糸」のことではなく、「吉祥天」Agave parryi subsp. parryiの異名です。


なぜ廃棄されたのか?
命名年を見てみましょう。

1874年 A. leopordii Rafarin nom.rej.
1875年 A. parryi Engelm.
1893年 A. × leopordii W.Watson nom.cons.

話が見えてきました。まず、1874年に「吉祥天」にA. leopordii Rafarinと命名されましたが、理由は不明ながらどうやらあまり使用されなかったようです。その翌年の1875年、「吉祥天」にはA. parryi Engelm.という学名がつけられ、主にこちらが使用されてきたということなのでしょう。ですから、命名規約上ではA. leopordii Rafarinが正しいのですが、混乱を避けるなどの理由で、A. parryi Engelm.を採用しA. leopordii Rafarinは廃棄されたということでしょう。

もしA. leopordii Rafarinが採用されていたら
ここで、もしA. leopordii Rafarinが採用された場合、「滝の白糸」につけられたA. × leopordii W.Watsonは使用が出来なくなります。同じ属で同じ種小名は存在出来ませんから、命名の早いA. leopordii Rafarinが採用されますから、「滝の白糸」は名無しなってしまいます。滝の白糸には一応、1912年に命名されたAgave × disceptata J.R.Drumm.という異名がありますが、こちらが正式な学名となるのかも知れません。
しかし、いずれにせよA. parryi Engelm.にしろ、A. leopordii W.Watsonにしろ、命名より100年以上に渡り使用されてきた名前ですか、今さらの変更は混乱の元です。過去に出された論文などの文献資料にも影響を及ぼすでしょう。私も現状維持が一番わかりやすいと思います。

幻のA. americana v. latifolia Torr.
さて、同じ名前の秘密も解明されましたから、これで一安心と思いきや、余計なことに気が付いてしまいました。吉祥天A. parryi subsp. parryiの異名をなんとなく見ていたのですが、1859年に命名されたAgave americana var. latifolia Torr.という異名に違和感があります。吉祥天の正式な学名と比較してみましょう。

1859年 Agave americana var. latifolia Torr.
1875年 Agave parryi Engelm


なぜか、A. americana var. latifoliaの方が命名が早いのです。これはおかしいですね。国際命名規約にある、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」からすれば、A. americana var. latifoliaが優先されるはずです。ちなみに、Agave americanaとはいわゆる「アオノリュウゼツラン」という巨大なアガヴェのことです。吉祥天はアオノリュウゼツランの変種じゃないのだから関係ないような気もしますが、「先取権の原理」はこの場合においても未だ有効です。変種じゃなくなったならば、Agave latifolia (Torr.) ???に変更すればいいだけです。???はA. americana var. latifoliaをA. latifoliaに変更した人の名前が入ります。後は同じ名前のアガヴェがいなければいいわけです。ところがなんと同じ学名が存在するのです。それは、1859年に命名されたAgave latifolia Karw. ex Salm-Dyckです。よくみると、なんとA. americana var. latifoliaと同じ1859の命名です。これは事情がややこしいこと極まりない! さあ、困りました。同じ年の命名の場合はどうなるのでしょうか? 論文の掲載の早い順でしょうか? 良くわかりませんね。

Agave potatorum Zucc.
とまあ、以上のようにどうでも良さそうなことを考えていたのですが、すべてをひっくり返すような事実に気が付いてしまいました。なんと、Agave latifolia Karw. ex Salm-Dyckは異名で、正式な学名は1832年に命名されたAgave potatorum Zucc.だというのです。ちなみにA. potatorumは「雷神」の名前で知られています。
なにやら状況が混沌としてきました。A. latifolia Karw. ex Salm-Dyckが異名ならば、A. americana var. latifoliaをA. latifolia (Torr.) ???でも良さそうですが、何がいけないのでしょうか? もしかしたら、昔はA. latifolia Karw. ex Salm-Dyckが使われていて、A. americana var. latifoliaは使えなかった名残かも知れません。あるいは、ややこしいので単純に混乱を避けるためかも知れません。
命名規約の知識はあまりないので、これ以上はよくわかりません。今後の宿題です。

結局、どっちなの?
さて、以上のように色々と考察してきましたが、では私の所有するアガヴェはA. leopordii Rafarinでしょうか、A. × leopordii W.Watsonでしょうか。おそらくは輸入種子由来でしょうから、種子に添付されていた名前をそのままだと思います。しかし、海外の種子業者がどちらを採用しているかは、まったく予想がつきません。実物の特徴を観察してみましょう。
あまり詳しくない私にも、アガヴェにはトゲの強いタイプと繊維が出てくるタイプとがあることはわかります。どうやら、吉祥天A. parryiはトゲタイプで、滝の白糸A. × leopordiiは繊維タイプみたいですね。
DSC_2045
オマケ苗。まだ小さな苗ですから、特徴は明らかではありません。しかし、トゲはなく少しですが繊維が出てきました。なるほど、ということはこれは滝の白糸Agave × leopordii W.Watsonなのでしょう。
謎はまあまあ解けました。しかし、わからないことも沢山ありますが、取り敢えずはこんなもんでしょう。アガヴェの分類についてもよく知らないため、今後少しずつ調べていきたいと思っています。



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紅彩閣というユーフォルビアがありますが、本日はその紅彩閣についてのお話です。まあ、たいした話ではありませんが。
この紅彩閣はホームセンターでも売っている普及種で、昔から国内で流通しています。いわゆるサボテンもどきの扱いでした。多肉ユーフォルビアはだいたいそんな扱いでしたけどね。よく枝が出ますが、その枝を挿し木すれば簡単に増やせます。
さて、そんな紅彩閣は園芸店では「エノプラ」という名札が付いていることが多いようです。これは、学名のEuphorbia enoplaから来ています。しかし、このE. enoplaは園芸界では使われていますが、学術的にはほとんど使用されていないことをご存知でしたか?
例えば、地球規模生物多様性情報機構に登録された標本や画像といった学術情報において、E. enoplaの使用はわずか6.4%しかありません。では、どのような名前が使われているかと言うと、Euphorbia heptagonaです。このE. heptagonaは学術情報の実に91.4%を占めています。
他のソースも見てみましょう。まず、原産国である南アフリカの絶滅危惧種のリスト(Red List)では、E. enoplaではなくてE. heptagonaでした。さらに、アメリカ国立生物工学情報センターのデータベースを見ても、やはりE. heptagonaとなっています。もはや、エノプラの名前はただの俗称、良くて園芸名でしかありません。

では、なぜE. enoplaではなくてE. heptagonaとされているのでしょうか? その理由を解説しましょう。まず大事なこととして、生物の学名にはルールがあるということです。各々が勝手に名前をつけて勝手に使用していいものではありません。すべては国際命名規約の定めたルールに従っています。
E. heptagonaの場合は、
先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」で簡単に説明がつきます。紅彩閣は過去に複数の学名がつけられてきました。年表をお示ししましょう。

1753年 E. heptagona L.
1858年 E. desmetiana Lem.
1860年 E. enopla Boiss.
1907年 E. morinii A.Berger
1915年 E. atrispina N.E.Br.


以上のように、E. enoplaの前に2回命名されています。一番早いのはE. heptagonaですね。E. enoplaより100年以上前に命名されたEuphorbia heptagona L.こそが正しい学名なのです。ここいら辺の情報は、2012年に出されたP.V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』をご参照下さいませ。

というわけで、紅彩閣の正式な名前はE. heptagonaでありE. enoplaは誤りです。また、最初に命名された学名があまり使用されずに忘れ去られていて、別の学名が使用されてきた場合もあります。その場合は名前を本来の正しい学名に戻すと混乱のもとになりますから、よく使われる学名を保存名(保留名、nom.cons.)として正式な学名とし、使われない本来の学名を廃棄名(nom.rej.)として使わない処置をしたりします。しかし、E. enoplaに関しては、あくまでも園芸上の使用でしかなく、学術的に使用されてきたという経緯はありません。ですから、今後学術的にEuphorbia enoplaが使用されることはないとお考え下さい。

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紅彩閣 Euphorbia heptagona L.



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驚くべきことに、このような年末の忙しい時節、高速バスなんぞに乗って多肉植物のイベントに行くおかしな人間もこの世の中にはいるわけです。まあ、私のことなんですけどね。本日、2022年最後の多肉植物の即売会が開催されました。千葉県で開催された木更津Cactus & Succulentフェアです。
しかし、まあ会場のかずさアカデミアホールは大変行きにくい場所にあります。交通手段は車かバスなんでしょうけど、私は日常的に運転しないので長時間の運転は苦手です。電車と路線バスの組み合わせだと、時間も合わないしバスの本数も少ないしで面倒臭いことこの上ない感じです。というわけで、高速バスしか選択肢がなかったりします。
去年は東京駅から高速バスで会場まで向かいました。今年も同じようにと考えていたのですが、知らない間に高速バス乗り場が地下二階に移動したみたいです。調べて行かなかったら、危うく東京駅前を宛もなく右往左往するところでした。しかし、地下のバスターミナルはいいですね。屋内なので冷たい風にさらされることもありませんし、係員が誘導してくれますから非常わかりやすい。
DSC_2046
快晴の東京湾。

そこから先は同じです。高速バスはかずさアカデミアホールの敷地内まで入って会場前で降りられるので楽チンです。私は10時半くらいに会場に到着しました。

DSC_2051
一年ぶりの再会。

会場の様子ですが、すでに10時からの有料の先行入場客で賑わいがありました。皆さんも好きですねぇ。なんと、整理券が配られ入場に少し時間がかかりました。会場に入ると、
去年よりもだいぶ出店が増えていました。嬉しい限りです。
さて、今回の多肉植物の傾向はどんな感じでしょうか? 去年と同じくアナナス専門店が出ており、色とりどりで目立っていました。先ずは去年、ユーフォルビアが沢山出ていたブースへ。去年は子持シンメトリカ、Euphorbia tortirama、Euphorbia phillipsioidesを購入しましたが、今年も珍しいユーフォルビアが沢山ありました。今回の購入はユーフォルビア2種類。他にもレアものが沢山ありました。

DSC_2060
Euphorbia ellenbeckii
エチオピア、ソマリア、ケニア原産のユーフォルビア。原産地的に、もしかしたらやや難物かもしれません。割とレア。
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Euphorbia グロエネフィカ
Euphorbia groenewardii × Euphorbia veneficaらしいです。おかしな組み合わせですね。将来の姿が気になります。

お次は幅広く様々な多肉植物を取り揃えているブースへ。お初かもしれません。ここでは、樹木アロエのAloidendron ramossimumとメキシコのソテツであるDioon eduleを購入しました。店主が実生した苗なんだそうです。しかし、恐ろしいほど安かったです。特にA. ramossimumなんて普通は高価ですからね。見た瞬間震えましたよ。
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Aloe ramossima

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どうやら枝分かれ中みたいです。
アロエ属からアロイデンドロン属に変更されました。つまり、Aloidendron ramossimumです。店主は良く締めて育てているそうで、間延びしていない良い形です。
実はA. dichotomumに次いで2種類目のアロイデンドロンです。アロイデンドロン属の詳細は以下の記事をご参考までに。

DSC_2054
Dioon edule

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数年前にDioon eduleの小さな実生苗が、大型のホームセンターや園芸店に並びましたが、今はまったく見かけません。気になって探したらホームセンターの片隅ですっかり変色して枯れかけしかありませんでしたから諦めていました。というわけで、D. eduleは久しぶりに見ました。その後、Dioon spinulosumは購入しましたから、Dioonもこれで2種類目です。
過去にDioonの分類と進化に関する記事を書いていますから、ご参照ください。


お次は今年の冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Euphorbia handiensisを購入したブースへ。そこそこのサイズのバルサミフェラが、まあまあ安い価格だったので購入。
DSC_2059
Euphorbia balsamifera
珍しいユーフォルビアですが、最近ではイベントで少しづつですが見かけます。カナリア諸島、モロッコ、西サハラ原産ということで、カナリア諸島原産のユーフォルビアはE. canariensis、E. handiensisに続いて3種類目。

最後にビッグバザールでもお馴染みのラフレシアリサーチさんのブースへ。今年の冬のビッグバザールでは、はじめて何も購入しませんでしたが、今回はフィールドナンバー付きのギムノカリキウムを購入しました。ワンコイン苗なので激安です。
DSC_2063
Gymnocalycium mihanovichii VoS 01-007
瑞雲丸と呼ばれているようです。そういえば、緋牡丹は瑞雲丸の園芸品種と言われていますが、牡丹玉の園芸品種にも見えます。詳しくないので調べる必要がありますね。

DSC_2064
Gymnocalycium friedrichii VoS 01-017/a
Gymnocalycium mihanovichii var. friedrichiiとされることもあるくらい、瑞雲丸と良く似ています。いわゆる牡丹玉です。しかし、現在認められている学名はGymnocalycium stenopleurumらしいです。

Ruchiaさんも来ていましたが、今回は購入しませんでした。目につくところでは、Gasteria vlokiiがありました。割とレアですが手持ちにあるのでパス。珍しいことに、結構Tulistaがありましたが以前購入したT. pumilaのvar. ohkuwaeとGM602でしたから当然買わず。
とまあ今回はこんな感じです。高いものは高いですが、探すとえらく安いものも結構ありました。今回も相場より安いものしか買いませんでしたから、懐にはまだ余裕がありましたが、荷物が多くなり過ぎました。これから、高速バスと電車を乗り継いで帰らなくてはならないため、気になるものはまだありましたが、今回は断念しました。まあ、またいつかどこかのイベントで出会えるでしょう。
去年と比べると、出店も増えていましたし、お客さんの入りも上々でした。まだ、3回目ですからこれからもっと盛り上がっていくイベントに育つといいですね。

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帰りのバスでは富士山を遠くに仰ぎ見ながら。

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去年は幾つかの多肉植物の即売会で、パキポディウムの小苗を何種類か購入したりしました。元より全種類集めるつもりはありませんでしたから、現在は手持ちにない種類を見かけてもスルーし、手持ち株の育成に重点をおいています。さて、そんなパキポディウムですが、過去には遺伝子解析による最新の論文を記事にしたことがあります。
そんな中、白い花を咲かせるパキポディウムに対する論文を見つけました。Jonas Lüthyの2008年の論文、『Notes on Madagascar's white-flowering, non-arborescent pachypodium and description of a new subspecies』です。現在のパキポディウムの分類は著者のLüthyの基準を採用していますから、Lüthyの論文は思いの外、重要です。では、早速内容に入りましょう。
花の色はパキポディウムの分類の歴史において重要な役割を果たしてきました。基本的に樹木性パキポディウムは白い花、非樹木性パキポディウムは黄色い花、さらには赤い花のP. baroniiとP. windsoriiがあります。花の色の違いにより、フランスの植物学者であるPichonはパキポディウムを3亜属に分けました。樹木性で白い花のChionopodium亜属(chion=雪)、低木状で黄色い花のChrysopodium亜属(chrysos=金)、赤い花のPorphyropodium亜属(porphyreos=紫)です。この分類は白い花を咲かせる非樹木性パキポディウムが発見される1980年代まで疑問視されませんでした。

エブルネウム P. eburneum
Boiteauは白い花を咲かせるP. rorulatumらしきパキポディウムをManandora河とMania河の合流地点近くの岩だらけの頂上で観察し、1949年以前に報告しました。しかし、Pichonは自身の分類の例外となるはじめてのケースであることを認識しましたが、それ以上の注意は払われませんでした。このBoiteauの観察は後のP. eburneumの最初の報告だったようです。実際にP. eburneumが新種として記載されたのは1997年のことでした。ただし、1980年代後半にはすでに園芸市場では取引されており、P. rorulatum albiflorumという俗称で呼ばれていました。1992年から始まった自生地の探索は幾度かの失敗の後、1996年にスイスのWalter ösliとRalph HoffmannによりIbity山で発見されました。この発見が、新種の正式な記載に繋がるきっかけでした。
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Pachypodium eburneum

イノピナツム P. inopinatum
1980年代後半に白い花を持つ低木状のパキポディウムが園芸市場に登場しました。RauhによりP. rorulatumの白花個体とされました。1993年にP. eburneumの話でも登場したWalker ösliとRalph HoffmannはVohombohitra山脈のManakana近くで自生地を発見しました。1996年にP. inopinatumとして正式に記載され、P. rorulatumとの比較がなされました。著者はP. densiflorumとの関係があると考えているようです。

新種のパキポディウム?
Ibity山でP. eburneumが発見された後、プラントハンターは別の地域の個体群を報告し、ösliはIbity山の西にあるAndrembesoa渓谷で地元の写真家が撮影した開花写真を所有しています。2004年には花の直径が7cmにもなるややトゲの強いパキポディウムが、P. cf eburneumとして流通しました。CastillonはIbity山の南の地域の自生地を報告しており、1998年にはP. eburneumがP. densiflorumやP. brevicauleと一緒に生えているところを観察しました。新たな自生地はこれからも見つかる可能性があります。

レウコキサンツム
P. brevicaule subsp. leucoxanthum ssp. nov.

2004年頃、園芸市場に新たな白い花のパキポディウムが出現しました。Andrembesoa周辺からの採取を示唆していますが、自生地はまだわかっておりません。このパキポディウムは"P. brevicaule white flower"と呼ばれていますが、花は白色から淡い黄色まで幅があります。最近の研究では種子がP. brevicauleとは異なることが明らかとされています。P. brevicauleは非常に均一であることが知られており、亜種として区別するための新しい名前が必要です。著者はP. brevicaule subsp. leucoxanthumと命名しました。これは、「白い、淡い」を表す'leucos'と「黄色」を表す'xanthos'からなります。
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Pachypodium brevicaule subsp. leucoxanthum

以上が論文の簡単な要約となります。
しかし、近年の論文では遺伝子解析の結果から、P. densiflorumは産地により遺伝子に違いがあることがわかりました。おそらく本来のP.densiflorumはP. brevicauleと近縁です。P. eburneumはややはっきりしませんが、系統的にはP. densiflorumやP. brevicauleと近縁でしょう。また、P. horombenseと分布が近いP. densiflorumは、おそらくP. densiflorumではなくP. horombenseに含まれるのでしょう。さらに、3つ目のグループはP. densiflorumとP. inopinatumとP. brevicaule subsp. leucoxanthumからなります。驚くべきことに、P. brevicaule subsp. leucoxanthumはP. brevicaule subsp. brevicauleとは近縁ではありません。しかし、これらの成果は現在の学術的な分類としては正式に採用されていません。更なる詳細な解析を必要としているのかも知れませんが、いずれパキポディウム属全体の全面的な改訂は避けられないように思われます。

ちなみに、著者がこの論文で提案したPachypodium brevicaule subsp. leucoxanthumは現在認められています。論文にあるssp.nov.とは単に新亜種という意味です。著者は種子がP. brevicauleとは異なると述べていますが、将来的には別種になるかも知れません。
また、巨大な花を咲かせるパキポディウムについてですが、Pachypodium enigmaticumのことでしょうか? 論文では簡単にしか触れられていませんから、断言できませんが…


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「親しみやすさは軽蔑を生む」(familiarity breeds contempt)とは中々含蓄のあることわざです。このことわざはイソップ童話の「キツネとライオン」という話に出てくるフレーズなんだそうです。多肉植物に当てはめれば、普及種が親しみやすさとともに軽視される傾向があるのではないでしょうか?
個人的には普及種も好きで面白いと感じていますが、どうも世の中的には異なるようで、普及種の多肉植物が手入れもされずにカリカリになっていたりするのは大変悲しいことです。安くいつでもどこでも入手可能とあらば、扱いが荒くなるのもやむ無しかも知れません。まあ、普及種はお値段的にもお手軽ですからね。
しかし、そんな普及種であっても良いものは良いのだという熱い論考に出会いました。それは、イギリスのキュー王立植物園のPeter Brandhamの1981年の『Aloe aristata : an underrated species』です。


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Aristaloe aristata=Aloe aristata

著者にとって「親しみやすさは軽蔑を生む」ということわざはAloe aristataに当てはまるとしています。日本ではあまり見かけることがないAloe aristata(現在はAristaloe aristata, 綾錦)ですが、イギリスでは昔から知られている園芸植物です。イギリスではチェーン店や園芸用品店で入手可能で、多肉植物のコレクターはわざわざ栽培する価値はないと考えています。

Aloe albiflora, Aloe bakeri, Aloe bellatula, Aloe deltoideodonta, Aloe descoingsii, Aloe dumetorum, Aloe erensii, Aloe forbesii, Aloe haworthioides, Aloe humilis, Aloe jucunda, Aloe juvenna, Aloe myriacantha, Aloe polyphylla, Aloe rauhii, somaliensis, Aloe variegataなど魅力的な小型~中型のアロエは沢山ありますが、栽培が難しいものが多いとしています。これらは根を失いやすく、入手が難しく、開花しないと言います(※)。対して、A. aristataは良く子を吹き、入手は容易です。冬は乾燥させれば良く、直径6cm程度になると定期的に開花します。花は植物に対して大きいと言います。

※私も上記の1/3の種類くらいしか育てたことはありませんが、栽培はそれほど難しくありませんでした。しかし、晴れが少なく寒冷なイギリスの気候では難しい部分もあるのでしょう。

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Aloe descoingsii

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Aloe somaliensis

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Aloe haworthioides

A. aristataの花はピンク~鈍い赤色と淡黄色~クリーム色の2色からなる、アロエ属でも独特の花を咲かせます。これを著者は"bicolor"、つまりは「二色」と表現していますが、このラテン語は種小名で良く見かけますね。
A. aristataの葉は非常に多いことが特徴です。小型種のA. haworthioidesよりも多いとしています。葉の縁には柔らかいトゲがあり、葉の先端には長い毛のような芒があります。葉の表面には斑があり、葉裏により多くあります。

A. aristataは南アフリカ原産で、東ケープ州、オレンジ自由州、レソトなど非常に広い範囲に分布します。変種としてvar. leiophyllaとvar. parvifoliaが知られていました。しかし、アロエ研究の権威であったReynoldsによりA. aristataの範囲内と見なされ、認められていません。ただ、A. aristataには起源が不明の栽培種があり、分かりやすい4つのバリエーションを以下に示します。
1, 「典型的」なフォルム。自由に子を吹く最も一般的なタイプです。狭い灰緑色の葉を持ち、葉裏にはトゲと斑点が通常はランダムに、時には縦方向へ列となります。
2, 「単純」なフォルム。直径30cm以上となる可能性があり、滅多に子を吹きません。葉は「典型的」なフォルムより長く狭く、葉裏のトゲは縦に並ぶ傾向がより顕著です。
3, 'crisp'フォルム。非常に良く子を吹くタイプで、著者は最も魅力的と表現しています。葉は短く幅広で、トゲが多く葉裏では2~3列となります。
4, 'Cathedral Peak'フォルム。葉には斑点がほとんどなく、トゲも少数です。適度に子を吹きます。このフォルムは、南アフリカのDrakensberg山脈のCathedral Peak由来のものです。典型的なA. aristataの花を咲かせるにも関わらず、ヨーロッパでは× Gastrolea bedinghausii(
A. aristata × Gasteria sp.)という誤った名前で長年栽培されています。

A. aristataはGasteriaと容易に交雑可能で、著者は沢山の交配種を作ったそうです。ガステリアとの交配種の特徴は、両親の中間的な花を咲かせることだそうです。ただし、この交配種は花粉の受粉能力に乏しいのですが、× Gastrolea bedinghausiiは花粉の受粉能力が常に90%を越え、A. aristataと変わりません。ですから、× Gastrolea bedinghausiiは交配種ではないと考えられるのです。

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A. aristata × Gasteria sp.

著者はA. aristataはきちんと育てればそれ自体が魅力的であり、交配種の作成が容易なので交配の入門としても適すると主張します。A. aristataの異なるフォルムはコレクションに値するものであり、「温室にはこれ以上植物を入れる余裕がない」という使いふるされた言い訳は使うことは出来ないと絶賛しています。著者の住むSurreyでは非常に丈夫で、過去3年間庭の明るい日陰で育ち、1978/9年の非常に厳しい冬にも耐えてきました。毎年、夏に開花します。

以上が論考の簡単な要約です。
日本では人気がないせいか、園芸店ではほとんど見られませんが、イギリス(1981年の)では一般的なようです。しかし、著者が絶賛するようにA. aristataは非常に美しい植物です。さらに、私は形態的にアロエ的ではない感じが非常に面白く思います。A. aristataが命名されたのは1825年のことで、Aloe aristata Haw.が長年正式名称でした。しかし、遺伝子解析の結果から、2014年にAristaloe aristata (Haw.) Boatwr. & J.C.Manningとなり、アロエ属から分離しました。現在、アリスタロエ属は1属1種の珍種ですから、その点においてもコレクションするに値する多肉植物でしょう。


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マダガスカルには沢山の小型アロエが分布します。その中でも最小と言われるのが、Aloe descoingsiiです。一般的には「アロエ・ディスコインシー」と呼ばれたりしているみたいですが、普通にそのままラテン語読みで「アロエ・デスコイングシイ」で良いような気がします。学名は1930年から30年以上に渡りアロエ属の権威だったGilbert Westacott Reynoldsにより1958年に命名されました。つまりは、Aloe descoingsii Reynoldsです。種小名は1956年にA. descoingsiiを発見したフランスの植物学者であるBernard Descoingsに対する献名です。また、1994年には新設されたGuillauminia属とする意見があり、Guillauminia descoingsii P.V.Heathという学名がつけられましたが、翌1995年にGideon F.Smithらにより新属を提唱するに値する根拠がないとして斥けられています。

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Aloe descoingsii

A. descoingsiiは最小のアロエと言われますが、正しくは葉の長さが最も短いアロエでしょう。A. descoingsiiの主軸は意外にも太く、葉の幅は全体のサイズの割には広く、Aloe haworthioidesなど他のマダガスカル原産の小型アロエの方が非常に葉の幅は狭いものが沢山あります。A. descoingsiiは直径5cmまでで、葉は3~6cm程です。

A. descoingsiiはマダガスカル南西部のToliaraのFiherenana渓谷に分布します。標高は350mと言われます。A. descoingsiiは石灰岩の崖上の浅い土壌で育ちます。絶滅の危機に瀕していられる希少なアロエです。
しかし、このA. descoingsiiは園芸店でもまったく見かけたことがありません。希少種だからかと思いきや、何故かA. descoingsii系交配種は何度か見かけたことがあります。見た目の美しさ以外にも、増やしやすさであるとか育てやすさも関係しますから、理由は定かではありません。ただし、調べてみると、A. descoingsiiは非常に交配が盛んに行われたらしく、海外の園芸サイトでも「数えきれない程の雑種」があると書かれているくらいですから、単純に交配種が普及しているだけかも知れませんね。



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現代医学が幅を利かせているように思われる昨今ですが、未だに世界中で薬草が現役で使用されています。先端医療が行き届いていないという事実もありますが、それだけではないでしょう。伝統的な風習にも関係があります。多肉植物も医療目的で使われることがありますが、なんと驚くべきことに毒があることで有名なユーフォルビアが薬草として利用されていると言うのです。特に世界中で帰化しているEuphorbia tirucalliは薬草として世界中で栽培されています。また、アフリカでも様々なユーフォルビアが薬草として使われていますが、猛毒の矢毒キリンすら薬草なのですから驚かされます。

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矢毒キリン Euphorbia virosa

さて、本日はその矢毒キリンのベナン共和国における薬草としての利用方法について調査した、Gbodja Houehanou, Francois Gbesso, Jhonn Logbo, Jacques EvrardCharles Aguia Dahoによる『Variability between Socio-culture Groups and Generations of Traditional Knowledge of Euphorbia poissonii Pax in Benin』という論文です。

世界保健機関(WHO)によると、発展途上国の世界人口の約65~80%は、貧困と現代医学へのアクセスの困難から薬草に依存しているとしています。アフリカでは薬草は先祖代々の慣習であり、人口の80%近くが薬草を利用しています。薬草の知識は主に口伝による世代間の伝承によります。
この調査はベナン共和国のSavalou市において、Mahi族とNago族のE. virosaの利用方法を調査しました。調査は112人に対する個別インタビューによるものです。Savalouはスーダン - ギニアのサバンナ植生と湿潤熱帯の移行帯に位置しています。岩の多い土壌はE. virosaの生育には適した環境です。現地ではE. virosaは庭や畑で栽培されます。
調査の結果によると、成人のMahiや若いNagoはE. virosaを単純に毒として利用し、成人と老人のNagoは薬用とする傾向があります。また、老人のMahiはE. virosaを魔術的な医療として利用する傾向があります。しかし、統計学的には薬用あるいは毒としての利用が重要でした。調査ではE. virosaの21の用途が明らかとなりました。葉、樹皮、茎、乳液が特定の病気や症状に対して治療目的で使用されました。体の一部あるいは創傷による腫れ、麻疹、サソリ刺されなどの治療においてMahi社会では重要な用途でした。また、成人女性及び老人(女性)、若い男性のMahiは葉を使用する傾向があり、成人男性のNagoと老人Mahiは乳液、老人Nagoと若い女性Mahiは樹皮をより使用する傾向があります。


以上が論文の簡単な要約となります。
矢毒キリンの名前の通りE. virosaは毒性が高いことで知られています。しかし、それはベナンにおいても同様で、E. virosaは毒性が高いと正しく認識されているようです。それでも薬用に用いるのは、強力に人体に作用するからでしょう。それは必ずしも良い作用ばかりではないかも知れませんが…。とはいえ、E. virosaの乳液にはおそらくは未知の化合物も含まれているはずで、すでに抽出された化合物であっても薬理作用は完全に解明されてはいないはずです。このような伝統医療の解明と活用法については、まだ様々な可能性を秘めているように思えます。


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南アフリカは多肉植物の宝庫で、その多様はアフリカでも他の追随を許しません。ユーフォルビアやアロエと言えば南アフリカかマダガスカルですし、ガステリアやハウォルアと言えば断然南アフリカでしょう。そんな多肉植物の楽園である南アフリカですが、大型の樹木のようなユーフォルビアがあちらこちらに生えています。そんな樹木状ユーフォルビアについて書かれた記事を見つけました。

本日ご紹介するのは、Sean Gildenhuysの2006年の記事、『The three most abundant tree Euphorbia species of Transvaal (South Africa)』です。
表題にあるTransvaalとは南アフリカの北部4州であるLimpopo州、Mpumalanga州、Gauteng州、North-West州にあたる地域をかつてはそう呼んでいました。このTransvaal原産のユーフォルビアは割と希少なものが多く、Euphorbia barnardii、Euphorbia clivicola、Euphorbia knoblii、Euphorbia waterbergensis、Euphorbia zoutpansbergensisは分布域が狭く個体数も少ないことが知られています。しかし、記事では分布が広く個体数が非常に多い3種類のユーフォルビアが取り上げられています。その3種類とは、Euphorbia cooperi var. cooperi、Euphorbia ingens、Euphorbia tirucalliで、どこにでも生えるためこの3種類で構成された地域もあります。この3種類は樹木状で大型となります。


Euphorbia cooperi var. cooperi
日本では瑠璃塔の名前で知られているユーフォルビアです。
学名はE. cooperiを英国に紹介した植物収集家・栽培家のThomas Cooperに対する献名です。1900年にThomas Cooperの義理の息子であるN.E.Brownは、王立植物園で栽培されている双子葉植物リストに適切な説明もなくE. cooperiを命名しました。1907年にA.Bergerは多肉ユーフォルビアのハンドブックを出版し、E. cooperiについて適切な説明を付加しました。そのため、現在の学名はE. cooperi N.E.Br. ex A. Bergerとなっています。N.E.Brownが最初に命名したものの、命名規約の要件を満たしていないため、要件を満たしたA.Bergerの名前も入っているわけです。しかし、残念ながらA.BergerのハンドブックのE. cooperiのイラストは間違っていてE. ingensが書かれています。また、Thomas Cooper自体がE. ingensとE. cooperiを混同していたようです。

さて、E. cooperi var. cooperiは約10mほどの高さになります。根元から分岐せずに、枝は上部に固まってつきます。枝は分節構造が積み重なるため、クビレが生じます。
E. cooperi var. cooperiは南アフリカに広く分布し、KwaZulu-Natal、スワジランド、North-West州、Mpumalanga、Limpopo州からモザンビーク、ジンバブエ、ボツワナまで見られます。Limpopo州のPenge地区に固有のE. grandialataと混同される可能性がありますが、E. grandialataの方がトゲが長く、E. cooperiとは異なり花序に柄があります。
E. cooperi var. cooperiの乳液は非常に毒性が高く、皮膚に触れるだけで激しい痛みを引き起こし、水ぶくれや失明の可能性すらあります。E. cooperiの原産地では、E. cooperiの乳液を加熱して「鳥もち」を作り水辺の枝に塗って鳥を捕まえます。また、漁にも使われるそうです。

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瑠璃塔 Euphorbia cooperi

Euphorbia ingens
日本では沖天閣の名前で知られているユーフォルビアです。
E. cooperi var. cooperiと時折見られるのが、Euphorbia ingensです。種小名は「巨大な」という意味で、枝が頑丈で重いことを差します。E. ingensは1831年にJ.F.Dregeにより発見され、1843年にE.Mayerにより記載されました。
E. ingensは高さ10mになり多くの枝を持つ樹木状ユーフォルビアです。E. ingensはKwaZulu-Natal、スワジランド、Mpumalanga、Gauteng、North-West州、Limpopo州、モザンビーク、ジンバブエに自生します。南アフリカにはE. ingensの近縁種はいませんが、より北部ではE. candelabrum、E. kamerunicaなどの近縁種が数種類あります。E. ingensは非常に広範囲に分布するため変動に幅があり、変種あるいは新種が分離される可能性もあります。
Transvaalのユーフォルビアの中でもE. ingensの乳液は非常に毒性が高く、皮膚への刺激性が高く火傷を引き起こします。目に入ると失明の危険性があります。ただし、地元の人は下剤(※)として利用していると言います。また、乳液は潰瘍や癌に効果があるとされているそうです。

E. ingensは材木としても利用されます。E. ingensは生長が早く干魃に強く、Limpopo州ではよく使われます。また、E. ingensは非常に頑丈な生垣として植栽されます。

※記事には詳しく書いてありませんが、おそらくは駆虫薬でしょう。砂糖を入れると書いてありましたが、おそらくかなり希釈するはずです。

Euphorbia tirucalli
日本ではミルクブッシュや緑サンゴなどの名前で知られているユーフォルビアです。
E. tirucalliは樹木状ユーフォルビアの中でも最も有名で、おそらく最も普及しています。E. tirucalliは世界中で帰化しており、その起源は定かではありません。南アフリカでは、東ケープ州からMpumalanga、North-West州、Limpopo州に分布します。E. tirucalliはトゲのない円筒形の枝が分岐する独特のフォルムの植物で、近縁種の多くはマダガスカル原産です。

E. tirucalliは1753年にCarl von Linneにより命名されましたが、タイプはインドで栽培されていた個体から作成されました。このインドのE. tirucalliはモザンビークに立ち寄った初期のポルトガル人によりもたらされた可能性があります。ただ、それ以前にすでに導入済みだったのかもしれません。種小名はインドの住民の呼び方から来ています。
E. tirucalliは低木状から高さ10mに達することもあります。E. tirucalliの乳液はやはり危険ですが、アフリカやインドでは生垣にされてきました。虫の駆除や矢毒、E. tirucalliの乳液を米と煮て鳥もちを作ります。また、乳液は不妊症やインポテンツに効果があるとされ飲まれることがありますが、これは流石に危険性が高く致命的となりかねないようです。さらに、多くの病気(淋病、梅毒など)や癌、イボなどの治療に役立つとされています。
E. tirucalliの乳液の抽出物は石油の代替品として研究され肯定的な結果が得られているそうです。また、乳液をゴムの代用品として使用されましたが低品質です。
E. tirucalliは様々な美しい園芸品種が作られており、挿し木で簡単に増やせることもあり南アフリカでは造園用として盛んに利用されています。


以上が簡単な要約となります。
しかし、毒性の高いユーフォルビアの乳液を薬としようというだけでとんでもないなあと思ってしまいます。しかし、現代の薬自体が毒から作られてきたという事実があります。毒というのは人体に強く作用していることから、作用が分かれば用法容量次第で薬となるのです。E. tirucalliは世界中に生えているせいか、乳液の中の有効成分を解析した沢山の論文が出ています。しかし、逆を言えばユーフォルビアは化学成分の論文ばかりで、植物自体についての論文が少ないのは残念です。知りたいことは山程あるわけですが…



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多肉植物好きとして以前から気になっていることがあります。それはホリダ(Euphorbia polygona var. horrida)が、自生地では寄生植物に寄生されているというのです。現在、ホリダはポリゴナ(Euphorbia polygona)の変種とされていますが、やはりポリゴナも同じ寄生植物に寄生されると言いますから、やはりホリダとポリゴナは近縁なのだろうと感じました。しかし、論文を探ってみると購入しないと読めないものしかなく、半ば諦めかけていました。しかし、最近ホリダについて色々調べていた際、多肉ユーフォルビアに寄生する寄生植物について書かれた論文を見つけました。今まで調べて読めなかった論文とは異なり、ホリダについて書かれた部分は極僅かでしたが、しかし貴重な情報を得られることは大変な僥倖です。

本日ご紹介するのはMaik  Vesteの2007年の論文、『Parasitic flowering plants on Euphorbia in South Africa and Namibia』です。早速内容に入りましょう。
南アフリカとナミビアには67種類の寄生植物が知られており、23種類は茎に寄生し、44種類は根に寄生します。主に樹木を寄生先(宿主)としていますが、Aloidendron dichotomumやCotyledon、Lampranthusなどの多肉植物を宿主とするものもあります。多肉植物ではユーフォルビアの寄生植物で高い多様性が見られます。

まずは根に寄生する寄生植物から見ていきましょう。
ヒドノラ属はアフリカ南部ではHydnora africanaとHydnora tricepsが見られ、ユーフォルビアだけを宿主としています。Hydnora africanaはケープ半島からナミビアのNama Karoo、東は東ケープ州まで広く分布します。対してHydnora tricepsは希少です。植物学者のJohann F. Dregeは1830年にNamaqualandのOkip近くでH. tricepsを発見し標本を採取しました。しかし、Johann Visserが1988年にNamaqualandで再発見するまで忘れ去られていました。分布はNamaqualandとナミビア南部の狭い地域からのみ知られています。H. tricepsはEuphorbia dregeanaに寄生し、他のユーフォルビアが近くに生えていてもE. dregeanaにのみ寄生します。Namaqualandの北西にあるPort NollothではE. dregeanaの10%、ナミビア南部では0.5%以下の寄生率であると推定されています。
Hydnoraは地下で育ち葉がないため、見つけることは中々困難です。しかし、腐敗臭を放つ異様な姿の肉質な花が、地面から地上に出て来て咲きます。悪臭は受粉のためにハエを呼んでいるのかもしれません。果実は食用となり甘味があり、南アフリカ北部のKhoi族は伝統的に利用しています。

次に茎に寄生する寄生植物を見てみましょう。
樹木の枝に寄生するヤドリギはアフリカ南部の乾燥地帯でも一般的です。寄生植物は決まった宿主に寄生しますが、中には相手をあまり選ばない種類もあります。Tapinanthus oleifoliusはAcacia、Aloe、Citrus、Ficus、Rhus、Tamarixや他の種類の寄生植物にすら寄生します。このT. oleifoliusは矢毒キリン(Euphorbia virosa)にも寄生することが知られています。

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矢毒キリン Euphorbia virosa

最小のヤドリギはViscum minimumで、2~3枚の葉を持ち数ミリメートルしかありません。Little Karooから東ケープまで分布します。
1981年にVisserはV. minimumが、ほぼ独占的にEuphorbia polygonaとEuphorbia polygona var. horridaに寄生することを報告しました。実験レベルでは他の28種類のユーフォルビアにも寄生させることに成功しています。しかし、野生状態では分かりません。


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ホリダ
Euphorbia polygona var. horrida(神代植物公園)

以上が論文の簡単な要約です。
ホリダに寄生する植物がいるという話を聞いた時に、驚くとともに非常に興味深く感じました。私は何故かホリダの根に寄生するのだろうと、勝手に思い込んでいました。それがまさか幹に数ミリメートルのゴミみたいなヤドリギがゴマを散らしたようにくっついているとは、予想値にしませんでした。
このように、論文を読むたびに新鮮な驚きがあります。多肉植物の意外性は、私の想像を上回るものがあります。これからも多肉植物の謎を調べて行きたいと思います。



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ついに、今年最後の多肉イベントが来週に開催されるらしいです。木更津Cactus & Succulentフェアなんですが、このイベントはいまいち知名度がないですよね。検索すると私の弱小ブログの去年の記事が上位に出てきてしまうくらいですから相当なものです。
去年の年末にも開催されましたが、本当に偶然知って行きました。しかし、何故か多肉植物のイベント一覧のようなサイトには載っていなかったので、危うくスルーしてしまうところでした。その時の記事はこちらです。

その後、今年の5月にも開催されたみたいですが、まったく気が付きませんでした。イベントに参加した人のブログを読んで、頭を抱える羽目になりました。それからは定期的に情報を収集していましたが、公式のサイトは12月に入っても去年と今年の5月のイベント情報しかありませんでしたから、今年の年末はないのかと思ってました。しかし、SABOSABO STOREさんのイベントカレンダーの12/24に「木更津C & S」って書いてあったので、おやおやと思って公式サイトを見てもまだ更新されておらず…。ギリギリまで詳細がわからないスタイルです。
しかし、最近ようやくまとめサイトにも無事に開催日が掲載され、公式サイトも更新されました。
公式サイトは以下の通り。
去年と同じく千葉県木更津市のかずさアカデミアホールで開催されます。12/24の10時から15時までですが、10時から入場できるのは有料の先行入場を申し込んだ方のみで、無料の一般入場は10時半からです。私はバスの都合もありますから、普通に10時半からですね。
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去年、木更津Cactus & Succulentフェアで入手した子吹きシンメトリカ。適当に画像を加工してみました。

さて、今年はどんな感じでしょうかね。会場は結構広いのですが、去年はまだ出店できる余裕がかる感じがします。5月のイベントには行っていないので分かりませんが、出店が去年より増えてくれると嬉しいのですが…
さて、私は今年も東京駅から高速バスで会場に向かう予定です。バス乗場が変わったらしいので、間違わないように気を付けなければ。取り敢えず見に行く予定ですから、当日の様子を記事にするつもりです。


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最近、ムランジーナという名前のユーフォルビアが多肉植物に力を入れている園芸店などに並ぶようになりました。巨大な塊根のようなものから細い枝が複数伸びる不思議な姿です。
実はこのムランジーナを見た時に、これが何なのかよく分かりませんでした。というのも、大型の多肉ユーフォルビアは幹が樹木のように硬くなりますが、ムランジーナはどうもそのようには見えません。胴切りして頭から子を吹かせたわけでもなく、木質化した幹から緑の枝を伸ばしています。どうすればこのような姿に育つのか疑問でした。ですから、初見では塊根だと勘違いしたわけです。しかし、論文を調べてみると、どうも塊根ではなく幹ということで、しかもその異様な幹が形成される理由がわかりました。というわけで、ムランジーナとは一体何者なのか論文を見てみましょう。

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Euphorbia mlanjeana
おそらく挿し木苗ですので、特徴的な幹は見られません。

本日ご紹介するのはJoachim Thiede, Pastor Theo Peter Campbell-Barker, Philip E. Downs & Bruce J. Hargreavesの2016年の論文、『A review of Euphorbia mlanjeana L.C.Leach (Euphorbiaceae) : its habitats on Mount Mulanje(Malawi) and new localities in Mozambique』です。

論文の内容はマラウイのMulanje山に分布するE. mlanjeanaが、モザンビークにも分布していますというものです。新たな産地の報告ですね。しかし、それだけではなく、E. mlanjeanaの命名の経緯や生態も詳しく述べられています。詳しく見てみましょう。

マラウイはマラウイ湖から西に伸びるアフリカ南東部の内陸国です。タンザニア、ザンビア、モザンビークと隣接しています。マラウイの多肉植物は約120種類が知れていますが、ジンバブエの約318種類やケニアの約380種類と比較するとかはり少なく感じます。単純に国土面積が狭いからではなく、国の大部分が標高1500m以上に位置し、気温は低く降雨量もかなり多いということです。
マラウイの植生で興味深いのはMulanje山塊で、植物の多様性が高く約69の固有分類群が知れています。E. mlanjeanaもMulanje山に分布します。"mlanjeana"はMulanje山に由来しますが、よく見ると"u"が抜けています。これは、イギリスの植民地時代の綴りの誤りで、E. mlanjeana命名当時は"u"がないMlanje山と呼ばれていたことが原因です。
E. mlanjeanaは標高1000~1980mの露出した花崗岩の斜面や平らな岩肌に生えます。

E. mlanjeanaのは1973年にL.C.Leachにより命名されましたが、不思議な幹の謎がその時点で言及されていました。どうやら、E. mlanjeanaの自生地は乾燥した草が頻繁に山火事を起こし、E. mlanjeanaは数年しか枝が存続しないように見えると述べています。要するに、家火事により幹の表面は焼け焦げて枝は枯れますが、そのうち細い枝がまた出て来て、しかしまた火事が起きて…、という繰り返しがあの異様な姿を作り出したのです。思いもよらぬ自然現象によるものでした。実生からの栽培では火事に合いませんから、現地球のような姿には育たないそうです。

長い間、E. mlanjeanaはMulanje山でのみ知られる固有種でしたが、Bruynsは2003, 2005, 2006年に2種類の新種の報告の中で、モザンビークの2つの山岳地帯に生えるE. mlanjeanaについてさりげなく言及しました。モザンビークのRibaue山脈とNamuli山塊です。

さて、以上が簡単な論文の要約です。
まさか山火事が関係しているとは思いもよらず、大変な驚きでした。しかし、最近急に輸入されるようになりましたが、もともと個体数がそれほど多くなかったかわけで、これだけの野生株が山掘りされていることはかなり不安です。タンザニアからも輸入があると聞きますから、さらに新産地が見つかったのかも知れません。しかし、山火事という偶然が長い時間をかけて作り出した自生株が急激に失われていくのかも知れません。大変悲しいことです。


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バナナは放っておくと、皮に黒い点々が出てきます。これは、スウィート・スポットと呼ばれ、甘く熟した食べ頃のサインと言われています。これは、バナナの皮に含まれるポリフェノールが酸化したものなんだそうです。しかし、困ったことに多肉植物にも黒いスポットが出来てしまうことがあります。当然これはポリフェノールではないし、食べ頃のサインでもありません。何かしらの不調のサインです。観葉植物の本を紐解くと、黒い点の原因は様々です。栽培環境が悪いせいでおこる生理障害の場合もありますが、黒星病や炭疽病などの病原菌、場合によってはカメムシなどの害虫の被害の場合もあります。
本日はこの黒い点についてのお話です。具体的にはアロエやガステリアに黒い点が出てしまうことが割とあり、これは一体何が原因なのだろう?というものです。その論考は2001年のHarry Maysによる『All that is known about Black Spot』です。早速、内容を見てみましょう。

黒い点の原因や対処法は、基本的に趣味家の経験則によるもので人により意見は異なり、科学的な見地からのものではありませんでした。著者ははじめから原因は1つではないかもしれないので、様々な可能性を探り意見をまとめてみたということを述べています。

①ストレス
日本語でストレスと言うと精神的なイメージがありますが、本来ストレスは圧力という意味もあります。植物も高温や乾燥などは植物にストレスを与えます。ただし、黒点の発生については可能性の話で確証はありません。

②環境
強光に当てて換気が不十分だと植物表面が痛むことがあります。さらに、高窒素肥料と水をあげすぎると、軟弱になり病原菌に弱くなる可能性があります。しかし、必ずしもこれらの条件で黒点があらわれるとは言えず、出ない場合もあります。

③土壌不足
長年植え替えをしていないと、栄養が不足して黒点があらわれると言われています。しかし、植え替えをしていなくても黒点が出ない場合も確認されており、むしろ堆肥を与えることで黒点が出るという意見もあります。

④湿度
温室内でも温度は場所や高さにより均一ではありません。また、場所によっては結露することもあります。実際に黒点の原因として過湿があげられることが多いようで、移動させて乾燥させることが推奨されています。しかし、残念ながら著者には、乾燥期に若いGasteria distichaに黒点があらわれた経験があります。逆に光に乏しく湿気の多い環境では何故か黒点は発生しませんでした。

⑤病原菌
湿度が高くなると、細菌やカビの活動は活発になります。しかし、ヨーロッパで多肉植物は冬は暗く湿った環境に置かれることになりますが、必ずしも黒点はあらわれません。

⑥種類
ガステリアでは種類により黒点が出やすい種類、出にくい種類があるという意見もあります。しかし、それも人によって傾向が異なりました。しかも、同じ種類を育てていても、黒点が出るものと出ないものがあるという報告もあります。中には株分けした片方にだけ黒点があらわれたりします。この場合の黒点は伝染性がないようです。

⑦野生株
南アフリカの東ケープ州の西部やオレンジ川北部では、野生のガステリアに黒点は滅多に見られませんでした。Hells Kloof地域のGasteria pillansiiは数ヶ月に渡り非常に乾燥した年に数個の黒点が観察されました。同じ地域で非常に雨が多かった年に、Gasteria pillansiiは水分を吸収し過ぎて膨れ上がり、裂けてしまうものもありました。腐ってしまったものもありましたが、黒点はまれにしか見られませんでした。

⑧David Cumming
より信頼性の高い情報を求めて、南アフリカの調査経験が豊富なDavid Cummingに連絡しました。Cummingは「特に東ケープ州で広い地域で一般的であると思われます。アストロロバは最も多く、ガステリアが続きます。」Cummingは黒点はストレスによるもので、それが黒点の主な原因ではなく、日和見感染の可能性があるとしています。

⑨Ernst van Jaarsveld
南アフリカの多肉植物の研究者であるvan Jaarsveldは、黒点はMontagnella(真菌=カビ)により引き起こされるとしています。3~6ヶ月ごとにオキシ塩化銅あるいはCaptanを噴霧しますが、定期的な噴霧を行っても黒点はあらわれます。

⑩Doug McClymont
ジンバブエのDoug McClymontは研究者としてではなく、半分趣味のアロエ栽培の経験を語ってくれました。アロエの黒点は、高湿度で曇天、気温18度以上、毎日雨が降るなどの条件で発生すると言います。また、昆虫による被害も加算されるようです。
Montagnella maximaやPlacoasterella rehmiiはbenzimidazolesやtriazolesといった浸透性殺菌剤は効果がありませんが、cyproconazoleとdisulphotonの混合顆粒により昆虫の害を防ぎ黒点か出来ません。しかし、非常に湿った環境では昆虫がいなくても黒点は出来てしまいます。しかし、オキシ塩化銅または水酸化第二銅の噴霧で高い効果があったようです。ただ、老化した葉は黒点が出来やすく薬剤でも効果がありません。

⑪王立園芸協会
科学的証拠を得るために、王立園芸協会の植物病理学部門に連絡しました。黒点のあるGasteria distichaの葉と根、土壌を調査してもらいました。黒点は日射、灌水、肥料などの生理的なものではないと結論付けました。ただし、黒点の周囲の組織を培養しても病原菌は見つかりませんでした。これは病原菌がいないことの証明にはならず、ただ培養が困難な病原菌だったからかもしれません。王立園芸協会の提案する最良の案は、広範囲の植物の葉の斑点に効果がある殺菌剤mancozebの使用です。

謎は深まるばかり…
冬に寒さからガステリアを守るために一切の通気を遮断して非常に湿った状態で育てている人もいますが、何故か全く黒点は出来ないそうです。
これまで見てきた意見は、全く以て相反する内容が噴出していますが、著者は黒点の原因は1つではないからだろうと考えています。結局、我々の出来ることは、殺菌剤の散布以外では、硬く締まった最適な育て方をして、ちゃんと植え替えしましょうという常識的なことくらいなものです。
黒点の謎は解明されたとは言えませんが、全く対処不能というわけでもないように思えます。もし、黒点があらわれた時には、その多肉植物は何かしらの問題を抱えているのかも知れませんね。

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アロエの古い葉にあるこの黒いスポットの原因は何でしょうか?


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ソルディダは一般的に硬葉系ハウォルチアと呼ばれる多肉植物です。ざらざらした暗い色の肌と、生長が遅いことが特徴です。ちなみに、ソルディダは生長の遅さ故か硬葉系の中では割と高価で、コエルマニオルムとソルディダは中々手が出せません。まあ、普通の園芸店では見かけることはありませんが…
さて、そんなソルディダですが、初めて学名が命名されたのは1821年と約200年前のことでした。そのため、これまでに様々な学名がつけられてきました。今日はそんなソルディダの履歴を辿ってみます。


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Haworthiopsis sordida

ソルディダが初めて命名されたのは、1821年のHaworthia sordida Haw.です。その後、1829年にAloe sordida (Haw.) Schult. & Schult.f.、1891年のCatevala sordida (Haw.) Kuntzeが知られています。また、ソルディダはスカブラと近縁と考えられ、1997年にHaworthia scabra var. sordida (Haw.) HaldaHaworthia scabra subsp. sordida (Haw.) Haldaも命名されています。しかし、結局はソルディダは独立種とされて、基本的にHaworthia sordida Haw.で呼ばれてきました。しかし、近年の遺伝子解析により、硬葉系ハウォルチアは軟葉系ハウォルチアとあまり近縁ではないことがわかってきました。硬葉系ハウォルチアはHaworthiaから分離され、HaworthiopsisとTulistaとなりました。Tulistaは現在4種からなる小さなグループですが、それ以外の硬葉系ハウォルチアはHaworthiopsisに分類されています。ソルディダも2013年にHaworthiopsis sordida (Haw.) G.D.Rowleyとされました。現在もこの学名が学術的に正式なものですが、実際に販売される場合は未だにHaworthia sordidaの名前で流通しています。
そう言えば、ソルディダには変種がありますが、ついでに見てみましょう。


1981年にソルディダの変種としてラブラニが命名されました。Haworthia sordida var. lavrani C.L.Scottです。一時期提案されたソルディダをスカブラの変種とする考え方から、その提案者により1997年にHaworthia scabra var. lavrani (C.L.Scott) Haldaと命名されたこともあります。また、2010年には変種ラブラニを独立種とするHaworthia lavrani (C.L.Scott) Breuerもありました。しかし、やはり最終的にはソルディダの変種ということになり、ソルディダがHaworthiopsisとなったことに合わせて2013年にHaworthiopsis sordida var. lavrani (C.L.Scott) G.D.Rowleyとなりました。

変種ラブラニが命名されたことにより、ラブラニではないソルディダは区別されることになりました。単純にHaworthiopsis sordidaと言った場合、変種ラブラニとそれ以外を含んだ名前となるからです。つまり、変種ソルディダです。これは命名されたわけではなく、変種が出来たことにより自動的に出来た学名です。つまり、Haworthiopsis sordida var. sordidaです。
この、変種ラブラニ以外のソルディダは変種ソルディダになる前から、異名がつけられてきました。いわゆるHeperotypic synonymです。Homotypic synonymとは異なり、Heperotypic synonymはその種小名が受け継がれなかった学名です。それは1938年に命名されたHaworthia agavoides Zantner & Poelln.です。このアガヴォイデスはやがてソルディダの変種とされ、1950年にHaworthia sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.)となりました。さらに、ソルディダがHaworthiopsisとなったことを受けて、2016年にはHaworthiopsis sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.) Breuerとされましたが、現在では変種ソルディダの異名扱いとされています。


以上がソルディダの学名の変遷です。ハウォルチオプシスは異名が恐ろしく多いものがあり、その一覧を見てうんざりすることもありますが、ソルディダはやはり特徴的な外見なせいか見た目の変異が少ないためかは分かりませんが、異名はほとんどありません。いや、それでも結構あるだろうと思われるかも知れませんが、種小名が同じHomotypic synonymばかりですから非常にすっきりしています。他のHaworthiopsisは1種類に対して、別種としていくつもの学名がつけられていたりして非常に混乱してきたことがうかがえます。
個人的にはこのざらざらした肌と暗い色合いは好きですが、イベントで立派な株が万単位の価格て販売されていて中々手が出せませんでした。しかし、最近のビッグバザールでは小さな実生苗が安価で入手可能です。どうやら、一度に沢山実生したみたいです。これは今しか入手出来ないものかもしれません。ソルディダが安く入手出来る中々ないチャンスです。あまり売れている雰囲気はありませんでしたが、皆さんもこの機にソルディダに手を出してみてはいかがでしょうか?


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